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17巻
17-3
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「本来であれば彼一代の夢の花で終わるはずでございました。しかし、接ぎ木という抜け道を用いる事で奇跡は日本中に広まり……その後は若様もご存知の通り、皆に愛されるようになりました。もっとも、契約の更新が果たされたわけでもないので、延々と接ぎ木で増やすほかなく、先ほど仰られたようにクローンだらけという異様な状態が続いてきたのです」
「つ、つまりソメイヨシノは通常存在する桜ではなく、神様が絡んでいる特殊な樹で、それが理由で亜空には存在しないって事?」
「……ええ、まあ」
「何か隠してる?」
「まさか。詳しい話を細々としても長くて複雑なだけで、どうせ完全に理解できるはずもないのでめんど……ではなく、真様には退屈かと推察しただけです。大筋では合っておりますし、もう良いかな、と」
おお。どうやらこれまで僕が選んできた〝複雑で難しい話はスキップする〟を従者の側からしてくれたらしい。
うん、僕は随分乱暴な真似をしてきたな。
「……うん、ソメイヨシノがない理由はなんとなく理解できた」
「お力になれて何よりでした。少々不敬な事も申しましたので少しだけ補足しますと、姫神との契約は最近ようやく更新されまして、二代目が襲名しました」
「襲名?」
そして二代目とな。
「ええ、真なる意味での二代目桜守でございます」
桜守ね。おぼろげに聞いたような気はする。
花守の一種だっけ。真なる意味ってのは謎だけども、確か桜の面倒を見たりしている人の事だっけ。
「――故にソメイヨシノには娘、息子にあたる新種が生まれておりますね。コマツオトメにジンダイアケボノ。日本では少しずつ寿命を迎えたソメイヨシノからこれらに植え替えられているとか。残念ながらどちらも亜空にはございませんが、その姫神より、真様にこちらを預かっております」
環が巫女装束の懐から微かな薄桜色の綿を差し出してきた。
丁重に綿のくるみを解くと、そこには小さな種が一つ。
「これは、桜の種?」
話の流れから、まず間違いないだろう。
「はい。姫神よりソメイヨシノを愛してくれるのなら渡せ、と。純正なるソメイヨシノの種でございます」
「純正って言われても……」
「あ……ええ。そうですね、俗世の意味でなく……要するに、植えれば芽が出て育つ種でございます」
「……凄い代物じゃないか」
「はい、概念的に申し上げれば、世界で二本目のソメイヨシノです。接ぎ木を用いないのであれば、クローンならではの問題もあまり関係ありませんし、病害については亜空では心配いらないでしょう。ですからきっと、植えれば世界で一番長生きするソメイヨシノになりましょう」
よく、あの桜は短命だって言われる。確か四十年、五十年で枯れてしまうのも珍しくないんだとか。
樹木としては確かに短いように思える。
長生きしてくれるなら、八十年、百年生きてくれると嬉しいんだけどなあ。
世界で二本目、クローンじゃないソメイヨシノか。
「なら、境内に植えちゃおうか。基本的な管理は環に任せるよ」
色々知ってそうな雰囲気出しているし、適任じゃないかな。
一応、神社の境内にはこれ一本にして……うまく接ぎ木できそうなら街の方には何本か植えるのも良い。
「畏まりました。お任せくださいませ。せっかくですから、境内にてご神木として大事にお育ていたしますね」
環は真剣な表情で引き受けてくれた。
けれど彼女の目にはやはり、時折あの色がちらつく。
ああ、分かっている。
覚悟は決まっているさ。
そして初心忘れるべからず、だ。
僕が商人として出直すというのなら、師事すべき人はあの人しかいない。
しばらくはツィーゲに引き篭もる事になりそうだ。
最悪、ロッツガルド学園で僕が受け持っている講義の方は、識に任せる回が増えてしまいそうだけど、仕方ない。
そもそも僕の講義を初期から受けているジン達については、もう学生レベルを超えた実力を身に着けているわけで、他の講義に集中して見識を広めるのも良い事だと思う。
ロッツガルド学園では戦闘技術や魔法技術に秀でている事が特に評価されはするけれど、商人や貴族向けの専門科目も多々あって幅広い分野の知識を得る事ができるんだから。
あくまで僕らが教えているのはその中の一部、戦闘技術でしかないんだ。
よし……じゃあやりますか。
僕自身のアップデートってのを!
2
辺境都市ツィーゲから世界の果てに挑む冒険者達には、大抵それぞれの目的がある。
金か力である事がほとんどだが、中にはそうではない者もいる。
たとえば、ツィーゲのトップランカーである女冒険者トアは、そんな変わり者の一人だ。
ヒューマンが荒野で築いたベースの中で最奥に位置するのは、かつて絶野と呼ばれた場所だが、彼女はそこで、一度人生に幕を降ろす直前まで追い詰められた経験がある。
そして、クズノハ商会代表ライドウこと真に救われた。
以後、彼女は拠点をツィーゲに戻した上で、新たに出会った仲間と共に荒野に挑み続けている。
「さ、行くぞ」
冒険者ギルドを出たばかりのトアの口から、小さな呟きがこぼれた。
ふとした独り言でもあり、決意の声でもあった。
いつもと同じようで絶対的に違う。
行くぞと呟いたトアは、運命に挑むかの如き力強い目をしていた。
この街を拠点とする全ての冒険者が認め、憧れるエースとなったトアと、彼女をリーダーとするパーティ『アルパイン』は、現在も精力的に荒野に入り、そして生還し続けている。
もう無茶な依頼を引き受けては文字通り〝冒険〟を繰り返していた彼女はいない。
妹のため、自分のため、仲間のため、そして依頼人のため。
とにかく生還を第一にしつつ、かつ己が胸に秘めた目的のために荒野に挑んでいる。
絶野での真との奇跡的な出会いは、彼女らにとって文字通りの転機となったわけだ。
トアを見かけた冒険者らが口々に彼女に声をかける。
「トアさん! 今度のは長いんすか! どこ行くか教えてくださいよ、情報屋も掴んでないとか、気になるじゃないすか!!」
「トア姉! この間はヘマした依頼引き継いでくれて助かりました!」
「お出かけですか。また新しい詩が作れますねぇ」
「お姉さま、抱いて! 一度でいいから!」
一部おかしな内容が交じっているのはいつもの事だ。
先ほどの決意の表情も瞳も、普段のふんわりとした笑顔で覆い隠し、人垣を割って相槌程度の受け答えで彼らをあしらっていくトアの様は、実に堂々としたものだ。
「ほら、トアさんが困っているでしょう! 皆さん、散る、散る!」
続いて冒険者ギルドから出てきた男性職員が、トアの帰路をサポートする。
こうした光景は、アルパインの誰かしらがギルドに来れば見慣れたものである。
パーティ全員が揃い、かつ完全武装などしてギルドに来た時など、ちょっとしたイベントだ。
ギルド前に屋台を連ねる露店商人らにとっては、嬉しい悲鳴が出るサプライズといったところか。
ちなみに、トアの妹であるリノンが絵の才能を発揮してアルパインの面々が勢揃いしたイラストを描いたものには、その枚数の少なさもあって結構なプレミアがついている。
リノンもまたアルパインの経理担当として、そして絵描きとして順調に彼女自身の道を歩んでいた。
「まったく……アルパインの皆さんの心を乱すような騒ぎは本当に控えてください。何せ今回はトビキリの未踏領域の開拓……あ」
まるでアルパインに所属するただ一人の男性ハザルがするようなうっかりで、情報を漏らす職員。
その一言による衝撃は、あっという間にトアを見るために集まった人だかりに伝播し、皆の目の色が変わる。
未踏領域の開拓――言葉通り、まだツィーゲが把握していない地域への進出だ。
新しい情報、新しい物資、新しい魔物、新しい気候、新しい……。
荒野において未踏領域はまさに何が出るか分からないワンダーランドである。
期待値も危険度も振り切れている、一握りのエースにしか許されない紛れもない冒険。
更にアルパインには既に何度も未踏領域に挑み、無事に生還して地図を描き足してきた確かな実績がある。
その彼女達が、新たな未踏領域に挑む。
これが騒ぎにならないはずがない。
口が滑った冒険者ギルドの職員はもちろん、トアに憧れる冒険者も、彼らに武具を提供する職人も、生き馬の目を抜くこの街でチャンスを窺う商人も、吟遊詩人も、多くのツィーゲっ子達も。
何週間か先にもたらされるであろう多くのニュースに思いを巡らせ、改めてトアの背に尊敬や畏敬の念を向ける。
一方、後方で爆発した大騒ぎに状況を察したトアは、僅かに肩をすくめた。
(今回は未踏領域の探索予定といっても完全に私用なのよね……。間違った事は言っていないんだけど、補助金もらうの、少しだけ罪悪感あるわー)
だが、これも金庫番である妹から命じられた重要なパーティの仕事だったのだと割り切る。
私用――つまり、今回トアが荒野に挑む理由は、かつて彼女の先祖が荒野で失った短剣を捜すためだ。
特殊な材質の蒼い短剣。
それこそが、彼女が冒険者になった理由だ。
透き通るほどの透明度を持った特殊な石を素材とする短剣で、武器としても術の触媒としても優れた性能を持つと、トアの家では伝えられていた。
刀身にも柄にも精緻な細工が施されていて、神殿の儀礼にも使われていたらしい。
ただ、トア自身は実物を拝んだ事はない。
トアはそれだけの情報を頼りに、短剣を持って荒野に入り、そして遂に戻らなかった先祖の足跡を追い続けていた。
唯一の身内である妹リノンを連れて。
(あの頃の私は、思えば随分と刹那的に生きてきたものね。ライドウさんに会わなければ終わっていた命だし。そうだ、もし無事に荒野から短剣を回収できたなら……この街で生きていくのも悪くないわね。家も買っちゃったもの)
ライドウに連れられてツィーゲに戻ったトアは、絶野で同じ境遇にあった数人とパーティを組んだ。
荒野を訪れた目的はそれぞれ違ったが、それを満たしてなお、全員がトアの目的に付き合ってくれていた。
ありがたい、とトアは思う。
だからもし目的が叶った後、皆が同じ気持ちなら、ツィーゲの冒険者としてこの街で生き、貢献していくのも悪くないと彼女は考えていた。
本来、パーティ単位であってもツィーゲの冒険者が家を持つのは珍しい。
何せ、明日我が身に何が起こるか分からない冒険者稼業である。
活動の拠点にするとしても、ほとんどは家を借りるか宿に長期滞在をするかの二択であり、それが常識でもある。
少なくとも家を買った時点で、トアとその仲間がツィーゲに良い感情を持っているのは間違いなかった。
「ただいまー」
家に、そしてまっすぐ自室に戻ったトアは、着心地重視の衣類を脱ぎ捨てる。
(行こう。今回は四週間。予備日を入れても三十日で街に戻る)
手馴れた様子で戦闘用の装備を身に纏っていく。
値を付けるなら一つ一つで家が数件買える愛用の武具を全て着用したトアは、既にまとめてある荷物を背負い、二階にある自身の部屋を出た。手早い。
彼女が吹き抜けから下を見ると、広く造られた玄関には既に仲間が揃っていた。
「今回は四週間だったね、準備はできているよ」
パーティ唯一の男性であり、支援や回復も担当している術師が、トアに気付いた。
「ハザル」
女神の祝福は男性よりも女性により有効に働くため、高レベルの冒険者や騎士には女性が多い傾向があった。
男性で高レベルのパーティにいる冒険者というのは、一昔前には考えられない事だったが、この十年ほどで大分状況も変わっている。
今では男性でも高ランク高レベルの冒険者として活躍している者も大勢いる。
女神の祝福に頼らないならば、冒険者の実力に男女の差別はないという証拠でもある。
ハザルの言葉に頷き、トアは階段を下りて彼らのもとへ辿り着いた。
「今度こそ見つかるとよいな!」
「ありがとう、ラニーナ」
続いてトアに声を掛けたのはドワーフの女性だ。
パーティで一番小柄ながら、がっしりとした体格をしている。装備品も重装備の戦士そのものであり、更に荷物も一番多く携行していた。
口調は大人びている――むしろ老人臭いというのに、少女のような顔立ちをしているのも印象的な女性だった。巴に憧れを持っているのか、最近は特に言動がじじ臭い。
「なに、エルダードワーフの村落の跡までは、ある程度の情報はある。それほど気負った顔をするな」
「ええ。クズノハ商会には本当に助けてもらっているわね」
彼女、ラニーナは大地の精霊を信仰する戦士であり、修練のためにこの地を訪れていた。
既に十分すぎるほどの修練を積み、いつでも故郷に帰れる身ではあるが、トアを助けるためにツィーゲに留まっている。
流通が盛んになり、活気に溢れているツィーゲに集まってくる各地の酒も美食も彼女の目的ではあるものの、仲間思いの神官戦士である事は間違いない。
「薬も保存食もクズノハ製で調達済み。まあ現地調達が基本だけど〝潜る〟のに支障がない程度には、ね」
「ルイザ。悪いわね、森鬼の集落を見つけたのに、また付き合わせて」
携行品についてトアに報告したのはエルフの女性。
エルフの名に恥じぬスレンダーな長身で、背には弓矢を背負っている。
ヒューマンとは一定の距離をもって付き合いをするエルフには珍しく、実に親しみを込めた口調で話している。
しかも、犬猿の仲とも言われるドワーフの横でも、警戒も嫌悪もなく笑みを浮かべていた。
「あんな近くにあったなんて盲点だったけど、それもトア達の助けがなかったら達成できなかった。なら、その恩ある仲間を助けるのは当然の事。気にしないで」
「森鬼に関する報告はもう済んだの?」
「もちろん。ちょっと――何十年かこの街にいるとも、故郷には連絡済みよ。だから今回も次回もその次も当てにしてくれていい。貴方が冒険者である限り、ずっとね」
「……ありがとう」
ルイザの目的は、かつて進むべき道の違いから森を離れて荒野に消えたと言われる古きエルフ、森鬼の存在を確かめる事だった。
ツィーゲからそれほど遠くない場所で彼らの集落を見つけ、ルイザの目的は一応果たされていた。
それどころか、今のツィーゲにはクズノハ商会の従業員として、その森鬼が働いている。
つまり、もうルイザがツィーゲに留まる意味も、冒険者をやる意味もないのだが、それでも彼女は冒険者として活動し、トアと共にいる。刺激溢れるヒューマンの街での生活が魅力的なのかもしれないが、言葉通り友人であり仲間でもあるトアを助けるためという目的もある。
まだエルフとしては若く、ヒューマンや異種族との交わりを柔軟に考える事ができるルイザだからこその決断でもあった。
「お姉ちゃん、気を付けてね。私の事は心配しなくても大丈夫だから、安全第一で」
「当然。リノンを遺して死ねないもの。今の私はお姉ちゃんパワーを自在に使えるから大丈夫よ」
「お、おねえちゃんぱわー?」
「ライドウさんに教えてもらったの。リノンのためにも、軽ーく帰ってくるから、絵の勉強頑張りなさい。コモエちゃんと喧嘩しちゃ駄目よ」
コモエは巴の分体で、度々リノン達のもとを訪れている。
「コモエと喧嘩するわけないよ、親友だもん。それからこれ、ギルドから。目を通してほしい依頼だって。ついさっき届いたから、行き違いもあるかも。緊急のは断っておいたから」
今やトア達が住所を定めた事もあって、名指しの依頼や処理に困った案件については、ギルドの方が家に来るケースが多くなっていた。
トアの妹であるリノンも冒険者ギルド職員の対応にすっかり慣れ、実質トアパーティの優秀なマネージャーでもあった。
リノンから受け取った書面にさっと目を通すと、トアは改めて荷物を担ぐ。
「ん。それじゃ、行ってきます」
「いってらっしゃい。帰りは一ヵ月後、だね」
「予定ではねー!」
四人の冒険者が歩き出す。
家を出て、レンブラント商会に間借りしているクズノハ商会の店舗に顔を見せてから荒野の門へ。
それが今の彼女らの定番ルートだった。もちろん、別に依頼を受けて荒野に入る時は、必要に応じてルートも変わる。
「こんにちはー!!」
「おお、トア。今日出発か」
クズノハに顔を出したトア達の対応をするのはまず、エルダードワーフ――略してエルドワである事が多い。今回もそうだった。
「はい! 何か手伝える事があればと思って来たんですが」
一時期、巴と行動を共にしていた時を過ぎてから、トア達はほぼ自力で荒野の中を立ち回っている。
それでもなお、彼女達はクズノハ商会とライドウに深い恩を感じ、彼らに報いようと心に誓っていた。
荒野に出るたびに、何か力になれる事があればとクズノハ商会に顔を出したり、帰ってきたら何も頼まれなくても荒野で得た物や見聞きした事について話したり。
そして時には巴や澪にしごかれたり。
双方に益がある濃い関係を築いていた。
「特にはないな。若様もロッツガルドから外に出られていて、最近はお会いしていないし。……今回は我々が昔住んでいた村の更に奥を目指すんだったな?」
「ええ」
「気を付けてな。お前の求める短剣について、力になれんですまんが」
エルダードワーフが申し訳なさそうに頭を下げた。
「そんな。地理の情報をいただけただけでも物凄く感謝してます。お土産、期待しててくださいね」
「まったく、気を付けろとは言ったが、気を遣えとは言っとらんぞ?」
「クズノハ商会にはお世話になっていますから。ライドウさんがいなかったら、今の私達はありません」
「以前、若様が命を救った、だったか」
「それもありますけど、今の私達の荒野探索のスタイルもライドウさんのおかげで確立できたようなものなんです」
「……ああ、確か極地法とアルパインなんちゃらだったか」
エルダードワーフがうろ覚えで口にした言葉をトアが補足する。
「アルパインスタイルです」
「若様の国での登山の技法。そういえば、お前達は妙に興味深く聞いていたな」
以前、ライドウがツィーゲの店に顔を出した際、偶然トア達もそこに居合わせて、そんな話になったのを、エルダードワーフが思い出す。
何故ただ山の頂上を目指すためにそこまで技術を考えるのか。そんな疑問をドワーフの彼は抱いたが、口にせずただ話を聞いていた。
一方、トア達は途中から目の色を変えて話に没頭していて、彼には話の内容よりもそちらが印象的だった。
トアはうんうんと頷いて、当時の事を振り返る。
「登山にそこまで拘る国なんて聞いた事がなかったんですけど、あの考え方は荒野にもまるまる適用できるって思ったんです。考えてみれば荒野は、頂上がまるで見えない巨大な山みたいなものですからね」
「確か拠点を作りながら人員と物資を大量に投入し、最後は厳選したメンバーで頂上を目指すのが極地法」
「はい。それとは別に、個人の能力を重視して、登る時は一気に、速度重視で攻めるのがアルパインスタイルです」
「現状でのツィーゲにおける荒野探索は極地法的な手法がとられている事になるな」
「そうです。でも、その限界は見えています。せいぜい絶野までだと」
そこより先に物資を届け、ベースを維持していくだけの諸々が足りていないのだ。
絶野一つだけ見ても、維持するのにかかる経費は莫大だ。
見返りとしてのまだ見ぬ素材には無限の可能性と浪漫はあるが、絶野クラスの深いベースの維持には確かに現実的とは言えない額が必要になる。
「つ、つまりソメイヨシノは通常存在する桜ではなく、神様が絡んでいる特殊な樹で、それが理由で亜空には存在しないって事?」
「……ええ、まあ」
「何か隠してる?」
「まさか。詳しい話を細々としても長くて複雑なだけで、どうせ完全に理解できるはずもないのでめんど……ではなく、真様には退屈かと推察しただけです。大筋では合っておりますし、もう良いかな、と」
おお。どうやらこれまで僕が選んできた〝複雑で難しい話はスキップする〟を従者の側からしてくれたらしい。
うん、僕は随分乱暴な真似をしてきたな。
「……うん、ソメイヨシノがない理由はなんとなく理解できた」
「お力になれて何よりでした。少々不敬な事も申しましたので少しだけ補足しますと、姫神との契約は最近ようやく更新されまして、二代目が襲名しました」
「襲名?」
そして二代目とな。
「ええ、真なる意味での二代目桜守でございます」
桜守ね。おぼろげに聞いたような気はする。
花守の一種だっけ。真なる意味ってのは謎だけども、確か桜の面倒を見たりしている人の事だっけ。
「――故にソメイヨシノには娘、息子にあたる新種が生まれておりますね。コマツオトメにジンダイアケボノ。日本では少しずつ寿命を迎えたソメイヨシノからこれらに植え替えられているとか。残念ながらどちらも亜空にはございませんが、その姫神より、真様にこちらを預かっております」
環が巫女装束の懐から微かな薄桜色の綿を差し出してきた。
丁重に綿のくるみを解くと、そこには小さな種が一つ。
「これは、桜の種?」
話の流れから、まず間違いないだろう。
「はい。姫神よりソメイヨシノを愛してくれるのなら渡せ、と。純正なるソメイヨシノの種でございます」
「純正って言われても……」
「あ……ええ。そうですね、俗世の意味でなく……要するに、植えれば芽が出て育つ種でございます」
「……凄い代物じゃないか」
「はい、概念的に申し上げれば、世界で二本目のソメイヨシノです。接ぎ木を用いないのであれば、クローンならではの問題もあまり関係ありませんし、病害については亜空では心配いらないでしょう。ですからきっと、植えれば世界で一番長生きするソメイヨシノになりましょう」
よく、あの桜は短命だって言われる。確か四十年、五十年で枯れてしまうのも珍しくないんだとか。
樹木としては確かに短いように思える。
長生きしてくれるなら、八十年、百年生きてくれると嬉しいんだけどなあ。
世界で二本目、クローンじゃないソメイヨシノか。
「なら、境内に植えちゃおうか。基本的な管理は環に任せるよ」
色々知ってそうな雰囲気出しているし、適任じゃないかな。
一応、神社の境内にはこれ一本にして……うまく接ぎ木できそうなら街の方には何本か植えるのも良い。
「畏まりました。お任せくださいませ。せっかくですから、境内にてご神木として大事にお育ていたしますね」
環は真剣な表情で引き受けてくれた。
けれど彼女の目にはやはり、時折あの色がちらつく。
ああ、分かっている。
覚悟は決まっているさ。
そして初心忘れるべからず、だ。
僕が商人として出直すというのなら、師事すべき人はあの人しかいない。
しばらくはツィーゲに引き篭もる事になりそうだ。
最悪、ロッツガルド学園で僕が受け持っている講義の方は、識に任せる回が増えてしまいそうだけど、仕方ない。
そもそも僕の講義を初期から受けているジン達については、もう学生レベルを超えた実力を身に着けているわけで、他の講義に集中して見識を広めるのも良い事だと思う。
ロッツガルド学園では戦闘技術や魔法技術に秀でている事が特に評価されはするけれど、商人や貴族向けの専門科目も多々あって幅広い分野の知識を得る事ができるんだから。
あくまで僕らが教えているのはその中の一部、戦闘技術でしかないんだ。
よし……じゃあやりますか。
僕自身のアップデートってのを!
2
辺境都市ツィーゲから世界の果てに挑む冒険者達には、大抵それぞれの目的がある。
金か力である事がほとんどだが、中にはそうではない者もいる。
たとえば、ツィーゲのトップランカーである女冒険者トアは、そんな変わり者の一人だ。
ヒューマンが荒野で築いたベースの中で最奥に位置するのは、かつて絶野と呼ばれた場所だが、彼女はそこで、一度人生に幕を降ろす直前まで追い詰められた経験がある。
そして、クズノハ商会代表ライドウこと真に救われた。
以後、彼女は拠点をツィーゲに戻した上で、新たに出会った仲間と共に荒野に挑み続けている。
「さ、行くぞ」
冒険者ギルドを出たばかりのトアの口から、小さな呟きがこぼれた。
ふとした独り言でもあり、決意の声でもあった。
いつもと同じようで絶対的に違う。
行くぞと呟いたトアは、運命に挑むかの如き力強い目をしていた。
この街を拠点とする全ての冒険者が認め、憧れるエースとなったトアと、彼女をリーダーとするパーティ『アルパイン』は、現在も精力的に荒野に入り、そして生還し続けている。
もう無茶な依頼を引き受けては文字通り〝冒険〟を繰り返していた彼女はいない。
妹のため、自分のため、仲間のため、そして依頼人のため。
とにかく生還を第一にしつつ、かつ己が胸に秘めた目的のために荒野に挑んでいる。
絶野での真との奇跡的な出会いは、彼女らにとって文字通りの転機となったわけだ。
トアを見かけた冒険者らが口々に彼女に声をかける。
「トアさん! 今度のは長いんすか! どこ行くか教えてくださいよ、情報屋も掴んでないとか、気になるじゃないすか!!」
「トア姉! この間はヘマした依頼引き継いでくれて助かりました!」
「お出かけですか。また新しい詩が作れますねぇ」
「お姉さま、抱いて! 一度でいいから!」
一部おかしな内容が交じっているのはいつもの事だ。
先ほどの決意の表情も瞳も、普段のふんわりとした笑顔で覆い隠し、人垣を割って相槌程度の受け答えで彼らをあしらっていくトアの様は、実に堂々としたものだ。
「ほら、トアさんが困っているでしょう! 皆さん、散る、散る!」
続いて冒険者ギルドから出てきた男性職員が、トアの帰路をサポートする。
こうした光景は、アルパインの誰かしらがギルドに来れば見慣れたものである。
パーティ全員が揃い、かつ完全武装などしてギルドに来た時など、ちょっとしたイベントだ。
ギルド前に屋台を連ねる露店商人らにとっては、嬉しい悲鳴が出るサプライズといったところか。
ちなみに、トアの妹であるリノンが絵の才能を発揮してアルパインの面々が勢揃いしたイラストを描いたものには、その枚数の少なさもあって結構なプレミアがついている。
リノンもまたアルパインの経理担当として、そして絵描きとして順調に彼女自身の道を歩んでいた。
「まったく……アルパインの皆さんの心を乱すような騒ぎは本当に控えてください。何せ今回はトビキリの未踏領域の開拓……あ」
まるでアルパインに所属するただ一人の男性ハザルがするようなうっかりで、情報を漏らす職員。
その一言による衝撃は、あっという間にトアを見るために集まった人だかりに伝播し、皆の目の色が変わる。
未踏領域の開拓――言葉通り、まだツィーゲが把握していない地域への進出だ。
新しい情報、新しい物資、新しい魔物、新しい気候、新しい……。
荒野において未踏領域はまさに何が出るか分からないワンダーランドである。
期待値も危険度も振り切れている、一握りのエースにしか許されない紛れもない冒険。
更にアルパインには既に何度も未踏領域に挑み、無事に生還して地図を描き足してきた確かな実績がある。
その彼女達が、新たな未踏領域に挑む。
これが騒ぎにならないはずがない。
口が滑った冒険者ギルドの職員はもちろん、トアに憧れる冒険者も、彼らに武具を提供する職人も、生き馬の目を抜くこの街でチャンスを窺う商人も、吟遊詩人も、多くのツィーゲっ子達も。
何週間か先にもたらされるであろう多くのニュースに思いを巡らせ、改めてトアの背に尊敬や畏敬の念を向ける。
一方、後方で爆発した大騒ぎに状況を察したトアは、僅かに肩をすくめた。
(今回は未踏領域の探索予定といっても完全に私用なのよね……。間違った事は言っていないんだけど、補助金もらうの、少しだけ罪悪感あるわー)
だが、これも金庫番である妹から命じられた重要なパーティの仕事だったのだと割り切る。
私用――つまり、今回トアが荒野に挑む理由は、かつて彼女の先祖が荒野で失った短剣を捜すためだ。
特殊な材質の蒼い短剣。
それこそが、彼女が冒険者になった理由だ。
透き通るほどの透明度を持った特殊な石を素材とする短剣で、武器としても術の触媒としても優れた性能を持つと、トアの家では伝えられていた。
刀身にも柄にも精緻な細工が施されていて、神殿の儀礼にも使われていたらしい。
ただ、トア自身は実物を拝んだ事はない。
トアはそれだけの情報を頼りに、短剣を持って荒野に入り、そして遂に戻らなかった先祖の足跡を追い続けていた。
唯一の身内である妹リノンを連れて。
(あの頃の私は、思えば随分と刹那的に生きてきたものね。ライドウさんに会わなければ終わっていた命だし。そうだ、もし無事に荒野から短剣を回収できたなら……この街で生きていくのも悪くないわね。家も買っちゃったもの)
ライドウに連れられてツィーゲに戻ったトアは、絶野で同じ境遇にあった数人とパーティを組んだ。
荒野を訪れた目的はそれぞれ違ったが、それを満たしてなお、全員がトアの目的に付き合ってくれていた。
ありがたい、とトアは思う。
だからもし目的が叶った後、皆が同じ気持ちなら、ツィーゲの冒険者としてこの街で生き、貢献していくのも悪くないと彼女は考えていた。
本来、パーティ単位であってもツィーゲの冒険者が家を持つのは珍しい。
何せ、明日我が身に何が起こるか分からない冒険者稼業である。
活動の拠点にするとしても、ほとんどは家を借りるか宿に長期滞在をするかの二択であり、それが常識でもある。
少なくとも家を買った時点で、トアとその仲間がツィーゲに良い感情を持っているのは間違いなかった。
「ただいまー」
家に、そしてまっすぐ自室に戻ったトアは、着心地重視の衣類を脱ぎ捨てる。
(行こう。今回は四週間。予備日を入れても三十日で街に戻る)
手馴れた様子で戦闘用の装備を身に纏っていく。
値を付けるなら一つ一つで家が数件買える愛用の武具を全て着用したトアは、既にまとめてある荷物を背負い、二階にある自身の部屋を出た。手早い。
彼女が吹き抜けから下を見ると、広く造られた玄関には既に仲間が揃っていた。
「今回は四週間だったね、準備はできているよ」
パーティ唯一の男性であり、支援や回復も担当している術師が、トアに気付いた。
「ハザル」
女神の祝福は男性よりも女性により有効に働くため、高レベルの冒険者や騎士には女性が多い傾向があった。
男性で高レベルのパーティにいる冒険者というのは、一昔前には考えられない事だったが、この十年ほどで大分状況も変わっている。
今では男性でも高ランク高レベルの冒険者として活躍している者も大勢いる。
女神の祝福に頼らないならば、冒険者の実力に男女の差別はないという証拠でもある。
ハザルの言葉に頷き、トアは階段を下りて彼らのもとへ辿り着いた。
「今度こそ見つかるとよいな!」
「ありがとう、ラニーナ」
続いてトアに声を掛けたのはドワーフの女性だ。
パーティで一番小柄ながら、がっしりとした体格をしている。装備品も重装備の戦士そのものであり、更に荷物も一番多く携行していた。
口調は大人びている――むしろ老人臭いというのに、少女のような顔立ちをしているのも印象的な女性だった。巴に憧れを持っているのか、最近は特に言動がじじ臭い。
「なに、エルダードワーフの村落の跡までは、ある程度の情報はある。それほど気負った顔をするな」
「ええ。クズノハ商会には本当に助けてもらっているわね」
彼女、ラニーナは大地の精霊を信仰する戦士であり、修練のためにこの地を訪れていた。
既に十分すぎるほどの修練を積み、いつでも故郷に帰れる身ではあるが、トアを助けるためにツィーゲに留まっている。
流通が盛んになり、活気に溢れているツィーゲに集まってくる各地の酒も美食も彼女の目的ではあるものの、仲間思いの神官戦士である事は間違いない。
「薬も保存食もクズノハ製で調達済み。まあ現地調達が基本だけど〝潜る〟のに支障がない程度には、ね」
「ルイザ。悪いわね、森鬼の集落を見つけたのに、また付き合わせて」
携行品についてトアに報告したのはエルフの女性。
エルフの名に恥じぬスレンダーな長身で、背には弓矢を背負っている。
ヒューマンとは一定の距離をもって付き合いをするエルフには珍しく、実に親しみを込めた口調で話している。
しかも、犬猿の仲とも言われるドワーフの横でも、警戒も嫌悪もなく笑みを浮かべていた。
「あんな近くにあったなんて盲点だったけど、それもトア達の助けがなかったら達成できなかった。なら、その恩ある仲間を助けるのは当然の事。気にしないで」
「森鬼に関する報告はもう済んだの?」
「もちろん。ちょっと――何十年かこの街にいるとも、故郷には連絡済みよ。だから今回も次回もその次も当てにしてくれていい。貴方が冒険者である限り、ずっとね」
「……ありがとう」
ルイザの目的は、かつて進むべき道の違いから森を離れて荒野に消えたと言われる古きエルフ、森鬼の存在を確かめる事だった。
ツィーゲからそれほど遠くない場所で彼らの集落を見つけ、ルイザの目的は一応果たされていた。
それどころか、今のツィーゲにはクズノハ商会の従業員として、その森鬼が働いている。
つまり、もうルイザがツィーゲに留まる意味も、冒険者をやる意味もないのだが、それでも彼女は冒険者として活動し、トアと共にいる。刺激溢れるヒューマンの街での生活が魅力的なのかもしれないが、言葉通り友人であり仲間でもあるトアを助けるためという目的もある。
まだエルフとしては若く、ヒューマンや異種族との交わりを柔軟に考える事ができるルイザだからこその決断でもあった。
「お姉ちゃん、気を付けてね。私の事は心配しなくても大丈夫だから、安全第一で」
「当然。リノンを遺して死ねないもの。今の私はお姉ちゃんパワーを自在に使えるから大丈夫よ」
「お、おねえちゃんぱわー?」
「ライドウさんに教えてもらったの。リノンのためにも、軽ーく帰ってくるから、絵の勉強頑張りなさい。コモエちゃんと喧嘩しちゃ駄目よ」
コモエは巴の分体で、度々リノン達のもとを訪れている。
「コモエと喧嘩するわけないよ、親友だもん。それからこれ、ギルドから。目を通してほしい依頼だって。ついさっき届いたから、行き違いもあるかも。緊急のは断っておいたから」
今やトア達が住所を定めた事もあって、名指しの依頼や処理に困った案件については、ギルドの方が家に来るケースが多くなっていた。
トアの妹であるリノンも冒険者ギルド職員の対応にすっかり慣れ、実質トアパーティの優秀なマネージャーでもあった。
リノンから受け取った書面にさっと目を通すと、トアは改めて荷物を担ぐ。
「ん。それじゃ、行ってきます」
「いってらっしゃい。帰りは一ヵ月後、だね」
「予定ではねー!」
四人の冒険者が歩き出す。
家を出て、レンブラント商会に間借りしているクズノハ商会の店舗に顔を見せてから荒野の門へ。
それが今の彼女らの定番ルートだった。もちろん、別に依頼を受けて荒野に入る時は、必要に応じてルートも変わる。
「こんにちはー!!」
「おお、トア。今日出発か」
クズノハに顔を出したトア達の対応をするのはまず、エルダードワーフ――略してエルドワである事が多い。今回もそうだった。
「はい! 何か手伝える事があればと思って来たんですが」
一時期、巴と行動を共にしていた時を過ぎてから、トア達はほぼ自力で荒野の中を立ち回っている。
それでもなお、彼女達はクズノハ商会とライドウに深い恩を感じ、彼らに報いようと心に誓っていた。
荒野に出るたびに、何か力になれる事があればとクズノハ商会に顔を出したり、帰ってきたら何も頼まれなくても荒野で得た物や見聞きした事について話したり。
そして時には巴や澪にしごかれたり。
双方に益がある濃い関係を築いていた。
「特にはないな。若様もロッツガルドから外に出られていて、最近はお会いしていないし。……今回は我々が昔住んでいた村の更に奥を目指すんだったな?」
「ええ」
「気を付けてな。お前の求める短剣について、力になれんですまんが」
エルダードワーフが申し訳なさそうに頭を下げた。
「そんな。地理の情報をいただけただけでも物凄く感謝してます。お土産、期待しててくださいね」
「まったく、気を付けろとは言ったが、気を遣えとは言っとらんぞ?」
「クズノハ商会にはお世話になっていますから。ライドウさんがいなかったら、今の私達はありません」
「以前、若様が命を救った、だったか」
「それもありますけど、今の私達の荒野探索のスタイルもライドウさんのおかげで確立できたようなものなんです」
「……ああ、確か極地法とアルパインなんちゃらだったか」
エルダードワーフがうろ覚えで口にした言葉をトアが補足する。
「アルパインスタイルです」
「若様の国での登山の技法。そういえば、お前達は妙に興味深く聞いていたな」
以前、ライドウがツィーゲの店に顔を出した際、偶然トア達もそこに居合わせて、そんな話になったのを、エルダードワーフが思い出す。
何故ただ山の頂上を目指すためにそこまで技術を考えるのか。そんな疑問をドワーフの彼は抱いたが、口にせずただ話を聞いていた。
一方、トア達は途中から目の色を変えて話に没頭していて、彼には話の内容よりもそちらが印象的だった。
トアはうんうんと頷いて、当時の事を振り返る。
「登山にそこまで拘る国なんて聞いた事がなかったんですけど、あの考え方は荒野にもまるまる適用できるって思ったんです。考えてみれば荒野は、頂上がまるで見えない巨大な山みたいなものですからね」
「確か拠点を作りながら人員と物資を大量に投入し、最後は厳選したメンバーで頂上を目指すのが極地法」
「はい。それとは別に、個人の能力を重視して、登る時は一気に、速度重視で攻めるのがアルパインスタイルです」
「現状でのツィーゲにおける荒野探索は極地法的な手法がとられている事になるな」
「そうです。でも、その限界は見えています。せいぜい絶野までだと」
そこより先に物資を届け、ベースを維持していくだけの諸々が足りていないのだ。
絶野一つだけ見ても、維持するのにかかる経費は莫大だ。
見返りとしてのまだ見ぬ素材には無限の可能性と浪漫はあるが、絶野クラスの深いベースの維持には確かに現実的とは言えない額が必要になる。
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