186 / 192
伊吹は
17*
しおりを挟む
無理矢理躰を捻って有都さんを見つめる。
意図を汲み取った有都さんは、口元を緩ませて、すぐに唇を重ねてくれた。
息が苦しくなるとわかっていても、でもやっぱりこの甘ったるさを感じるくらいのキスが嬉しい。
とはいえ優しい優しい有都さんはそんなおれの我儘も理解していて、唇と、たまに舌先が触れるくらいのキスを何度も、唇が離れてはまたくっつけて、視線が絡むとまた触れて、と繰り返してくれる。
口の中がいっぱいになるキスも嬉しいけど、この柔らかな繰り返すキスもすき。
たくさんしてもらえるの、嬉しい。いっぱいすきだと伝えられているみたいで。
「ん、ン……ぅ、は……」
「大丈夫?苦しくない?痛くない?この体勢、辛くない?」
「……だいじょ、ぶ」
息を荒くしながらも心配してくれる有都さんに、本当は息苦しいとか、この体勢は確かに辛いだとか言えない。
だってキスを強請ったのも自分だし、玲於さんからも有都さんからもいちばん近いところにいたいだなんて欲張りなことを考えてるのも自分。
少しくらいは我慢も必要、っていうか、そうしなきゃ無理だとわかってる。
「ふ……ぁ、ゆ、とさんは?だいじょぶ?きもちい?……おれ、ちゃんと出来てる……?」
本人が言う通り、そんなに動いてない。おれの躰を心配して、おれのことを考えて、おれのことを気持ちよくさせようとしてくれてるだけ。
おれの躰はそんな有都さんを締め付けてるだけ。
「……うん、ちゃんと気持ちいいよ、伊吹はわかんないかな、ナカ、きゅうきゅうしてるの」
「へ」
「少しね、ほら、腰を引くと」
「ン……っ」
「離れないで、っていうみたいに、ぎゅってするし」
「っア、ゔ!」
「ここはもう気持ちがいい場所なのわかってるから押すと全身で締め付けてくるし」
「あっ、あ、ん、う……ぅ、ん……」
「奥の方は吸い付いてくるみたい」
そうでしょ、と実演のように進んでいく有都さんに、しがみつくのに必死だった。
急にそんな、気持ちいいことたくさんされたら。さっきからずっと、イくの我慢してるのに。
「ね、気持ちいいよ、僕はちゃんと。伊吹は?」
「んえ……」
「気持ちいい?」
「え」
「伊吹は、気持ちいい?」
「……き、きもちい、」
「そうだよね、わかりやすいもん、伊吹」
だから一緒にイこうね、なんて笑う有都さんに胸がぎゅっとなってしまった。
ここで王子さまのようなきらきらした笑顔は狡い。優しい動きと相性が良い。
有都さんはこの安心させるような笑顔がいちばんすき。
「かわいい伊吹だけでも十分なんだけど」
「……?」
「この体勢、本当はきついでしょ、前向いてていいよ」
「でも、み、見えない」
有都さんの気持ちのいいかおが見たかった。それは確かに達成されたけど。
でも本当にもう限界なんだ、さっきは笑われてしまったけど、爆発しそう。
自身を握り締める手が震えて、もう締め付けてるのか自慰になってるのかわかんないくらい。気持ちいい。
一緒にイくなら、有都さんのこと、ちゃんと見てたいのに。
「今なら視覚だけでイけそう……」
「ん、む、……んァ」
「伊吹、その手離していいぞ」
「や、ぁ、はなし、たら……イっちゃ、」
「有都ももう限界だって」
ぎゅう、と玲於さんの硬い胸元に圧迫された。
大きな手がおれの手を取る。その手を見て、ふ、と笑った。
「随分我慢出来たな、べとべとだ」
「……みないで」
「本当だ、いっぱい我慢してくれたんだね、お願いが聞ける伊吹はすごいねえ」
「ン……!」
有都さんが息を呑む。多分それはおれがまた締め付けてしまったから。
褒められたり、好意を口にされると嬉しくなる。だってそんなの、そんなにないことだったから。
ふたりに甘やかされると悦んでしまう。もうそれは仕方のないことで、そんな癖、わかってくれてるのに、それでも何度も褒めるんだから。
「ほら、伊吹、腕はこっち」
「あ、う、動けないぃ……」
「有都を気持ちよくさせる為にもう少し頑張ろうな」
「ん、ん……どおやっ、て……ッあ!」
ぐ、と腕を持ち上げられて、その両腕を玲於さんの肩に乗せられた。
膝立ちにされた衝撃で鼻にかかった声が漏れる。ナカに挿入った有都さんが擦れる。
限界なのはおれだってさっきからずっとそう。
「鼻で息をするんだぞ」
「え……ンっ」
すぐ瞳の前に玲於さんの整ったかおがあった。
ふたりのいちばん近くにいたいと思ったけど、これは近過ぎる。
限界のおれはもう表情を取り繕ったりなんか出来なくて、みっともないかおをしてる自覚がある。多分、汗も涙も鼻水だって。
待って、こんなに近いならかお、一回拭いてほしい。有都さんなら拭ってくれるのに。
そう考えて少し逸らした頬を寄せられて、強引に唇が重なった。
どん、と軽く叩いても離れない。
おれ、もうだめなんだってば。限界なの。気持ちいいの。もうイきそうなの。
ただでさえ苦しいのに。
鼻で息をしろっていうのはそういうことだとわかってるけど、下手くそなの、知ってるじゃんか。
キスが下手くそなのもかわいいって言ってたじゃん。苦しいの、息出来ないのって。
意図を汲み取った有都さんは、口元を緩ませて、すぐに唇を重ねてくれた。
息が苦しくなるとわかっていても、でもやっぱりこの甘ったるさを感じるくらいのキスが嬉しい。
とはいえ優しい優しい有都さんはそんなおれの我儘も理解していて、唇と、たまに舌先が触れるくらいのキスを何度も、唇が離れてはまたくっつけて、視線が絡むとまた触れて、と繰り返してくれる。
口の中がいっぱいになるキスも嬉しいけど、この柔らかな繰り返すキスもすき。
たくさんしてもらえるの、嬉しい。いっぱいすきだと伝えられているみたいで。
「ん、ン……ぅ、は……」
「大丈夫?苦しくない?痛くない?この体勢、辛くない?」
「……だいじょ、ぶ」
息を荒くしながらも心配してくれる有都さんに、本当は息苦しいとか、この体勢は確かに辛いだとか言えない。
だってキスを強請ったのも自分だし、玲於さんからも有都さんからもいちばん近いところにいたいだなんて欲張りなことを考えてるのも自分。
少しくらいは我慢も必要、っていうか、そうしなきゃ無理だとわかってる。
「ふ……ぁ、ゆ、とさんは?だいじょぶ?きもちい?……おれ、ちゃんと出来てる……?」
本人が言う通り、そんなに動いてない。おれの躰を心配して、おれのことを考えて、おれのことを気持ちよくさせようとしてくれてるだけ。
おれの躰はそんな有都さんを締め付けてるだけ。
「……うん、ちゃんと気持ちいいよ、伊吹はわかんないかな、ナカ、きゅうきゅうしてるの」
「へ」
「少しね、ほら、腰を引くと」
「ン……っ」
「離れないで、っていうみたいに、ぎゅってするし」
「っア、ゔ!」
「ここはもう気持ちがいい場所なのわかってるから押すと全身で締め付けてくるし」
「あっ、あ、ん、う……ぅ、ん……」
「奥の方は吸い付いてくるみたい」
そうでしょ、と実演のように進んでいく有都さんに、しがみつくのに必死だった。
急にそんな、気持ちいいことたくさんされたら。さっきからずっと、イくの我慢してるのに。
「ね、気持ちいいよ、僕はちゃんと。伊吹は?」
「んえ……」
「気持ちいい?」
「え」
「伊吹は、気持ちいい?」
「……き、きもちい、」
「そうだよね、わかりやすいもん、伊吹」
だから一緒にイこうね、なんて笑う有都さんに胸がぎゅっとなってしまった。
ここで王子さまのようなきらきらした笑顔は狡い。優しい動きと相性が良い。
有都さんはこの安心させるような笑顔がいちばんすき。
「かわいい伊吹だけでも十分なんだけど」
「……?」
「この体勢、本当はきついでしょ、前向いてていいよ」
「でも、み、見えない」
有都さんの気持ちのいいかおが見たかった。それは確かに達成されたけど。
でも本当にもう限界なんだ、さっきは笑われてしまったけど、爆発しそう。
自身を握り締める手が震えて、もう締め付けてるのか自慰になってるのかわかんないくらい。気持ちいい。
一緒にイくなら、有都さんのこと、ちゃんと見てたいのに。
「今なら視覚だけでイけそう……」
「ん、む、……んァ」
「伊吹、その手離していいぞ」
「や、ぁ、はなし、たら……イっちゃ、」
「有都ももう限界だって」
ぎゅう、と玲於さんの硬い胸元に圧迫された。
大きな手がおれの手を取る。その手を見て、ふ、と笑った。
「随分我慢出来たな、べとべとだ」
「……みないで」
「本当だ、いっぱい我慢してくれたんだね、お願いが聞ける伊吹はすごいねえ」
「ン……!」
有都さんが息を呑む。多分それはおれがまた締め付けてしまったから。
褒められたり、好意を口にされると嬉しくなる。だってそんなの、そんなにないことだったから。
ふたりに甘やかされると悦んでしまう。もうそれは仕方のないことで、そんな癖、わかってくれてるのに、それでも何度も褒めるんだから。
「ほら、伊吹、腕はこっち」
「あ、う、動けないぃ……」
「有都を気持ちよくさせる為にもう少し頑張ろうな」
「ん、ん……どおやっ、て……ッあ!」
ぐ、と腕を持ち上げられて、その両腕を玲於さんの肩に乗せられた。
膝立ちにされた衝撃で鼻にかかった声が漏れる。ナカに挿入った有都さんが擦れる。
限界なのはおれだってさっきからずっとそう。
「鼻で息をするんだぞ」
「え……ンっ」
すぐ瞳の前に玲於さんの整ったかおがあった。
ふたりのいちばん近くにいたいと思ったけど、これは近過ぎる。
限界のおれはもう表情を取り繕ったりなんか出来なくて、みっともないかおをしてる自覚がある。多分、汗も涙も鼻水だって。
待って、こんなに近いならかお、一回拭いてほしい。有都さんなら拭ってくれるのに。
そう考えて少し逸らした頬を寄せられて、強引に唇が重なった。
どん、と軽く叩いても離れない。
おれ、もうだめなんだってば。限界なの。気持ちいいの。もうイきそうなの。
ただでさえ苦しいのに。
鼻で息をしろっていうのはそういうことだとわかってるけど、下手くそなの、知ってるじゃんか。
キスが下手くそなのもかわいいって言ってたじゃん。苦しいの、息出来ないのって。
476
お気に入りに追加
3,775
あなたにおすすめの小説
婚約破棄?しませんよ、そんなもの
おしゃべりマドレーヌ
BL
王太子の卒業パーティーで、王太子・フェリクスと婚約をしていた、侯爵家のアンリは突然「婚約を破棄する」と言い渡される。どうやら真実の愛を見つけたらしいが、それにアンリは「しませんよ、そんなもの」と返す。
アンリと婚約破棄をしないほうが良い理由は山ほどある。
けれどアンリは段々と、そんなメリット・デメリットを考えるよりも、フェリクスが幸せになるほうが良いと考えるようになり……
「………………それなら、こうしましょう。私が、第一王妃になって仕事をこなします。彼女には、第二王妃になって頂いて、貴方は彼女と暮らすのです」
それでフェリクスが幸せになるなら、それが良い。
<嚙み痕で愛を語るシリーズというシリーズで書いていきます/これはスピンオフのような話です>
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【完結】悪妻オメガの俺、離縁されたいんだけど旦那様が溺愛してくる
古井重箱
BL
【あらすじ】劣等感が強いオメガ、レムートは父から南域に嫁ぐよう命じられる。結婚相手はヴァイゼンなる偉丈夫。見知らぬ土地で、見知らぬ男と結婚するなんて嫌だ。悪妻になろう。そして離縁されて、修道士として生きていこう。そう決意したレムートは、悪妻になるべくワガママを口にするのだが、ヴァイゼンにかえって可愛らがれる事態に。「どうすれば悪妻になれるんだ!?」レムートの試練が始まる。【注記】海のように心が広い攻(25)×気難しい美人受(18)。ラブシーンありの回には*をつけます。オメガバースの一般的な解釈から外れたところがあったらごめんなさい。更新は気まぐれです。アルファポリスとムーンライトノベルズ、pixivに投稿。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした
和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。
そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。
* 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵
* 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください
[離婚宣告]平凡オメガは結婚式当日にアルファから離婚されたのに反撃できません
月歌(ツキウタ)
BL
結婚式の当日に平凡オメガはアルファから離婚を切り出された。お色直しの衣装係がアルファの運命の番だったから、離婚してくれって酷くない?
☆表紙絵
AIピカソとAIイラストメーカーで作成しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【完結】婚約破棄された僕はギルドのドSリーダー様に溺愛されています
八神紫音
BL
魔道士はひ弱そうだからいらない。
そういう理由で国の姫から婚約破棄されて追放された僕は、隣国のギルドの町へとたどり着く。
そこでドSなギルドリーダー様に拾われて、
ギルドのみんなに可愛いとちやほやされることに……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる