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11巻
11-1
しおりを挟むプロローグ
◇◆◇◆◇
「年格好はライドウとさほど変わらんのだがな……」
学園都市ロッツガルドの商人ギルドをまとめるザラは、その日一番の客が帰った後、そう呟いた。
彼の手元、執務机の天板には上質な紙の資料が多数。
しばし扉を見つめていた彼は、その資料に視線を移し、小さく嘆息する。
疲労からではなく、今後の憂い。そんな溜息が漏れた。
「奴より余程商売の機微を知っているし、為政者としての視点も併せ持っている。その上、勇者様か。正直なところ、リリ皇女がいる分だけ政に関してはリミアよりもグリトニアの方が上かと思っていたが……考え直す必要があるかもしれんな」
ザラを憂鬱にさせた客は、この世界のヒューマンの国では最も豊かな一つであるリミアの王子からの紹介で、ここを訪れた。
先だって、王の補佐として活躍する第二王子ヨシュアが、「折りよく通りかかるから是非一度」と昼の会食を提案し、ザラもこれを受けた。
それが、王国の勇者として世界に名を馳せだした、ヒビキ=オトナシという女性だ。
音無響――ロッツガルドの商人ギルド代表には知る由もない事だが、ライドウこと深澄真の日本時代、同じ高校に通っていた、彼の一つ上の先輩である。
勇者と顔を繋ぐ事は、ギルドの代表としても一商人としても、言うまでもなく有益である。ザラはヨシュアからの飴の一つなのだろうと考えてもいたのだが。
「……今この時期に、〝リミアの復興に金を出せ〟とはな。こちらも変異体の騒ぎでまさに復興している最中だというのに」
非常識……いや、違う。
ザラの表情には、己の手札を読まれた博徒の如き悔しさが僅かに浮かんでいた。
確かに、ロッツガルドはこの事件で破壊の不幸に遭い、今その傷を癒すべく再建に取り組んでいるところだ。
しかしながら、街に、商人に、一切余裕がないのかと問われれば、実はそんな事はない。
今回の復興には、派閥争いで有利に立つために積極的に復旧作業に貢献する学園講師達の動きや、極めてイレギュラーな〝とある商会〟の存在が強力な助けになっている。
加えて、事件で一部の豪商達が命を失ったのだが、彼らが蓄えていた私財には――特に不正な蓄財部分に関して――宙に浮いた状態になっているものや、非合法な形で他者に引き継がれたものが少なからず存在していた。ザラと彼の旧友パトリックの迅速かつ狡猾な動きによって、これらの財のうち、遺族の存在しない何割かが商人ギルドの預かりになっている。
だから、〝痛ましい事件で身も心も懐もボロボロなロッツガルド〟という体を取りつつ、内部の復興と商人ギルド内の秩序の再構成に取り組んでいたザラにとって、今日のリミアからの要請は、内心あまり面白いものではなかった。
「やり口も上手い。一手、二手間違えれば、リミアに恩を売るどころかこちらの力が取り込まれかねん。まったく」
ザラの脳裏に響との会食の様子が蘇る。
艶のある長い黒髪、好意を伝え、一切の悪意を感じさせないその目は、自然な微笑みとともに強い意志も宿していた。
ほう、と。
話に聞く勇者の評判と、実物の印象を重ねたザラは、思わず内心で感嘆した。
世間での高い評判が、正しく実物を表している例は、彼の知る中では少ない。
ライドウ……は極端なケースとはいえ、響ほど高い次元で合致している事は、極めて稀だった。
「この時期に復興協力、投資の要請ですか。確かに、リミア王都を襲った悲劇とその被害については聞き及んでいます。私どもも痛ましく思ってはおりますが、このロッツガルドも突然の事件に見舞われた直後ですので――」
「勿論、非常識なお願いだという事は十分に承知しております。しかしながら、ヨシュア様からも伺っておりましたが、流石は世界に誇る賢者と学徒の街ロッツガルド。物的な面においては既に相当修復が進んでおいでです。恥ずかしながら、我がリミアでは未だここまでの状態には至っておりません。さぞ優れたノウハウ、そして惜しみない賢者達の魔術による協力などもあるのでしょうね」
「はは、リミア王国の方にそのように仰って頂けるのは光栄ですよ。街の大事となれば、学園も我々もともに手を取り合い、力を尽くして、一刻も早く日常を取り戻すべく動かねば……という想いがあるばかりです。しかしながら、こうして物は直っても決して直らぬモノも、そして還らぬモノもございます。まだまだ復興が成ったなどとは、とても申せる状態ではありません」
「仰る通りです。本当に痛ましい事件でした。リミアを生国とする貴族や、商人も。多くこの地で犠牲になりました。学園都市で起きた事件は我々も当事者です。事態の収拾では十分な支援も行えず、陛下も心を痛めておいででした。せめてこれからの残務など諸問題の解決には、全力で協力いたします。こたび失われた未来を担うべき貴い命は、全世界から集まったかけがえのないもの……言うまでもなく、これは世界の大事であり、全ての国が力を尽くしていくべき大事件なのですから」
小さなジャブによる様子見から、会食は始まった。
ザラは、響が放つ人を引き付ける魅力に驚きながら、彼女が〝お願い〟としてリミア王国への支援、投資についての話を切り出してきた事で、場が商談の席に変じた事を察した。
「残務、ですか」
「ええ。変異体事件の被害者について、王国におられるであろうご遺族や壊滅状態になった商会の資産状況の情報など、こちらでも必要になるでしょうから。可能な限り早急に対応いたします。同時に必要であれば他国へも迅速に対応すべき事案として、リミアの名においてお願いしていくつもりです」
「……それはありがたい事です。是非ご協力をお願いいたします」
「お任せください。それで、先ほどの話に戻るのですが、今のリミアには正直に申しまして余力がございません。かといって、魔族が攻撃の手を緩める保証などどこにもないため、我らはそれに備えねばなりません」
「ごもっともです」
響の真剣な訴えに頷きつつ、ザラの内心では警戒心が次第に高まっていく。
(遺族に資産情報だと? あの無茶な要請はただこちらの同情心を頼みに言っているわけじゃありませんって事か。それに、魔族の襲撃ね。確かに、そこを疎かにされて、こっちにも責任を問われるなんぞ、冗談じゃない。この小娘、印象通りの良い子ってだけじゃねえな)
――お前達が機に乗じて貯め込もうとしているモノの出どころ、その一部はうちのでしょう? だったらうちの復興に出してもいいんじゃないの? それとも何? 他国にも働きかけて事件の後のお金の流れやその帰属すべき所有者を徹底的に明らかにされたい? その間にまた魔族が侵攻してきたら、世界はロッツガルドをいつまで被害者として扱ってくれるかしら?
人好きのする笑顔の裏で、響がそう口にしているのだと、ザラには思えていた。
本当に、ライドウと初対面の時に交わした会話とは対照的な光景だった。
「――そこで、このような形で各国、主要都市にお願いして回ろうという、お恥ずかしい話になりました」
「いえいえ、リミア、グリトニア両国が固い結束の上で魔族と対峙してくださっているからこそ、今の小康状態があるのですから。恥ずべき事などではありませんとも」
ザラはそう言わざるを得ない。
実際に脅威と対峙し、自国の軍人から少なからぬ死者を出して魔族と戦っているのは、リミア王国とグリトニア帝国であり、その最前線にいるのが、今彼の目の前にいる勇者なのだから。
援助を求めるなら固い結束とやらがある帝国に頼めよ、そっちはどうなってんだ――と、暗に牽制をするのが精々だった。
ザラの目の前にいる女が、目先の事だけを考えて帝国に借りを作るような事はしないだろうと分かっていながらの、せめてもの嫌みだった。
「……ご理解頂けて嬉しいです。ただ、今回の襲撃、グリトニアも同様に被害を受けております。両国とも全力で立ち直るべく国民一丸となっていますが、グリトニアは寒冷地。しかも、これから冬を迎えます。我が国よりも遥かに厳しい状況のもと、かの国は一日も早い復活に向けて動いている事でしょう」
だから今は互いを支援している状況ではない、と。
響は心の底から心配そうな表情でザラに応じた。
「……」
(グリトニアに借りを作るなんてお断り、か。だな、正しい。その上、建前まできっちり用意してやがる。……ちっ)
リミアとグリトニアが世界への影響力を競っているのは、周知の事実だ。
魔族との戦争の名目で協力している両国だが、握手しながら笑顔で殴り合っている最中でもある。
相手国への借りなど、極力作りたくはないだろう。
「今回ロッツガルドへの具体的なお願いとしましては、こちらの資料にある、王都南東部の橋の修復、及びその周辺地域への復興にご協力頂ければ、と考えております。もちろん該当地域以外の復興にもご助力頂ければ、我が国にとって願ってもない事ですが」
ザラの沈黙を話題の進行への了承と受け取ったのか、響は資料を手渡しながら王都の地図の一部を指で示した。具体的に何をどうしてほしいのかという部分への交渉の始まりだ。
「……ほう?」
そこは王都でも市が頻繁に開かれる、活況な地域の一つだった。
当然、ザラもそれを知っていて、ゆえに微かに眉が動いた。
後に狙える利権を見越しての反応だ。
相対する響はその微笑みを少し強くし、より真剣な眼差しでザラを見つめた。
「当然、これはリミアへの貸しと考えて頂いて構いませんし、費用についてもいずれ必ずご返済します。さらに復興が成った暁には、民衆にロッツガルドの協力のもとに橋の修復と市場の早期再開が叶ったと周知いたします」
「それは、至れり尽くせりではありますな。しかし響様、修繕に掛かる費用、これは問題です。即断は難しい。この資料にある通り、全てこちらの持ち出し、また雇用は極力現地の、王都の民を使用するというのは……」
工事費はとりあえずロッツガルド側が全部持つ。修復作業にあたる人夫は、王都の民を使用する事。当然、特殊技能を必要とするものについてはこの限りではないようだが、初期費用に関しては随分王国に有利な条件が付帯していた。ザラが突っ込むのも至極当然だろう。
この条件は、重い。かなりの制約といえた。
「はい。国庫からきちんとその時にお支払いするのが正しい信用であり、商いの道理である事は存じております。無茶な条件を付帯している、と」
「要請の内容の割に、少々制約が多すぎるのでは?」
「本当にザラ様の仰る通りです。そこを曲げて頂くための我々からの提案も、即座に実利に繋がるとも言い難くて恐縮なのですが……どうかご覧ください」
響が資料のページをめくってザラを誘導する。
そこにはやや曖昧に、この件についての確認事項がいくつか書かれていた。
ザラが目を見開く。
内容の曖昧さが示す可能性、真意をすぐに理解しての反応だった。
「これはロッツガルドではなく、ロッツガルド商人ギルドへのお願いだと、そう仰る?」
「ええ」
「街への協力を、商人ギルドに頼むのですね?」
学園は関係なく、商人ギルドにロッツガルドとしての要請をする。
それは学園都市における、学園と商人ギルドの今後の力関係にも影響してくる事だ。当然、商人ギルドからすれば、リミアに対する美味しい貸しとして、という意味で。
「担当地域及び市場における復興期間中の出店については、一定以上の規模がある商会に限定して、五店までその権利は永続する。これはつまり……」
「はい。そちらの商人ギルドで選出して頂いた商会については王国も信用し、仮出店から本出店に変わってもこれを支持します」
「五店までというのは、五枠と判断しても?」
「……ええ、ご随意に」
リミアに進出したい商会は全国でも数多い。ロッツガルドにもそれを望む商会は、いくらでも存在する。しかも王族貴族の多くが集まる王都に出店できるとなれば、使いようによっては凄まじい影響を及ぼす。商人ギルドが持つ利権として。
現状と併せて判断するなら、これは実質的にザラが持つ利権と言い換えられる。
五店まで特定の商会を指名して終わりにするのではなく、五枠までという事であれば『入れ替え』もできるという事だ。
ザラはその後も、リミア側の提案部分について細部を響に確認していく。
時折釘を刺されたが、その内容はザラにとって、商人にとって相当魅力的なものだった。
復興費用の一時負担は、決して小さなものではない。
要請自体が無茶な条件である事も変わってはいない。
だが、そこには確かな旨味もある。
何より、拒否した場合、どのような報復を仕掛けてくるかという凄味を、この商談の端々でザラは受け取っていた。
そして改めて感嘆する。
今回の商談で、響はザラの問いに全て己の言葉で答えていた。
沈黙も彼女の逡巡ではなく、含みを意味しているとザラは判断していた。
つまり、この要請の全体像を彼女自身がきちんと把握し、交渉における相手と己の強み、弱みを理解していたという事になる。
(元々充てられる原資の出所の一部も読み切った上で、俺にこれだけの旨味を提示し、かつギルドにも、進出する商会にも、それぞれ金では買えない利を用意する。当面こちらに不利な要請には違いないが、長い目で見ればこれはアリだな。しかしこの娘、今でこれか……十年後が恐ろしいな。よりによって、初めて俺の後継者になってほしいと思ったのが勇者だとは……なんだかな)
「いかがでしょうか。リミアは学園都市ロッツガルドと末永く良き関係を続けたいと考えております。勿論、王立アカデミーとロッツガルド学園の間には今後も競争はございましょうが、それはそれとして。何事にも好敵手という存在はありがたいものですから」
「分かりました。事が事だけに即断はできかねますが、私の腹は決まった。早速次のギルド会合で議題に上げましょう。良いお返事ができると思います」
「良かった……。ご無理をお願いした事は決して忘れません。ザラ様は戦争をともに戦い、ともに平和を築いていける方と、若輩ながらこの響、確信しました! ありがとうございます!」
「感謝を申し上げるのはこちらの方です。ただの挨拶のつもりが望外の商談と、素晴らしい盟友たる方との出会いの場となりました。我々商人は往々にして金を貯める事にばかり長け、それで平和を築く術を知りません。どうか今後もお気軽に私どもにお話をお持ちください」
「そんな! 商人の皆様の目に見えぬ数々のご支援は、日々この身に感じています。商人が自由に商売に励む事は、国に血を通わせる事。即ち、国の活気の源とさえ言える重要な活動です。こちらこそ、今後ともよろしくお願いいたします。ザラ様も是非一度王都へいらしてください。その折には、私もご挨拶させて頂きます」
二人の話は終わった。
響は最後にザラを振り返り、資料にはなかった事だが、五枠という数とはかかわりなく、彼が自身の商会の出店を望むなら尽力すると告げて、爽やかに去っていった。
そうして、一人になった応接室で、ザラは不意にライドウと響の対比を口にしたのだった。
最近彼の中で、なんとも強烈な印象を残した二人。
もっとも、その印象の方向はまるで違ったが。
「あの二人が並べば、誰がどう見ても響を選ぶと俺は思うが……それでもパットはライドウを選んだのか。響達は短期ながらツィーゲに滞在していたはずだ。あの男が、そんな好機に勇者を見定めないわけがないからな。出会った順番で実利を見る目が曇る男でもない。ライドウか。確かにあれは引っかかる。引っかかるが……うむー」
ザラは旧くからの親友にして悪友である、好敵手の顔を思い出す。
パットことパトリック=レンブラントは、賭けに滅法強かった。
商人としてはどうかと思う事もあったが、彼は大きな賭けには失敗した例がない。
彼が全額勝負するような局面なら、どれほど信じがたくとも、そちらが勝つのかもしれない。少なくとも、これまではそうだった。
そしてザラ自身は賭けが弱い。
だから自らは賭けずに、一番儲かる胴元をやっているのだ。
手触りの良い、随分と高級な紙を手にザラは唸る。響から渡された資料だ。
リミアでこれほど高度な製紙業が発展しているなど、これまで聞いた事がない。
つまり、今後王国は新たな輸出品としてこの紙を出してくるかもしれないという事だ。
値にもよるが、業界に革命が起きる出来だとザラは見ている。
そして、この情報だけでも、やりようによってはかなり儲ける事ができる。
響もそれは承知しているだろう。彼女からの言外の手土産だと、ザラは受け止めていた。
さりげなくこんな紙を交渉に持ってくるような勇者と、たかが一都市の商人ギルド内での根回しさえろくにできない新米商人。
得られた情報とは裏腹に、二人はザラの中で、何故か互角の存在感を示しているのだった。
「分からん。ふぅ……とりあえず、この馬鹿みたいな巨額の救援と投資の正確な見積もりでもするか。何せこっちは、確実にそれ以上のリターンがあると分かっているわけだからな」
ザラは資料をまとめ、一旦鍵付きの引き出しにしまう。
大仕事の着手に向けて、彼が人を集めに出たのは、そのすぐ後だった。
1
学園都市ロッツガルドは本格的な冬を迎えている。
年に一度の学園祭の最中に始まった、変異体による事件から数ヵ月。
相当数の死傷者を出し、街も破壊された惨劇だったのだけど、街は既に復興という状態からは脱した感じがする。
まだ一部に更地はあるものの、そこも区画整理の途中みたいな雰囲気だ。早くもこの街は息を吹き返して、前に歩き出していた。
地球、日本とは街の造りや成り立ちが違うってのもある。
でも最大の要因は、やっぱり魔術の存在だろうな。
瓦礫の搬出にしても再利用にしても、建物の建築や道路敷設も然り。現代も真っ青の速度で進んでいった。
学園が惜しみなく魔術師を放出して行なったその手の作業を目の当たりにすると、本当に凄いと感じる。
亜空で都市が高速でできていったのも、今ならそれほど驚く事じゃなかったんだな、と思うくらいだ。むしろ、エルドワを頭にした職人の力を考えると、「丁寧にやっているから遅い」という彼らの言葉は謙遜じゃなかったんだと納得したね。
「お待たせしました、ランチ大盛りです」
「ありがとう」
ここのメニュー、大盛りという割にはあまり盛られてないよな。
何度目かになる感想を抱いた僕――深澄真は、すぐには料理に手をつけず、ぼんやりと窓から外を眺めた。
ここは新しくなったクズノハ商会の店舗から、歩いて五分の場所にある店。
僕としては当初、この際クズノハ商会は郊外に少し広めの店舗を作って移転してしまおうかと思っていた。
ところが、仮設店舗での営業時に、元々クズノハ商会の店舗があった場所の近所の店がいくつか廃業して引越しをするとかで、広めの土地が売りに出されたのだ。
こういう時に頼りになる従者の識に相談して、まとめて土地を買い上げ。トラブルもなく、むしろ喜ばれて取引は順調に終わった。この街でやり直すにしても、別の街に引越すにしても先立つものは必要だもんなあ。
結局、商会の位置は微妙に学園に近くなるだけというプチ引越しに終わった。
店の広さは前と比べてそれなりに広くなっていて、何人かバイトも雇いつつ、今のところ新店舗の営業は順調だ。臨時講師のお勤めがない日のお昼時に、こうやって近場に昼食を食べに来られるくらいにはね。
今日で、新しくなった大通りにあるご近所の店は大体制覇できたかなって感じ。
識なんかは相変わらず鍋料理にご執心で、ゴテツに行く回数が多いみたいだ。本当にハマってる。
「ここはどちらかというとカフェって感じだなあ。人と話をするならともかく、食事には向かないかあ。量もあんまりないし。オサレ重視ですか、そうですか」
従者の中でも一番食にうるさい澪なんか、間違いなく満足しないな。
あいつ、雰囲気を楽しむ類の店は好みじゃないようだし。
客層はやはり、学生をはじめとした若い人が多い。
そういえば、ウチの店にもこういう人達が結構いるよな。
ウチは珍しい果物を扱っているから、だろうか?
ああ、それに実技で怪我をする事も少なくないロッツガルド学園の学生にとって、傷薬や各種お薬は常備しておきたい品らしい。それを売っているのもあるか。
あと、ウチでバイトしている学園生のジンやアベリアを目当てに来る連中も少なからずいる。
元々それなりにモテていたようだけど、学園祭で実力を示したり、その後の事件での活躍もあったりで最近人気が急上昇しているとかなんとか。
「なんにせよ。僕がいなくてもお店は順調ですよ、と」
ちょっと寂しい。
狙った結果なんだけどね。
森鬼のアクアとエリスも最近は頼もしくなってきているし、普通の日に僕がいなくても、そんなに問題ない態勢ができてきている。学園祭以来、色々な方面からお呼ばれする事が多くなって、僕自身があっちに行ったりこっちに行ったりと忙しいからね。
この分ならそろそろ、急かされているリミアとグリトニアへの訪問、それに魔王との面会なんかに手をつけられるかもしれないな。
そういえば、ルトが遠出をするならついでに頼みたい事があるとかなんとか言ってたっけ。
応援ありがとうございます!
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