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「……上がりたくないなあ」
「1往復の約束だろ」
「……うん」
短いようで意外と長くて、でもやっぱり短かった。
いいなあ、佐倉はこれから皇輝に、ずっと触れてられるんだな、もう……
もう、僕の面倒より、佐倉の方を向いちゃうんだな……
「昨日さ」
「ん?」
「上北ちゃんから連絡きて」
「……ああ」
「佐倉が今日告るから手伝ってって」
「お前な、いつもいつもそういうの請け負うのやめろ」
「でも皇輝は毎回行ってくれるじゃん……それに今回は上手くいったんだし」
自分で言っておきながら、声が少し震えた。
違う、これはちょっと寒いからだ。だから、不自然じゃない。
「佐倉めっちゃかわいーもんな、流石に上手くいくよなあ」
「……別に顔で判断してる訳じゃない」
「わかってるけどさあ……美人だと性格もよかったりするじゃん、佐倉、結構良い奴だよね、最初はツンとしてるかと思ったんだけどさ、ほんとは明るいし、前、日直の仕事サボられて僕1人だった時、怒りながら手伝ってくれたんだよね……そゆとこ、ちょっと皇輝に似てるなって。ほら、中学の時同じことあったなって」
「碧」
「あ、ごめんごめん、そろそろ上がるからさ」
「……お前、佐倉のことすきなの」
「え」
「今までそんなに佐倉の話、したことあったっけ」
「え、いや……」
皇輝が振り返る。近い。
そこでやっと、自分が皇輝にくっついたままだったのを思い出した。
普段なら身長差もあって、ここまで顔が近くなることはない。
……まるでキスをするような、距離。
一瞬、時が止まって、慌てて皇輝から離れた。
駄目だ、心臓が爆発する。
あと少し、あと少しで触れそうだった。
「碧ってさあ」
「えっ」
「俺が相手とはいえちょっと無防備過ぎない?」
「えっ……え?え、だって……だって皇輝だし……」
「背中」
「背中……?」
「俺も脱いでんだけどさ」
「……?」
「乳首当たってんだけど」
「……!」
「いや男だけどさ……でもそういうのやっぱ……他の奴には止めろよ」
一瞬で顔が赤くなったのがわかった。
違う違う違う、そんなつもりで抱きついてたんじゃない。
いや、下心がなかった訳じゃない。
でも僕も男だし、普段プールなんて胸元あいてるのは当たり前であって……
「ほ、他の奴にって、そんな、そんな気にすることとか、そんな」
「高校生男子なんてな、性欲の塊なんだぞ」
「せっ……」
「お前なんてすぐ喰われる」
「くわ……っ」
どん、と端まで追い詰められてしまう。
わかった、わかったから、他の人には水着で抱きついたりしないから。
今はそんなんより、皇輝が近い方がやばい。
「えっ……」
水着の上から、皇輝が触れてくる。
えっ、え、え?なに、何、何で?待って、意味がわかんない。
何で皇輝が僕に触れてるんだ?
「ちょ、え、待っ……な、なんっ……」
「勃った」
「は……!?」
「抜きっこなんてよくあるだろ」
「ないっ、な、え、やったことないっ」
「責任取って」
「やっ、や、だめ、プールだしっ……明日、また皆っ……」
訳がわかんなくて、え、なんで本当にこんなことになってんのかわからなくて、待って、今そんな流れだった?
混乱する僕に、耳元で上がって、と言ってくる。
でも待って、皇輝が触るから。
触ったりなんかするから、耳元で話したりするから。
僕も勃ってしまった。この状態で上がるなんて無理。
でもプールを汚すのも無理。
無理。
無理だって。
王子様と、皇輝と結ばれたいと思ってたけど、こんなことまで考えてなかった。
したくないとか、そんなんじゃなくて、いや、結ばれたらその内って思うけどでも、今じゃなくて。
だって佐倉とって……
いや、抜きっこってなに、そんなの想定外過ぎる。
「……シャワー行くぞ」
「ちょ、待って、いまっ」
「無理」
「無理ってっ……」
無理矢理プールから出されて、そのままシャワー室へ引っ張っていかれる。
皇輝の大きな手が、しっかりと僕の腕を掴んでいて離せない。
ずかずかと進んでいくものだから、転ばないように足を動かすだけで必死だった。
こわい。
いつもなら、もっと僕に合わせて歩いてくれるのに。
「……っ」
シャワー室に着くなり、壁で区切られただけの個室へ押し込まれる。
待って待って待って、本当にするの?
こんなとこで?
「待って……!」
「すぐ終わらすから。このままじゃ帰れないだろ」
「や、やだ、ちょ、あっ」
今度は水着越しではなかった。
直接皇輝の体温が触れる。
「碧だってもう濡れてんじゃん」
「ちが、これ、水っ……」
「水はこんなぬるぬるしてない」
「止めっ……や、やだっ」
皇輝の息が近い。耳がぞわぞわする。
駄目だって、こんなの違うってば、そう思うのに、下半身が溶けてしまいそうで、こんなの、こんなの……自分で処理する時はこんなに熱くなかった。早い。すぐ、だめになっちゃいそう。
「碧」
「ンんっ、や、も、むり……っ」
「駄目、俺まだ」
「やだあっ、知らなっ、知らないっ……や、」
見えなくてもわかった。
手とは違う熱いもの。
……皇輝の。
皇輝のと、一緒に、今、触られてる。
「碧、こっち見て」
「やだ、みれない、やっ、あ、だめ、やだあ、もうむり、むり、だめ、出ちゃうっ」
「碧」
「むり、ごめっ、ごめん、あっ、ごめんなさ……っ、や、あ、……ッ」
「……っ」
あっさりと、出して、しまった。
「1往復の約束だろ」
「……うん」
短いようで意外と長くて、でもやっぱり短かった。
いいなあ、佐倉はこれから皇輝に、ずっと触れてられるんだな、もう……
もう、僕の面倒より、佐倉の方を向いちゃうんだな……
「昨日さ」
「ん?」
「上北ちゃんから連絡きて」
「……ああ」
「佐倉が今日告るから手伝ってって」
「お前な、いつもいつもそういうの請け負うのやめろ」
「でも皇輝は毎回行ってくれるじゃん……それに今回は上手くいったんだし」
自分で言っておきながら、声が少し震えた。
違う、これはちょっと寒いからだ。だから、不自然じゃない。
「佐倉めっちゃかわいーもんな、流石に上手くいくよなあ」
「……別に顔で判断してる訳じゃない」
「わかってるけどさあ……美人だと性格もよかったりするじゃん、佐倉、結構良い奴だよね、最初はツンとしてるかと思ったんだけどさ、ほんとは明るいし、前、日直の仕事サボられて僕1人だった時、怒りながら手伝ってくれたんだよね……そゆとこ、ちょっと皇輝に似てるなって。ほら、中学の時同じことあったなって」
「碧」
「あ、ごめんごめん、そろそろ上がるからさ」
「……お前、佐倉のことすきなの」
「え」
「今までそんなに佐倉の話、したことあったっけ」
「え、いや……」
皇輝が振り返る。近い。
そこでやっと、自分が皇輝にくっついたままだったのを思い出した。
普段なら身長差もあって、ここまで顔が近くなることはない。
……まるでキスをするような、距離。
一瞬、時が止まって、慌てて皇輝から離れた。
駄目だ、心臓が爆発する。
あと少し、あと少しで触れそうだった。
「碧ってさあ」
「えっ」
「俺が相手とはいえちょっと無防備過ぎない?」
「えっ……え?え、だって……だって皇輝だし……」
「背中」
「背中……?」
「俺も脱いでんだけどさ」
「……?」
「乳首当たってんだけど」
「……!」
「いや男だけどさ……でもそういうのやっぱ……他の奴には止めろよ」
一瞬で顔が赤くなったのがわかった。
違う違う違う、そんなつもりで抱きついてたんじゃない。
いや、下心がなかった訳じゃない。
でも僕も男だし、普段プールなんて胸元あいてるのは当たり前であって……
「ほ、他の奴にって、そんな、そんな気にすることとか、そんな」
「高校生男子なんてな、性欲の塊なんだぞ」
「せっ……」
「お前なんてすぐ喰われる」
「くわ……っ」
どん、と端まで追い詰められてしまう。
わかった、わかったから、他の人には水着で抱きついたりしないから。
今はそんなんより、皇輝が近い方がやばい。
「えっ……」
水着の上から、皇輝が触れてくる。
えっ、え、え?なに、何、何で?待って、意味がわかんない。
何で皇輝が僕に触れてるんだ?
「ちょ、え、待っ……な、なんっ……」
「勃った」
「は……!?」
「抜きっこなんてよくあるだろ」
「ないっ、な、え、やったことないっ」
「責任取って」
「やっ、や、だめ、プールだしっ……明日、また皆っ……」
訳がわかんなくて、え、なんで本当にこんなことになってんのかわからなくて、待って、今そんな流れだった?
混乱する僕に、耳元で上がって、と言ってくる。
でも待って、皇輝が触るから。
触ったりなんかするから、耳元で話したりするから。
僕も勃ってしまった。この状態で上がるなんて無理。
でもプールを汚すのも無理。
無理。
無理だって。
王子様と、皇輝と結ばれたいと思ってたけど、こんなことまで考えてなかった。
したくないとか、そんなんじゃなくて、いや、結ばれたらその内って思うけどでも、今じゃなくて。
だって佐倉とって……
いや、抜きっこってなに、そんなの想定外過ぎる。
「……シャワー行くぞ」
「ちょ、待って、いまっ」
「無理」
「無理ってっ……」
無理矢理プールから出されて、そのままシャワー室へ引っ張っていかれる。
皇輝の大きな手が、しっかりと僕の腕を掴んでいて離せない。
ずかずかと進んでいくものだから、転ばないように足を動かすだけで必死だった。
こわい。
いつもなら、もっと僕に合わせて歩いてくれるのに。
「……っ」
シャワー室に着くなり、壁で区切られただけの個室へ押し込まれる。
待って待って待って、本当にするの?
こんなとこで?
「待って……!」
「すぐ終わらすから。このままじゃ帰れないだろ」
「や、やだ、ちょ、あっ」
今度は水着越しではなかった。
直接皇輝の体温が触れる。
「碧だってもう濡れてんじゃん」
「ちが、これ、水っ……」
「水はこんなぬるぬるしてない」
「止めっ……や、やだっ」
皇輝の息が近い。耳がぞわぞわする。
駄目だって、こんなの違うってば、そう思うのに、下半身が溶けてしまいそうで、こんなの、こんなの……自分で処理する時はこんなに熱くなかった。早い。すぐ、だめになっちゃいそう。
「碧」
「ンんっ、や、も、むり……っ」
「駄目、俺まだ」
「やだあっ、知らなっ、知らないっ……や、」
見えなくてもわかった。
手とは違う熱いもの。
……皇輝の。
皇輝のと、一緒に、今、触られてる。
「碧、こっち見て」
「やだ、みれない、やっ、あ、だめ、やだあ、もうむり、むり、だめ、出ちゃうっ」
「碧」
「むり、ごめっ、ごめん、あっ、ごめんなさ……っ、や、あ、……ッ」
「……っ」
あっさりと、出して、しまった。
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