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第17章 勇者と嵐の旅立ち編
第225話 女神とちょっぴり危ない異世界知識
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オルガンの音が聞こえる。静かな音が曲を奏で、聞くものを眠りへ誘う、ゆったりとした旋律が部屋の中を流れていた。
その音に合わせ、煌びやかな宝石たちが重力に従い、上から下へと落ちていく。
赤・青・黄、三色の宝石が集まり、縦に長い物体……不思議なことに、その宝石は輝く色の順番を目まぐるしく変え落下する。
落ちゆく先には、同じような宝石たちが所狭しとひしめき合い、仲間の到来を待ち侘びていた。
同じ色の宝石たちは、恋人たちのように惹かれ合い、互いに寄り添い触れ合う。
赤い宝石たちは情熱的に、青い宝石はおだやかに、黄色の宝石は幸せそうに……。
宝石たちは互いのパートナーと出会い、愛をたしかめ合うと、そのまま消えてしまう。
そして新たなる宝石が再び現れると、新たなる出会いを求め落ち……そして消えていく。
終わることなく続けられるその様は、まるで集団婚活パーティーの雰囲気を呈していた。
そして……ついに今までの宝石とは違うモノの登場に、会場はザワつきだす。
それは例えるなら、物腰やわらかで年収億超え、……もはや『なぜ婚活に⁈』と言われてしまうほどの超イケメンの登場に――
「セレス様、来ました!」
「ええ、私たちの待ち望んだものが、ついに……このチャンス逃しません」
――女神セレスと、見習い女神ニーナの目も、色めき立つ。
煌びやかに点滅を繰り返し、存在感抜群のそれは、画面の中に積まれたモノ達の間に高速に落下すると……イケメンに触れた宝石たちは、一斉に消え去ってしまう。
それはまるで、次々と複数のパートナーとカップルとなり、婚活会場を颯爽とあとにするハーレムの主のように!
「セレス様、高得点です♪」
「ニーナ、まだここからですよ」
するとその言葉を皮切りに、セレスは真剣な表情を浮かべ、手にしたギガドライブのゲームパットを恐るべきスピードで、カチカチと操作する。
次々と高速に積み重なっていく宝石たち……ちまちまとカップルが成立し婚活会場から去っていく。
だがそれ以上にあぶれた宝石たちの方が多くなり、時間が経つにつれ、婚活会場はカップルを誕生させるためのスペースがなくなっていく。
「い、いけません。セレス様、このままでは……」
「……」
画面に釘付けのニーナの声に、セレスは高速でゲームパットを操作し無言で答える。
制限された空間で、セレスは恐るべきスピードと正確さを持って宝石を積み上げ続ける。
もはや婚活会場は、足の踏み場もないほどギュウギュウ詰めになり、ついに会場入口スペース一杯にまで、ごった返す。
「セレス様、残念ですが、ここまでです」
「ニーナ、諦めるのはまだです。足掻くのです。どんなに無様でも、生きている限り……可能性はゼロではありません」
「可能性?」
ニーナは隣でペタンと座り、婚活会場に入場する宝石たちを必死な形相で捌くセレスの横顔を見た。
「そうです。まだ私は足掻けます。ならば、それはゼロではありません。たとえ絶望的な状況だとしても……足掻き続ける限り可能性はあるのです」
「ですが……もう宝石を積み重ねるスペースが……」
ついに婚活会場は、定員オーバー寸前にまで陥り、最後の宝石が入場すれば、ゲームオーバーな状況にニーナの顔は曇る。だが――
「1%でも可能性があるのなら、足掻き続けるのです。絶望の果てにこそ、希望はあるのですから!」
――女神セレスが力強くゲームパットのボタンを押し込むと、見習い女神の顔に光が差し込んだ。
「う、うそ⁈」
それは奇跡だった。
セレスの手によって、ひとつのカップルが誕生し会場から抜け出た瞬間、消えた宝石の空いた空間へ積み重なっていた宝石が落ち、新たなるカップルが成立する。
「え……ええ!」
再び空いた空間に積み重なる宝石が落ち、次々とカップルが成立し消えていく。
「連鎖? 待ってください。これはいったい10……20……30⁈」
ついに画面には、ひとつ残らず宝石はなくなり、無人の荒野だけが残されていた。
「36連鎖⁈ セ、セレス様、これはまさか……」
「そうです。これこそが至高なる御技『全消し』です!」
「⁈」
ニーナは驚愕の表情を浮べ、セレスはドヤ顔で画面に表示された99999999の得点を満足げに眺めていた。
「これが『全消し』⁈ す、凄い! 勇者様の記憶の中で、もっとも難しいと思われる落ちモノパズルゲーム『ゴラムズ』で全消しをするなんて……さすがセレス様です」
目をキラキラさせながら尊敬の眼差しを向けるニーナ、それを見てセレスは満足げにうなずいた。
【ゴラムズ】
1990年代、デドリズの誕生により落ちものパズルゲーム、通称『落ちゲー』と呼ばれる新たなるジャンルが確立した時代、とあるゲームが産声を上げた。
ドット絵職人の霊がこもった美麗な宝石のグラフィック、ゆったりとして優雅なサウンド……ゲーム説明に『古代フェニキア伝説です』と銘打たれたはいいが、『それってなに?』とプレイヤーを困惑させた落ちゲー、それがゴラムズである。
発売元は、あの『俺たちの技術力は世界一!』で有名なギガドライブを開発した株式会社SAGAであり、当然ながら、ただの落ちゲーに止まる予感など微塵も感じさせない。
初出はアーケードゲームとしてゲームセンターに並び、のちに家庭用ではギガドライブを皮切りにさまざまなゲーム機へと移植され、シリーズは三作目まで発売された。
とくにシリーズ三作目は、世界初五人同時対戦が可能な落ちゲーとして、ある意味有名である。
上から落ちてくる三つの宝石が連なった長方形の物体を、左右に動かし、ボタンを押すことで色の順番を変更する。同じ色の宝石をタテ・ヨコ・ナナメに揃えると消える。
単純にしてシンプルなゲームシステムはデドリズと変わらず、二番煎じ的な落ちゲーと思う人も多かった。だがしかし……今でこそあたり前となった『連鎖』と呼ばれるシステムを、世界ではじめて実装した落ちゲーこそが、実はこのゴラムズなのだ。
積み重なった宝石が空いた隙間に落下し、さらにブロックを消す。これにより、ただブロックを積み重ねるだけではなく、計算して積み上げていく戦略性も新たに加わった。
のちに発売される大ヒットゲーム、ブヨブヨが連鎖の初出と勘違いするゲームプレイヤーは多い。これは連鎖と名付け、世に広めたのがブヨブヨだったことも起因していた。
連鎖システムの元祖ゴラムズ、歴史の影に隠れてヒッソリと消えゆくゲームのひとつと思われたが、実はいまだにゲームセンターの片隅で、ひっそりと稼働し続けているロングヒットゲームなのである。
ゲームセンターにおいて、長期に同じゲームが長年置かれるには、人気とインカム率が密接に関係している。
ゲームセンターの経営者的には、1プレイの回転率が早く、かつ中毒性の高いゲームを置くのが理想であり、ゴラムズはその両方を兼ね揃えた稀有なゲームゆえに長年稼働を続けられた。
単純明快な操作性と、一発逆転を狙えるイケメン魔法石からの連続連鎖が決まった時の爽快感。宝石を考えながら積み上げていく戦略性の高さに加え、さらに長年プレーされ続ける最大の理由を問われれば……それは難易度だと言わざるをえない。
実はこのゴラムズ、数ある落ちゲーの中でも難易度が非常に高いことで有名だった。
世に言う落ちゲーとは、カラフルでカワイイブロックを回転させ積み上げ消していくのが基本となり、ライトユーザーでも簡単に楽しめる作りになっている。
だがゴラムズに関していえば、それは当てはまらない。変なところでSAGAのゲームらしく、『俺たちの落ちゲーは世界一!』を目指した結果……とんでもない変態難易度のゲームが誕生してしまったのだ。
実はこのゲーム、ボタンを押しても宝石ブロックは回転せず、縦に重なる縦棒になった宝石を積み上げていくことになる。ボタンを押すたびに、宝石の順番は入れ替わるのだが、コレが難易度を跳ね上げてしまった。
人が動くものを正しく認識する要素に、色や形という要素が挙げられる。数多の落ちゲーは向きをブロックの向きを変え、形を変化させることで瞬間的な認識力を高め、ゲームをプレーしやすくしている。
対してゴラムズは、ボタンを押しても宝石の順番が変わるだけで、向きは変わらない。常に縦に積み重なった棒が落ち続けるのだ。
想像して欲しい。ただひたすら棒が高速に落ち続け、瞬時に三色の宝石の順番を認識し、最適な順番に変えなければならことを……。
これが他の落ちゲーのように二色なら、まだプレーは簡単だったのだが、問題は三色あることである。
ゲーム序盤、宝石ブロックの落ちるスピードが、まだ遅い状態ならまだいい。しかし落下速度が速まる中盤に入った瞬間、このゲームはプレイヤーに牙を剥き襲い掛かってくるのだ。
高速に落下する宝石ブロックの色を、ゼロコンマ何秒で判断し、1秒以内に落下場所への移動と色の順番を入れ替えなければならず、大抵のプレイヤーはここでパニックに陥る。
オマケに宝石ブロックのサイズが普通の落ちゲーより大きく、画面の上にまで積み上がるスピードの早いことも相待って、地味にミスを誘発してくるのだ。
さらにイヤらしいのが、次に落ちてくる宝石ブロックが何かを教えてくれる、Nextブロックの表示が遅いのである。
落ちゲーにおいて、次に落ちてくるブロック情報は重要であり、これを元に1手先を読み、戦略を練らねばならない。
にもかかわらず、ゴラムズはNextブロック表示された宝石がプレイ画面にすべて表示されなければ、次のNextブロックが表示されないのである。
『たかがそんなこと?』と思う人はいるだろう。思い出して欲しい、ゴラムズのブロックの形が何であったかを……そう、縦に長い三つの宝石が積み重なった棒状なのだ。
ゼロコンマ秒の世界で戦うコアゲーマーにとって、それは嫌がらせ以外の何者でもなかった。
このせいで、ほとんどの一般プレイヤーは、中盤に突入した途端にゲームオーバーが続出し、その結果……ゴラムズの平均プレー時間は五分を切ってしまう。
常人には、プレイ不可能な難易度……普通ならこんなゲームはすぐに廃れてしまうものだが、この高すぎる難易度が逆にコアゲーマーの魂に火をつけてしまった。
不可能と言われれば、やってやるのがコアゲーマーの性である。何度もゲームオーバーになろうとも諦めない不屈の闘志が、積み上がる宝石と共にゲーマーのお金を巻き上げていく。
そして長い時間と莫大なお金を投入した結果、カンストスコア99999999点に到達する猛者が現れ、世はまさに大落ちゲー時代へと突入していくのであった。
初稼働から三十二年……稼げなければ入れ替えが当たり前のゲームセンター業界において、いまだ稼働し続ける伝説のロングヒットゲーム、それが『ゴラムズ』なのである!
「それにしても、このゴラムズは難易度が高すぎますね。グラフィックの美しさと心地よいサウンドなら、ゲームのお披露目に良いかと思いましたが、ゲーム初心者に取っ付き難いかもしれません」
「私もそう思います。私なんか横で見ているだけで頭がパニックになりそうでした。はじめてのゲームお披露目には、コレよりもカワイイキャラで遊びやすいブヨブヨにした方が、他の女神様たちにウケは良そうです」
天界に設けられた、とある部屋の一角から、和気あいあいと若い女神たちの声があがる。
「男神は……戦いを好む方が多いですから、『スーパーマリナ』辺りが妥当でしょうか?」
「はい。操作の簡単なアクションゲームですし、男神はムッツリが多いですから……スーパー松茸でダイナマイトボディーになったマリナを見て、どういう反応をするか、今から楽しみです♪」
セレスは脇に置いたボードを手に、ニーナの意見を紙に書留めていく。
「それでは、次に開催される『神の宴』で披露するゲームは、『ブヨブヨ』と『スーパーマリナ』のふたつで決定としましょう」
すると二人は互いの笑顔を見ながら、手をパチパチと叩き合う。
「このお披露目会の成否が、停滞している新たなるゲーム機とソフト開発に繋がります。ニーナ、一緒にがんばりましょうね」
「はい。セレス様、神の宴でのゲーム機デビュー……私、いまから楽しみです」
神の宴……それは娯楽の少ない天界において、半年に一度ペースで開催される神々の大宴会である。
天界に住まう者なら誰でも参加可能な宴会であり、娯楽に飢えた神々にとって大人気なイベントだった。
ガイヤの世界にある、あらゆる酒や料理を持ち寄って行われる、飲めや歌えの大宴会。
その宴において、神々の自慢の一品や芸を披露するパフォーマンスタイムが設けられており、セレスはソレに目をつけていた。
「きっとみんな驚きますよ。ゲームなんてやったことがありませんし」
「ええ、何百年も宴は開催されていますが、最近は目新し出し物がありませんから、きっとみんな楽しんでくれるくれますね」
「でも、ゲームの存在を知ったら、みんな貸して欲しいと言いそうです……」
「そうですね。……ニーナ、どうかしましたか?」
寂しそうにうつむいたニーナに気付き、セレスは心配する。
「いえ……もしそうなったら、ゲーム機を貸している間、セレス様と一緒に居られなくなるなって」
見習い女神の自分が、天界最高神である大地の女神と一緒に過ごせる唯一の理由……二人をつなぐ架け橋であるゲーム機がなければ、ニーナはセレスに会う理由がなくなってしまう。
そう考えてしまったニーナの表情は暗く沈み込んでいくのだが――
「ニーナ……ふふ、そんなことを気にしていたんですか? 大丈夫ですよ。ゲーム機がなくたって、あなたは私にとって一番の同志です。いつでもこの部屋に来ていいのです。いえ……むしろ居て頂かないと困りますからね」
――その言葉にニーナは頭を上げ、セレスの顔を見る。
ポヤポヤとした温かな日差しのような笑顔、優しく見守る瞳、そして見る者に安らぎを与える雰囲気……自分が目指すべき完璧な女神を見て、ニーナの心は温かくなり笑顔を取り戻す。
「セレス様、ありがとうございます。」
「はい。神々の宴が終わった後は、猫の手も借りたくなるほど忙しくなりますから、同志ニーナに居てもらわないと本当に困るのです」
「忙しく?」
「はい。実はゲーム機とソフトを大々的に作り、神々に販売しようと思っています。皆にゲームの楽しんでもらうために」
「ゲームの販売ですか? ゲーム機を一度生み出せば、その概念が生まれ、次から作る神気は少なく済みますが……私たちの神気はもう空っぽですよ? 販売しようにも作れないのにどうやって?」
「販売をするにあたり、神々の宴でクラウドファンディングを皆に提案しようと思っています」
「セレス様、クラウドファンディングとは何ですか?」
はじめて聞く言葉にハテナマークを浮かべるニーナ……その顔を見て、セレスはニンマリしながら口を開く。
「ヒロ様の元いた世界にあった資金調達の方法です。あっ、この場合は神気調達ですね」
「神気調達? 神気を借りる融資みたいなものですか?」
「似ていますが、少し違います。融資は組織や個人からお金を借りて、最終的に利子を付けて元金を返さなければなりません。ですがクラウドファンディングには購入型と言われるおもしろい出資方法があり、今回はこれを用いてゲーム機製造の資金を調達します」
セレスは自信満々な顔でニーナに説明をはじめた。
「クラウドファンディングとは、ヒロ様の居た世界の言葉で、『群衆』と『資金調達』を組み合わせた言葉です」
「え~と……セレス様、それって融資と違うのですか?」
「ええ、違います。購入型クラウドファンディングは、不特定多数の者から、『こんな物を作りたいけど作るお金がない。だから先に購入する代金を払ってください。完成したら商品を渡します』と、先に代金を払ってもらう資金調達方法なのです」
「でも……それだとお金だけ払って、商品を作らずに持ち逃げされたり、資金が集まらず、作れない可能性が起こりませんか?」
「普通であれば怪しくて、出資しようなんて思わないでしょう。そこで私の出番です」
「セレス様の出番?」
自らの胸に手を置き女神は自信に満ちた顔つきになる。
「資金を提供する側と作る側、その間に私が介入します。群衆から集めた資金を私が一時的に預かるのです。そして目標額に達した時点で作る側に資金を渡し、商品が実際に作られているかどうか、完成品が引き渡されたかを監視します。逆に資金が目標額に達しなければ出資者に返却します。集めた資金は私が管理していますから、持ち逃げの心配はありません」
「ああ、なるほど。誰かが間に入り、資金と商品の流れを管理するわけですね。それを天界の三女神セレス様がするのなら、みんなも安心です。あれ……でも、セレス様が間に入るとなると、誰がゲームを?」
「ええ、大地の女神という肩書きと公平な立場でいるからこそ、クラウドファンディングは成り立ちます。だからニーナ……あなたにやってもらいたいのです」
「ム、ムリです! 私、まだ見習い女神ですよ! 私にクラウドファンディングで神気を調達して、ゲームを作り販売するなんて……ムリです」
突然のことにニーナは驚き、セレスの提案を速攻で辞退する。
「いいえ……ニーナ、アナタならできる。私にはわかります。ゲームのおもしろさを理解し、ゲームを愛するアナタなら必ずできます。だからこそ私はアナタにお願いしたいのです」
「ゲームを愛している……私が?」
「ええ、ニーナ。ゲームの楽しさは、ゲームを通じてでしか伝わらない。そしてゲームの楽しさを共有できるのは同じゲームを遊んだ者同士だけです。共に話し合える唯一の同志。自信を持ってください」
最高神のひとりである大地の女神セレスは、見習い女神ニーナの手を取る。
「ゲーム機の概念は生まれさえすれば、作る技術は高くなくても問題ありませんし、ようは神気さえあればいいのです。製造と販売に関しては私もサポートします。だからお願いです。同志ニーナ、共にこの天界にゲームという新しい風を吹かせましょう」
柔らかな眼差しを向けるセレス、それを見たニーナは、大地に抱かれるような安心感に包まれ、心の中にあった不安が吹き飛んでいた。
「……セレス様、わかりました。その大役、謹んでお受けいたします」
「同志ニーナ、そう言ってくれると思っていました。私の願いを聞いてくれてありがとう」
「はい、私がんばります!」
拳を握り、ヤル気をアピールするニーナは気付いていなかった。セレスの口元が、一瞬だけ釣り上がっていたことに……。
(これがうまくいけば、次世代ハード開発の為に必要となる莫大な神気の確保はバッチリです。集めた神気で低コストのゲーム機を作れば、神気はかなり余るはず。あとは余った神気を開発に回せば、まだ見ぬゲーム機が私の手に! ニーナ、アナタを巻き込んでしまったこと……許してください)
「どうしました、セレス様?」
「いいえ、何でもありません。それではニーナ、打ち合わせをしましょうか」
「はい、セレス様」
こうしてニーナの知らないところで、セレスの陰謀が着々と進行し、天界における新たなるゲーム機開発は動き出すのだった。
〈神々が住まう天上の世界で、禁断の箱が女神の手で開け放たれる。最後に箱に残るものが何なのか? それを知るものは、まだ誰もいない……〉
その音に合わせ、煌びやかな宝石たちが重力に従い、上から下へと落ちていく。
赤・青・黄、三色の宝石が集まり、縦に長い物体……不思議なことに、その宝石は輝く色の順番を目まぐるしく変え落下する。
落ちゆく先には、同じような宝石たちが所狭しとひしめき合い、仲間の到来を待ち侘びていた。
同じ色の宝石たちは、恋人たちのように惹かれ合い、互いに寄り添い触れ合う。
赤い宝石たちは情熱的に、青い宝石はおだやかに、黄色の宝石は幸せそうに……。
宝石たちは互いのパートナーと出会い、愛をたしかめ合うと、そのまま消えてしまう。
そして新たなる宝石が再び現れると、新たなる出会いを求め落ち……そして消えていく。
終わることなく続けられるその様は、まるで集団婚活パーティーの雰囲気を呈していた。
そして……ついに今までの宝石とは違うモノの登場に、会場はザワつきだす。
それは例えるなら、物腰やわらかで年収億超え、……もはや『なぜ婚活に⁈』と言われてしまうほどの超イケメンの登場に――
「セレス様、来ました!」
「ええ、私たちの待ち望んだものが、ついに……このチャンス逃しません」
――女神セレスと、見習い女神ニーナの目も、色めき立つ。
煌びやかに点滅を繰り返し、存在感抜群のそれは、画面の中に積まれたモノ達の間に高速に落下すると……イケメンに触れた宝石たちは、一斉に消え去ってしまう。
それはまるで、次々と複数のパートナーとカップルとなり、婚活会場を颯爽とあとにするハーレムの主のように!
「セレス様、高得点です♪」
「ニーナ、まだここからですよ」
するとその言葉を皮切りに、セレスは真剣な表情を浮かべ、手にしたギガドライブのゲームパットを恐るべきスピードで、カチカチと操作する。
次々と高速に積み重なっていく宝石たち……ちまちまとカップルが成立し婚活会場から去っていく。
だがそれ以上にあぶれた宝石たちの方が多くなり、時間が経つにつれ、婚活会場はカップルを誕生させるためのスペースがなくなっていく。
「い、いけません。セレス様、このままでは……」
「……」
画面に釘付けのニーナの声に、セレスは高速でゲームパットを操作し無言で答える。
制限された空間で、セレスは恐るべきスピードと正確さを持って宝石を積み上げ続ける。
もはや婚活会場は、足の踏み場もないほどギュウギュウ詰めになり、ついに会場入口スペース一杯にまで、ごった返す。
「セレス様、残念ですが、ここまでです」
「ニーナ、諦めるのはまだです。足掻くのです。どんなに無様でも、生きている限り……可能性はゼロではありません」
「可能性?」
ニーナは隣でペタンと座り、婚活会場に入場する宝石たちを必死な形相で捌くセレスの横顔を見た。
「そうです。まだ私は足掻けます。ならば、それはゼロではありません。たとえ絶望的な状況だとしても……足掻き続ける限り可能性はあるのです」
「ですが……もう宝石を積み重ねるスペースが……」
ついに婚活会場は、定員オーバー寸前にまで陥り、最後の宝石が入場すれば、ゲームオーバーな状況にニーナの顔は曇る。だが――
「1%でも可能性があるのなら、足掻き続けるのです。絶望の果てにこそ、希望はあるのですから!」
――女神セレスが力強くゲームパットのボタンを押し込むと、見習い女神の顔に光が差し込んだ。
「う、うそ⁈」
それは奇跡だった。
セレスの手によって、ひとつのカップルが誕生し会場から抜け出た瞬間、消えた宝石の空いた空間へ積み重なっていた宝石が落ち、新たなるカップルが成立する。
「え……ええ!」
再び空いた空間に積み重なる宝石が落ち、次々とカップルが成立し消えていく。
「連鎖? 待ってください。これはいったい10……20……30⁈」
ついに画面には、ひとつ残らず宝石はなくなり、無人の荒野だけが残されていた。
「36連鎖⁈ セ、セレス様、これはまさか……」
「そうです。これこそが至高なる御技『全消し』です!」
「⁈」
ニーナは驚愕の表情を浮べ、セレスはドヤ顔で画面に表示された99999999の得点を満足げに眺めていた。
「これが『全消し』⁈ す、凄い! 勇者様の記憶の中で、もっとも難しいと思われる落ちモノパズルゲーム『ゴラムズ』で全消しをするなんて……さすがセレス様です」
目をキラキラさせながら尊敬の眼差しを向けるニーナ、それを見てセレスは満足げにうなずいた。
【ゴラムズ】
1990年代、デドリズの誕生により落ちものパズルゲーム、通称『落ちゲー』と呼ばれる新たなるジャンルが確立した時代、とあるゲームが産声を上げた。
ドット絵職人の霊がこもった美麗な宝石のグラフィック、ゆったりとして優雅なサウンド……ゲーム説明に『古代フェニキア伝説です』と銘打たれたはいいが、『それってなに?』とプレイヤーを困惑させた落ちゲー、それがゴラムズである。
発売元は、あの『俺たちの技術力は世界一!』で有名なギガドライブを開発した株式会社SAGAであり、当然ながら、ただの落ちゲーに止まる予感など微塵も感じさせない。
初出はアーケードゲームとしてゲームセンターに並び、のちに家庭用ではギガドライブを皮切りにさまざまなゲーム機へと移植され、シリーズは三作目まで発売された。
とくにシリーズ三作目は、世界初五人同時対戦が可能な落ちゲーとして、ある意味有名である。
上から落ちてくる三つの宝石が連なった長方形の物体を、左右に動かし、ボタンを押すことで色の順番を変更する。同じ色の宝石をタテ・ヨコ・ナナメに揃えると消える。
単純にしてシンプルなゲームシステムはデドリズと変わらず、二番煎じ的な落ちゲーと思う人も多かった。だがしかし……今でこそあたり前となった『連鎖』と呼ばれるシステムを、世界ではじめて実装した落ちゲーこそが、実はこのゴラムズなのだ。
積み重なった宝石が空いた隙間に落下し、さらにブロックを消す。これにより、ただブロックを積み重ねるだけではなく、計算して積み上げていく戦略性も新たに加わった。
のちに発売される大ヒットゲーム、ブヨブヨが連鎖の初出と勘違いするゲームプレイヤーは多い。これは連鎖と名付け、世に広めたのがブヨブヨだったことも起因していた。
連鎖システムの元祖ゴラムズ、歴史の影に隠れてヒッソリと消えゆくゲームのひとつと思われたが、実はいまだにゲームセンターの片隅で、ひっそりと稼働し続けているロングヒットゲームなのである。
ゲームセンターにおいて、長期に同じゲームが長年置かれるには、人気とインカム率が密接に関係している。
ゲームセンターの経営者的には、1プレイの回転率が早く、かつ中毒性の高いゲームを置くのが理想であり、ゴラムズはその両方を兼ね揃えた稀有なゲームゆえに長年稼働を続けられた。
単純明快な操作性と、一発逆転を狙えるイケメン魔法石からの連続連鎖が決まった時の爽快感。宝石を考えながら積み上げていく戦略性の高さに加え、さらに長年プレーされ続ける最大の理由を問われれば……それは難易度だと言わざるをえない。
実はこのゴラムズ、数ある落ちゲーの中でも難易度が非常に高いことで有名だった。
世に言う落ちゲーとは、カラフルでカワイイブロックを回転させ積み上げ消していくのが基本となり、ライトユーザーでも簡単に楽しめる作りになっている。
だがゴラムズに関していえば、それは当てはまらない。変なところでSAGAのゲームらしく、『俺たちの落ちゲーは世界一!』を目指した結果……とんでもない変態難易度のゲームが誕生してしまったのだ。
実はこのゲーム、ボタンを押しても宝石ブロックは回転せず、縦に重なる縦棒になった宝石を積み上げていくことになる。ボタンを押すたびに、宝石の順番は入れ替わるのだが、コレが難易度を跳ね上げてしまった。
人が動くものを正しく認識する要素に、色や形という要素が挙げられる。数多の落ちゲーは向きをブロックの向きを変え、形を変化させることで瞬間的な認識力を高め、ゲームをプレーしやすくしている。
対してゴラムズは、ボタンを押しても宝石の順番が変わるだけで、向きは変わらない。常に縦に積み重なった棒が落ち続けるのだ。
想像して欲しい。ただひたすら棒が高速に落ち続け、瞬時に三色の宝石の順番を認識し、最適な順番に変えなければならことを……。
これが他の落ちゲーのように二色なら、まだプレーは簡単だったのだが、問題は三色あることである。
ゲーム序盤、宝石ブロックの落ちるスピードが、まだ遅い状態ならまだいい。しかし落下速度が速まる中盤に入った瞬間、このゲームはプレイヤーに牙を剥き襲い掛かってくるのだ。
高速に落下する宝石ブロックの色を、ゼロコンマ何秒で判断し、1秒以内に落下場所への移動と色の順番を入れ替えなければならず、大抵のプレイヤーはここでパニックに陥る。
オマケに宝石ブロックのサイズが普通の落ちゲーより大きく、画面の上にまで積み上がるスピードの早いことも相待って、地味にミスを誘発してくるのだ。
さらにイヤらしいのが、次に落ちてくる宝石ブロックが何かを教えてくれる、Nextブロックの表示が遅いのである。
落ちゲーにおいて、次に落ちてくるブロック情報は重要であり、これを元に1手先を読み、戦略を練らねばならない。
にもかかわらず、ゴラムズはNextブロック表示された宝石がプレイ画面にすべて表示されなければ、次のNextブロックが表示されないのである。
『たかがそんなこと?』と思う人はいるだろう。思い出して欲しい、ゴラムズのブロックの形が何であったかを……そう、縦に長い三つの宝石が積み重なった棒状なのだ。
ゼロコンマ秒の世界で戦うコアゲーマーにとって、それは嫌がらせ以外の何者でもなかった。
このせいで、ほとんどの一般プレイヤーは、中盤に突入した途端にゲームオーバーが続出し、その結果……ゴラムズの平均プレー時間は五分を切ってしまう。
常人には、プレイ不可能な難易度……普通ならこんなゲームはすぐに廃れてしまうものだが、この高すぎる難易度が逆にコアゲーマーの魂に火をつけてしまった。
不可能と言われれば、やってやるのがコアゲーマーの性である。何度もゲームオーバーになろうとも諦めない不屈の闘志が、積み上がる宝石と共にゲーマーのお金を巻き上げていく。
そして長い時間と莫大なお金を投入した結果、カンストスコア99999999点に到達する猛者が現れ、世はまさに大落ちゲー時代へと突入していくのであった。
初稼働から三十二年……稼げなければ入れ替えが当たり前のゲームセンター業界において、いまだ稼働し続ける伝説のロングヒットゲーム、それが『ゴラムズ』なのである!
「それにしても、このゴラムズは難易度が高すぎますね。グラフィックの美しさと心地よいサウンドなら、ゲームのお披露目に良いかと思いましたが、ゲーム初心者に取っ付き難いかもしれません」
「私もそう思います。私なんか横で見ているだけで頭がパニックになりそうでした。はじめてのゲームお披露目には、コレよりもカワイイキャラで遊びやすいブヨブヨにした方が、他の女神様たちにウケは良そうです」
天界に設けられた、とある部屋の一角から、和気あいあいと若い女神たちの声があがる。
「男神は……戦いを好む方が多いですから、『スーパーマリナ』辺りが妥当でしょうか?」
「はい。操作の簡単なアクションゲームですし、男神はムッツリが多いですから……スーパー松茸でダイナマイトボディーになったマリナを見て、どういう反応をするか、今から楽しみです♪」
セレスは脇に置いたボードを手に、ニーナの意見を紙に書留めていく。
「それでは、次に開催される『神の宴』で披露するゲームは、『ブヨブヨ』と『スーパーマリナ』のふたつで決定としましょう」
すると二人は互いの笑顔を見ながら、手をパチパチと叩き合う。
「このお披露目会の成否が、停滞している新たなるゲーム機とソフト開発に繋がります。ニーナ、一緒にがんばりましょうね」
「はい。セレス様、神の宴でのゲーム機デビュー……私、いまから楽しみです」
神の宴……それは娯楽の少ない天界において、半年に一度ペースで開催される神々の大宴会である。
天界に住まう者なら誰でも参加可能な宴会であり、娯楽に飢えた神々にとって大人気なイベントだった。
ガイヤの世界にある、あらゆる酒や料理を持ち寄って行われる、飲めや歌えの大宴会。
その宴において、神々の自慢の一品や芸を披露するパフォーマンスタイムが設けられており、セレスはソレに目をつけていた。
「きっとみんな驚きますよ。ゲームなんてやったことがありませんし」
「ええ、何百年も宴は開催されていますが、最近は目新し出し物がありませんから、きっとみんな楽しんでくれるくれますね」
「でも、ゲームの存在を知ったら、みんな貸して欲しいと言いそうです……」
「そうですね。……ニーナ、どうかしましたか?」
寂しそうにうつむいたニーナに気付き、セレスは心配する。
「いえ……もしそうなったら、ゲーム機を貸している間、セレス様と一緒に居られなくなるなって」
見習い女神の自分が、天界最高神である大地の女神と一緒に過ごせる唯一の理由……二人をつなぐ架け橋であるゲーム機がなければ、ニーナはセレスに会う理由がなくなってしまう。
そう考えてしまったニーナの表情は暗く沈み込んでいくのだが――
「ニーナ……ふふ、そんなことを気にしていたんですか? 大丈夫ですよ。ゲーム機がなくたって、あなたは私にとって一番の同志です。いつでもこの部屋に来ていいのです。いえ……むしろ居て頂かないと困りますからね」
――その言葉にニーナは頭を上げ、セレスの顔を見る。
ポヤポヤとした温かな日差しのような笑顔、優しく見守る瞳、そして見る者に安らぎを与える雰囲気……自分が目指すべき完璧な女神を見て、ニーナの心は温かくなり笑顔を取り戻す。
「セレス様、ありがとうございます。」
「はい。神々の宴が終わった後は、猫の手も借りたくなるほど忙しくなりますから、同志ニーナに居てもらわないと本当に困るのです」
「忙しく?」
「はい。実はゲーム機とソフトを大々的に作り、神々に販売しようと思っています。皆にゲームの楽しんでもらうために」
「ゲームの販売ですか? ゲーム機を一度生み出せば、その概念が生まれ、次から作る神気は少なく済みますが……私たちの神気はもう空っぽですよ? 販売しようにも作れないのにどうやって?」
「販売をするにあたり、神々の宴でクラウドファンディングを皆に提案しようと思っています」
「セレス様、クラウドファンディングとは何ですか?」
はじめて聞く言葉にハテナマークを浮かべるニーナ……その顔を見て、セレスはニンマリしながら口を開く。
「ヒロ様の元いた世界にあった資金調達の方法です。あっ、この場合は神気調達ですね」
「神気調達? 神気を借りる融資みたいなものですか?」
「似ていますが、少し違います。融資は組織や個人からお金を借りて、最終的に利子を付けて元金を返さなければなりません。ですがクラウドファンディングには購入型と言われるおもしろい出資方法があり、今回はこれを用いてゲーム機製造の資金を調達します」
セレスは自信満々な顔でニーナに説明をはじめた。
「クラウドファンディングとは、ヒロ様の居た世界の言葉で、『群衆』と『資金調達』を組み合わせた言葉です」
「え~と……セレス様、それって融資と違うのですか?」
「ええ、違います。購入型クラウドファンディングは、不特定多数の者から、『こんな物を作りたいけど作るお金がない。だから先に購入する代金を払ってください。完成したら商品を渡します』と、先に代金を払ってもらう資金調達方法なのです」
「でも……それだとお金だけ払って、商品を作らずに持ち逃げされたり、資金が集まらず、作れない可能性が起こりませんか?」
「普通であれば怪しくて、出資しようなんて思わないでしょう。そこで私の出番です」
「セレス様の出番?」
自らの胸に手を置き女神は自信に満ちた顔つきになる。
「資金を提供する側と作る側、その間に私が介入します。群衆から集めた資金を私が一時的に預かるのです。そして目標額に達した時点で作る側に資金を渡し、商品が実際に作られているかどうか、完成品が引き渡されたかを監視します。逆に資金が目標額に達しなければ出資者に返却します。集めた資金は私が管理していますから、持ち逃げの心配はありません」
「ああ、なるほど。誰かが間に入り、資金と商品の流れを管理するわけですね。それを天界の三女神セレス様がするのなら、みんなも安心です。あれ……でも、セレス様が間に入るとなると、誰がゲームを?」
「ええ、大地の女神という肩書きと公平な立場でいるからこそ、クラウドファンディングは成り立ちます。だからニーナ……あなたにやってもらいたいのです」
「ム、ムリです! 私、まだ見習い女神ですよ! 私にクラウドファンディングで神気を調達して、ゲームを作り販売するなんて……ムリです」
突然のことにニーナは驚き、セレスの提案を速攻で辞退する。
「いいえ……ニーナ、アナタならできる。私にはわかります。ゲームのおもしろさを理解し、ゲームを愛するアナタなら必ずできます。だからこそ私はアナタにお願いしたいのです」
「ゲームを愛している……私が?」
「ええ、ニーナ。ゲームの楽しさは、ゲームを通じてでしか伝わらない。そしてゲームの楽しさを共有できるのは同じゲームを遊んだ者同士だけです。共に話し合える唯一の同志。自信を持ってください」
最高神のひとりである大地の女神セレスは、見習い女神ニーナの手を取る。
「ゲーム機の概念は生まれさえすれば、作る技術は高くなくても問題ありませんし、ようは神気さえあればいいのです。製造と販売に関しては私もサポートします。だからお願いです。同志ニーナ、共にこの天界にゲームという新しい風を吹かせましょう」
柔らかな眼差しを向けるセレス、それを見たニーナは、大地に抱かれるような安心感に包まれ、心の中にあった不安が吹き飛んでいた。
「……セレス様、わかりました。その大役、謹んでお受けいたします」
「同志ニーナ、そう言ってくれると思っていました。私の願いを聞いてくれてありがとう」
「はい、私がんばります!」
拳を握り、ヤル気をアピールするニーナは気付いていなかった。セレスの口元が、一瞬だけ釣り上がっていたことに……。
(これがうまくいけば、次世代ハード開発の為に必要となる莫大な神気の確保はバッチリです。集めた神気で低コストのゲーム機を作れば、神気はかなり余るはず。あとは余った神気を開発に回せば、まだ見ぬゲーム機が私の手に! ニーナ、アナタを巻き込んでしまったこと……許してください)
「どうしました、セレス様?」
「いいえ、何でもありません。それではニーナ、打ち合わせをしましょうか」
「はい、セレス様」
こうしてニーナの知らないところで、セレスの陰謀が着々と進行し、天界における新たなるゲーム機開発は動き出すのだった。
〈神々が住まう天上の世界で、禁断の箱が女神の手で開け放たれる。最後に箱に残るものが何なのか? それを知るものは、まだ誰もいない……〉
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