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44 Sideエグモンド
しおりを挟む「お、王太子、殿、下ぼ、私――――⁉」
「誰の許しを得て言を紡ぐ。何時私がそなたへ発言の許可を出した?」
「お、お赦し……」
「私は許可を出した覚えはない」
「ぴぎぃ!?」
じょぼ
あ、股間から何かが漏れた?
いやそんな些事等今はどうでもいい。
それよりも今は目の前の王太子が物凄く怖い!!
ついでに隣に立っておられる王太子妃殿下の眼つきも半端なく怖過ぎる。
その反対側で一切の温度を感じさせず冷ややかに僕を見下しているのはヤスミーン、僕の愛しの婚約者。
「婚約者? 正確には婚約者であったのです。もはや貴方との婚約は白紙撤回……ええ勿論貴方の有責で慰謝料それから我が家へ違法に滞在し、あまつさえ豚の様にって豚さんに失礼ですわね。一切働く事もせず飲み食い散らかせばです。我が公爵家のお金を湯水の様に使ったもの全てを慰謝料とは別に請求致します。当然一括で……」
「そ、そんなぁヤスミーンあんまりにもそれは酷……」
バシュ
ぱらぱら……
ちょぼちょぼ
「う、うわぁぁぁぁ!?」
「私はそなたへ発言を赦してはいないと告げた筈。これは警告だ。次はないと思え」
「――――⁉」
僕は両手で口を押さえつければ涙目でコクコクと静かに頷いた。
そんな僕の様子を呆れ果てた様子で見つめる衆目。
本当ならばこんな姿を誰にも見せたくはない。
だけど誰しも自分の命は惜しいのだ。
当然僕も自分の命が一番大切だと思っている。
だから王太子の言う事を今は聞くしかない。
因みに最初の音は王太子が抜刀し僕の頭頂部の髪の毛を剃り落とした音である。
ちょぼちょぼはもうわかるだろう。
僕のちびった音だよ。
誰しもこんな恐怖体験をすればおしっこの一つや二つくらいちびったとしても可笑しくはないと思うよ。
ふごぉ!?
そう思い巡らせていたら後ろから騎士が僕に布を噛ませてきた。
所謂猿轡である。
何故に衆目の中で猿轡?
次期公爵家の当主へ何と言う無礼な奴。
「それはお前の命綱だと思え。それを取り発言をすればお前は首と胴体が分かれる時となる」
流石にそれは嫌だ。
でも言葉を発しなければヤスミーンの協力が得られない。
この状況を打破する為にも彼女の助けが何としても……。
「私が貴方を助けると……でもお思いですか?」
僕は話す事が出来ないので必死にコクコクと何度も頷く。
勿論愛らしく同情を引く様に上目遣いは忘れない。
「気持ち悪い」
「それでも男なのか」
「私吐き気が……」
皆口々に勝手な事を!!
今に見ろ、僕が公爵となった暁にはお前達に今日の日を後悔させてやるからな。
「私も気持ちが悪いので止めて頂けません。それ絶対に可愛いとか一切同情はしないと言うかですわ。これまでに貴方へ可愛らしいを含めプラスの感情を抱いた事は全くありませんので」
がーん
まさかのヤスミーンからの渾身のアッパーが見事に顎へと入ってしまった。
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