上 下
45 / 53

45  ヤスミーン・オン・ザ・ステージ

しおりを挟む

「お頭の悪いエグモンド様へきちんと説明させて頂きますわ。

 ええ勿論分かり易く……ですわよ。

 先ず幾ら王命とは言え愛人を伴い婚約者の屋敷へ住まうのは言語道断です。

 また何も労する事もなく好きな時間に、好きなものを飲み食いするのもアウトです。

 人間働かざるもの食うべからず……と言う諺がありますでしょ。

 我が公爵家、そう私の代では特に労しない者に対しああそうですわね。

 病に罹った者は手厚く看病しますし医師の診察も受けさせますわ。

 福利厚生に手厚いのが私流ですの。

 しかしその分ちゃんと健康な時には各個人に見合う労働は貴族平民関係なく行わなくてはいけません。

 ですが悲しい事に貴方とエリーゼ嬢はそれに該当しませんでしたわ。


 労しないどころか私の私財を勝手に自分達の欲望のままに使いましたわね。

 それも確実にアウトです。

 エリーゼ嬢に至っては厨房をかなり破壊されましたもの。

 それら諸々を全て貴方の実家へ請求書を送らせて頂きましたわ。

 ふふ、それと合わせて婚約を白紙撤回させる事にも……ね。

 
 エグモンド様は何故婚約がなかった事になるのか不思議で仕方ないとお思いでしょう。

 抑々貴方方の色々なやらかしはまだ私にしてみれば可愛いものだったのです。

 ええ貴方方よりもエグモンド様のご両親の方が問題だったのですから……。

 
 ああ侯爵ご夫妻はこの後でこちらへ来ていただく予定ですの。

 陛下と一緒に入場なんて誉……ではないでしょうね。


 話は戻りまして今から二十年前からですわ。

 私の亡くなった父と貴方のお母様……つまり侯爵夫人は愛人関係にあったのです。

 生前の父にも別に愛人を囲っていたのですが、それとは別口に貴方のお母様とも関係があったそうですわ。

 その事実をですね、当時から侯爵家が財政困難であった事もあり貴方のお父様である侯爵はという形で我が公爵家へ金銭を要求していましたの。

 然もつい最近まで。


 娘の私から言わせればこれは融資ではなくにしか思えませんでしたけれどもね。

 おまけに侯爵は貴方を婿に出す事で半永久的に公爵家のお金を引き出せると思ったのでしょう。

 婚約を父へ持ち掛け父はそれを了承しましたわ。


 でも可笑しいとは思いませんか。

 幾ら何でも侯爵家へそこまで肩入れをする理由は我が家には何もないのです。

 抑々婚約とはお互いの利益が絡んでなされる契約。

 確かに侯爵家には利益はしっかりあるでしょう。

 しかしながら我が公爵家には負債こそあれほんの少しの旨味すらないのです。

 
 なので私は調べましたの。

 最初から貴方との婚約は受け入れ難いと思っていたのです。

 でも貴族の結婚とは個人の感情は二の次でしょ。

 だから早々の利益があるのだと思えば全くなし、これにはかなり呆れ果ててしまいましたの。

 そうして調べてみましたら色々な事がわかってきたのです。

 
 私の婚約に積極的だった侯爵、それに便乗するかのように受け入れた我が父。

 父が亡くなるまで侯爵夫人とは関係を続けていた。


 今から19年前かしら。

 とある貴族家で赤子が生まれた際に立ち会った産婆とその前後にクビになった侍女数名を探し出し当時の話を伺ったのです。

 因みにその貴族家に生まれたであろう子供は男の子。

 年の離れた男の子二人とは殆ど似ていない。

 勿論その貴族家の子供の父親である筈の男性とは全く似ている所はなかったと。

 ですが三ヶ月後その貴族家の当主が留守の際に訪ねてきた男性とその生まれたばかりの子は親子の様に似ていたと言うではありませんか。


 お頭の悪いエグモンド様。

 もうお分かりになっているのかしら。

 その貴族家と言うのは……ええノイナー侯爵家。つまりは貴方の家ですわ。

 そして年の離れた三番目の男の子は貴方の事よ、エグモンド様。

 貴方は嫡流筋の子ではなく侯爵夫人と愛人との間に生まれた子供なのですわ。

 
 またこれは我が家の恥となりますが貴方の本当の父親は私の父親。

 そう最近亡くなった公爵です」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

役立たずの私はいなくなります。どうぞお幸せに

Na20
恋愛
夫にも息子にも義母にも役立たずと言われる私。 それなら私はいなくなってもいいですよね? どうぞみなさんお幸せに。

一体だれが悪いのか?それはわたしと言いました

LIN
恋愛
ある日、国民を苦しめて来たという悪女が処刑された。身分を笠に着て、好き勝手にしてきた第一王子の婚約者だった。理不尽に虐げられることもなくなり、ようやく平和が戻ったのだと、人々は喜んだ。 その後、第一王子は自分を支えてくれる優しい聖女と呼ばれる女性と結ばれ、国王になった。二人の優秀な側近に支えられて、三人の子供達にも恵まれ、幸せしか無いはずだった。 しかし、息子である第一王子が嘗ての悪女のように不正に金を使って豪遊していると報告を受けた国王は、王族からの追放を決めた。命を取らない事が温情だった。 追放されて何もかもを失った元第一王子は、王都から離れた。そして、その時の出会いが、彼の人生を大きく変えていくことになる… ※いきなり処刑から始まりますのでご注意ください。

(完結)婚約解消は当然でした

青空一夏
恋愛
エヴァリン・シャー子爵令嬢とイライジャ・メソン伯爵は婚約者同士。レイテ・イラ伯爵令嬢とは従姉妹。 シャー子爵家は大富豪でエヴァリンのお母様は他界。 お父様に溺愛されたエヴァリンの恋の物語。 エヴァリンは婚約者が従姉妹とキスをしているのを見てしまいますが、それは・・・・・・

誰でもイイけど、お前は無いわw

猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。 同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。 見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、 「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」 と言われてしまう。

完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件

音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。 『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』 『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』 公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。 もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。 屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは…… *表紙絵自作

他の人を好きになったあなたを、私は愛することができません

天宮有
恋愛
 公爵令嬢の私シーラの婚約者レヴォク第二王子が、伯爵令嬢ソフィーを好きになった。    第三王子ゼロアから聞いていたけど、私はレヴォクを信じてしまった。  その結果レヴォクに協力した国王に冤罪をかけられて、私は婚約破棄と国外追放を言い渡されてしまう。  追放された私は他国に行き、数日後ゼロアと再会する。  ゼロアは私を追放した国王を嫌い、国を捨てたようだ。  私はゼロアと新しい生活を送って――元婚約者レヴォクは、後悔することとなる。

家が没落した時私を見放した幼馴染が今更すり寄ってきた

今川幸乃
恋愛
名門貴族ターナー公爵家のベティには、アレクという幼馴染がいた。 二人は互いに「将来結婚したい」と言うほどの仲良しだったが、ある時ターナー家は陰謀により潰されてしまう。 ベティはアレクに助けを求めたが「罪人とは仲良く出来ない」とあしらわれてしまった。 その後大貴族スコット家の養女になったベティはようやく幸せな暮らしを手に入れた。 が、彼女の前に再びアレクが現れる。 どうやらアレクには困りごとがあるらしかったが…

婚約破棄宣言は別の場所で改めてお願いします

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【どうやら私は婚約者に相当嫌われているらしい】 「おい!もうお前のような女はうんざりだ!今日こそ婚約破棄させて貰うぞ!」 私は今日も婚約者の王子様から婚約破棄宣言をされる。受け入れてもいいですが…どうせなら、然るべき場所で宣言して頂けますか? ※ 他サイトでも掲載しています

処理中です...