77 / 192
6
76*
しおりを挟む
アルベールがぎゅうぎゅうとおれの手を掴む。
どうしよう、そんな動きですら背中がぞわぞわしてしまう。
「は……っん、う、」
「そろそろ下着も脱がせてあげたらどうです?」
「イヴが膝を閉じてるからなあ」
「ん、や、やだ、いやです……」
「脱ぎたくないそうだ」
「下着を汚すのは嫌じゃなかったの?」
耳元で甘い声。
アルベールに触れられたことを思い出してしまう。
今、おれの手を柔らかく掴むこの手が、綺麗なこのすらっとした指が、おれのものに触れて、その手を汚した。
「汚すの、いやだ……」
「じゃあ脱がなきゃ、ね?」
「う、う、脱ぐの、も、やだ……」
「我儘だな」
「ゔー……!」
「怒ってないよ、ほら、もう、レオンさま言い方に気を付けて」
アルベールへの我儘をレオンに咎められる。それをまたアルベールが咎め、レオンが悪いな、とおれの頬に触れた。
その苦笑した表情は多分、悪いだなんて本気で思ってない。
おれだってどうしていいかわからない、知識は多少あったってこんなのキャパオーバーだ。
ふたりを相手にどう立ち振る舞えばいいのかなんてわからない。一度だけ、とは思うけど、嫌われたいとは思わない。
みっともないとか、はしたないだとか、汚いだなんて思われたくない。
「ふ、ふつう、は、どうする、んです、か……?」
「普通?」
「わかんないです、ぬ、脱ぐの……?」
「そりゃあ脱がなきゃ何も出来ないからなあ」
「……」
「そのかおは嫉妬してるのか」
……訊いておきながら、返ってきた言葉にむっとするのは随分勝手だ。
嫉妬というか、なんだかもやもやしたものが残る。
おれのこと、昔からすきだったと言った癖に。他のひととしたんだ?
「アル兄さまも……?」
「え」
「アル兄さまも、レオンさまと」
そこまで口にして、訊くのは流石に不味かったかと噤んだ。
レオンがアルベールにキスをしたのは目の前で見た、見せられてしまった。
ふたりとも愛してると言った。
だからふたりがそういう関係でも悪くはない。寧ろそうあってほしかったと思うのに。
今まさにこうやって恥ずかしい思いをしてる側からすると、アルベールのそんな姿を想像したくない。
おれにとっては格好良いお兄さまなのだ。
「お前は俺とアルベールの仲をまあよく疑うな」
「う、疑ってる訳じゃあ……」
「ほら、アルベール」
「……はい」
「んえ」
レオンがちょい、と自分の唇を指す。
アルベールは仕方ないですね、というように溜息を吐いて、その唇に自分のものを重ねた。
先日見せつけられたのは、一瞬、軽く重ねられたものだけ。
おれのすぐ頭の上で、ふたりが舌を絡ませるのは非常に刺激が強かった。
「ん、む」
「……は、」
「え、え、えっ、ふあ……!」
「愛してると言ったろう、お前も、アルベールも」
「ふわ……」
「肩まで紅くなっちゃって」
「心配だよ、十八にもなってこれでは」
言葉にならなくて、口から出るのは空気が漏れたような声だけだった。
他人のキスをこんなに間近で見ると思わなかった。真下から。とんでもなくその、ただの……ただの、というには深いキスだったが、そのキスにどきどきしてしまった。
「アルベールには触れたことがあるだけだ」
「まあ一応、いちばんはイヴが優先ですからね」
「俺はお前も抱けるが」
「冗談、僕はそこはごめんですよ」
「……?、?……?」
「混乱してる」
かわいい奴だな、とレオンが顎を掬い、唇を重ねる。あたたかい。
それは重ねるだけの軽いもので終わった。
なのに頭の中では先程のふたりのキスが消えない。
嫉妬なんてしなかった。ただ、いいな、と思ってしまった。
ふたりが仲良くしてると嬉しい。早く結ばれてほしい。しあわせでいてほしい。
そう思っていた筈なのに、おれもその中に入りたいと思ってしまった。
「まあそうだな、今はイヴが優先だ、この熱をどうにかしてやろうな」
「ん、やっ……あ、う!」
「俺とアルベールのキスに興奮したようだ」
「ンー……っ!」
下着越しに、レオンの大きな手が触れる。
揶揄うような声音に、反抗するかのようにアルベールの手を握り締めたままその肩を叩いてやった。
それなのにレオンはくつくつと笑う。楽しそうだ。おれは楽しくない。恥ずかしくて死にそう。
確かにどきどきした、えっちだと思った。でもそれはふたりのものだったから。他のひととキスなんてしたら許さなかった。
「んぁ、あ、やあ、汚れ、るっ……」
「ほら、脱がなきゃ汚れるぞ」
「やあ、ンっ、手っ……アル兄さまがっ……あぅ、」
「そうだね、イヴの手、使えないね?」
「ゔん、っ、使え、ないっ、からあ……!」
「お願いしようか、レオンさまに、脱がせてって」
「やあ……!」
そんな恥ずかしいこと、言えない。言えないけど、言わなきゃもっと恥ずかしいことになる。
下着越しの刺激でも十分過ぎる程だ。脱いでしまえばもっと……もっと気持ちよくなっちゃう。
だって、気持ちよかった。
アルベールにされた時、気持ちよかったんだ。
今、直にレオンに触られちゃったら、もっとおかしくなる。
どうしよう、そんな動きですら背中がぞわぞわしてしまう。
「は……っん、う、」
「そろそろ下着も脱がせてあげたらどうです?」
「イヴが膝を閉じてるからなあ」
「ん、や、やだ、いやです……」
「脱ぎたくないそうだ」
「下着を汚すのは嫌じゃなかったの?」
耳元で甘い声。
アルベールに触れられたことを思い出してしまう。
今、おれの手を柔らかく掴むこの手が、綺麗なこのすらっとした指が、おれのものに触れて、その手を汚した。
「汚すの、いやだ……」
「じゃあ脱がなきゃ、ね?」
「う、う、脱ぐの、も、やだ……」
「我儘だな」
「ゔー……!」
「怒ってないよ、ほら、もう、レオンさま言い方に気を付けて」
アルベールへの我儘をレオンに咎められる。それをまたアルベールが咎め、レオンが悪いな、とおれの頬に触れた。
その苦笑した表情は多分、悪いだなんて本気で思ってない。
おれだってどうしていいかわからない、知識は多少あったってこんなのキャパオーバーだ。
ふたりを相手にどう立ち振る舞えばいいのかなんてわからない。一度だけ、とは思うけど、嫌われたいとは思わない。
みっともないとか、はしたないだとか、汚いだなんて思われたくない。
「ふ、ふつう、は、どうする、んです、か……?」
「普通?」
「わかんないです、ぬ、脱ぐの……?」
「そりゃあ脱がなきゃ何も出来ないからなあ」
「……」
「そのかおは嫉妬してるのか」
……訊いておきながら、返ってきた言葉にむっとするのは随分勝手だ。
嫉妬というか、なんだかもやもやしたものが残る。
おれのこと、昔からすきだったと言った癖に。他のひととしたんだ?
「アル兄さまも……?」
「え」
「アル兄さまも、レオンさまと」
そこまで口にして、訊くのは流石に不味かったかと噤んだ。
レオンがアルベールにキスをしたのは目の前で見た、見せられてしまった。
ふたりとも愛してると言った。
だからふたりがそういう関係でも悪くはない。寧ろそうあってほしかったと思うのに。
今まさにこうやって恥ずかしい思いをしてる側からすると、アルベールのそんな姿を想像したくない。
おれにとっては格好良いお兄さまなのだ。
「お前は俺とアルベールの仲をまあよく疑うな」
「う、疑ってる訳じゃあ……」
「ほら、アルベール」
「……はい」
「んえ」
レオンがちょい、と自分の唇を指す。
アルベールは仕方ないですね、というように溜息を吐いて、その唇に自分のものを重ねた。
先日見せつけられたのは、一瞬、軽く重ねられたものだけ。
おれのすぐ頭の上で、ふたりが舌を絡ませるのは非常に刺激が強かった。
「ん、む」
「……は、」
「え、え、えっ、ふあ……!」
「愛してると言ったろう、お前も、アルベールも」
「ふわ……」
「肩まで紅くなっちゃって」
「心配だよ、十八にもなってこれでは」
言葉にならなくて、口から出るのは空気が漏れたような声だけだった。
他人のキスをこんなに間近で見ると思わなかった。真下から。とんでもなくその、ただの……ただの、というには深いキスだったが、そのキスにどきどきしてしまった。
「アルベールには触れたことがあるだけだ」
「まあ一応、いちばんはイヴが優先ですからね」
「俺はお前も抱けるが」
「冗談、僕はそこはごめんですよ」
「……?、?……?」
「混乱してる」
かわいい奴だな、とレオンが顎を掬い、唇を重ねる。あたたかい。
それは重ねるだけの軽いもので終わった。
なのに頭の中では先程のふたりのキスが消えない。
嫉妬なんてしなかった。ただ、いいな、と思ってしまった。
ふたりが仲良くしてると嬉しい。早く結ばれてほしい。しあわせでいてほしい。
そう思っていた筈なのに、おれもその中に入りたいと思ってしまった。
「まあそうだな、今はイヴが優先だ、この熱をどうにかしてやろうな」
「ん、やっ……あ、う!」
「俺とアルベールのキスに興奮したようだ」
「ンー……っ!」
下着越しに、レオンの大きな手が触れる。
揶揄うような声音に、反抗するかのようにアルベールの手を握り締めたままその肩を叩いてやった。
それなのにレオンはくつくつと笑う。楽しそうだ。おれは楽しくない。恥ずかしくて死にそう。
確かにどきどきした、えっちだと思った。でもそれはふたりのものだったから。他のひととキスなんてしたら許さなかった。
「んぁ、あ、やあ、汚れ、るっ……」
「ほら、脱がなきゃ汚れるぞ」
「やあ、ンっ、手っ……アル兄さまがっ……あぅ、」
「そうだね、イヴの手、使えないね?」
「ゔん、っ、使え、ないっ、からあ……!」
「お願いしようか、レオンさまに、脱がせてって」
「やあ……!」
そんな恥ずかしいこと、言えない。言えないけど、言わなきゃもっと恥ずかしいことになる。
下着越しの刺激でも十分過ぎる程だ。脱いでしまえばもっと……もっと気持ちよくなっちゃう。
だって、気持ちよかった。
アルベールにされた時、気持ちよかったんだ。
今、直にレオンに触られちゃったら、もっとおかしくなる。
201
お気に入りに追加
3,753
あなたにおすすめの小説
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
異世界転移で、俺と僕とのほっこり溺愛スローライフ~間に挟まる・もふもふ神の言うこと聞いて珍道中~
戸森鈴子 tomori rinco
BL
主人公のアユムは料理や家事が好きな、地味な平凡男子だ。
そんな彼が突然、半年前に異世界に転移した。
そこで出逢った美青年エイシオに助けられ、同居生活をしている。
あまりにモテすぎ、トラブルばかりで、人間不信になっていたエイシオ。
自分に自信が全く無くて、自己肯定感の低いアユム。
エイシオは優しいアユムの料理や家事に癒やされ、アユムもエイシオの包容力で癒やされる。
お互いがかけがえのない存在になっていくが……ある日、エイシオが怪我をして!?
無自覚両片思いのほっこりBL。
前半~当て馬女の出現
後半~もふもふ神を連れたおもしろ珍道中とエイシオの実家話
予想できないクスッと笑える、ほっこりBLです。
サンドイッチ、じゃがいも、トマト、コーヒーなんでもでてきますので許せる方のみお読みください。
アユム視点、エイシオ視点と、交互に視点が変わります。
完結保証!
このお話は、小説家になろう様、エブリスタ様でも掲載中です。
※表紙絵はミドリ/緑虫様(@cklEIJx82utuuqd)からのいただきものです。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
異世界に転生したら竜騎士たちに愛されました
あいえだ
BL
俺は病気で逝ってから生まれ変わったらしい。ど田舎に生まれ、みんな俺のことを伝説の竜騎士って呼ぶんだけど…なんだそれ?俺は生まれたときから何故か一緒にいるドラゴンと、この大自然でゆるゆる暮らしたいのにみんな王宮に行けって言う…。王宮では竜騎士イケメン二人に愛されて…。
完結済みです。
7回BL大賞エントリーします。
表紙、本文中のイラストは自作。キャライラストなどはTwitterに順次上げてます(@aieda_kei)
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる