月が導く異世界道中

あずみ 圭

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16巻

16-2

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「いや、偶然。ちょっとリミア絡みで面倒になりそうで、巴を探してたら、何故かリュカを成敗するとこだった」

 自然な仕草で湖畔こはんに現れたのは、巴の主にして騒動の元凶ともいえる男、ライドウ。
 散歩途中ですと言われても信じてしまいそうなほど、平常運転の彼だった。

「そのままでお待ちいただければ、一件落着でしたのに」
「なんか斬り捨て御免な空気を感じたんだよ。それにリミアの件だって言ったろ? 力を貸してもらう事だってあるかもしれないじゃないか」
「あぁ……そういえばおっしゃってましたな、霧の沼地だとか。ナイト、風呂フロタル?」
「!?」

 巴の口から忌まわしい土地の名に近い響きが出た時、一瞬リュカの全身が強張こわばる。

「違うわ! ナイトフロンタルだ!」
「精霊の死骸しがいでできた霧なぞ気味が悪い。まとめて消し飛ばしてさっさと戻ってこられたらよろしい」
「そうもいかないよ。響先輩と少し口喧嘩くちげんかもしちゃったし、ホープレイズさんのところは間接的に息子さんを死なせてるし」
「……どちらも若が気にむ事ではありませんぞ? 些事さじです些事」
「頼むよ、巴。召喚魔術で上位精霊を呼んでもおかしくないような演出と、魔力の量。相談に乗ってくれ」
「儂には温泉があるんですが。最速で混浴――いえ、みんなの日々の疲れをいやしたいと、全身全霊なんですが」
「その分、お前には記憶もばんばん見せてるでしょ? ほら、働く働く」
「……うむ~、若にそこまで言われては否とは申せません。リュカ、命拾いしたの?」

 不服の感情を視線でリュカにぶつける巴を、真がたしなめる。

「獰猛な目で元同僚をにらむな! んじゃ、リュカさん、すみませんがこれで失礼します。近々少しお願い事で伺うかもしれません。よろしくお願いします」
「あ、ええ……その、こちらこそ助かりました? ええっと……」
「いえいえいえいえ、では~」

 色々と誤魔化ごまかすように、胡散臭い〝いえいえ〟を残して……ライドウは巴と共に霧の門に消える。
 湖に残されたのはリュカ一人。
 しかし、決して前の彼女ではなかった。
 明らかにけたの違う力を巴に見せつけられた。
 勇者響を推すという選択に後悔こうかいはない。
 だが。
 リュカの心中に疑念が生まれる。
 事はもう手遅れなのではなかろうか、と。
 ライドウは近々また来ると言う。
 恐らく、ナイトフロンタルで何かやらかすのだろう。
 一体自分は何を求められるのか。
 結果としてはクズノハ商会に殺されかけ、クズノハ商会に救われるという、マッチポンプ以外何者でもないやり方で命の恩人となったライドウの求めとは。陰鬱いんうつな思いにげんなりしながら、リュカは自らの住まいに戻っていくのだった。


 ――一方。
 真の相談に乗り終えた巴は、ケリュネオンに戻って存分に温泉への情熱を燃やした。
 彼女は、いつものように皆と夕食をとり、何事もなく一日を過ごしたのだった。



 2


 クズノハ商会の代表としてリミア王国を訪問していた僕――深澄真は、かの国の大貴族アルグリオ=ホープレイズ氏の依頼を受け、ナイトフロンタルという厄介な湿地帯の調査をしていた。
 湿地内にあるボロ小屋を改修(ほぼ新築)して拠点を確保した僕達調査隊だったが、そこで謎の黒い霧に〝皆殺し〟宣告をされ、脱出不可能な状況におちいってしまう。
 まさに秘境探検的展開です。
 とはいえ、僕や従者のみおは霧の門で簡単に行き来できるんだけど。
 そんなわけで、亜空やら何やらで所用を済ませて、コテージに戻ってきた僕。
 絶体絶命の状況で拠点を長く空けてしまった事を、調査隊の面々が不審に思うといけないので、留守にした表向きの理由は考えてある。
 でも、僕らが選んだのは、やはり力業ちからわざだった。
 流石に調査だけじゃあ弱いし、後々誤解もされそう。
 だってさ、僕には突然綿密な計画を練るのは無理だし、もっともらしい理由付けで説得できる言い訳なんて思い付かんですよ。
 それに、ナイトフロンタルこっちに来てからの経験で、こういう時はでっかくぶち上げる方が意外とバレないもんだと学んだ。

「改めて、戻るのが遅れてすみませんでした。調査と並行して、こちらも協力者を用意すべきと思いまして……実はそちらの準備も進めていたんです」

 ちょっと前にこの環境に〝ちょうど良い存在〟と知り合いになっていたのを思い出した僕、グッジョブだ。
 僕は調査隊の面々に声をかけ、拠点として急遽きゅうきょエルドワことエルダードワーフ達に造ってもらったコテージから皆を連れ出す。
 この場にいる人の中でクズノハ商会関係者は、僕と澪、そして従業員のライム=ラテだ。
 それ以外の面子メンツは、ローレルの巫女みこチヤさん、エンブレイ商会のルーグさん、リミアの貴族ジョイ=ユネスティ、そして不運にもこの場に居合わせる事になった荷運び兼、下働きの奴隷どれいの三名。この三人の内訳は、女性一名男性二名、まだ若くて歳も近そう。
 一度はかなりナーバスになった彼らだったけど、美味うまい飯と十分な睡眠、そして個別の面談で多少は親しくなったのが効いているのか、今は大分落ち着いてくれている。
 パニックを起こさせないのが緊急事態での死者を減らす一番の方法だと思うので、これはありがたい。
 聞き上手のライムを連れてきていて本当に良かった。
 もちろん、事態が長引けば、また精神も不安定になるだろう。
 でも僕はそこまで状況を引っ張るつもりはなかった。
 いつまでもこんな所で足踏みしているわけにもいかないから。

「協力者と言われましても、今ここに助けに来られる方がいるとは思えぬのですが」

 僕の釈明しゃくめいに口をはさんだのはルーグさんだ。
 しかしこれが彼一人の意見でない事は明らかで、そうだそうだと肯定する視線がグサグサ刺さってくる。

「やりようは色々ですよ。世の中には召喚という技があります。冒険者や城仕えの方には使い手もいるかと思いますが」
「召喚、もちろん知ってます。……使えるんですか?」

 そう言いながら、ローレルの巫女様、チヤさんが僕らを見る。
 正確には澪を見ていた。
 僕とライムには彼女の視線は向いてない。
 心眼とかいう特殊なスキルで澪の正体――黒蜘蛛くろぐもを見たようだから、蜘蛛の眷属を呼び出すと思っているのかも。
 あまり歓迎している口調じゃないもんな。
 ライムも苦笑してる。

「はい、使うのは澪と僕で」
「あの……ライドウ殿は召喚魔術も使うんですか?」

 ジョイさんがあきれを含んだ声で疑問を発した。
 失礼な――いや、こういう展開は前もあったな。
 確か……そうだ。
 ロッツガルド学園で僕が受け持っている講義の最中。
 生徒のジン達の鍛錬たんれん相手にミスティオリザードを召喚した時に、似たような事を叫ばれたんだった。
 召喚が(疑似的に)使えると言ったら、あいつら、召喚〝も〟じゃねえかとか、それはもう失礼に。
 果ての荒野じゃなくても危ない土地に向かう事もあるだろうし、商人が魔術や体術をたしなんでいてもなんの問題もないと思うんだ。
 それに、体術や武術と違って、魔術は魔道具のたぐいで補強する事も容易いんだからさ。
 まあ、今回は魔道具を理由にする手は使わないんだけど。
 ……あ、よく考えたらその手もあったか。
 魔族のところには竜を召喚する道具だってあったんだから、僕もそれにならえば良かった。
 しくじったな。

「偶然教えてくれる方が近くにいまして。同じ説明をするのは何度目かになるやもしれませんが、これでも僕は荒野を駆ける商人ですから」
「は、はあ。荒野という所だと商人ですら魔術の一つや二つ使えないと通用しないのですか」

 僕の説明を聞いても、ジョイさんはまだ釈然しゃくぜんとしない様子だ。

「……ジョイさん」
「え?」
「どこに身を置こうと、最終的に自分の身を守れるのは自分だけです。体と魔術をきたえて損をする事などありません」
「……」

 おっと、つい本音ほんねが。
 ジョイさん黙っちゃったよ。
 そんな彼に代わって、ルーグさんが応える。

「ですな。かといって、商人に召喚魔術が要求される場面など私は知りませんし、商人や貴族には武技や魔術よりも優先すべき取得スキルが多々あるのも事実ですが。時間は無限ではありませんから」

 おおう、辛辣しんらつ

「ケ、ケースバイケースですよね、はは」
「しかし現状、それが我々の光になるからこそ、ライドウ殿と澪殿はその準備をしてくださった。ならば、文句よりも期待と沈黙こそが正解でした。つい下らぬ口を挟みました、申し訳ありません」

 ルーグさんが頭を下げる。
 いや、時間は有限って考えは大事だ。ジョイさんは領主だし、身につけるべき事は尽きない。戦士や魔術師の真似事に傾倒けいとうするのは良くないよな。僕の失言だったかもしれない。
 まあ、皆の疑問に順番に答えるより、やってしまった方が早い。
 といっても、他の――チーム奴隷の皆さんは、外の雰囲気ふんいきにビビりながらも、何か言う気配はない。
 彼らは彼らでナイトフロンタル以外の問題を抱えているみたいだけれど、ルーグさんが機会を与え、彼ら自身がチャンスをつかんでここにいる以上、僕らができる事は知れてる。
 おし、じゃあやるか。
 僕は召喚をもっともらしく見せる演出を始める。
 なんで大量の魔力を放出しながら派手な魔法陣を出現させるだけの魔術なんて、頑張って作っちゃったかね。
 本当に、にすれば良かった。

「澪、それじゃあ頼む」

 メインの詠唱は澪。
 そして僕は彼女をサポートする雰囲気で、魔術の詠唱を始める。
 まず僕と澪の周辺に小さな魔法陣が複数立ち上がった。
 次に、足元に僕らとここにいる全員を範囲に入れてなお余裕があるサイズの魔法陣が出現する。
 詠唱を続けて、大小の魔法陣から徐々に魔力放出の量を増加させていく。
 その光景を目の当たりにしたジョイさんとルーグさんが、良い感じにおののいてくれる。

「私などでも尋常じんじょうでない魔力だと分かる魔術だなんて……なかなかお目にかかれない光景ですね」
「一つの召喚魔術というよりも、これは最早儀式魔術に近いナニカのようです。ジョイ殿どころか、そこの奴隷達ですら脅威きょういを感じている。彼らが魔力だと分かっているかどうかまではさておき」

 ルーグさんの言葉通り、奴隷の皆さんは身を寄せ合ってガタガタ震えていた。
 ふむ、魔力感知なんて縁がない人達でもこの様子だと……少し抑えた方がいいな。
 ぶっ倒れてもらっても困る。
 次の段階での魔力増大は抑えるように、澪に目配めくばせする。
 彼女は何故かうれしそうに、でも小さくうなずく。
 途中、何かあっても、流石に巫女さんや貴族、豪商を差し置いて奴隷を守るわけにはいかない。従って、ライムの護衛優先対象は変えられない。

「こんな規模の召喚魔術、王国でも連邦でも見た事ない。でも、これ、まさか」

 チヤさんも良い感じだ。
 僕は土と火しか知らないけど、の雰囲気には共通点あったもんな。
 水の巫女であるチヤさんには、こういう方向で驚いてもらった方がよろしい。
 一通り皆の反応を確かめた僕は、召喚演出を次の段階に進める。
 自転しながら公転する魔法陣を空中に四つほど出し、あえてバラバラな角度に配置して、動いてもらう。
 注文通り、澪の方も魔力増大は抑えめ、ありがとう。
 僕達の周囲は霧に包まれながらも、魔法陣の光によって暖色系の柔らかい明るさで満ちている。
 驚愕の表情を浮かべたチヤさんが、うわごとのように呟く。

「嘘、ダメ……魔力は足りていてもにえがいないのに……ありえない!」

 クライマックスのタイミングは良きところで、澪にお任せ。

「おいでませ」

 澪の直感なら、最高の一瞬を逃さないはず……って澪それだけ!?
 シンプルすぎ!

「わ、我らの親しき友よ、助力を願い、う!」

 付け足したけど、適当すぎてすまん!

「はうっ」

 澪が何やらショックを受けてるし!
 これまた悲しそうな顔を……あーもう、こっちもごめんて!
 そんな僕らをよそに、鮮烈な赤と、オレンジに近い黄色の光が周囲一帯に満ちていく。

「あ、ああ……!」

 チヤさんにはもう、ナニが来るか予想できているみたいだ。
 しかし、贄とは。
 ローレルでは〝彼ら〟を呼び出す際に生贄いけにえを要求されるんだろうか。
 魔族の都市の神殿にまつられていたものは、特に手間もかからない感じだった気がする。ちょっと驚きだな。
 お、来るね。
 魔力の流れが生む特殊な風が巻き起こり、光が炸裂さくれつした。
 一瞬視界がゼロになる。
 そして、周辺の霧もはらって見晴らしがよくなった僕らの前に現れたのは……柔らかな光を纏った大きな牛と鳥。
 割とでかかった。
 魔族の所で戦った時と同じ――いや、あの時よりは気持ち小さいかな。
 てっきり、大きさはある程度変えられると思っていたんだけど、無理なのか?
 サイズ感がよく分からなかったから、チヤさん達の目の前に召喚するんじゃなくて、彼女達を僕らの後ろに控えさせておいたのは正解だった。

「……よく来てくれた。僕らはとても困っている、助力を頼みたい」
「若様をお手伝いできるなんて、光栄に――」

 いつもの調子で呼びかける澪をあわてて制止する。

「澪、ストップ」
「あう」

 ごめん。
 でも、ここでいきなりその台詞せりふはまずいよ。

「また、とんでもない所にんでくれたものだな」

 の方が話しかけてきた。
 めっちゃマッチョな牛の体に、変に凶暴な角が生えたこいつはベヒモス。土の精霊ではトップらしい。
 若干嫌そうだけど、その場で膝を折り、伏せっぽいポーズをしている。
 牛とか馬だと、これがお座り的な感じなんだろうか。

「この状況に無関係ってわけでもないだろ? ま、それは僕もかもしれないけど……」
「……確かに。借りもある事だ、協力は惜しまんよ」

 彼が口にした〝借り〟は、どちらかと言えば僕の従者の元リッチ――しきに対してのものだろう。
 でも、契約の場には僕もいたし、識と僕の関係は分かっているからか、こちらの言葉にも耳を傾けてくれている。
 精霊の墓場だっていうなら、上位精霊に掃除させればいいじゃない。
 二属性ほど心当たりあるし?
 ってなもんですよ。
 隣では、鳥の方も、澪に話しかけている。

「関係……水と土のが恨みを買っているようですけれど。犠牲ぎせいになっているのは、属性を問わず。場所がリミアともなれば、通常あまり介入はできませんが、召喚ならば仕方ありませんね。ええ、喜んで協力させてもらいましょう」

 内容を聞く限り問題なしだ。
 そしたらこいつらを前面に出して〝精霊加工装置〟になっているナニカのところまで、さくさくっと進ませてもらおうじゃないか。

「フェニックス、お前達の不祥事ふしょうじに若様が巻き込まれたんです。半日で片付けなさい」
「澪、貴方はまた無茶苦茶むちゃくちゃ化身けしんのままですね……」
「ふん。竜の縄張なわばりで暴れて良いって言ってるんですから、喜びなさいな」
「……別に、普段奴らのご機嫌を伺って遠慮している事など何もありませんよ?」

 少し辺りが暖かくなってきたような。

「なら、こんな精霊捨て場みたいなところを放置するんじゃありませんよ、醜悪しゅうあくな」
「確かに気分の良い場所じゃないですね。本当に、もうも、何をしているのだか、ふふふ」

 気のせいじゃなく、暑いな。
 フェニックスの仕業しわざか。

「あー、澪と盛り上がるのはいいんだが、発熱? は抑えてくれるとありがたいな、フェニックス」
「……ライドウ」
「あら、呼び捨て? ナニサマかしら、あの時の状況を盛大に朗読したくなりますわー」

 フェニックスの態度に不快感を示す澪を、小声でなだめる。

「澪、話進まないから」
「いえ、確かに呼び捨ては礼を失していましたね。ライドウ殿、此度こたびの事は精霊の不始末。ナイトフロンタルに呼んでもらえて感謝しております」
「……あ、まあ、あまり気分の良い所じゃないだろうね。そこはすまない」
「ああ、嫌味などではありませんよ。リュカがうるさくてそう簡単に手を出せもせず、歯痒はがゆく思っていたところです。貴方からの召喚ならば、遠慮なく振舞える。だから本当に感謝しています。私に関しては、借りが増えたとさえ思っていますよ」

 横で話を聞いていたベヒモスが、頷いて同意を示す。

「む、俺とて、言葉のアヤというやつだ。ここに干渉できるなら俺も気持ちは同じだとも」

 そうなんかい。
 ベヒモスさんよ、さっきは完全に借りを返す的な感じだったよ、あんた。
 それとも、フェニックスのこの言動も、澪が引き出してくれたんだろうか。
 僕としては、今回協力してくれたら別に貸しとか借りとかはどうでもよかったんだけど。
 上位精霊ともなれば、女神との関わりだって良くも悪くも濃密。
 個々の人格と気が合ったところで、状況次第では真っ向から敵対する可能性がある関係には変わりないんだし、仲良しごっこも申し訳ないんだよな。
 いつの間にか、じっとりとした暑さはすっかりなくなっていた。

「ところで二人とも、せめて普通の牛と鳥サイズにはなれない?」

 大きいって事は良い事だ、と誰かが言ったらしい。
 でも、今は邪魔だ。
 できれば小型サイズになってほしい。

「なれる」
「なれますよ」

 なら、最初からそれで来てほしかった。
 前もってリハーサルしとけばよかったか?

「じゃ頼むよ。ベヒモスの方は多少大きくてもいいや。疲れた人を乗せてもらいたいし」
「乗せ……」
「ぷっ、もはや農耕牛なみの扱いですね」

 絶句するベヒモスを見て、フェニックスが噴き出した。

「フェニックスは熱くならないように気をつけてね。基本的には澪の肩にいてくれる? 止まり木のがよかったら、ライムに適当なのを探してもらうけど……」

 先ほどの意趣返いしゅがえしとばかりに、ベヒモスがからかう。

「お前もほぼペット扱いだぞ、フェニックス」
「……なに、ここで力を見せて認識を変えさせればよろ、よろしいのです」
「動揺しているな」
「うるさい」

 うん、精霊同士も仲が良いみたいで安心した。

「というわけで、土の精霊ベヒモスと火の精霊フェニックスです。多分、余程酷い事をしなければ皆さんに危害は加えませんのでご安、心、を……?」

 とりあえず、精霊と意思確認もできたから、じゃあ皆に紹介を、と振り返った僕が見たものはひれ伏す民だった。
 なんか静かだな、とは思ってたんだ。
 チヤさんどころかルーグさんやジョイさん、チーム奴隷も、全員が服も汚れるだろうに沼に手をついて膝をついて、平伏へいふくしていた。
 ライムは立っていたけど、苦笑交じりに頭をかいている。

「えーっと」
「何しているんです、貴方達。立ちなさいな、話が進まないでしょう」

 澪が呼びかけるが、体がそのまま石化したみたいに皆動かない。
 参ったな。
 僕らの中では一番怖がられている様子の澪の言葉でも、微動だにしないとは。

「チヤさーん……」

 呆然ぼうぜんとしていたチヤさんが、僕の声に反応して我に返る。


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