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アンリもそう思ったのだろう、同じゲームだよね?と首を傾げた。
「パズルゲームなんてなかったんだけど。世界観に合わないですし」
「……世界観?」
「十八禁陵辱色物BLゲームにパズルゲームいらないでしょ」
「そんなゲーム知らない!」
とんでもないゲームに思わず叫んでしまった。
ソフトの入れ間違えで買ったゲームだから事前情報があった訳じゃない。まあいっか、でなんとなくプレイをしただけ。
けれどおれがプレイした内容にそんな内容はなかった。良い雰囲気になったり、匂わせる描写が精々で、イラストもキスといった軽いもので終わってた筈だ。
爽やかな……というのもおかしな話だけれど、学園ものの、恋愛がメインのゲームだ。
調べた時も、絵が綺麗なのでもうちょっと色々なイラストが見たい、もっと甘いシーンを、なんてものは見たけれど、その、過激な内容については触れられてるところを見たことがない。
おれの見落としではないと思うし、全年齢対象との二種発売されてた訳でもないと思う。
「えー、ぼくの絵褒めて貰えて嬉しい」
「今そんな話じゃないんですが」
「ですよねえ!うーん、えっちな絵いっぱい描いたんだけどなあ」
「そんな……自分を描いて楽しいんですか」
「イヴさまかわいいから筆がノって……かおは黒子以外消せって言われた時めちゃくちゃ切れたんですけど。恋愛ゲームじゃなくてBLゲームなら表情だいじでしょって」
「……アンリの絵でしょ?」
「ちょっと描いたかな」
「ちょっと?主人公なのに?え、いっぱい描いたのは?」
「主人公?ええ、主人公だからいっぱい描きましたが」
「?」
「?」
先程から何度も話が食い違う。
俺が知ってることと、アンリが知ってることが違う。
主人公はアンリでしょうと言うおれに、ぽかんとしたまま、主人公はイヴさまでしょ、と返す。
……確かにキャラクターの性格から描写から、イヴとアンリの立場は逆ではないかと思ったこともあったけど。
そう思ってしまうくらい、ちゃんとアンリが主人公だった、それは間違いない。
「……それ同じゲームです?」
「そっちこそ」
おれのじっとりとした視線に気付いてか、そんな下らない嘘吐かないから!と慌てたようにアンリは首を振って、ひとつずつ確認しましょう、と提案する。
おれも頭が混乱してきた、おとなしく頷き、その提案に乗った。
おれがしていたのはBLゲーム、学園がメインの全年齢対象恋愛ゲームだ。
対してアンリが作っていたというゲームは同じく学園がメインの、十八禁BLゲーム。つまり性的な内容が含まれるゲーム。誰と誰が?とは訊けなかった。
おれがしていたゲームの主人公はアンリ。イヴのことで悩む王子や同級生を救っていくストーリーだ。
アンリが作っていたというのはイヴが主人公の……おれを前に説明することを躊躇うような、そんな内容だという。
「BLゲームをしてたってことはそういう趣味でした?」
「そういう……あ、いや、選んで買った訳じゃなくて……その、閉店セールで買った中古のゲームの中身が違っていて……勿体ないからプレイしてみたらおまけ要素のパズルが面白くて」
「ああ、パズルゲームって何と思ったらミニゲームかあ」
そう納得して、それから少し申し訳なさそうに、多分イヴさまが思ってる十倍ハードだと思う、と口にした。
「結構その、ひとを選ぶような……まあその、十八禁だけあって性行為は勿論、寝取られ、複数、無理矢理、軽いSMとか……緊縛陵辱玩具にあと」
「まっ、ま、いい、待って、もういいです……!」
わかるものも、わからないものもあった。でもその並びからいって、わからないものもまあ、そういうものなのだろう。
そしてイヴが主人公ということは、それらは主にイヴが受けていた話だということで……
「無理……」
恥ずかしくて死にそうだ。
おれを見るアンリの視線にすら少し抵抗がある。だってアンリはイヴのそういう姿を知ってる、ということでしょう?
思わず視線を逸らし、もぞもぞするおれに、アンリは満足そうにかわいい、と呟いた。
「……」
だから今そういう話じゃないだろ、と軽く太腿を叩くと、もう一度かわいい、と漏らす。
アンリからするとそういう話なのだろう。
「おれのこと、そういうすきじゃないって」
「ええまあ、その、ジャンさまやレオンさま、アルベールさまと比べると、ですよ!でもほら、イヴさまも向こうのことを覚えてたら……ゲームとかするようなら、わかるでしょ」
「なにを」
「推しって付き合いたいとかそういうのじゃないけど、かわいいじゃないですか。どんなかおでも見たいじゃないですか。えっちなのもすきじゃないですか」
「……わかんないです。それ」
「ドン引きじゃん」
付き合いたい訳じゃないけどそういう表情を見たいとか、……助けたい、その為に世界を変えたいだなんて思うものなのだろうか、推しというものは。
そういうの、わかんないな。おれには難しい。
例えば愛莉が今、大変な目にあっていたら。
それは元の世界に戻って助けたいと思う。何に替えても。またあの何もない毎日に戻っても。
でもそれを、アンリに……いや、アルベールに、レオンに同じように思えるだろうか。
「……?」
少し考えると、なんだか胸が苦しくなる。
「パズルゲームなんてなかったんだけど。世界観に合わないですし」
「……世界観?」
「十八禁陵辱色物BLゲームにパズルゲームいらないでしょ」
「そんなゲーム知らない!」
とんでもないゲームに思わず叫んでしまった。
ソフトの入れ間違えで買ったゲームだから事前情報があった訳じゃない。まあいっか、でなんとなくプレイをしただけ。
けれどおれがプレイした内容にそんな内容はなかった。良い雰囲気になったり、匂わせる描写が精々で、イラストもキスといった軽いもので終わってた筈だ。
爽やかな……というのもおかしな話だけれど、学園ものの、恋愛がメインのゲームだ。
調べた時も、絵が綺麗なのでもうちょっと色々なイラストが見たい、もっと甘いシーンを、なんてものは見たけれど、その、過激な内容については触れられてるところを見たことがない。
おれの見落としではないと思うし、全年齢対象との二種発売されてた訳でもないと思う。
「えー、ぼくの絵褒めて貰えて嬉しい」
「今そんな話じゃないんですが」
「ですよねえ!うーん、えっちな絵いっぱい描いたんだけどなあ」
「そんな……自分を描いて楽しいんですか」
「イヴさまかわいいから筆がノって……かおは黒子以外消せって言われた時めちゃくちゃ切れたんですけど。恋愛ゲームじゃなくてBLゲームなら表情だいじでしょって」
「……アンリの絵でしょ?」
「ちょっと描いたかな」
「ちょっと?主人公なのに?え、いっぱい描いたのは?」
「主人公?ええ、主人公だからいっぱい描きましたが」
「?」
「?」
先程から何度も話が食い違う。
俺が知ってることと、アンリが知ってることが違う。
主人公はアンリでしょうと言うおれに、ぽかんとしたまま、主人公はイヴさまでしょ、と返す。
……確かにキャラクターの性格から描写から、イヴとアンリの立場は逆ではないかと思ったこともあったけど。
そう思ってしまうくらい、ちゃんとアンリが主人公だった、それは間違いない。
「……それ同じゲームです?」
「そっちこそ」
おれのじっとりとした視線に気付いてか、そんな下らない嘘吐かないから!と慌てたようにアンリは首を振って、ひとつずつ確認しましょう、と提案する。
おれも頭が混乱してきた、おとなしく頷き、その提案に乗った。
おれがしていたのはBLゲーム、学園がメインの全年齢対象恋愛ゲームだ。
対してアンリが作っていたというゲームは同じく学園がメインの、十八禁BLゲーム。つまり性的な内容が含まれるゲーム。誰と誰が?とは訊けなかった。
おれがしていたゲームの主人公はアンリ。イヴのことで悩む王子や同級生を救っていくストーリーだ。
アンリが作っていたというのはイヴが主人公の……おれを前に説明することを躊躇うような、そんな内容だという。
「BLゲームをしてたってことはそういう趣味でした?」
「そういう……あ、いや、選んで買った訳じゃなくて……その、閉店セールで買った中古のゲームの中身が違っていて……勿体ないからプレイしてみたらおまけ要素のパズルが面白くて」
「ああ、パズルゲームって何と思ったらミニゲームかあ」
そう納得して、それから少し申し訳なさそうに、多分イヴさまが思ってる十倍ハードだと思う、と口にした。
「結構その、ひとを選ぶような……まあその、十八禁だけあって性行為は勿論、寝取られ、複数、無理矢理、軽いSMとか……緊縛陵辱玩具にあと」
「まっ、ま、いい、待って、もういいです……!」
わかるものも、わからないものもあった。でもその並びからいって、わからないものもまあ、そういうものなのだろう。
そしてイヴが主人公ということは、それらは主にイヴが受けていた話だということで……
「無理……」
恥ずかしくて死にそうだ。
おれを見るアンリの視線にすら少し抵抗がある。だってアンリはイヴのそういう姿を知ってる、ということでしょう?
思わず視線を逸らし、もぞもぞするおれに、アンリは満足そうにかわいい、と呟いた。
「……」
だから今そういう話じゃないだろ、と軽く太腿を叩くと、もう一度かわいい、と漏らす。
アンリからするとそういう話なのだろう。
「おれのこと、そういうすきじゃないって」
「ええまあ、その、ジャンさまやレオンさま、アルベールさまと比べると、ですよ!でもほら、イヴさまも向こうのことを覚えてたら……ゲームとかするようなら、わかるでしょ」
「なにを」
「推しって付き合いたいとかそういうのじゃないけど、かわいいじゃないですか。どんなかおでも見たいじゃないですか。えっちなのもすきじゃないですか」
「……わかんないです。それ」
「ドン引きじゃん」
付き合いたい訳じゃないけどそういう表情を見たいとか、……助けたい、その為に世界を変えたいだなんて思うものなのだろうか、推しというものは。
そういうの、わかんないな。おれには難しい。
例えば愛莉が今、大変な目にあっていたら。
それは元の世界に戻って助けたいと思う。何に替えても。またあの何もない毎日に戻っても。
でもそれを、アンリに……いや、アルベールに、レオンに同じように思えるだろうか。
「……?」
少し考えると、なんだか胸が苦しくなる。
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