恋心

曙春呑

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一途

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今日の放課後もまた大好きな彼と話せる。

彼というのはインターネット上で知り合った10も年上の男の人だ。
最初こそ好意も何もなかったものの話してるうちにどんどん好きになっていってしまった。
スマホの電源をつけ、目をやる。
そこには
『彼女と別れたくない』
『つらい』
そう彼から連絡が来ていた。

数ヶ月前、少し相談に乗って以来彼女との話はたくさんされるようになった。別れそうだから距離を置いていること、それでも大好きなこと。
私が彼と話せるのは、唯一彼女の愚痴を聞くときだけだ。
『でもお話しできるんですよね』
『きっとどうにかなるはずです!』
そう連絡を返した。

二人は10歳差、つまり彼の彼女は私と同級生なのだ。その上ネットで知り合い、お互い惹かれ、付き合ったのだと言う。なんと羨ましい話なのだろうか。
『それに俺より他の男と電話するの優先してるし』

かつて私にも恋人がいた。彼は浮気して他の女のところに行ったのだが。
浮気された時の辛い気持ちは今でも忘れない。どうしようもない感情に支配され、結局どうしたらいいのかわからなくなる。
私は彼が大好きだ。
そんな思いはしてほしくない。だから相談に乗りたい。
『それでもきっとその子もあなたのこと好きだと思いますよ。』
なんて返信をする。そうでいて欲しいな。彼が悲しむのは辛いから。

『今日電話して話聞いてほしい』
彼からそう連絡が来た。話せるのはすごく嬉しいし幸せだ。
『わかりました。無理しないでくださいね』
そう連絡を返すとすぐに電話がかかってきた。
「もしもし。」
「ごめんねいきなり。」
「暇でしたし大丈夫ですよ。」
こんな始まりだった。やっぱり彼の声はかっこいい。聞いているだけでうっとりしてしまう。
でも彼に幸せでいて欲しいからこの感情は殺す。きっとわかられてしまえば困らせてしまう。
「彼女と多分別れちゃうと思うんだ、俺。」
「辛いですね。」
「…別れたくないな。」
「でもきっと大丈夫ですよ。私の勘って結構当たるんですけど、別れないでいれると思います。」
彼を励ますことはきっとできていないし救うことはできないだろうけど、私の中ではこれで救えたと満足している。
どんなことであれ大好きな彼に必要とされてる事実が嬉しい。
「やっぱ高校生と付き合った俺がバカだったよ。」
「そんなことないと思いますよ。恋愛に年齢なんて関係ないと思います。」
なんてうまくもないフォローばっかりして、また愚痴を聞いて。
話を聞くだけでも彼女の酷さがわかってしまう。それでも好きだという彼の葛藤も、すごくわかる。だからこっちまで胸が苦しくなる。痛いほど気持ちがわかってしまうから。

その繰り返しだったが気づけばもう2時間は経っていた。
「ごめん話しすぎたね。ありがとう。」
「いえいえ、また何かあれば話聞きますからね。」
「でもやっぱ年齢のせいだよな…」
そういっている彼の中ではきっと別れること、うまくいかなかった原因は年齢にあるということが確定しているのだろう。

「俺もう高校生と付き合うのやめるわ。」
なんて冗談めかしく笑いながらいう彼。

そっか、私のチャンスは無くなっちゃった。
心の底にはあった、彼とお近づきになりたいって気持ちは彼の言葉で完全否定されてしまった。

それでも私は彼が大好きだ。
「きっとすぐできますよ。私はそういう性格の人好きですからね。」
彼に落ち込んでほしくない一心で再びフォローをかける。
「…」
「絶対にすぐ見つかりますよ。そしてその人と幸せになれるの願ってます。それではおやすみなさい。」
そういい電話を切った。

あの言葉に嘘はない。

私は彼が大好きだ。
大好きな彼には幸せでいて欲しい。

そんな私の叶わぬ一途な恋心だった。
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