アラサー底辺女だけど聖女と呼ばれる異世界の王女に転生したから前世の分まで幸せになるために好き勝手に生きることにした

橋ノ本

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 数日後、騎士が瀕死の状態で運ばれてきた。
 双子の奴隷はほぼ無傷。

 まさかあの女自分が生きるために元婚約者である騎士にあれほどの手傷を負わせたのか。
 なんて嫌な女だ。
 
 そんなことを思いながら何があったのか双子に訊きだす。

 どうやら騎士をやったのは双子の妹らしい。
 それを聞いて反射的に近くにあったロッドで殴りそうになった。私の男に勝手に何かすることは重罪だ。
 だけど、この双子は奴隷だ。
 私の命令にないことは基本的にしないし、出来ない。
 
 だから何とか堪えて続きを訊くことにした。

 …………。
 続きを聞いて驚いた。
 なんと、この騎士は裏切っていて、あの女を庇ったらしい。
 
 そんな馬鹿な……。
 
「まさか……私の魅了が効かなかったとでもいうの?」

 この奴隷の双子は私の能力を知っている。
 奴隷は本人が死ぬか主人が死ぬまで決して裏切れない。
 だから効率よく要人や私の好みの男を魅了する為に双子に能力を教えて協力するようにさせた。
 それからの、この双子の働きは中々に優秀だった。
 腹立たしいけどそれについては褒めてやってもいい。

「いえ、どうやらそうではないようです」

 双子の妹の方が私に何かを差し出す。

「…………それは?」

 私は手に取ることはせず、そのまま問いかける。

「あの男がつけていた腕輪です」
「それが……なんなのかしら?」
「どうやら魔法の品らしく。……精神系の耐性が上がるようです」

 なるほど。
 さすが次期騎士団長、良い物を身に着けていたのね。

「でも、そんなもので私の能力に抵抗できるもの?」

 魔法耐性がある魔法使いにも効いたし、その腕輪とは違うが同じような魔法の道具を持った者にも普通に効いているのは確認している。

「どうやら古代の遺失物アーティファクトらしく、市場に出回っている物とは比べ物にならない効力があるようです」

 古代の遺失物アーティファクトとは今では作れない神が作ったとされている破格の能力を秘めた武具道具類のことだ。
 そんな物を身に着けていたなんて……。

「なるほど……それで裏切っていた、と?」

 ムカつくムカつくムカつくっ!
 なにそれ?
 じゃあこの男、私に魅了されたフリしてたってこと?
 なんのために?
 
 あの女のために決まってる!

「……最悪ね」

 しかも、まんまとあの女は取り逃がしてしまったらしい。

 最悪で最低な気分だった。
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