上 下
140 / 192
8

139*

しおりを挟む
 そのまま、もう唇を噛んだらだめだよ、痛いでしょう、とアルベールが優しく、でも少し苦しそうな声で言う。
 別に歯を食いしばっても、唇をちょっと怪我しても、それくらい構わないのに。
 痛いのはいやだからって、でも別にこのくらいなら、と思うけれど……アルベールはおれが痛いといやなんだって。

「んう、ふ」
「大丈夫?」
「ん、ン……」

 アルベールはそうわざわざ確認を取ってから、じゃあまた動くよ、と微笑んだ。
 こんなことまでおれのことを考えてくれるんだから、と胸がきゅんとした。
 だいじにされるって、あったかくて心地好くてふわふわして、気持ちがいい。

「ふ、ぅ、ゔ」

 ずる、と抜かれて、抜け切る手前でまた奥に挿入っていく。
 おし広げられる感覚と、ナカを擦られる感覚。
 背中がぞわぞわぞくぞくとなって、爪先が丸くなって震える。
 浅いところを擦って、突いて、なぞっていく。

「んゔ、ゔ……ふぁ、う」

 レオンの指を噛まないようにするのが大変だった。
 気を抜くと噛みちぎってしまいそう。いや、そんな馬鹿力はないにしても、流血くらいさせてしまいそう。
 唇を噛むよりもずっと痛いと思うのだけれど。
 自分の指じゃないから余計堪えてしまう。
 でも噛み締められないのって、上手くこの感覚を逃がすことが出来なくて、意識があっちにもこっちにもいってしまってもどかしい。
 アルベールに集中出来ない。レオンの指のせいで。
 ふうふう漏らしながら噛むのを我慢していると口の端から唾液が零れていくのを感じるけれど、それを拭う余裕もない。

 アルベールは確実におれの気持ちのいいとこを抉ってくるし、おれだってそれにもう我慢出来ないのに。
 なのにレオンも主張してくるみたい。そんなのしなくたって十分存在感があるというのに。

「ンっ、ん……ん、ゔ」

 上手く息が出来なくて頭がぼおっとしてくる。
 その頭で、アルベールは気持ちいいのかな、と思った。
 だって彼の動きはおれを優先するかのような、おれの気持ちいいところばかりを狙うような、揺するような動きばかりな気がする。
 気持ちいい、
 レオンの指を気にしなくていいならすぐにだってイけるのに。
 
「ゔ」
「指?」
「んん」
「苦しかったか」

 ぐい、とレオンの腕を引くと、案外あっさりと指を引き抜かれた。
 頷くおれに、もう噛むなよ、とひとつキスをして、それから苦笑して袖で口周りを拭った。そんなとこまでこどもみたい。
 まあ今はそんなことを気にしている余裕はなかった。
 元々掴んでいたレオンの片手と同様に、もう両手掴んでやる。
 今はどこも触られたり邪魔をされたくなかった。
 もう、すぐイきたい、さっきからずっと、お腹のナカが変な感じなんだ。

「!」
「あ、ッ……ん、う」

 でもおれだけ気持ちよくなるのは違うって、せめて今日だけはって思って。
 ぐっとアルベールの腰を挟んだ足で寄せた。
 貴族の子がこれははしたないのかもしれないけれど、こんなことをやっててはしたないもなにもあるものか。
 出来る限りの甘ったるい声で、アル兄さまも、と声を掛ける。
 アルベールがイヴの甘えに負けない筈はない。

「は、ァう、ね、アルにいさまもっ……ンっ、いっしょ、に、ね?」
「……こんなに色っぽく誘える子だったかな……っ」
「んぁ、う、……ッゔ」

 溜息を吐いて、でもちょっと嬉しそうな声だった。
 しっかりとお腹側の気持ちいいところを擦り上げて、でも奥の方へ進んでくれる。
 その声も、眉を寄せて耐えているかおも。よかった、ちゃんと気持ちよさそう。

「ん、ふ……っ」

 嬉しい、と思った瞬間に、奥の方がきゅうっとなった。
 同時にそれはアルベールを締め付けて、その締め付けたことでまたお腹の奥が悦んでるみたい。
 レオンの手を持ち上げて、口元に置く。それは声を殺す為と、自分の安心の為だ。

 その指先にキスをして、口に含んで、軽く噛み付いて。
 頬に擦って、また口元を覆って。
 まるで自分の手のようにすきにして、でもその大きな手は自分のものよりずっと安心する。
 止めたりはせず、そう自由にさせてくれるレオンは、仕方ないなと瞳を細めて見下ろしていた。
 こういう時は意地悪なこと、しないんだ。

「はっ……ん、う、っあ、あ、」
「……もう我慢、出来なさそう?」

 少し焦ったように訊くアルベールに、何度も頷く。
 ずっと我慢してた。だってさっきから本当に気持ちいいとこばっかりとんとん突いてくるんだもん。
 でも自分だけ気持ちよくなっちゃうのはいやで、その癖なんにも出来なくて、ただ受け入れてるだけ。
 だからタイミングくらいは、アルベールに合わせたくて。

「アル兄さま、も……?」
「……うん」
「あ、う、中」
「ナカ?」
「おなか、に、ほし……」
「は」

 一瞬、アルベールの動きが止まって、レオンの指先がぴくりと動いた。
 あれ、間違えたかな、と思った。
 前の世界で漫画とかでよく見た台詞だ。相手が悦ぶ台詞だと思っていた。
 あと単純に、お腹の中がもっと、といってるようで、そうしたら満足出来るかなって、そう思っ……
 ……いやこれ多分とんでもないこと言ったな、と自分で気付いたのは、アルベールは頬を紅く染めてるし、レオンはこいつ、ってかおをしていたから。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

【完結】お嬢様の身代わりで冷酷公爵閣下とのお見合いに参加した僕だけど、公爵閣下は僕を離しません

八神紫音
BL
 やりたい放題のわがままお嬢様。そんなお嬢様の付き人……いや、下僕をしている僕は、毎日お嬢様に虐げられる日々。  そんなお嬢様のために、旦那様は王族である公爵閣下との縁談を持ってくるが、それは初めから叶わない縁談。それに気付いたプライドの高いお嬢様は、振られるくらいなら、と僕に女装をしてお嬢様の代わりを果たすよう命令を下す。

【完結】マジで滅びるんで、俺の為に怒らないで下さい

白井のわ
BL
人外✕人間(人外攻め)体格差有り、人外溺愛もの、基本受け視点です。 村長一家に奴隷扱いされていた受けが、村の為に生贄に捧げられたのをきっかけに、双子の龍の神様に見初められ結婚するお話です。 攻めの二人はひたすら受けを可愛がり、受けは二人の為に立派なお嫁さんになろうと奮闘します。全編全年齢、少し受けが可哀想な描写がありますが基本的にはほのぼのイチャイチャしています。

悪役王子の取り巻きに転生したようですが、破滅は嫌なので全力で足掻いていたら、王子は思いのほか優秀だったようです

魚谷
BL
ジェレミーは自分が転生者であることを思い出す。 ここは、BLマンガ『誓いは星の如くきらめく』の中。 そしてジェレミーは物語の主人公カップルに手を出そうとして破滅する、悪役王子の取り巻き。 このままいけば、王子ともども断罪の未来が待っている。 前世の知識を活かし、破滅確定の未来を回避するため、奮闘する。 ※微BL(手を握ったりするくらいで、キス描写はありません)

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

婚約破棄されて捨てられた精霊の愛し子は二度目の人生を謳歌する

135
BL
春波湯江には前世の記憶がある。といっても、日本とはまったく違う異世界の記憶。そこで湯江はその国の王子である婚約者を救世主の少女に奪われ捨てられた。 現代日本に転生した湯江は日々を謳歌して過ごしていた。しかし、ハロウィンの日、ゾンビの仮装をしていた湯江の足元に見覚えのある魔法陣が現れ、見覚えのある世界に召喚されてしまった。ゾンビの格好をした自分と、救世主の少女が隣に居て―…。 最後まで書き終わっているので、確認ができ次第更新していきます。7万字程の読み物です。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします。……やっぱり狙われちゃう感じ?

み馬
BL
※ 完結しました。お読みくださった方々、誠にありがとうございました! 志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、とある加護を受けた8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 独自設定、造語、下ネタあり。出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

処理中です...