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45 ヤスミーン・オン・ザ・ステージ
しおりを挟む「お頭の悪いエグモンド様へきちんと説明させて頂きますわ。
ええ勿論分かり易く……ですわよ。
先ず幾ら王命とは言え愛人を伴い婚約者の屋敷へ住まうのは言語道断です。
また何も労する事もなく好きな時間に、好きなものを飲み食いするのもアウトです。
人間働かざるもの食うべからず……と言う諺がありますでしょ。
我が公爵家、そう私の代では特に労しない者に対しああそうですわね。
病に罹った者は手厚く看病しますし医師の診察も受けさせますわ。
福利厚生に手厚いのが私流ですの。
しかしその分ちゃんと健康な時には各個人に見合う労働は貴族平民関係なく行わなくてはいけません。
ですが悲しい事に貴方とエリーゼ嬢はそれに該当しませんでしたわ。
労しないどころか私の私財を勝手に自分達の欲望のままに使いましたわね。
それも確実にアウトです。
エリーゼ嬢に至っては厨房をかなり破壊されましたもの。
それら諸々を全て貴方の実家へ請求書を送らせて頂きましたわ。
ふふ、それと合わせて婚約を白紙撤回させる事にも……ね。
エグモンド様は何故婚約がなかった事になるのか不思議で仕方ないとお思いでしょう。
抑々貴方方の色々なやらかしはまだ私にしてみれば可愛いものだったのです。
ええ貴方方よりもエグモンド様のご両親の方が問題だったのですから……。
ああ侯爵ご夫妻はこの後でこちらへ来ていただく予定ですの。
陛下と一緒に入場なんて誉……ではないでしょうね。
話は戻りまして今から二十年前からですわ。
私の亡くなった父と貴方のお母様……つまり侯爵夫人は愛人関係にあったのです。
生前の父にも別に愛人を囲っていたのですが、それとは別口に貴方のお母様とも関係があったそうですわ。
その事実をですね、当時から侯爵家が財政困難であった事もあり貴方のお父様である侯爵は融資という形で我が公爵家へ金銭を要求していましたの。
然もつい最近まで。
娘の私から言わせればこれは融資ではなく強請にしか思えませんでしたけれどもね。
おまけに侯爵は貴方を婿に出す事で半永久的に公爵家のお金を引き出せると思ったのでしょう。
婚約を父へ持ち掛け父はそれを了承しましたわ。
でも可笑しいとは思いませんか。
幾ら何でも侯爵家へそこまで肩入れをする理由は我が家には何もないのです。
抑々婚約とはお互いの利益が絡んでなされる契約。
確かに侯爵家には利益はしっかりあるでしょう。
しかしながら我が公爵家には負債こそあれほんの少しの旨味すらないのです。
なので私は調べましたの。
最初から貴方との婚約は受け入れ難いと思っていたのです。
でも貴族の結婚とは個人の感情は二の次でしょ。
だから早々の利益があるのだと思えば全くなし、これにはかなり呆れ果ててしまいましたの。
そうして調べてみましたら色々な事がわかってきたのです。
私の婚約に積極的だった侯爵、それに便乗するかのように受け入れた我が父。
父が亡くなるまで侯爵夫人とは関係を続けていた。
今から19年前かしら。
とある貴族家で赤子が生まれた際に立ち会った産婆とその前後にクビになった侍女数名を探し出し当時の話を伺ったのです。
因みにその貴族家に生まれたであろう子供は男の子。
年の離れた男の子二人とは殆ど似ていない。
勿論その貴族家の子供の父親である筈の男性とは全く似ている所はなかったと。
ですが三ヶ月後その貴族家の当主が留守の際に訪ねてきた男性とその生まれたばかりの子は親子の様に似ていたと言うではありませんか。
お頭の悪いエグモンド様。
もうお分かりになっているのかしら。
その貴族家と言うのは……ええノイナー侯爵家。つまりは貴方の家ですわ。
そして年の離れた三番目の男の子は貴方の事よ、エグモンド様。
貴方は嫡流筋の子ではなく侯爵夫人と愛人との間に生まれた子供なのですわ。
またこれは我が家の恥となりますが貴方の本当の父親は私の父親。
そう最近亡くなった公爵です」
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