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ひゃくにじゅうなな

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 じい、と見ていると、それが伝わったのかな、瞳を閉じる前に、またシャルルが唇を合わせてきた。
 それに魔力は含まれてなくて、おれの考えてることわかっちゃってんのかな、なんて考えてしまう。
 おれがわかりやすいのかな。シャルルがおれのこと、よく見てくれてるのかな。

「ふあ……は、う、」
「苦しい?」
「くうしく、ない……」

 強がる必要なんてないのにそう返してしまったおれに、シャルルはふ、と笑って髪を撫でた。
 この瞬間がすきだ。
 シャルルの大きな手が、あったかい体温が、柔らかく曲線を描く瞳がすきだ。
 もっともっとって、何回も思っちゃう。
 きっと皆、そう思う。
 だからいやだなって、シャルルがおれの為だって言っても、いやだなあって思っちゃう。

「……皆にも、これする……?」
「皆?」
「魔力、あげるって……」

 いやだな、おれだけだって思ってたのに。
 シャルルがこうやって、ただキスをするのも、魔力を含ませるのも、おれだけ特別だって思ってたのに。
 誰かにあげるのはやだなあ。

「……あいつらに」
「サキュバスに?」
「……だってシャル、おれのこと、」

 すきって言ったじゃん、そう言おうとして、言えなかった。
 自分でも何だこいつ、って思ったからだ。
 シャルルたちは真面目なかおで話し合いをしていた。きっとだいじなことなんだろう。それをおれの我儘で止めさせていい訳はない。
 でもいやだ。そう思うのは止められなかった。おれなんていちばん役に立たないのに、そういう我儘ばっかり。自分のことばっかり。

「ノエ、俺がサキュバスたちにキスとか、そういうので魔力あげると思ってる?」
「……違うの?」
「いや、それが手っ取り早いのは事実だけど。でもそれはちょっと、ねえ。色々まあ……俺だってしたい訳じゃないし」

 もごもごと口篭りながらも、ノエは魔王城にいた頃どうやって魔力を与えていた?とシャルルは訊く。
 どうやって、と訊かれても。
 本当におれ、何も特別なことは、してなかった。
 そこにいるだけ。
 そう答えたおれに、こっちにきておかしくなったのかと思ってたけど、元からだったのかな、とシャルルが呟いた。

「元から?」
「ノエは燃費悪いじゃん?」
「ネンピ……」
「……魔力を貰っても、すぐに魔力なくなっちゃうだろ?それ、ノエは魔力が常に外に出ていってる状態な訳。今は魔力を自分で得ることが難しいけれど、魔王城にいた頃はそうじゃなかったんだろ?」
「うん」
「きっと今の俺みたいに、ノエに優先して魔力が集まってたんだと思う。で、ノエはその魔力を自然と魔族にあげてたんじゃないかな」
「おれ間にいる意味ある?」
「うーん、それは俺にもわかんないけど。何かしら理由があるのかもしれないし……単純に、魔王城外の魔力もノエは吸えてたのかもしれないし、一旦ノエのものになることで質が良くなるのかもしれない……いやなんだよ質の良くなる魔力て、ないわこれは」

 でも魔王城にノエが必要だった理由があるんじゃないかな、と言うシャルルに、頑なに外に出して貰えなかったのはそれもあるのかな、と思った。そうであってほしいとも。
 おれがおとなと認められないだけじゃなくて。
 だからといって、別になんてことはないんだけれど。

「結界でも張って、そこにサキュバスたち入れて、そこで俺がノエに魔力をあげたら、ノエを通じてサキュバスたちに魔力漏れていかないかな」

 良いアイディアだ、とぱっとかおを上げたシャルルは、暫くして、いやこれもどうかな、とまたかおを伏せた。
 なんで?おれ、すごいなって思ったんだけど。
 シャルルの肩を揺すって、なんでなんでと訊くおれに、珍しく恥ずかしそうに、羞恥プレイじゃん、とシャルルが答えた。

「しゅーちぷれー」
「……あのね、サキュバスの前で俺がノエに魔力あげていいの」
「……?うん、」
「ただの軽い、挨拶みたいなキスじゃないよ、たくさんの魔力をあげる為の、何回も……ノエがとろっとろになっちゃうようなやつ」
「え」
「それで足りるかな、人数分あげなきゃいけないし、サキュバスたちは大仕事だから多めに魔力あげなきゃ。キスで間に合わなければ」

 ここにサキュバスたちの前で入られてもいいの、そう言いながら下腹部を撫でるシャルルに、ぼっとかおがあつくなった。
 ななな、なんてことを!あんなことを、彼女たちの前で?
 その行為を教えてくれたのは彼女たちだけど、だけど。

「いいの?」
「よっ、よくな、よくなんかっ」
「俺はやだなあ、やだよ」
「おれだって!」
「あの蕩けたようなかわいいノエを知るのは俺だけがいい」
「へあ……」
「駄目だよ、サキュバスにだってあんなん見せたら」

 耳元に触れて、頬に触れて、首元に触れて。
 あ、と声を漏らし、肩を揺らしたおれを見て満足そうに笑ったシャルルは、ノエを隠してするならありかな、声だけ漏れるのは仕方ない、とか言う。
 ありじゃない、馬鹿、ない、おれだってシャルルとしかいやだ!そう言うと、今度は抱き締めて、小さな声でありがとう、と呟いた。
 何がありがとうかはわからないけれど、その声が嬉しそうだったから、おれもシャルルの背中に腕を回して、うん、と頷いて、それからふたりしてなんだか笑ってしまった。
 こんな時でも、嬉しいものは嬉しいのだ。
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