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少しだけ、腰が引けた。
その腰をレオンが引いて、ほら、もう少し慣らすぞ、と言う。
今は多分指二本分。それだけでふたりのものを受け入れられる程拡げられたとは自分だって思わない。
けれどその二本であっても十分に存在感はあって、まだするの、なんて甘えた考えを持ってしまう。
痛くはない、レオンがそこはきっと、気を遣ってくれている。
それでも少し、こわいものはこわいのだ。
「アル兄さま……」
「大丈夫だよ、イヴは良い子だね」
「う、ゔ……」
「ほら、もうレオンさまの指を三本呑み込んだ」
「んう……!」
「はは、アルベールに褒められると嬉しいなあ」
レオンのその声に、アルベールに声を掛けられる度に反応してしまってるのだろうか、と思った。
確かに嬉しい。優しい声は安心する。
でもしていることはいやらしいことで、アルベールの声だって優しいだけじゃない。
時折耳元で聞こえる吐息に心臓が跳ねた。
「は、っあ、う……ん、ンっ」
「ナカの方も気持ちいいところ覚えたね?また元気になった」
「やあ、いちいち、ゆわっ……ない、でいいっ」
「アルベールも口出しする程暇なんだろう、口でも塞いでおけばいいんじゃないか」
「イヴからしてくれるの?嬉しいな」
するなんて言ってない。レオンが勝手に言ってるだけだ。
でもすぐ目の前でぱあ、と嬉しそうにアルベールが笑うものだから。いやだとは言えない。
それになんでだろう、こういうことしてる時って、なんだか無性にキスをしたくなってしまう。
頭がふわふわして単純に気持ちがいいのと、胸がぎゅうっとなるのにあったかくて、嬉しいって思ってしまう感覚。
多分それが、すきなひととしているという多幸感なんだろうけれど。
「届かない……」
ぐい、とアルベールの袖を掴むと、驚いたかおをして、それでもすぐに口元を綻ばせた。
おれはこの笑顔に弱い。すきだ、と思う。
兄として、文句の付けようもない程立派なひとだと思う。
両親と仲睦まじく話してる姿がすきだ。
エディーを抱えて、微笑む姿がすきだ。
イヴに瞳を細めて柔らかな言葉をかけるアルベールがすきだ。
そのアルベールはイヴのものだった。ずっと。アルベールはイヴを見てくれていた。
エディーが生まれてから、兄を取られるかもしれないと嫉妬もしたけれど、それ以上にイヴに構ってくれたアルベールが嬉しかった。
両親が小さな赤子のエディーに向かうのは仕方がない。小さな命は誰かが守らないといけないのだから。
その分アルベールがイヴを見てくれた。愛をくれた。イヴにはまだその意味はわからなかったけれど。
幼い時時からずっと、もうアルベールはイヴのものだったのだ。
おれのものではないのかもしれない。
でも今はおれに向いている。
伊吹だって元はイヴだった。魂は同じなのだから良いだろう。
逃げたのはおれもだけど、イヴだってそうだ。
アンリの力のせいだかおかげだか、どちらとも言えないけれど、それでも行動させられたのはおれだ、おれだって、誰かから求められたい。
求めたい。それが赦される人間でありたかった。
「ん、は……う、」
「そんなに短いものでいいのか」
「んや……もっと……」
「自分で出来るか?」
「でき……できる、けど」
「けど?」
「……アル兄さまから、がいい……」
レオンからの言葉に、つい口を滑らせてしまった。
おれからするのも、それを受け入れて貰えるのも嬉しい。
でもどうにも自分に甘くなってしまって、ちょっと恥ずかしいだけで、少し息が苦しいだけで、すぐに唇を離してしまう。
それが何だか物足りなくて。
苦しいのはいやだけど、でももっと欲しかった。すぐに終わってしまうと、さみしくなってしまう。
「イヴからしてもらえたのは嬉しいけど、そう言われたら頑張らないといけないね」
「……ん、でもずっとは、苦しいのは、やだ……っあ、う」
「そうだねえ、レオンさまの相手もしないといけないからね、イヴは大変だ」
アルベールと話してる間にも、レオンの手は止まらない。
キスだけに集中は出来ない。それでも欲しかった。
額や頬や髪や手、肩、首元。
色々なところに唇を落としてはくれるけど、やっぱり口にしてもらうのがいちばん、気持ちを感じられる気がして。
「……ふぁ、う、ンん、」
「良かったなあ、アルベールからしてもらえて」
そんなレオンの楽しそうな声も嫌味に聞こえない。
軽いキスを何度か繰り返して、それから舌が入ってくる。
おれが苦しいのはいやだなんて言うから、何度も唇が離れて、舐められて、また重なっての繰り返し。
これはこれで、忙しくて苦しい、ような。
「んふ、ァ、んっ、は……っあ!ん、ゔー……っ」
「すごいな、ずっと締め付けてる。緩めてほしいんだが」
「う、ゔ、むり、っあ、むりいっ」
頭が真っ白になってしまう。
キスをしながら、気持ちいいとこ触られると、躰なんていうことをきかない。
自分でどうにかすることが出来ない。
馬鹿になってしまいそう、気持ちよくてきゅうきゅうしてしまう、レオンの指を感じてしまう。
その腰をレオンが引いて、ほら、もう少し慣らすぞ、と言う。
今は多分指二本分。それだけでふたりのものを受け入れられる程拡げられたとは自分だって思わない。
けれどその二本であっても十分に存在感はあって、まだするの、なんて甘えた考えを持ってしまう。
痛くはない、レオンがそこはきっと、気を遣ってくれている。
それでも少し、こわいものはこわいのだ。
「アル兄さま……」
「大丈夫だよ、イヴは良い子だね」
「う、ゔ……」
「ほら、もうレオンさまの指を三本呑み込んだ」
「んう……!」
「はは、アルベールに褒められると嬉しいなあ」
レオンのその声に、アルベールに声を掛けられる度に反応してしまってるのだろうか、と思った。
確かに嬉しい。優しい声は安心する。
でもしていることはいやらしいことで、アルベールの声だって優しいだけじゃない。
時折耳元で聞こえる吐息に心臓が跳ねた。
「は、っあ、う……ん、ンっ」
「ナカの方も気持ちいいところ覚えたね?また元気になった」
「やあ、いちいち、ゆわっ……ない、でいいっ」
「アルベールも口出しする程暇なんだろう、口でも塞いでおけばいいんじゃないか」
「イヴからしてくれるの?嬉しいな」
するなんて言ってない。レオンが勝手に言ってるだけだ。
でもすぐ目の前でぱあ、と嬉しそうにアルベールが笑うものだから。いやだとは言えない。
それになんでだろう、こういうことしてる時って、なんだか無性にキスをしたくなってしまう。
頭がふわふわして単純に気持ちがいいのと、胸がぎゅうっとなるのにあったかくて、嬉しいって思ってしまう感覚。
多分それが、すきなひととしているという多幸感なんだろうけれど。
「届かない……」
ぐい、とアルベールの袖を掴むと、驚いたかおをして、それでもすぐに口元を綻ばせた。
おれはこの笑顔に弱い。すきだ、と思う。
兄として、文句の付けようもない程立派なひとだと思う。
両親と仲睦まじく話してる姿がすきだ。
エディーを抱えて、微笑む姿がすきだ。
イヴに瞳を細めて柔らかな言葉をかけるアルベールがすきだ。
そのアルベールはイヴのものだった。ずっと。アルベールはイヴを見てくれていた。
エディーが生まれてから、兄を取られるかもしれないと嫉妬もしたけれど、それ以上にイヴに構ってくれたアルベールが嬉しかった。
両親が小さな赤子のエディーに向かうのは仕方がない。小さな命は誰かが守らないといけないのだから。
その分アルベールがイヴを見てくれた。愛をくれた。イヴにはまだその意味はわからなかったけれど。
幼い時時からずっと、もうアルベールはイヴのものだったのだ。
おれのものではないのかもしれない。
でも今はおれに向いている。
伊吹だって元はイヴだった。魂は同じなのだから良いだろう。
逃げたのはおれもだけど、イヴだってそうだ。
アンリの力のせいだかおかげだか、どちらとも言えないけれど、それでも行動させられたのはおれだ、おれだって、誰かから求められたい。
求めたい。それが赦される人間でありたかった。
「ん、は……う、」
「そんなに短いものでいいのか」
「んや……もっと……」
「自分で出来るか?」
「でき……できる、けど」
「けど?」
「……アル兄さまから、がいい……」
レオンからの言葉に、つい口を滑らせてしまった。
おれからするのも、それを受け入れて貰えるのも嬉しい。
でもどうにも自分に甘くなってしまって、ちょっと恥ずかしいだけで、少し息が苦しいだけで、すぐに唇を離してしまう。
それが何だか物足りなくて。
苦しいのはいやだけど、でももっと欲しかった。すぐに終わってしまうと、さみしくなってしまう。
「イヴからしてもらえたのは嬉しいけど、そう言われたら頑張らないといけないね」
「……ん、でもずっとは、苦しいのは、やだ……っあ、う」
「そうだねえ、レオンさまの相手もしないといけないからね、イヴは大変だ」
アルベールと話してる間にも、レオンの手は止まらない。
キスだけに集中は出来ない。それでも欲しかった。
額や頬や髪や手、肩、首元。
色々なところに唇を落としてはくれるけど、やっぱり口にしてもらうのがいちばん、気持ちを感じられる気がして。
「……ふぁ、う、ンん、」
「良かったなあ、アルベールからしてもらえて」
そんなレオンの楽しそうな声も嫌味に聞こえない。
軽いキスを何度か繰り返して、それから舌が入ってくる。
おれが苦しいのはいやだなんて言うから、何度も唇が離れて、舐められて、また重なっての繰り返し。
これはこれで、忙しくて苦しい、ような。
「んふ、ァ、んっ、は……っあ!ん、ゔー……っ」
「すごいな、ずっと締め付けてる。緩めてほしいんだが」
「う、ゔ、むり、っあ、むりいっ」
頭が真っ白になってしまう。
キスをしながら、気持ちいいとこ触られると、躰なんていうことをきかない。
自分でどうにかすることが出来ない。
馬鹿になってしまいそう、気持ちよくてきゅうきゅうしてしまう、レオンの指を感じてしまう。
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