34 / 53
34 〇子パイセン頑張ります!! Ⅱ
しおりを挟む『お姉様はゲアル伯爵家のご令嬢……ですわね。私はラングヤール公爵家が息女ヤスミーンと申します』
『ヤスミーン……様?』
『立ち入った事で申し訳御座いませんがお姉様、その方法ではお姉様は死ぬ事はお出来になれませんわよ』
そうヤスミーン姫と最初に出会ったのは今まさに私自身自殺を図ろうとしていたのです。
まあズバリ現場を目撃……目撃されようとしていたの方が正しいですわ。
当時私は17歳、ヤスミーン姫は12歳のまだあどけなさの残るでもその細やかな所作や立ち居振る舞いは立派な淑女でしたわね。
因みに私が自殺に選んだのは入水自殺です。
ふふ、今更ながら本当にあの頃の私は自分自身を何処までも追い込めば、正常な判断等全く出来なかったのです。
水属性の魔力保持者。
水に愛されし者が入水自殺等、液体関係で死ねる訳がないと言うのにそれを12歳のヤスミーン姫が諭して下さいましたの。
我に返った私は幼い彼女の前でわんわん泣きながら事の次第を説明したのです。
するとヤスミーン姫は真面目なお顔でこう仰られたのです。
『全てはお姉様の御心で考えられたもの。婚約者が一言でもその様に仰られましたか? 周りはどうですか。家族は? 水の守護を受けているのですもの。髪が濡れているのは仕方のない事。そしてお姉様の肌は青白い死人ではなく、真っ白な肌に蒼いベールで包まれているみたいで私はとても素敵だと思います。ええ神秘的ですわ。御髪もそう。濡れ羽色の髪なんてそうそうない事でしてよ。艶やかで触り心地のよい髪だと私はそう思います』
どうかもっとご自身に自信をお持ちになって。
その言葉に私はどれ程救われた事でしょう。
またその直ぐ後に私の遺書を見つけた婚約者が初めて本気で私へ怒りましたの。
もう真っ赤になって最後は泣きながら抱き締めて……。
それから私は考えを改めましたわ。
婚約者……今では愛する夫と可愛い子供とで私はとても幸せです。
この幸せに気付かせてくれたのは他でもないヤスミーン姫。
ヤスミーン姫の為、それと私の〇子キャラへ再自覚をすればです。
昨今の女性は社会へどんどん出て行かなくてはいけないと一念発起したのもあり、私は就職先を暗部に致しましたの。
ええこのキャラで対象者に精神的に追い詰め、そうして自白へ、まあ多少は趣味もあるかしら。
勿論〇子キャラははっきり言って体力勝負です。
何と言いましてもTV画面より這い出て対象者を追いかけ回すのは匍匐前進ですものね。
結構な体力と忍耐が要求されますわ。
ですので出勤日もですが毎日自宅で訓練しておりますのよ。
ふふ、最近では夫も共に頑張ってくれますの。
その内夫婦でTV画面から這い出る日も近いかも……ですわ。
話は戻りまして今回は私の大恩人であるヤスミーン姫の屑婚約者を追い詰める事。
今回は私の出番はなかったのですけれどね。
敬愛するヤスミーン姫の為、私は部下であるいの3番へお願いをして急遽応援と言う形で登場させて頂きましたの。
ええ勿論無償ですわ。
しかし無償ですがここはがっつりと手を抜く事なく対象者をじりじりと追い詰めればです。
恐怖で失禁するくらいまではさせて頂きますわ。
その後の仕上がりはヤスミーン姫自らだと言う事ですから言ってみればちょっとした前菜ですわね。
さあヤスミーン姫を煩わせ多分きっちりと大ホール近くまで匍匐前進頑張りますわ。
音響効果音等はいの3番が担当してくれます。
なのであ私は前体力を集中させて事に当たりたいと思います。
ふふ、お覚悟なさいませ。
女は怖い生き物だと骨の髄近くまで理解させてあげますわ。
そうして私はなれた動作でずるりとTV画面より這い出れば、目の前の対象者へ向かって振り乱した状態での濡れた髪の毛の合間よりにぃぃぃっと微笑んで差し上げました。
4
お気に入りに追加
307
あなたにおすすめの小説
彼の過ちと彼女の選択
浅海 景
恋愛
伯爵令嬢として育てられていたアンナだが、両親の死によって伯爵家を継いだ伯父家族に虐げられる日々を送っていた。義兄となったクロードはかつて優しい従兄だったが、アンナに対して冷淡な態度を取るようになる。
そんな中16歳の誕生日を迎えたアンナには縁談の話が持ち上がると、クロードは突然アンナとの婚約を宣言する。何を考えているか分からないクロードの言動に不安を募らせるアンナは、クロードのある一言をきっかけにパニックに陥りベランダから転落。
一方、トラックに衝突したはずの杏奈が目を覚ますと見知らぬ男性が傍にいた。同じ名前の少女と中身が入れ替わってしまったと悟る。正直に話せば追い出されるか病院行きだと考えた杏奈は記憶喪失の振りをするが……。
私、女王にならなくてもいいの?
gacchi
恋愛
他国との戦争が続く中、女王になるために頑張っていたシルヴィア。16歳になる直前に父親である国王に告げられます。「お前の結婚相手が決まったよ。」「王配を決めたのですか?」「お前は女王にならないよ。」え?じゃあ、停戦のための政略結婚?え?どうしてあなたが結婚相手なの?5/9完結しました。ありがとうございました。
番(つがい)はいりません
にいるず
恋愛
私の世界には、番(つがい)という厄介なものがあります。私は番というものが大嫌いです。なぜなら私フェロメナ・パーソンズは、番が理由で婚約解消されたからです。私の母も私が幼い頃、番に父をとられ私たちは捨てられました。でもものすごく番を嫌っている私には、特殊な番の体質があったようです。もうかんべんしてください。静かに生きていきたいのですから。そう思っていたのに外見はキラキラの王子様、でも中身は口を開けば毒舌を吐くどうしようもない正真正銘の王太子様が私の周りをうろつき始めました。
本編、王太子視点、元婚約者視点と続きます。約3万字程度です。よろしくお願いします。
忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】
雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。
誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。
ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。
彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。
※読んでくださりありがとうございます。
ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。
【完結】真面目だけが取り柄の地味で従順な女はもうやめますね
祈璃
恋愛
「結婚相手としては、ああいうのがいいんだよ。真面目だけが取り柄の、地味で従順な女が」
婚約者のエイデンが自分の陰口を言っているのを偶然聞いてしまったサンドラ。
ショックを受けたサンドラが中庭で泣いていると、そこに公爵令嬢であるマチルダが偶然やってくる。
その後、マチルダの助けと従兄弟のユーリスの後押しを受けたサンドラは、新しい自分へと生まれ変わることを決意した。
「あなたの結婚相手に相応しくなくなってごめんなさいね。申し訳ないから、あなたの望み通り婚約は解消してあげるわ」
*****
全18話。
過剰なざまぁはありません。
【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい
春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。
そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか?
婚約者が不貞をしたのは私のせいで、
婚約破棄を命じられたのも私のせいですって?
うふふ。面白いことを仰いますわね。
※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。
※カクヨムにも投稿しています。
誰でもイイけど、お前は無いわw
猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。
同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。
見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、
「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」
と言われてしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる