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第二章 誇り高きルディラント
第八話 一度目の探索では試練を①
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「何じゃこりゃあああ!」
「知らなかったのか!?」
「知らねえ! いや本当にな、さっきのであのまま地面ごと地下に下がって、昔の避難所にたどり着けるはずだったんだ!」
「っつか……これは……」
びりびりと叩きつけてくる圧倒的な力が、総司に警鐘を鳴らす。
「リシア、スヴェンを連れて先に行け!」
「バカを言うな! お前も―――――」
「相手はあの巨体で空も飛べるんだぞ! 足止めしなけりゃ逃げ切れるもんかよ!」
「しかし――――」
「言い合ってる暇はねえんだ、下手するとアレインの“ゾルゾディア”よりも――――」
龍の咆哮と共に、三人の視界が一瞬で、漆黒の稲妻を携えた深紅の光に覆われる。
「“シルヴェリア”――――!」
総司が持つ最強の攻撃、シルヴェリア・リスティリオス。アレインの最大の魔法を破った女神の騎士の力で応戦しようと、総司が迷いなく突っ込んだ瞬間。
その足が水色のスライムのような魔力塊に捉えられて、ぐわんと大きく引っ張られ、空へ投げ出された。深紅の閃光が地面を直撃し、神殿を構成する建造物が吹き飛ばされるのが見えた。
続けざまに放たれる閃光が、空中の総司を捉える。だが、総司の前にスヴェンが躍り出て、拳を構えて応戦した。
「“ディノマイト・ジノヴィオス”!」
繰り出される拳。携えるのは水色と白の眩い閃光。
渦巻く光が龍の放つ深紅の波動とぶつかって、見事に殴り飛ばす。深紅の魔力の塊は龍の顔のすぐ横を駆け抜けた。
「しゃあオラァ! 見たかコラァ! なめんじゃねえぞ!」
「スヴェン、あんたすげえな……!」
「ハッハー! 俺が戦えねえなんて一言でも言ったっけか? これでも結構――――やべっ!」
龍の長い体躯がうねり、そのまま鞭のように二人を薙ぎ払おうと繰り出される。スヴェンがジノヴィオスの魔法を使って足場を作り、総司が再び跳躍してスヴェンを捕らえ、そのまま攻撃をかわす。
あまりにも巨大な体躯が繰り出す物理攻撃は、一撃くらうだけで致命傷。範囲も広く、すべての攻撃が一撃必殺の威力を持っている。
「でかいし速いし飛んでるし、とんでもねえな! 一匹で国一つ滅ぶぜ、冗談抜きで!」
「なぜこれほどの魔獣が、このような場所に……」
「考えるのは後だ! 次来るぞ!」
深紅の波動が再び放たれる。三人はぱっと散って攻撃をかわした。しかし、その攻撃は先ほどよりもはるかに威力が上がっており、爆裂の規模が倍になっている。スヴェンに一度弾かれたことで、先ほどまでの出力では足りないと理解したらしい。
「オイ明らかに怒ってるけど! 俺のせいかこれ、俺のせいか!?」
「どうでもいいだろそんなこと! それより作戦を立てねえと!」
「建物に紛れて逃げるか!?」
「多分無駄だ、石の壁で止まるような威力じゃない!」
「だったらアレを倒すつもりか!? 言うまでもねえが自信はないぜ! これっぽっちもな! 今の威力、俺じゃ多分弾けもしねえ!」
「私の剣術で何とかなる相手とはとても思えない――――! ソウシ、お前の魔法ならば或いは……!」
「わかってる! けど当てる算段がねえよ! そりゃ一直線で良けりゃあの高さまででも跳べるだろうが……」
木々に紛れながら走り、龍の狙いをかく乱させる。だが、龍は手当たり次第に魔力の波動をばらまいて、次々に島の表面を破壊していく。三人とも足を止める暇がなかった。
「自在に空を動ける相手に馬鹿正直に突っ込んだって、勝算があるとは思えねえ……!」
「……お前、あんな化け物でも何とか出来そうな魔法を持ってるのか?」
スヴェンが聞くと、総司が頷いた。
「倒せるかまではわからねえが、あんなの剣を振ったってどうにもならねえだろ。でかい一撃かませるのは間違いない」
「なら、それに賭けるしかねえな!」
スヴェンが水色のスライムを分裂させ、地を蹴り、足場に代わりとしてスライムを利用し空へ出る。
「“ウィンテリオ・ジノヴィオス”!」
水色のスライムの断片それぞれが水色と白の輝きを放ち、弾丸と化して、龍に向かって突っ込んでいく。龍はその長い胴体を使って弾丸を薙ぎ払った。
だが、弾丸は弾かれることもなく、そのまま龍の体にくっついた。
「今のは何だ!?」
「あの塊、ジノヴィーって呼んでるんだが。ジノヴィーをアイツの体にくっつけたのさ。ジノヴィーは互いに引かれ合う性質を持つ。どんな形に分裂しても、俺が念じれば元の形に戻るようにな。それを利用して、伸縮性の高いジノヴィーをつなげれば、お前がそれを持てばアイツのところまでぎゅーんと誘導されるってわけだ!」
「……で、今何してる?」
スヴェンは手の中に周囲の魔力をかき集めながら、何かゴムのような粘土のような、水色のスライム・ジノヴィーの元となる塊を必死でコネコネとこね回していた。
「的が多い方がいいかと思って全部使っちまったから、お前が持つためのヒモジノヴィーを作り直さねえといけなくなっちまった!」
「そんなミスある!? 一瞬すげーと思ったのに! じゃあさっさと作ってくれよ!」
「お前バカヤロ、これ本当に大変なんだぞ! ちゃんと作らねえと質が悪くなってだな、もちもち感が足りなくなるんだ!」
「パン作りか!」
「一度食ってみたがこの世の終わりみたいにまずかった!」
再度の砲撃。爆裂の範囲が更に増しており、衝撃波がかすめたリシアが吹き飛ばされる。
「くっ……」
「リシア!」
「大丈夫だ、構うな!」
建造物の壁を利用して態勢を立て直し、二発目を完璧に回避したリシアが、木々の枝を蹴り二人の元へと舞い戻りながら言う。
「このまま私が囮になる! スヴェンはとにかく急いでくれ!」
「ちょっと小麦粉が足りねえかも」
「ふざけている場合か!」
「一発殴っていいかマジで」
「最速だ一応。この島でこその速度だ。俺も職人としての格が上がった気分だ。が……」
スヴェンが急に真面目な顔をしてリシアを見た。
「それでももうちょい掛かる。本当に大丈夫かい、お嬢さん」
「……出会った時から思っていたが」
リシアがふっと笑って言った。
「その呼び方は気に入らない。私はリシア、レブレーベントの騎士だ。似合わない呼び方をしないでもらいたい」
「……ハッ。失礼、リシア」
「リシア、ヤバいと思ったらすぐに隠れろ! 防げないと思ったら俺が弾く!」
「囮になるというのに、お前が護れる範囲にいても意味がないだろうが。お前はヤツを倒すことだけに集中しておけ。私は大丈夫だ。知っているだろう」
リシアの強い目を見て、総司は迷いを振り切った。
「頼んだ!」
「後で会おう!」
リシアがわざと建造物の屋根に躍り出て、二人と逆方向へ走る。龍の目がぎらりとリシアの姿を捉えて、すぐさま深紅の砲撃を開始した。総司とスヴェンもまた走り続け、龍に気づかれないようできるだけ近く、攻撃に打って出やすい場所を探す。
「良い女だな! 付き合ってどれくらいになる!?」
「だからそんなんじゃねえっての!」
「オイオイ、ひねくれたガキじゃあるめえし! モタモタしてっとあんな良い女、誰もかれもお前みたいにほっとかねえぞ!」
走りながら、スヴェンは彼の言葉通り、彼にできうる限りの高速でジノヴィーを作り上げてくれているようだ。ふざけた言葉とは裏腹に、状況の切迫さは理解している。
「あとどれくらいで出来る!?」
「一日寝かせる時間ある?」
「オイてめぇマジでぶっ飛ばすぞ!」
理解していると信じたいところだが、緊張感はないらしい。
「冗談だ冗談! そうピリピリすんな、走りながらこれ作んのは俺も初めてなんだ!」
「さっきから爆発音がやまねえ……! リシアがいつまでも逃げ続けられるわけじゃねえんだ……!」
「任せたもののとんでもねえ度胸だな、リシアは。あの年齢の騎士なんて、実戦経験もほとんどなさそうなもんだが」
「アイツは凄い。それは知ってる。けど、それでどうにかなる相手じゃねえだろうからな」
「知らなかったのか!?」
「知らねえ! いや本当にな、さっきのであのまま地面ごと地下に下がって、昔の避難所にたどり着けるはずだったんだ!」
「っつか……これは……」
びりびりと叩きつけてくる圧倒的な力が、総司に警鐘を鳴らす。
「リシア、スヴェンを連れて先に行け!」
「バカを言うな! お前も―――――」
「相手はあの巨体で空も飛べるんだぞ! 足止めしなけりゃ逃げ切れるもんかよ!」
「しかし――――」
「言い合ってる暇はねえんだ、下手するとアレインの“ゾルゾディア”よりも――――」
龍の咆哮と共に、三人の視界が一瞬で、漆黒の稲妻を携えた深紅の光に覆われる。
「“シルヴェリア”――――!」
総司が持つ最強の攻撃、シルヴェリア・リスティリオス。アレインの最大の魔法を破った女神の騎士の力で応戦しようと、総司が迷いなく突っ込んだ瞬間。
その足が水色のスライムのような魔力塊に捉えられて、ぐわんと大きく引っ張られ、空へ投げ出された。深紅の閃光が地面を直撃し、神殿を構成する建造物が吹き飛ばされるのが見えた。
続けざまに放たれる閃光が、空中の総司を捉える。だが、総司の前にスヴェンが躍り出て、拳を構えて応戦した。
「“ディノマイト・ジノヴィオス”!」
繰り出される拳。携えるのは水色と白の眩い閃光。
渦巻く光が龍の放つ深紅の波動とぶつかって、見事に殴り飛ばす。深紅の魔力の塊は龍の顔のすぐ横を駆け抜けた。
「しゃあオラァ! 見たかコラァ! なめんじゃねえぞ!」
「スヴェン、あんたすげえな……!」
「ハッハー! 俺が戦えねえなんて一言でも言ったっけか? これでも結構――――やべっ!」
龍の長い体躯がうねり、そのまま鞭のように二人を薙ぎ払おうと繰り出される。スヴェンがジノヴィオスの魔法を使って足場を作り、総司が再び跳躍してスヴェンを捕らえ、そのまま攻撃をかわす。
あまりにも巨大な体躯が繰り出す物理攻撃は、一撃くらうだけで致命傷。範囲も広く、すべての攻撃が一撃必殺の威力を持っている。
「でかいし速いし飛んでるし、とんでもねえな! 一匹で国一つ滅ぶぜ、冗談抜きで!」
「なぜこれほどの魔獣が、このような場所に……」
「考えるのは後だ! 次来るぞ!」
深紅の波動が再び放たれる。三人はぱっと散って攻撃をかわした。しかし、その攻撃は先ほどよりもはるかに威力が上がっており、爆裂の規模が倍になっている。スヴェンに一度弾かれたことで、先ほどまでの出力では足りないと理解したらしい。
「オイ明らかに怒ってるけど! 俺のせいかこれ、俺のせいか!?」
「どうでもいいだろそんなこと! それより作戦を立てねえと!」
「建物に紛れて逃げるか!?」
「多分無駄だ、石の壁で止まるような威力じゃない!」
「だったらアレを倒すつもりか!? 言うまでもねえが自信はないぜ! これっぽっちもな! 今の威力、俺じゃ多分弾けもしねえ!」
「私の剣術で何とかなる相手とはとても思えない――――! ソウシ、お前の魔法ならば或いは……!」
「わかってる! けど当てる算段がねえよ! そりゃ一直線で良けりゃあの高さまででも跳べるだろうが……」
木々に紛れながら走り、龍の狙いをかく乱させる。だが、龍は手当たり次第に魔力の波動をばらまいて、次々に島の表面を破壊していく。三人とも足を止める暇がなかった。
「自在に空を動ける相手に馬鹿正直に突っ込んだって、勝算があるとは思えねえ……!」
「……お前、あんな化け物でも何とか出来そうな魔法を持ってるのか?」
スヴェンが聞くと、総司が頷いた。
「倒せるかまではわからねえが、あんなの剣を振ったってどうにもならねえだろ。でかい一撃かませるのは間違いない」
「なら、それに賭けるしかねえな!」
スヴェンが水色のスライムを分裂させ、地を蹴り、足場に代わりとしてスライムを利用し空へ出る。
「“ウィンテリオ・ジノヴィオス”!」
水色のスライムの断片それぞれが水色と白の輝きを放ち、弾丸と化して、龍に向かって突っ込んでいく。龍はその長い胴体を使って弾丸を薙ぎ払った。
だが、弾丸は弾かれることもなく、そのまま龍の体にくっついた。
「今のは何だ!?」
「あの塊、ジノヴィーって呼んでるんだが。ジノヴィーをアイツの体にくっつけたのさ。ジノヴィーは互いに引かれ合う性質を持つ。どんな形に分裂しても、俺が念じれば元の形に戻るようにな。それを利用して、伸縮性の高いジノヴィーをつなげれば、お前がそれを持てばアイツのところまでぎゅーんと誘導されるってわけだ!」
「……で、今何してる?」
スヴェンは手の中に周囲の魔力をかき集めながら、何かゴムのような粘土のような、水色のスライム・ジノヴィーの元となる塊を必死でコネコネとこね回していた。
「的が多い方がいいかと思って全部使っちまったから、お前が持つためのヒモジノヴィーを作り直さねえといけなくなっちまった!」
「そんなミスある!? 一瞬すげーと思ったのに! じゃあさっさと作ってくれよ!」
「お前バカヤロ、これ本当に大変なんだぞ! ちゃんと作らねえと質が悪くなってだな、もちもち感が足りなくなるんだ!」
「パン作りか!」
「一度食ってみたがこの世の終わりみたいにまずかった!」
再度の砲撃。爆裂の範囲が更に増しており、衝撃波がかすめたリシアが吹き飛ばされる。
「くっ……」
「リシア!」
「大丈夫だ、構うな!」
建造物の壁を利用して態勢を立て直し、二発目を完璧に回避したリシアが、木々の枝を蹴り二人の元へと舞い戻りながら言う。
「このまま私が囮になる! スヴェンはとにかく急いでくれ!」
「ちょっと小麦粉が足りねえかも」
「ふざけている場合か!」
「一発殴っていいかマジで」
「最速だ一応。この島でこその速度だ。俺も職人としての格が上がった気分だ。が……」
スヴェンが急に真面目な顔をしてリシアを見た。
「それでももうちょい掛かる。本当に大丈夫かい、お嬢さん」
「……出会った時から思っていたが」
リシアがふっと笑って言った。
「その呼び方は気に入らない。私はリシア、レブレーベントの騎士だ。似合わない呼び方をしないでもらいたい」
「……ハッ。失礼、リシア」
「リシア、ヤバいと思ったらすぐに隠れろ! 防げないと思ったら俺が弾く!」
「囮になるというのに、お前が護れる範囲にいても意味がないだろうが。お前はヤツを倒すことだけに集中しておけ。私は大丈夫だ。知っているだろう」
リシアの強い目を見て、総司は迷いを振り切った。
「頼んだ!」
「後で会おう!」
リシアがわざと建造物の屋根に躍り出て、二人と逆方向へ走る。龍の目がぎらりとリシアの姿を捉えて、すぐさま深紅の砲撃を開始した。総司とスヴェンもまた走り続け、龍に気づかれないようできるだけ近く、攻撃に打って出やすい場所を探す。
「良い女だな! 付き合ってどれくらいになる!?」
「だからそんなんじゃねえっての!」
「オイオイ、ひねくれたガキじゃあるめえし! モタモタしてっとあんな良い女、誰もかれもお前みたいにほっとかねえぞ!」
走りながら、スヴェンは彼の言葉通り、彼にできうる限りの高速でジノヴィーを作り上げてくれているようだ。ふざけた言葉とは裏腹に、状況の切迫さは理解している。
「あとどれくらいで出来る!?」
「一日寝かせる時間ある?」
「オイてめぇマジでぶっ飛ばすぞ!」
理解していると信じたいところだが、緊張感はないらしい。
「冗談だ冗談! そうピリピリすんな、走りながらこれ作んのは俺も初めてなんだ!」
「さっきから爆発音がやまねえ……! リシアがいつまでも逃げ続けられるわけじゃねえんだ……!」
「任せたもののとんでもねえ度胸だな、リシアは。あの年齢の騎士なんて、実戦経験もほとんどなさそうなもんだが」
「アイツは凄い。それは知ってる。けど、それでどうにかなる相手じゃねえだろうからな」
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