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しおりを挟む「偽り等……何故私が貴方へ申さなければいけないのでしょう。私は何時も事実のみ申し上げておりましたわ」
「や、ヤスミーン」
「本当に私が今日この日をどれ程望んできたのかを貴方はご存じないのでしょうね。本当に長かったわ」
「ヤスミーン一体何を言って、僕達は婚約……」
ヤスミーンは真っ直ぐにエグモンドを見つめて告げる。
「婚約者? 勘違いも程々になさいませ」
「か、勘違いって断じて勘違いではない!! 僕は侯爵家の三男として生まれそしてシュターミッツ公爵令嬢である君と婚約をし、そうして結婚した暁には僕は公爵家の当主――――」
「である訳ないでしょう」
「はあ?」
エグモンドの言葉へ被せる様に言い放つと同時に完全否定をするヤスミーン。
「確かに亡き両親……いえ正確には私の父いやである前公爵が勝手に、ええ本当に身勝手に決めた婚約でしたわ。娘の私にでさえ婚約前に説明をする事無く事後報告で、全く私の意思も何もかもを無視をした、我がシュターミッツ公爵家にとて何の益も齎さない下らない婚約」
「そ、そんな、そんな言い方は酷いよヤスミーン。僕は、少なくとも僕は君を愛して……」
「愛しているだなんてふざけた言葉を言えば問答無用で舌を引っこ抜きましてよ。貴方のお馬鹿でお花畑の頭でよく考えてからお話なさいませ。ああ私の言葉が十分理解出来れば……の話ですけれどもね」
舌を引っこ抜くと言われて慌てて両手で口を覆うエグモンド。
だが幾らそう念を押されてもだ。
結局お馬鹿には理解をする能力はなく、思いつく事を何も考えずに言葉として発するのみである。
「僕は君を愛していた。これだけは真実――――」
「はいアウトですわ。後で全ての説明をしてから舌を抜きましょうね。そう、舌だけで済めば宜しいのですけれど……」
ヤスミーンはエグモンドがこれまで見た事もないくらい鮮やかに、そして美しくも冷たい笑みを湛えていた。
そうヤスミーンの反撃は今始まったばかりなのである。
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