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「佐倉とは中学の時塾が一緒だったみたいで」
「言ってた」
「中学は別だし、殆ど話したことなかったし、高校が一緒でもそうだったんだ、くらいだったし」
付属校だから、高校からってのもまあ珍しくはあるけど。
でも中途入学組もそこそこ多いし、何より家が近ければ特に気にすることもない。普通は。
皇輝が中学の時、同じ高校に行きたがる女子がいたから、本人と先生に箝口令をしかれたっけ。
「クラスだって今回初めて一緒になったし」
「佐倉はかわいいし皇輝もモテるしふたりとも目立ってたけどね……いふぁい」
うるさいよ、と鼻を摘まれた。事実なのに酷い。
「でもあんまり話してるとこみたことないな、なんか委員会とか一緒だったっけ」
「多分それもない、教室とかで少し話したくらい」
コミュ強か。
いや、僕ともそんなに話したことなかったのに、幾ら前世で関係あったとはいえ、随分砕けてたからな、元々誰にでもそうなんだろう。
「んで、佐倉が……あの時も呼び出し手伝わされたのお前だっけ」
「う」
「止めろよ、もうあれ。良い気分しないから」
「はい……」
何回も何回も手伝いしてごめんなさい。でも僕だってやりたくてやってた訳ではないんだから相殺ということで許して下さい。
「呼び出されて行ったら、……碧のことすきだろって言われて」
「……佐倉強いな」
「第一声それだぞ、反応に困った」
「それ見たかったな」
「お前……まあいいや、ええと、そう、佐倉にそう言われて、どう返せば正解かわからなくて黙ってたんだけど、そのまま自分と付き合ってほしいとか言うから、何考えてんだと思ってさ」
「うん」
「要約すると、自分も周りから騒がれて困ってる、俺と付き合ってる振りすれば、佐倉に言い寄る男も減るし、俺に近付く女子も減るし、碧のことに対してもいいカムフラージュだろってことで」
「へえ」
「確かに最初は騒がれるだろうけど、その内落ち着くし、もしお互いに何かあれば別れた振りをすればいいって」
そう言いつつ、僕と皇輝がどうにか上手く行くようにしようと思ってたってことか。
そんな上手く行く訳が……いや上手く行ってしまったんだけど。
「別にそんな面倒なことしないでもいいし断わろうと思ったんだけど」
「へっ」
「佐倉が自分も女がすきかもしれないとか言うから」
「えっ」
「……これ聞いてなかったのか」
しまったという表情になった皇輝。
佐倉の飄々とした笑顔を思い出して、それはただ断られない為の駄目押しなのか、本気なのかわからなくなった。
佐倉は自由過ぎる。悪かないけど自由過ぎる。それがいいとこでもあるけど自由過ぎる。
「そこまで言われたらまあ……碧の反応も見れたらと思ったんだけど、予想以上に行動がおかしくなるから」
「うっ」
「……なんでそんなかわいいことばっかりすんのかと思ったら我慢出来なくて」
「えっ自分で言うのもなんだけどやっぱり皇輝趣味悪すぎない?」
「……まあ趣味悪かったとしてもそれが俺の好みなら別に迷惑掛けないだろ」
ソファが軋む。
柔らかいから、少し自分の躰も揺れた。
皇輝の顔が近くなって、あ、と思った瞬間に、反射的に目を閉じてしまう。
このタイミングでするんだ、キス。
わからないもんだな、経験値が少ないから、仕方ないんだけど。
「んっ……」
「甘……ちょっと慣れた?」
「なっ……慣れる訳、ないじゃん……」
「昨日は溶けきってたのに」
「昨日のは!」
回数もあったし、その、感極まってたというか、色んな感情がごちゃまぜで、頭ん中おかしくなってたっていうか。
後ちょっと何かがあれば溶けちゃいそうだけど、こんな、皇輝の親やお客さんが使いそうな所でそんな空気にはなれないっていうか。
「……お、おばさんたち、急に帰ってきたら困るし……」
「親父は出張中」
「は」
「母さんはいつも帰り遅いし、特に今日は金曜だし呑んでくると思う」
「へえ……」
「……泊まってく?」
ごく、と唾を飲み込む音が響く。
ずるい、そんなとこ、僕に決めさせるんだ。
でもそんなの、断れる訳ないじゃん、どれだけ待ったと思ってんの。
「と、泊まるねって連絡する……」
「うん」
あああ、笑顔が眩しい。
そんな嬉しそうな、優しい顔するの?泊まったら嬉しい?
僕のことそんなにすきなの?
「風呂の準備と……今日ピザでも取る?」
「待って、今ちょっとピザとか入らない」
「クッキー食べ過ぎて?」
「……それもあるけど」
胸が苦しい。
なのにそんな冗談言うから、笑っちゃった。
「どれがいいか選んどいて」
僕にスマホを渡して、皇輝は風呂掃除に行ってしまった。この隙に中身を見られるとか思わないんだろうか。
女子とのやりとりとか、ほら、なんかえっちな検索履歴とか……あったりして、なんて。
勇気が出なくてそんなの見れないけど。
母さんに皇輝の家に泊まると連絡を入れると、即、迷惑掛けるんじゃないわよと返信が来た。息子を何だと思ってるんだ。
迷惑は掛けるつもりはないけど、でもやっぱり……何かはする、ことになるのかなあ。
「言ってた」
「中学は別だし、殆ど話したことなかったし、高校が一緒でもそうだったんだ、くらいだったし」
付属校だから、高校からってのもまあ珍しくはあるけど。
でも中途入学組もそこそこ多いし、何より家が近ければ特に気にすることもない。普通は。
皇輝が中学の時、同じ高校に行きたがる女子がいたから、本人と先生に箝口令をしかれたっけ。
「クラスだって今回初めて一緒になったし」
「佐倉はかわいいし皇輝もモテるしふたりとも目立ってたけどね……いふぁい」
うるさいよ、と鼻を摘まれた。事実なのに酷い。
「でもあんまり話してるとこみたことないな、なんか委員会とか一緒だったっけ」
「多分それもない、教室とかで少し話したくらい」
コミュ強か。
いや、僕ともそんなに話したことなかったのに、幾ら前世で関係あったとはいえ、随分砕けてたからな、元々誰にでもそうなんだろう。
「んで、佐倉が……あの時も呼び出し手伝わされたのお前だっけ」
「う」
「止めろよ、もうあれ。良い気分しないから」
「はい……」
何回も何回も手伝いしてごめんなさい。でも僕だってやりたくてやってた訳ではないんだから相殺ということで許して下さい。
「呼び出されて行ったら、……碧のことすきだろって言われて」
「……佐倉強いな」
「第一声それだぞ、反応に困った」
「それ見たかったな」
「お前……まあいいや、ええと、そう、佐倉にそう言われて、どう返せば正解かわからなくて黙ってたんだけど、そのまま自分と付き合ってほしいとか言うから、何考えてんだと思ってさ」
「うん」
「要約すると、自分も周りから騒がれて困ってる、俺と付き合ってる振りすれば、佐倉に言い寄る男も減るし、俺に近付く女子も減るし、碧のことに対してもいいカムフラージュだろってことで」
「へえ」
「確かに最初は騒がれるだろうけど、その内落ち着くし、もしお互いに何かあれば別れた振りをすればいいって」
そう言いつつ、僕と皇輝がどうにか上手く行くようにしようと思ってたってことか。
そんな上手く行く訳が……いや上手く行ってしまったんだけど。
「別にそんな面倒なことしないでもいいし断わろうと思ったんだけど」
「へっ」
「佐倉が自分も女がすきかもしれないとか言うから」
「えっ」
「……これ聞いてなかったのか」
しまったという表情になった皇輝。
佐倉の飄々とした笑顔を思い出して、それはただ断られない為の駄目押しなのか、本気なのかわからなくなった。
佐倉は自由過ぎる。悪かないけど自由過ぎる。それがいいとこでもあるけど自由過ぎる。
「そこまで言われたらまあ……碧の反応も見れたらと思ったんだけど、予想以上に行動がおかしくなるから」
「うっ」
「……なんでそんなかわいいことばっかりすんのかと思ったら我慢出来なくて」
「えっ自分で言うのもなんだけどやっぱり皇輝趣味悪すぎない?」
「……まあ趣味悪かったとしてもそれが俺の好みなら別に迷惑掛けないだろ」
ソファが軋む。
柔らかいから、少し自分の躰も揺れた。
皇輝の顔が近くなって、あ、と思った瞬間に、反射的に目を閉じてしまう。
このタイミングでするんだ、キス。
わからないもんだな、経験値が少ないから、仕方ないんだけど。
「んっ……」
「甘……ちょっと慣れた?」
「なっ……慣れる訳、ないじゃん……」
「昨日は溶けきってたのに」
「昨日のは!」
回数もあったし、その、感極まってたというか、色んな感情がごちゃまぜで、頭ん中おかしくなってたっていうか。
後ちょっと何かがあれば溶けちゃいそうだけど、こんな、皇輝の親やお客さんが使いそうな所でそんな空気にはなれないっていうか。
「……お、おばさんたち、急に帰ってきたら困るし……」
「親父は出張中」
「は」
「母さんはいつも帰り遅いし、特に今日は金曜だし呑んでくると思う」
「へえ……」
「……泊まってく?」
ごく、と唾を飲み込む音が響く。
ずるい、そんなとこ、僕に決めさせるんだ。
でもそんなの、断れる訳ないじゃん、どれだけ待ったと思ってんの。
「と、泊まるねって連絡する……」
「うん」
あああ、笑顔が眩しい。
そんな嬉しそうな、優しい顔するの?泊まったら嬉しい?
僕のことそんなにすきなの?
「風呂の準備と……今日ピザでも取る?」
「待って、今ちょっとピザとか入らない」
「クッキー食べ過ぎて?」
「……それもあるけど」
胸が苦しい。
なのにそんな冗談言うから、笑っちゃった。
「どれがいいか選んどいて」
僕にスマホを渡して、皇輝は風呂掃除に行ってしまった。この隙に中身を見られるとか思わないんだろうか。
女子とのやりとりとか、ほら、なんかえっちな検索履歴とか……あったりして、なんて。
勇気が出なくてそんなの見れないけど。
母さんに皇輝の家に泊まると連絡を入れると、即、迷惑掛けるんじゃないわよと返信が来た。息子を何だと思ってるんだ。
迷惑は掛けるつもりはないけど、でもやっぱり……何かはする、ことになるのかなあ。
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