アルカナの旅
物語には終わりと始まりがある。
登場人物すべてに物語があり、語り部が語るはほんの一部。
教室に残る十人の男女。時計の針は数字の十を指している。月を覆う濃い雲は淡い光を隠していた。
トランプの擦れる音、唾が喉を通る響きだけがやけに増幅して聞こえる。
仲が良い、訳じゃあない。小学生からの付き合いというだけの十人はよく言って悪友か。放課後の教室に、堂々残り見つかることも気にしていない。
金曜日の二十二時、どうせ明日は休日だ。子供と大人の猶予に生きる、秘密を共有したい年頃の男女は小さな宴に浸っていた。世界が崩れ去ろうとは知らずに。
これは旅の物語。紡がれるのは幸福か、それとも絶望か。
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