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伊吹は
17*
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無理矢理躰を捻って有都さんを見つめる。
意図を汲み取った有都さんは、口元を緩ませて、すぐに唇を重ねてくれた。
息が苦しくなるとわかっていても、でもやっぱりこの甘ったるさを感じるくらいのキスが嬉しい。
とはいえ優しい優しい有都さんはそんなおれの我儘も理解していて、唇と、たまに舌先が触れるくらいのキスを何度も、唇が離れてはまたくっつけて、視線が絡むとまた触れて、と繰り返してくれる。
口の中がいっぱいになるキスも嬉しいけど、この柔らかな繰り返すキスもすき。
たくさんしてもらえるの、嬉しい。いっぱいすきだと伝えられているみたいで。
「ん、ン……ぅ、は……」
「大丈夫?苦しくない?痛くない?この体勢、辛くない?」
「……だいじょ、ぶ」
息を荒くしながらも心配してくれる有都さんに、本当は息苦しいとか、この体勢は確かに辛いだとか言えない。
だってキスを強請ったのも自分だし、玲於さんからも有都さんからもいちばん近いところにいたいだなんて欲張りなことを考えてるのも自分。
少しくらいは我慢も必要、っていうか、そうしなきゃ無理だとわかってる。
「ふ……ぁ、ゆ、とさんは?だいじょぶ?きもちい?……おれ、ちゃんと出来てる……?」
本人が言う通り、そんなに動いてない。おれの躰を心配して、おれのことを考えて、おれのことを気持ちよくさせようとしてくれてるだけ。
おれの躰はそんな有都さんを締め付けてるだけ。
「……うん、ちゃんと気持ちいいよ、伊吹はわかんないかな、ナカ、きゅうきゅうしてるの」
「へ」
「少しね、ほら、腰を引くと」
「ン……っ」
「離れないで、っていうみたいに、ぎゅってするし」
「っア、ゔ!」
「ここはもう気持ちがいい場所なのわかってるから押すと全身で締め付けてくるし」
「あっ、あ、ん、う……ぅ、ん……」
「奥の方は吸い付いてくるみたい」
そうでしょ、と実演のように進んでいく有都さんに、しがみつくのに必死だった。
急にそんな、気持ちいいことたくさんされたら。さっきからずっと、イくの我慢してるのに。
「ね、気持ちいいよ、僕はちゃんと。伊吹は?」
「んえ……」
「気持ちいい?」
「え」
「伊吹は、気持ちいい?」
「……き、きもちい、」
「そうだよね、わかりやすいもん、伊吹」
だから一緒にイこうね、なんて笑う有都さんに胸がぎゅっとなってしまった。
ここで王子さまのようなきらきらした笑顔は狡い。優しい動きと相性が良い。
有都さんはこの安心させるような笑顔がいちばんすき。
「かわいい伊吹だけでも十分なんだけど」
「……?」
「この体勢、本当はきついでしょ、前向いてていいよ」
「でも、み、見えない」
有都さんの気持ちのいいかおが見たかった。それは確かに達成されたけど。
でも本当にもう限界なんだ、さっきは笑われてしまったけど、爆発しそう。
自身を握り締める手が震えて、もう締め付けてるのか自慰になってるのかわかんないくらい。気持ちいい。
一緒にイくなら、有都さんのこと、ちゃんと見てたいのに。
「今なら視覚だけでイけそう……」
「ん、む、……んァ」
「伊吹、その手離していいぞ」
「や、ぁ、はなし、たら……イっちゃ、」
「有都ももう限界だって」
ぎゅう、と玲於さんの硬い胸元に圧迫された。
大きな手がおれの手を取る。その手を見て、ふ、と笑った。
「随分我慢出来たな、べとべとだ」
「……みないで」
「本当だ、いっぱい我慢してくれたんだね、お願いが聞ける伊吹はすごいねえ」
「ン……!」
有都さんが息を呑む。多分それはおれがまた締め付けてしまったから。
褒められたり、好意を口にされると嬉しくなる。だってそんなの、そんなにないことだったから。
ふたりに甘やかされると悦んでしまう。もうそれは仕方のないことで、そんな癖、わかってくれてるのに、それでも何度も褒めるんだから。
「ほら、伊吹、腕はこっち」
「あ、う、動けないぃ……」
「有都を気持ちよくさせる為にもう少し頑張ろうな」
「ん、ん……どおやっ、て……ッあ!」
ぐ、と腕を持ち上げられて、その両腕を玲於さんの肩に乗せられた。
膝立ちにされた衝撃で鼻にかかった声が漏れる。ナカに挿入った有都さんが擦れる。
限界なのはおれだってさっきからずっとそう。
「鼻で息をするんだぞ」
「え……ンっ」
すぐ瞳の前に玲於さんの整ったかおがあった。
ふたりのいちばん近くにいたいと思ったけど、これは近過ぎる。
限界のおれはもう表情を取り繕ったりなんか出来なくて、みっともないかおをしてる自覚がある。多分、汗も涙も鼻水だって。
待って、こんなに近いならかお、一回拭いてほしい。有都さんなら拭ってくれるのに。
そう考えて少し逸らした頬を寄せられて、強引に唇が重なった。
どん、と軽く叩いても離れない。
おれ、もうだめなんだってば。限界なの。気持ちいいの。もうイきそうなの。
ただでさえ苦しいのに。
鼻で息をしろっていうのはそういうことだとわかってるけど、下手くそなの、知ってるじゃんか。
キスが下手くそなのもかわいいって言ってたじゃん。苦しいの、息出来ないのって。
意図を汲み取った有都さんは、口元を緩ませて、すぐに唇を重ねてくれた。
息が苦しくなるとわかっていても、でもやっぱりこの甘ったるさを感じるくらいのキスが嬉しい。
とはいえ優しい優しい有都さんはそんなおれの我儘も理解していて、唇と、たまに舌先が触れるくらいのキスを何度も、唇が離れてはまたくっつけて、視線が絡むとまた触れて、と繰り返してくれる。
口の中がいっぱいになるキスも嬉しいけど、この柔らかな繰り返すキスもすき。
たくさんしてもらえるの、嬉しい。いっぱいすきだと伝えられているみたいで。
「ん、ン……ぅ、は……」
「大丈夫?苦しくない?痛くない?この体勢、辛くない?」
「……だいじょ、ぶ」
息を荒くしながらも心配してくれる有都さんに、本当は息苦しいとか、この体勢は確かに辛いだとか言えない。
だってキスを強請ったのも自分だし、玲於さんからも有都さんからもいちばん近いところにいたいだなんて欲張りなことを考えてるのも自分。
少しくらいは我慢も必要、っていうか、そうしなきゃ無理だとわかってる。
「ふ……ぁ、ゆ、とさんは?だいじょぶ?きもちい?……おれ、ちゃんと出来てる……?」
本人が言う通り、そんなに動いてない。おれの躰を心配して、おれのことを考えて、おれのことを気持ちよくさせようとしてくれてるだけ。
おれの躰はそんな有都さんを締め付けてるだけ。
「……うん、ちゃんと気持ちいいよ、伊吹はわかんないかな、ナカ、きゅうきゅうしてるの」
「へ」
「少しね、ほら、腰を引くと」
「ン……っ」
「離れないで、っていうみたいに、ぎゅってするし」
「っア、ゔ!」
「ここはもう気持ちがいい場所なのわかってるから押すと全身で締め付けてくるし」
「あっ、あ、ん、う……ぅ、ん……」
「奥の方は吸い付いてくるみたい」
そうでしょ、と実演のように進んでいく有都さんに、しがみつくのに必死だった。
急にそんな、気持ちいいことたくさんされたら。さっきからずっと、イくの我慢してるのに。
「ね、気持ちいいよ、僕はちゃんと。伊吹は?」
「んえ……」
「気持ちいい?」
「え」
「伊吹は、気持ちいい?」
「……き、きもちい、」
「そうだよね、わかりやすいもん、伊吹」
だから一緒にイこうね、なんて笑う有都さんに胸がぎゅっとなってしまった。
ここで王子さまのようなきらきらした笑顔は狡い。優しい動きと相性が良い。
有都さんはこの安心させるような笑顔がいちばんすき。
「かわいい伊吹だけでも十分なんだけど」
「……?」
「この体勢、本当はきついでしょ、前向いてていいよ」
「でも、み、見えない」
有都さんの気持ちのいいかおが見たかった。それは確かに達成されたけど。
でも本当にもう限界なんだ、さっきは笑われてしまったけど、爆発しそう。
自身を握り締める手が震えて、もう締め付けてるのか自慰になってるのかわかんないくらい。気持ちいい。
一緒にイくなら、有都さんのこと、ちゃんと見てたいのに。
「今なら視覚だけでイけそう……」
「ん、む、……んァ」
「伊吹、その手離していいぞ」
「や、ぁ、はなし、たら……イっちゃ、」
「有都ももう限界だって」
ぎゅう、と玲於さんの硬い胸元に圧迫された。
大きな手がおれの手を取る。その手を見て、ふ、と笑った。
「随分我慢出来たな、べとべとだ」
「……みないで」
「本当だ、いっぱい我慢してくれたんだね、お願いが聞ける伊吹はすごいねえ」
「ン……!」
有都さんが息を呑む。多分それはおれがまた締め付けてしまったから。
褒められたり、好意を口にされると嬉しくなる。だってそんなの、そんなにないことだったから。
ふたりに甘やかされると悦んでしまう。もうそれは仕方のないことで、そんな癖、わかってくれてるのに、それでも何度も褒めるんだから。
「ほら、伊吹、腕はこっち」
「あ、う、動けないぃ……」
「有都を気持ちよくさせる為にもう少し頑張ろうな」
「ん、ん……どおやっ、て……ッあ!」
ぐ、と腕を持ち上げられて、その両腕を玲於さんの肩に乗せられた。
膝立ちにされた衝撃で鼻にかかった声が漏れる。ナカに挿入った有都さんが擦れる。
限界なのはおれだってさっきからずっとそう。
「鼻で息をするんだぞ」
「え……ンっ」
すぐ瞳の前に玲於さんの整ったかおがあった。
ふたりのいちばん近くにいたいと思ったけど、これは近過ぎる。
限界のおれはもう表情を取り繕ったりなんか出来なくて、みっともないかおをしてる自覚がある。多分、汗も涙も鼻水だって。
待って、こんなに近いならかお、一回拭いてほしい。有都さんなら拭ってくれるのに。
そう考えて少し逸らした頬を寄せられて、強引に唇が重なった。
どん、と軽く叩いても離れない。
おれ、もうだめなんだってば。限界なの。気持ちいいの。もうイきそうなの。
ただでさえ苦しいのに。
鼻で息をしろっていうのはそういうことだとわかってるけど、下手くそなの、知ってるじゃんか。
キスが下手くそなのもかわいいって言ってたじゃん。苦しいの、息出来ないのって。
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