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第一章

現実

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 押忍!!男の中の漢。名は学。三十六歳。この世界ではガク。十五歳だ。二十年以上働かない生活をしていたのでいきなり異世界に来て体と精神がビックリしたのでしょうね。

  異世界転生十五日目。俺は順調に生きている。スミスさんの元に三週間働くことになった俺がここまで生きられたのは間違いなくサラのおかげだろう。でなければ俺は間違いなく逃げていたな。間違いないな。

  お店は忙しいが最初の頃に比べてら大分マシになって来たと思う。サラやマーナ、パッチちゃんの教えがあり、そして何故か素早さスキルのステータスが上がった為だろうと思う。

  他にもいろいろ上がったりした。

  これが今の俺のステータスだ。

   ステータス
名前  ガク
性別  男

スキル
 ・鑑定(少)Lv二十・地図(少)Lv二十三・防御力上昇Lv三・素早さ上昇LV十三

 称号
・転生者・親愛の女神の加護・参加賞を無駄にした者(笑)

 街の規模が分かったぜ!と言っても地図スキルのおかげだがね。行動できる範囲はそれほど広くなので隅々までは網羅していないがね。網羅したのは俺が行動できる範囲でなら完全網羅した。

  それで、また地図スキルのすごい所が分かった。地図スキルの本来の用途はダンジョンに潜った際に使う地図の役目になるスキルだと思っている。

  ダンジョンの道のりがどういう道か分からないが、地図スキルは道の広さが分かる。これは意外スゴイ。
 線で書く物でなくちゃんとした正確な地図だ。分かりやすい。

  後、レベルが上がったからなのか、より正確に道の上に何が居るのかが大体分かるようになってきた。町は人がほとんどだが動物も歩いている。それが大体分かる。人は動物かの違いぐらいだが。

  鑑定スキル・地図スキルがレベルを二十超えたら(少)が付いた。これはすごい!!(少)だからと見くびるなかれ、MP・SPが一.五倍。HPは二.二五倍になっている。

  スマホを片手に計算したんだがな。暗算では出来んよ。フッ

 ここで分かったことは、スキルは二十を超えると(少)が付き、ステータスに補正が付く。十九と二十で、かなりの差があるな。

  素早さが二十を超えるとどうなるのは楽しみだ。

  他にも、スキルを装備から外しても上昇したステータスはそのままだった。

  これは、すごいな。(少)まで育てることが出来ればかなりのステータス上昇につながる。

  取得は制限無いからちょっとずつスキルを増やしておこう!!

  こんなにスキルが上がったのは最近の日課はウォーキングしながら地図スキル起動で散策。散策中に鑑定スキルを発動。お店の仕事はほぼダッシュ。

  お店で働いて二日目で素早さスキルはダッシュをすれば上がると気が付いた。お店の手伝いでスキルのレベルが上がる。中々に効率が良い。

  朝はサラと一緒に料理を作ってみんなで食べる。その途中でスミスさんに片付けが終わったら蔵の前に来いと言われた。正直、朝ごはんを食べた後に蔵には行きたくないな。しょうがないがな。

 「お待たせしました」

  片付けを終え、スミスさんの待っている蔵の前の行く。残念!!スミスさんがいる!いなかったらお店にダッシュで向かったのに!!

 「来たか。これを被れ」
 「これは・・・・・・帷子?」
 「メイルだ。効果が付いている」
 「効果ですか?……よっと。……ん?臭いが消えた?」
 「そうだ。そのメイルは臭いを遮断する効果がある」
 「スゲ~~~!!」

  頭からすっぽり被り顔を出す。頭と首、肩が覆いかぶさる。顔が全く阻害されないでこの臭いを遮断できるとは。さすがファンタジー!

 「行くぞ」
 「はい。……スミスさん、なんでこんな便利な物があるのに俺にサラの手伝いをさせたんですか?」
 「ここの配属になった場合、そのメイルは基本使わない事になってる」
 「そうなんですか。何で僕はこれを付けて中に入るんですか?」
 「お前は、この世界を知らないからな」
 「……どういうことですか?」
 「言葉通りだ」
 「ここに入ると分かるんですか?」
 「あぁ。もうすぐ着くぞ」

  蔵に入り。すぐに階段があった。階段を下り。扉があった。扉ではなく鉄格子だったが。

  俺はこの時、悟るべきだった。蔵の臭いとスミスさんの裏の仕事。そして地下に鉄格子。これだけのヒントががありながら俺は何も考えてなかった。

  異世界でファンタジーな世界は夢と希望がある。

  だが、その裏もあるのも当然の事。

  俺は上辺しか見ていなかったのだ。

  現実を見ていなかった。

  違うな。

  俺は、この世界を正しく見ていなかっただけだった。

  俺は本当に大馬鹿野郎だ。それに気が付くのはもう目の前だがな。

 「ここがお前に見せたい場所だ。今、明かりをつける」
 「ここが?……暗くて余り見えないですね~」
 「今、火を灯した。すぐに明るくなる」
 「…………スミスさん。奥に何かいますか?」
 「あぁ。だがそれ以上近づくな」
 「分かりました。……ん~~~?」
 「ここが何だか分かるか?」
 「分からないです。サラに聞いたんですけど教えてくれませんでした。言いたくないと」
 「だろうな」
 「どうしてですか?」
 「自分で考えろ」
 「……分かりました」
 「少なくとも目の前に答えがある」
 「目の前ね~?」
 「……お前の最近の仕事ぶりは聞いている」
 「はい」
 「よくやっているそうだな。感心した」
 「……ありがとうございます」
 「ここで言ってしまうが、お前の再発行は受理される」
 「え?マジッすか?」
 「あぁ、サラクと仲良くやっているし、不審な行動なども見受けられなかった」
 「おお!!やったー!!」
 「まだ、喜ぶのは早い。まだ三週間たっていない。それまでは仕事をしろ」
 「おお!!分かりました。それなら、なんでここに?」
 「……お前はサラクの事が好きか?」
 「はい!好きです!」
 「そうか。だが、お前は弱い」
 「……はい」
 「弱い者が最終的にどうなるかお前に見せようと思ってな」
 「弱い者の最後?」
 「見ろ。これを。目も暗さに慣れただろう」
 「コレ?…………。…………。あ…………。え?…………。ち、違…………。ハァーハァー。ハァーハァー。うぅ!!」
 「吐くな!!是が非でも吐くな!!」
 「ぐぅ!!…………んぅう。ハァーハァー」
 「分かったか。ガクよ」
 「…………はい」
 「これは何だ?言ってみろ」
 「……嫌です」
 「言え」
 「嫌です!!」
 「言えと言っている!!何度も同じ言葉を言わせるな!!バカ者が!!さっさと言え!!」
 「ぐぅ!…………ひ、人です」

  蔵の中、階段を下った鉄格子の中は一般的な教室2つは入るほどの空間があった。その中に人の形をした物が二十ぐらい鎖に繋がれていた。俺は始めは何か物だと思った。その一つは黒グロとし、表面が硬くなっている気もしたし、その物からは液体が裂けめから漏れていた。

  俺がそれを認識したのは黒グロとした物の中に肌色の物が混じっていたからだった。それを見た瞬間、俺は自分の浮かんだ考えが間違っていると思った。間違いだ。違う。別の何かだ。と。

  だが一度認識してしまうとそれにしか見えなかった。つまり、鎖に繋がれ黒グロとなり割れ目から液体が流れてるのも…………人だった。

 「残念だったな。ガクよ、これは奴隷だ」
 「…………奴隷。……だからサラは」
 「そうだ。あいつがあと一歩でなりそうだったのが目の前にいるコレだ」
 「……」
 「ついでに言うとお前もこれになる寸前だった」
 「俺も……」
 「奴隷になる事が何を意味するのか分かってないんだ。お前は」
 「意味」
 「奴隷になるってことは人じゃなくなるって事だ。物になるし、動物になる。道具になったりと様々だ。ここにあるには全部返品させたものだ。買い取った客が要らんと捨てた奴隷だ」
 「…………」
 「そこの黒いのは、火の中に飛び込まされたらしい。燃え盛ってる炎に自ら向かい、命じられるままにその身を焦がした。返した客は全く罪悪感もない。物を燃やした。ただそれだけだ」
 「…………」
 「その、隣の奴は、買い主に目を抜かれ、鼻をそがれ、耳に胴を流された。舌はあるが歯がない。出血は止まってるが、もう考える事を止めている」
 「…………」
 「その隣は、毎晩のように殴られたそうだ。最終的には手足の原型がなくなっていたよ。生きちゃいるがもうダメだな」
 「…………」
 「そいつは、毒を微量ずつ飲まされ、中毒になっている。その毒が厄介で、自分の手足を自分で食べてしまう。だからそいつは縛ってある」
 「…………」
 「目を反らすな!!ちゃんと見ろ!!」
 「………ばい!!」
 「その、一見キレイに見える物があるだろう。あれは寄生生物を体内に入れられた。ざっと30種類は入れたと嬉しそうに喋っていたよ。次は50種類入れても死なないようにしようとまた買って行った」
 「……うぅ…………うぅぅ」
 「これがこの世界で最も弱い人間がなる最後だ。世界に出れば何かしら起きる。お前は弱い。だからお前にこれを見せた。弱けりゃ何も守れない。我身も愛する人もだ。強さにはいろいろある。弱さにもいろいろあるだろう。だが、お前はこうなりなりたいか?」
 「…………なりだぐないでず!!」
 「今のお前は、周りのおかげで生きていると言っても大げさではない。現に私のさじ加減でお前はこうなっていた」
 「…………はい」
 「自覚しろ。この世界では力ある者が全であり正義だ、力無き者は這いつくばりる悪だ」
 「…………」
 「弱い奴は自分すらなくし、ゴミのように殺され、無念しか残らん」
 「……」
 「強くなれ。ガク。お前にサラクを預けられるぐらいに」
 「……」
 「挫けそうになったり、周りに味方いなくてどうしようもなかったら俺を頼れ」
 「うぅうぅぅぅ」
 「もし、奴隷にったらここに是が非でも来い。どうにかしてやろう。少なくとも楽に殺してやろう」
 「うぅぅぅぅうぅぅぅ」
 「辛いか? だが、これがお前の生きてる現実だ。上を目指すのもいいだろう。だが、下を知っておいて損はないだろう」
 「今日は、一日部屋にいて良い。明日からは普通に働け」
 「はい」

  俺は蔵を出てメイルをスミスさんに渡し、風呂に入った。多分今までで、一番長く入っていたと思う。自分の部屋に戻り、横になる。考えるのは蔵の中にいた奴隷たち。

  俺もサラもああなっていた。いや、今もああなる可能性がある。俺の夢はハーレムを作る事。この夢を叶える為にはどれだけの力が必要だろう。

  今の力はサラ一人も守れやしない。

  俺は今、初めてこの世界の怖さを知った。俺は本当に大馬鹿野郎だった。
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