182 / 192
伊吹は
13*
しおりを挟む
じと、と睨みつけると、口元を少し緩めたかに見えた玲於さんはじゃあ伊吹のすきにするといい、となんでもないかのように言う。
どういうこと、と訊く前に、こっちもすきにするから、と更に足を開かれてしまった。
「あっ……」
「まだ濡れてる」
そんな、まるで女性に言うかのような。
その言葉はただその通りで、先程まで有都さんがローションで慣らしていたからで。それなのに自分の身体がそうなったかのような言い方しなくたって……
そう考えるとじわ、と頬があつくなった。
恥ずかしい。いじわるだ。女じゃない。そんなの、もうお互い十分わかってることなのに。
有都さんが少し拡げたそこは、唾液の力なんて関係なく玲於さんの指を呑み込んだ。
ぬちぬちと粘度のある音が耳を覆いたくなる。
「足ります?足しましょうか」
「そうだな、多い方がいい」
「ひあ……!」
ふたりの相談は聞こえていても聞こえてなかった。それどころじゃなかったから。
でも、玲於さんの指を伝うように、ナカで少し開かれた指の間から直接流れ込むような感覚に背中がぞわっとした。
「なっ、や、やあ……!」
「冷たかったかな、大丈夫?」
「ん、ぅ、うう」
「まあ大丈夫だろ」
「あっ、ん……」
ぎゅう、とローションに塗れた玲於さんの指を締め付けたのが嫌でもわかった。
玲於さんの漏れた笑い声も、それで察した有都さんの細めた目元も。そんな一瞬で、空気が熱を持った気がした。
ふたりに見られていることが恥ずかしい。それなのに、その視線に安堵する自分も確かにいた。
「ッん、ん、ぁ」
「ふふ、びくびくしてるの、かわいいね、気持ちいい?玲於さんの指」
「あっ、あ、や、そこっ……」
「もうちょっと頑張ろうね」
「んうう……!」
慣らすように、拡げるように、でもおれのイイトコも狙って玲於さんの指が動く。お陰でびくびく肩を跳ねさせるおれに、有都さんは嬉しそうに柔らかい声を落とした。
同時にするりと緩い胸元から手を入れて、まだ少しぬるついた指先で尖端に触れてくるものだから堪らない。
「気持ちよさそうでよかった」
「は、アぅ、っん、う、よ、よくなっ……」
「痛いの嫌でしょ?」
「今は怪我させても治してやれないからなあ」
「じっくり慣らしてもらおうね」
「ん、ンっ……あ、え、しつこっ、い、あ、あ、イっ……」
ねちっこいのはそんな理由だった。
おれが痛がらないように、怪我をしないように。それはおれが痛いのがいやだとごねたことを知っているから。
痛くしないなんて当たり前のことかもしれないけれど、ちゃんと覚えていてくれたのは嬉しい。
イヴがどうだったかは知らないけど、「伊吹」はいやだとそう覚えてくれている。
いや、それにしても本当にしつこいんだけど。
ぐにぐにナカを弄られる感覚も、びりびりするような感覚も、胸元を触られているのに下半身に響くような感覚も、ずっとずっと、もっと、まだ続くと思うと頭がおかしくなりそう。
有都さんの柔らかい唇が頬や目元に何度も落とされて、たまに玲於さんの硬い歯が肩や首筋を甘噛みしていく。
自分の躰から入浴剤の甘い香りがするのも相俟って、お菓子にでもなったかのような。
ふたりに食べられそうな、そんなくらくらするような時間だった。
「ン……ふ、ぅあ、あ、なんでえ……」
「あんまりイくときついのは伊吹だよ」
「や……」
達しそうな瞬間、きゅうと根元を掴まれてイきそびれた。
そんな、止められるだなんてこと、考えてもみなかったからつい不満が口から漏れてしまう。
いやだ、と言いかけた口元を噤む。逆効果になりそうだと思ったから。
「伊吹には負担をかけちゃうなって思ってるんだよ」
「へ」
「僕も玲於さんも相手しないといけないでしょう」
「……」
「でもだからといってひとりずつじゃあ、ねえ?」
なんだか狡いじゃない、と微笑んだ有都さんに、頭の中で意味がわかんない、と返す。
その表情で理解したのだろう、有都さんはおれの頬を撫でて、かわいい伊吹を見逃すなんて耐えられない、と呟いた。
「へあ……」
「なんなら全て動画にでも残しておきたいくらい」
「それはちょっと……」
「だから我慢してるんだよ、これでも……っう」
そう言いきらない内に有都さんの頭を寄せて、玲於さんが唇を重ねた。
いつもいつもおれとの距離が近いところでするせいで、漏れる吐息も水音も、離れた時に現れる銀の糸さえも見えてしまう、感じてしまう。見せつけているのだから当然か。
毎回唐突なんだから、と自分の口元を拭いながら有都さんが悪態を吐くと、玲於さんはにい、と悪戯っぽい笑みをおれに向ける。
……言いたいことはわかった。
「伊吹はこれも見たいもんな」
「……そりゃあ……まあ、その……」
「俺も有都を見るのは楽しいよ、ふたりが仲良くしてるのを見るのも」
「ほんと悪趣味」
「お前もそうだもんな、俺が伊吹を触ってることに興奮してるだろう」
「……悔しいけど、そうですよ、伊吹が他のひとに触られてたらと思うと腸が煮えくり返りそうなのに。貴方だから許せるんですからね」
悔しい、と話すその頬は紅潮していて、玲於さんの言う通り、悔しさよりも興奮の方が勝ってるのだろう。
不思議だよな、と思う。
他の誰かに触れられたら確かにいやで仕方がないのに、ふたりなら構わないんじゃなくて、寧ろふたりなら、ふたりがおれを見ることが、ふたりがお互いを愛しそうな瞳を向けるのがすごく嬉しくて、そう、興奮する。
ひとりずつだとふたりが一緒にいるのが見れない。ふたりがおれを見て、触れることがいちばんどきどきする。
どういうこと、と訊く前に、こっちもすきにするから、と更に足を開かれてしまった。
「あっ……」
「まだ濡れてる」
そんな、まるで女性に言うかのような。
その言葉はただその通りで、先程まで有都さんがローションで慣らしていたからで。それなのに自分の身体がそうなったかのような言い方しなくたって……
そう考えるとじわ、と頬があつくなった。
恥ずかしい。いじわるだ。女じゃない。そんなの、もうお互い十分わかってることなのに。
有都さんが少し拡げたそこは、唾液の力なんて関係なく玲於さんの指を呑み込んだ。
ぬちぬちと粘度のある音が耳を覆いたくなる。
「足ります?足しましょうか」
「そうだな、多い方がいい」
「ひあ……!」
ふたりの相談は聞こえていても聞こえてなかった。それどころじゃなかったから。
でも、玲於さんの指を伝うように、ナカで少し開かれた指の間から直接流れ込むような感覚に背中がぞわっとした。
「なっ、や、やあ……!」
「冷たかったかな、大丈夫?」
「ん、ぅ、うう」
「まあ大丈夫だろ」
「あっ、ん……」
ぎゅう、とローションに塗れた玲於さんの指を締め付けたのが嫌でもわかった。
玲於さんの漏れた笑い声も、それで察した有都さんの細めた目元も。そんな一瞬で、空気が熱を持った気がした。
ふたりに見られていることが恥ずかしい。それなのに、その視線に安堵する自分も確かにいた。
「ッん、ん、ぁ」
「ふふ、びくびくしてるの、かわいいね、気持ちいい?玲於さんの指」
「あっ、あ、や、そこっ……」
「もうちょっと頑張ろうね」
「んうう……!」
慣らすように、拡げるように、でもおれのイイトコも狙って玲於さんの指が動く。お陰でびくびく肩を跳ねさせるおれに、有都さんは嬉しそうに柔らかい声を落とした。
同時にするりと緩い胸元から手を入れて、まだ少しぬるついた指先で尖端に触れてくるものだから堪らない。
「気持ちよさそうでよかった」
「は、アぅ、っん、う、よ、よくなっ……」
「痛いの嫌でしょ?」
「今は怪我させても治してやれないからなあ」
「じっくり慣らしてもらおうね」
「ん、ンっ……あ、え、しつこっ、い、あ、あ、イっ……」
ねちっこいのはそんな理由だった。
おれが痛がらないように、怪我をしないように。それはおれが痛いのがいやだとごねたことを知っているから。
痛くしないなんて当たり前のことかもしれないけれど、ちゃんと覚えていてくれたのは嬉しい。
イヴがどうだったかは知らないけど、「伊吹」はいやだとそう覚えてくれている。
いや、それにしても本当にしつこいんだけど。
ぐにぐにナカを弄られる感覚も、びりびりするような感覚も、胸元を触られているのに下半身に響くような感覚も、ずっとずっと、もっと、まだ続くと思うと頭がおかしくなりそう。
有都さんの柔らかい唇が頬や目元に何度も落とされて、たまに玲於さんの硬い歯が肩や首筋を甘噛みしていく。
自分の躰から入浴剤の甘い香りがするのも相俟って、お菓子にでもなったかのような。
ふたりに食べられそうな、そんなくらくらするような時間だった。
「ン……ふ、ぅあ、あ、なんでえ……」
「あんまりイくときついのは伊吹だよ」
「や……」
達しそうな瞬間、きゅうと根元を掴まれてイきそびれた。
そんな、止められるだなんてこと、考えてもみなかったからつい不満が口から漏れてしまう。
いやだ、と言いかけた口元を噤む。逆効果になりそうだと思ったから。
「伊吹には負担をかけちゃうなって思ってるんだよ」
「へ」
「僕も玲於さんも相手しないといけないでしょう」
「……」
「でもだからといってひとりずつじゃあ、ねえ?」
なんだか狡いじゃない、と微笑んだ有都さんに、頭の中で意味がわかんない、と返す。
その表情で理解したのだろう、有都さんはおれの頬を撫でて、かわいい伊吹を見逃すなんて耐えられない、と呟いた。
「へあ……」
「なんなら全て動画にでも残しておきたいくらい」
「それはちょっと……」
「だから我慢してるんだよ、これでも……っう」
そう言いきらない内に有都さんの頭を寄せて、玲於さんが唇を重ねた。
いつもいつもおれとの距離が近いところでするせいで、漏れる吐息も水音も、離れた時に現れる銀の糸さえも見えてしまう、感じてしまう。見せつけているのだから当然か。
毎回唐突なんだから、と自分の口元を拭いながら有都さんが悪態を吐くと、玲於さんはにい、と悪戯っぽい笑みをおれに向ける。
……言いたいことはわかった。
「伊吹はこれも見たいもんな」
「……そりゃあ……まあ、その……」
「俺も有都を見るのは楽しいよ、ふたりが仲良くしてるのを見るのも」
「ほんと悪趣味」
「お前もそうだもんな、俺が伊吹を触ってることに興奮してるだろう」
「……悔しいけど、そうですよ、伊吹が他のひとに触られてたらと思うと腸が煮えくり返りそうなのに。貴方だから許せるんですからね」
悔しい、と話すその頬は紅潮していて、玲於さんの言う通り、悔しさよりも興奮の方が勝ってるのだろう。
不思議だよな、と思う。
他の誰かに触れられたら確かにいやで仕方がないのに、ふたりなら構わないんじゃなくて、寧ろふたりなら、ふたりがおれを見ることが、ふたりがお互いを愛しそうな瞳を向けるのがすごく嬉しくて、そう、興奮する。
ひとりずつだとふたりが一緒にいるのが見れない。ふたりがおれを見て、触れることがいちばんどきどきする。
551
お気に入りに追加
3,778
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
転生したら同性の婚約者に毛嫌いされていた俺の話
鳴海
BL
前世を思い出した俺には、驚くことに同性の婚約者がいた。
この世界では同性同士での恋愛や結婚は普通に認められていて、なんと出産だってできるという。
俺は婚約者に毛嫌いされているけれど、それは前世を思い出す前の俺の性格が最悪だったからだ。
我儘で傲慢な俺は、学園でも嫌われ者。
そんな主人公が前世を思い出したことで自分の行動を反省し、行動を改め、友達を作り、婚約者とも仲直りして愛されて幸せになるまでの話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
婚約破棄署名したらどうでも良くなった僕の話
黄金
BL
婚約破棄を言い渡され、署名をしたら前世を思い出した。
恋も恋愛もどうでもいい。
そう考えたノジュエール・セディエルトは、騎士団で魔法使いとして生きていくことにする。
二万字程度の短い話です。
6話完結。+おまけフィーリオルのを1話追加します。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
婚約破棄されたから能力隠すのやめまーすw
ミクリ21
BL
婚約破棄されたエドワードは、実は秘密をもっていた。それを知らない転生ヒロインは見事に王太子をゲットした。しかし、のちにこれが王太子とヒロインのざまぁに繋がる。
軽く説明
★シンシア…乙女ゲームに転生したヒロイン。自分が主人公だと思っている。
★エドワード…転生者だけど乙女ゲームの世界だとは知らない。本当の主人公です。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
だが夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる