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第17章 勇者と嵐の旅立ち編
第207話 最後の晩餐
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木の長机の上に置かれたいくつもの燭台が、薄暗い部屋の中をほのかに明るく照らしだしていた。
燭台に灯されたロウソクの火が、机の上に並べられた色とりどりの料理を幻想的に魅せていた。それを見た小さな子どもたちは、いまかいまかとフォーク片手にヨダレを垂らして机にかじりつく。
机の上の料理は、オーク討伐の報に湧く街中で振る舞われたものや、三人のシスターズと年長者の子ども達が、ヒロから教わった異世界の調理方法とレシピで作った豪華なものだった。
「さて、みんな揃ったようだね?」
長机の中心に座る初老の男が椅子から立ち上がり、低い声を出しながら部屋の中を見回すと、部屋の中にいた子ども達とシスターズの視線が集まる。
「みんな、今日は町にオークが無事に討伐され喜びに湧いています。ですが、私たちにとって、もっと嬉しい話があります」
「嬉しい話?」
「ねー、ねー、まだ食べちゃダメなの?」
「オーク討伐よりも?」
「リーシア姉とヒロさんの結婚話⁈」
「結婚できりゅの?」
「そうか、リーねえ……」
食堂に会した孤児院の子ども達が、トーマス神父の言葉に思いおもいに口を開く。小さな子たちは料理に首ったけになり、少し大きな子は、何のことかわからない様子……年長者の子ども達はなんとなく神父の言わんとすることが分かっていた。
「静かに……コホン、嬉しい話とは、ここにいるリーシアが、この孤児院を旅立つことです」
「……え?」
突然の言葉に、皆が唖然とし口をつむぐ。いつも一緒にいた家族が急に家を出て行く……その言葉に、その場にいた皆の心に悲しみが吹き荒び、寂しい気持ちを抱かせる。
「リーシア姉ちゃん……出ていちゃうの?」
リーシアの隣に座るリゲルがポツリと声を漏らし、少女の顔をのぞき見ると……少女は申し訳なさそうな顔で答えた。
「リゲル……みんな……ごめんなさい。私は……ここを出ていきます」
「ヤダヤダヤダヤダ、行かないでリーシアねえ」
「私たちのこと嫌いになっちゃったの? もう好き嫌い言って困らせないから、だからどこにも行かないでリーねえ」
「いつかは教会を出て行かなきゃならないのは知っているけど……でも突然すぎだよ、リーシア……」
突然の別れに、さきほどまでの騒々しさは何処へやら……急に静まり返った食堂で、皆が一様に俯いてしまい、下唇を噛む者や泣き出すものまで現れてしまう始末だった。
「私も……ずっとみんなと一緒に居たかったけど、私にはやるべきことができました。それはここに居てはできないことなんです。だから……私のワガママを許してください」
皆の視線がリーシアに注がれるが、リーシアはうつむかずまっすぐな瞳で受け止める。自分のワガママを押し通そうと、皆の心を傷つけてしまったとしても……それでも少女は止まるわけには行かない。
「行かないで……いい子にするから……行かないで……」
「孤児院を出て行かなきゃいけないのは十六歳でしょ? リーシア姉さんは十五歳なんだから、あと一年はここに入れるよ!」
「そうだよ。まだ出て行かなくてもいいよ」
皆の口から『あと一年ある……だから、行かないで』と、声が上がりはじめる。それを聞いたリーシアは、こんなにも慕ってくれる家族が居ることに嬉しくなるが、同時にみんなを悲しませて旅立つ自分に自問していた。
自分のワガママで、突然この子たちと分かれていいのかと? みんながいうように、あと一年の間にお別れを済ませ、出来るだけ悲しませないように出て行った方がよいのではと? ヒロとの旅はお預けになるが、あとから追いかければいいのではと……自分より他人の幸せを願うリーシアの心が揺らぎそうなると――
「みんなダメだよ」
――リーシアの隣に座わっていたリゲルが顔を上げ、精一杯の笑顔を浮かべながらリゲルのその顔は幼い子の表情ではなく、少し大人びた少年の顔をしていた。
「僕たちがワガママを言ったらリーシア姉ちゃんが困っちゃうよ」
「リゲル……」
「お前、リーシア姉が出て行って寂しくないのかよ!」
目に涙を溜めながらも少年はうつむかず、ハッキリと言い放つ。
「寂しいに決まってるよ! 僕もリーシアお姉ちゃんと一緒にここで暮らしていたい。でも、僕たちのワガママでリーシアお姉ちゃんが困る姿を僕は見たくないんだ。だから、寂しいけど……僕は我慢する」
みんな知っていた。この中でリーシアと別れて一番に悲しいのは、リゲルであることを……。
「僕たちのワガママをリーシアお姉ちゃんは沢山叶えてくれた。だから今度は僕らが、リーシアお姉ちゃんのワガママを聞いてあげないと……」
リゲルの瞳から涙がこぼれ落ちると、グイッと服の袖で拭っていた。
「みんな……リーシアお姉ちゃんが安心して旅立てるように、笑って送り出してあげようよ」
その言葉に、何人かの子どもたちが互いに視線を合わせると、うなずき合う。そして――
「そうだよな。いつまでもリー姉に頼ってばかりじゃ……任せて、リー姉の代わりに薬草採りは僕が行くから」
「私は、リー姉ちゃんの代わりに礼拝堂の掃除をするわ」
「俺は、リー姉さんの育てた庭の野菜に毎日、水やりするよ」
――子どもたちが、リーシアが安心して孤児院を旅立てるようにと、リーシアと代われるお手伝いを次々と口にしていた。
「わ、わたじも……お掃除ずる」
泣いていた小さな子たちも、泣きながら自分に出来ることを口にして涙を堪えようと我慢する……次第に食堂の中は静かになり、徐々に落ち着きを取り戻していく。
「リゲル……みんな……私のワガママを聞いてくれてありがとう」
リーシアは食堂に集まった家族の顔、一人ひとりをゆっくりと見回していた。少女の脳裏にみんなとの思い出が蘇り、瞳に涙を浮かんでしまう。楽しいこと、ツライこと、嬉しいかったこと、悲しかったこと……さまざまな思い出が心の中で蘇ると涙が頬を伝って流れていく。
リーシアは最後に、隣に座るリゲルの顔を見る。
出会った時は、まだ小さな赤ん坊だった幼子……病弱でいつも自分がそばに付いて面倒を見ていた子が、少し大人びた表情を浮かべていた。
ずっとひとりぼっちだと思って生きてきた世界で、こんなにも自分を気にかけてくれた家族がいたことに気づいたとき、リーシアの心に陽光に似た光が差込み、温かな思いが溢れる。
満面の笑みを崩さず、涙するリーシアを見たリゲルと子どもたちが、これ以上の心配を掛けまいと、涙を堪えて笑顔を崩すまいとしていた。
すると椅子に腰掛けていたトーマス神父が立ち上がり、呆れた口調で皆に告げた。
「みんな、何か勘違いをしていませんか?」
「「「「?」」」」
「リーシアはたしかに孤児院を卒院しますが、別に二度とこの場所に足を踏み入れてはならないなんて、誰も言っていませんよ? むしろヒロさんと二人でいつでも戻ってきていただいて、孤児院の経営を手伝ってもらえると大変助かります」
神父はあっけらかんとした顔で皆にそのことを伝えると、リーシアの前に座っていた行き遅れスリーシスターズが神父の言葉に続く。
「たしかに……シスターリーシアがいないと、力仕事が大変で……」
「リーシアがいないと、私たちが南の森に薬草採り行かなくちゃならないじゃない」
「クックックックッ、子どもの相手は私たちじゃね、体力が持たないよ」
姉として……先輩シスターして、リーシアを導いた来たスリーシスターズがリーシアに微笑む。
「まあ、リーシアがヒロを捕まえて帰ってきたときには、ひとりを除いて私たちも幸せになっているはずだしね」
「クックックックッ、そう、ひとりを除いてね」
「だ、誰が……彼氏いない歴=年齢って言ったあ!」
「「誰もいってない!」」
スリーシスターズが椅子から立ち上がり、距離を取ると互いに牽制し合う――
「やめんか!」
――見るに耐えない醜態に、トーマス神父のカミナリが落ち、渋々と席に戻るシスターズを見て、子どもたちがクスクスと笑い合う。それを見たリーシアの瞳からは、もう涙は消え失せ、温かな優しさを心に感じていた。
「まったく、変わらんな三人は……私など、この歳で結婚もしていないのだぞ? 彼女いない歴五十一年……経験もないというのに」
神父の言葉に、サンシスターズはおろか年少の子どもを除く全員が凍りついた。
「……? みんな、どうしました?」
いきなり凍りついた場の雰囲気に、トーマス神父が口を開くと……恐るおそる彼氏いない歴=年齢のシスターが口を開く。
「ト、トーマス神父……あの……その……か、家族の方は?」
「うむ、両親はとっくに他界しているし、女神教に入信していた弟はいましたが……六年前に亡くなりました」
聞けなかった……まさかその歳で童貞なんですか? なんて……聞ける訳がなかった。開いた口は当たり障りのない家族話を口にしながら、スリーシスターズは悟った。このまま出会いを待っていたら二の舞いだと……。
「トーマス神父様……申し訳ありませんが、私も明日で教会を旅立ちたいと……」
「奇遇ね、私も明日限りで教会を……」
「クックックックッ、右に同じく……」
「ふっ、神に奉仕するものが結婚如きで、却下だ」
『馬鹿なことを』と、神父がスリーシスターズの願いをバッサリと切り捨てる!
「いやー! 一生ひとりはいやよぉぉぉぉぉぉっ!」
「ああ、終わった……私の幸せは終わったわ」
「クックックックッ、リーシア……私たちの分まで幸せに」
机に突っ伏して嘆くスリーシスターズを見て、トーマス神父はヤレヤレと頭を振り、リーシアは苦笑い……そして子供たちは揃って笑っていた。
「リーシア、そういうことですので、いつでも気兼ねなくヒロさんと二人で帰ってきなさい……ここはあなたの帰る家なのだからね」
「はい。トーマス神父様……必ず二人でここに帰ってきます」
心の中で、リーシアは決意する。いつの日かはわからない。でもヒロと二人で、必ずここに帰ってくると……心に誓う。
「では、みんなリーシアの旅立ちのお祝いと旅の無事を祈って乾杯しましょう」
トーマス神父が気を取り直し、テーブルに置かれた木製のコップを手にすると、皆がそれに習いコップを手にしていた。
年長者のグラスにはワインが、お酒が飲めない子どものグラスには果汁の水が注がれており、リーシアのコップにはワインが注がれていた。
「あれ? 私のコップ……果実水でなくワインが注がれていますけど?」
普段、お金の関係もあり、お酒を飲まないリーシア……ワイン一杯で子どもたちの好きな甘い果実水が、十杯は飲める。ムダなお金を使わないよう、お酒類は生まれてこの方、口にしたことがなかった。
「今日はリーシアのお祝いです。主役が飲まない訳にはいきませんよ。それに……冒険者として旅に出るのなら、お酒に少し慣れておきなさい。とくに女性はね」
「ん~? なんだかよくわかりませんが、肝に銘じておきます」
「うむ。では、みんなコップを……」
すると手を皆が椅子から立ち上がり、コップを胸の前に掲げる。
「リーシア、皆に挨拶を……」
「はい。みんな、私のワガママを聞いてくれてありがとう。お恥ずかしい話ですが……みんなと過ごした日々は、とても大切な日々だったんだと今さら痛感しました。みんなと過ごした毎日が……私にとってキラキラと光る宝物のような時間だったことを感謝します」
リーシアの言葉に、子どもたちはうつむかず笑顔で応える。
「本当に……今日まで私を育ててくれて……見守っていてくれたことに感謝しています。私は、この教会から旅立つけど、みんなのことは忘れません……必ずいつかここに戻ってきます。だから、さようならはいいません。行ってきます」
「よし、みんなリーシアの旅立ちと旅の無事を祈って、乾杯!」
「「「「かんぱ~い!」」」」
皆がコップを掲げ、中身を一気に飲み干していく。
リーシアもまたはじめて飲むワインをひとくち飲むと、口当たりが良く、フレッシュな甘みが口の中に広がり、爽やかな香りが鼻から抜けていく。
「はじめて飲みましたが、美味しいですね♪」
「ほう、リーシアはワインがいける口でしたか?」
「果実水とは違う甘みで美味しいです」
「それは良かった。実はこれはとっておきでね。オーク討伐のお祝いも兼ねて、奮発して開けたのだよ」
「まさかこのワイン、た、高いんですか?」
するとトーマス神父が鼻の前に人差し指を立てて、皆に見えないように片目をつぶり、『シー』とジェスチャーをする。
「さあ。みんな食べるとしよう。今日はご馳走ですよ。お腹一杯食べますよ」
「肉だぁぁぁぁ!」
「お前、手を離せ! それは俺のだ!」
「あぁぁ、甘い! ねえ、ねえ! これ、すっごい甘くて美味しいわよ!」
トーマス神父の言葉に、腹ペコの子どもたちが獰猛な肉食獣の如く、テーブルに置かれた料理に飛びついていた。そこにはもはや秩序など存在しない。ただ強い者だけが食べられる弱肉強食の世界が広がっていた。
「こら! みんな、お祈りが先でしょう!」
酷い惨状を見かねて、彼氏いない歴=年齢のシスターが声をあげる。
「まあ、今日くらいはいいでしょう。創世神と三女神も許してくれます。さあ、私たちも食べますよ。こんなご馳走、いつ食べられるか、わかりませんからね」
「はい。では、私はあちらのお肉争奪戦に参加して参ります。どけぇぇ!それは私のお肉よぉぉ!」
「みんな行き遅れが来たわよ、早く食べなさい」
「クックックックッ、今さら来てももうあんたの分はないのさ」
「なら、お前らの皿の上に乗っている肉をよこせ~」
スリーシスターズを交えた壮絶な戦いが始まった!
「ふむ。楽しそうでなによりだ。おや、リーシア、コップか空のようだね。おかわりをするかね?」
「……ヒック!」
トーマス神父テーブルに置かれたワインのボトルを手に、空になったリーシアのコップにワインを再び注ぎ込もうとした時だった。
「ヒロ……なんで私を置いていっちゃったんですか……ヒック! 私の幸せが見つかるまで嫌でも一緒について行くっていったのに……ヒック!」
「リ、リーシア?」
「リーシアお姉ちゃん?」
トーマス神父とリゲルが、うつむいてブツブツとしゃべるリーシアの顔を覗き込むと……顔を真っ赤にし、目がトロンと座った少女がくだを巻いていた。
「私の気持ち知らないで……これだから男はダメダメなんですよ! 説明もなしに自分勝手に動いて! アリアさんのいう通りです! 男なんてちょっと甘い顔をしたらドンドンつけ上がる生き物です! やはりガンガン私が絞めないといけません! ……ヒック!」
少女の手にした木製のコップが……握りつぶされ砕け散った!
「や、ヤバいよ! みんな、リーシアお姉ちゃんが!」
「まさかたった一杯のワインで酔っ払ったのか⁈」
「なんで私があんな変態のために、こんなに思い悩まなくちゃならないんですか! おかしいです! これもそれも……すべてヒロのせいですよ! ヒロのばかぁぁぁぁぁぁぁ!」
握りつぶしたコップの破片を床に叩きつけるリーシア……恐るべき力が加わり、破片が床にめり込むと木の板が破壊される!
「みんな逃げて~!」
「みんな、逃げなさい!」
リゲルとトーマス神父の声がハモると、子どもたちはデーブルの上に残っていた料理の皿を手に、部屋の外へと一斉に逃げ出していた。
「滅べ、滅べ! 滅びされ! 男なんて、滅べばいいんです! ビック!」
「リーシアお姉ちゃん、やめて~!」
「うわああああん」
「キャー! 助けて!」
そして教会の食堂は、阿鼻叫喚の地獄絵図と化すのであった。
その後……リーシアが酔いつぶれるまで、三十分の時間を要したという――後の世に、酒乱シスターと呼ばれるふたつ名が誕生した瞬間であった。
〈聖女と家族の団欒が終わりを告げた時……ついに破滅の時は訪れる〉
燭台に灯されたロウソクの火が、机の上に並べられた色とりどりの料理を幻想的に魅せていた。それを見た小さな子どもたちは、いまかいまかとフォーク片手にヨダレを垂らして机にかじりつく。
机の上の料理は、オーク討伐の報に湧く街中で振る舞われたものや、三人のシスターズと年長者の子ども達が、ヒロから教わった異世界の調理方法とレシピで作った豪華なものだった。
「さて、みんな揃ったようだね?」
長机の中心に座る初老の男が椅子から立ち上がり、低い声を出しながら部屋の中を見回すと、部屋の中にいた子ども達とシスターズの視線が集まる。
「みんな、今日は町にオークが無事に討伐され喜びに湧いています。ですが、私たちにとって、もっと嬉しい話があります」
「嬉しい話?」
「ねー、ねー、まだ食べちゃダメなの?」
「オーク討伐よりも?」
「リーシア姉とヒロさんの結婚話⁈」
「結婚できりゅの?」
「そうか、リーねえ……」
食堂に会した孤児院の子ども達が、トーマス神父の言葉に思いおもいに口を開く。小さな子たちは料理に首ったけになり、少し大きな子は、何のことかわからない様子……年長者の子ども達はなんとなく神父の言わんとすることが分かっていた。
「静かに……コホン、嬉しい話とは、ここにいるリーシアが、この孤児院を旅立つことです」
「……え?」
突然の言葉に、皆が唖然とし口をつむぐ。いつも一緒にいた家族が急に家を出て行く……その言葉に、その場にいた皆の心に悲しみが吹き荒び、寂しい気持ちを抱かせる。
「リーシア姉ちゃん……出ていちゃうの?」
リーシアの隣に座るリゲルがポツリと声を漏らし、少女の顔をのぞき見ると……少女は申し訳なさそうな顔で答えた。
「リゲル……みんな……ごめんなさい。私は……ここを出ていきます」
「ヤダヤダヤダヤダ、行かないでリーシアねえ」
「私たちのこと嫌いになっちゃったの? もう好き嫌い言って困らせないから、だからどこにも行かないでリーねえ」
「いつかは教会を出て行かなきゃならないのは知っているけど……でも突然すぎだよ、リーシア……」
突然の別れに、さきほどまでの騒々しさは何処へやら……急に静まり返った食堂で、皆が一様に俯いてしまい、下唇を噛む者や泣き出すものまで現れてしまう始末だった。
「私も……ずっとみんなと一緒に居たかったけど、私にはやるべきことができました。それはここに居てはできないことなんです。だから……私のワガママを許してください」
皆の視線がリーシアに注がれるが、リーシアはうつむかずまっすぐな瞳で受け止める。自分のワガママを押し通そうと、皆の心を傷つけてしまったとしても……それでも少女は止まるわけには行かない。
「行かないで……いい子にするから……行かないで……」
「孤児院を出て行かなきゃいけないのは十六歳でしょ? リーシア姉さんは十五歳なんだから、あと一年はここに入れるよ!」
「そうだよ。まだ出て行かなくてもいいよ」
皆の口から『あと一年ある……だから、行かないで』と、声が上がりはじめる。それを聞いたリーシアは、こんなにも慕ってくれる家族が居ることに嬉しくなるが、同時にみんなを悲しませて旅立つ自分に自問していた。
自分のワガママで、突然この子たちと分かれていいのかと? みんながいうように、あと一年の間にお別れを済ませ、出来るだけ悲しませないように出て行った方がよいのではと? ヒロとの旅はお預けになるが、あとから追いかければいいのではと……自分より他人の幸せを願うリーシアの心が揺らぎそうなると――
「みんなダメだよ」
――リーシアの隣に座わっていたリゲルが顔を上げ、精一杯の笑顔を浮かべながらリゲルのその顔は幼い子の表情ではなく、少し大人びた少年の顔をしていた。
「僕たちがワガママを言ったらリーシア姉ちゃんが困っちゃうよ」
「リゲル……」
「お前、リーシア姉が出て行って寂しくないのかよ!」
目に涙を溜めながらも少年はうつむかず、ハッキリと言い放つ。
「寂しいに決まってるよ! 僕もリーシアお姉ちゃんと一緒にここで暮らしていたい。でも、僕たちのワガママでリーシアお姉ちゃんが困る姿を僕は見たくないんだ。だから、寂しいけど……僕は我慢する」
みんな知っていた。この中でリーシアと別れて一番に悲しいのは、リゲルであることを……。
「僕たちのワガママをリーシアお姉ちゃんは沢山叶えてくれた。だから今度は僕らが、リーシアお姉ちゃんのワガママを聞いてあげないと……」
リゲルの瞳から涙がこぼれ落ちると、グイッと服の袖で拭っていた。
「みんな……リーシアお姉ちゃんが安心して旅立てるように、笑って送り出してあげようよ」
その言葉に、何人かの子どもたちが互いに視線を合わせると、うなずき合う。そして――
「そうだよな。いつまでもリー姉に頼ってばかりじゃ……任せて、リー姉の代わりに薬草採りは僕が行くから」
「私は、リー姉ちゃんの代わりに礼拝堂の掃除をするわ」
「俺は、リー姉さんの育てた庭の野菜に毎日、水やりするよ」
――子どもたちが、リーシアが安心して孤児院を旅立てるようにと、リーシアと代われるお手伝いを次々と口にしていた。
「わ、わたじも……お掃除ずる」
泣いていた小さな子たちも、泣きながら自分に出来ることを口にして涙を堪えようと我慢する……次第に食堂の中は静かになり、徐々に落ち着きを取り戻していく。
「リゲル……みんな……私のワガママを聞いてくれてありがとう」
リーシアは食堂に集まった家族の顔、一人ひとりをゆっくりと見回していた。少女の脳裏にみんなとの思い出が蘇り、瞳に涙を浮かんでしまう。楽しいこと、ツライこと、嬉しいかったこと、悲しかったこと……さまざまな思い出が心の中で蘇ると涙が頬を伝って流れていく。
リーシアは最後に、隣に座るリゲルの顔を見る。
出会った時は、まだ小さな赤ん坊だった幼子……病弱でいつも自分がそばに付いて面倒を見ていた子が、少し大人びた表情を浮かべていた。
ずっとひとりぼっちだと思って生きてきた世界で、こんなにも自分を気にかけてくれた家族がいたことに気づいたとき、リーシアの心に陽光に似た光が差込み、温かな思いが溢れる。
満面の笑みを崩さず、涙するリーシアを見たリゲルと子どもたちが、これ以上の心配を掛けまいと、涙を堪えて笑顔を崩すまいとしていた。
すると椅子に腰掛けていたトーマス神父が立ち上がり、呆れた口調で皆に告げた。
「みんな、何か勘違いをしていませんか?」
「「「「?」」」」
「リーシアはたしかに孤児院を卒院しますが、別に二度とこの場所に足を踏み入れてはならないなんて、誰も言っていませんよ? むしろヒロさんと二人でいつでも戻ってきていただいて、孤児院の経営を手伝ってもらえると大変助かります」
神父はあっけらかんとした顔で皆にそのことを伝えると、リーシアの前に座っていた行き遅れスリーシスターズが神父の言葉に続く。
「たしかに……シスターリーシアがいないと、力仕事が大変で……」
「リーシアがいないと、私たちが南の森に薬草採り行かなくちゃならないじゃない」
「クックックックッ、子どもの相手は私たちじゃね、体力が持たないよ」
姉として……先輩シスターして、リーシアを導いた来たスリーシスターズがリーシアに微笑む。
「まあ、リーシアがヒロを捕まえて帰ってきたときには、ひとりを除いて私たちも幸せになっているはずだしね」
「クックックックッ、そう、ひとりを除いてね」
「だ、誰が……彼氏いない歴=年齢って言ったあ!」
「「誰もいってない!」」
スリーシスターズが椅子から立ち上がり、距離を取ると互いに牽制し合う――
「やめんか!」
――見るに耐えない醜態に、トーマス神父のカミナリが落ち、渋々と席に戻るシスターズを見て、子どもたちがクスクスと笑い合う。それを見たリーシアの瞳からは、もう涙は消え失せ、温かな優しさを心に感じていた。
「まったく、変わらんな三人は……私など、この歳で結婚もしていないのだぞ? 彼女いない歴五十一年……経験もないというのに」
神父の言葉に、サンシスターズはおろか年少の子どもを除く全員が凍りついた。
「……? みんな、どうしました?」
いきなり凍りついた場の雰囲気に、トーマス神父が口を開くと……恐るおそる彼氏いない歴=年齢のシスターが口を開く。
「ト、トーマス神父……あの……その……か、家族の方は?」
「うむ、両親はとっくに他界しているし、女神教に入信していた弟はいましたが……六年前に亡くなりました」
聞けなかった……まさかその歳で童貞なんですか? なんて……聞ける訳がなかった。開いた口は当たり障りのない家族話を口にしながら、スリーシスターズは悟った。このまま出会いを待っていたら二の舞いだと……。
「トーマス神父様……申し訳ありませんが、私も明日で教会を旅立ちたいと……」
「奇遇ね、私も明日限りで教会を……」
「クックックックッ、右に同じく……」
「ふっ、神に奉仕するものが結婚如きで、却下だ」
『馬鹿なことを』と、神父がスリーシスターズの願いをバッサリと切り捨てる!
「いやー! 一生ひとりはいやよぉぉぉぉぉぉっ!」
「ああ、終わった……私の幸せは終わったわ」
「クックックックッ、リーシア……私たちの分まで幸せに」
机に突っ伏して嘆くスリーシスターズを見て、トーマス神父はヤレヤレと頭を振り、リーシアは苦笑い……そして子供たちは揃って笑っていた。
「リーシア、そういうことですので、いつでも気兼ねなくヒロさんと二人で帰ってきなさい……ここはあなたの帰る家なのだからね」
「はい。トーマス神父様……必ず二人でここに帰ってきます」
心の中で、リーシアは決意する。いつの日かはわからない。でもヒロと二人で、必ずここに帰ってくると……心に誓う。
「では、みんなリーシアの旅立ちのお祝いと旅の無事を祈って乾杯しましょう」
トーマス神父が気を取り直し、テーブルに置かれた木製のコップを手にすると、皆がそれに習いコップを手にしていた。
年長者のグラスにはワインが、お酒が飲めない子どものグラスには果汁の水が注がれており、リーシアのコップにはワインが注がれていた。
「あれ? 私のコップ……果実水でなくワインが注がれていますけど?」
普段、お金の関係もあり、お酒を飲まないリーシア……ワイン一杯で子どもたちの好きな甘い果実水が、十杯は飲める。ムダなお金を使わないよう、お酒類は生まれてこの方、口にしたことがなかった。
「今日はリーシアのお祝いです。主役が飲まない訳にはいきませんよ。それに……冒険者として旅に出るのなら、お酒に少し慣れておきなさい。とくに女性はね」
「ん~? なんだかよくわかりませんが、肝に銘じておきます」
「うむ。では、みんなコップを……」
すると手を皆が椅子から立ち上がり、コップを胸の前に掲げる。
「リーシア、皆に挨拶を……」
「はい。みんな、私のワガママを聞いてくれてありがとう。お恥ずかしい話ですが……みんなと過ごした日々は、とても大切な日々だったんだと今さら痛感しました。みんなと過ごした毎日が……私にとってキラキラと光る宝物のような時間だったことを感謝します」
リーシアの言葉に、子どもたちはうつむかず笑顔で応える。
「本当に……今日まで私を育ててくれて……見守っていてくれたことに感謝しています。私は、この教会から旅立つけど、みんなのことは忘れません……必ずいつかここに戻ってきます。だから、さようならはいいません。行ってきます」
「よし、みんなリーシアの旅立ちと旅の無事を祈って、乾杯!」
「「「「かんぱ~い!」」」」
皆がコップを掲げ、中身を一気に飲み干していく。
リーシアもまたはじめて飲むワインをひとくち飲むと、口当たりが良く、フレッシュな甘みが口の中に広がり、爽やかな香りが鼻から抜けていく。
「はじめて飲みましたが、美味しいですね♪」
「ほう、リーシアはワインがいける口でしたか?」
「果実水とは違う甘みで美味しいです」
「それは良かった。実はこれはとっておきでね。オーク討伐のお祝いも兼ねて、奮発して開けたのだよ」
「まさかこのワイン、た、高いんですか?」
するとトーマス神父が鼻の前に人差し指を立てて、皆に見えないように片目をつぶり、『シー』とジェスチャーをする。
「さあ。みんな食べるとしよう。今日はご馳走ですよ。お腹一杯食べますよ」
「肉だぁぁぁぁ!」
「お前、手を離せ! それは俺のだ!」
「あぁぁ、甘い! ねえ、ねえ! これ、すっごい甘くて美味しいわよ!」
トーマス神父の言葉に、腹ペコの子どもたちが獰猛な肉食獣の如く、テーブルに置かれた料理に飛びついていた。そこにはもはや秩序など存在しない。ただ強い者だけが食べられる弱肉強食の世界が広がっていた。
「こら! みんな、お祈りが先でしょう!」
酷い惨状を見かねて、彼氏いない歴=年齢のシスターが声をあげる。
「まあ、今日くらいはいいでしょう。創世神と三女神も許してくれます。さあ、私たちも食べますよ。こんなご馳走、いつ食べられるか、わかりませんからね」
「はい。では、私はあちらのお肉争奪戦に参加して参ります。どけぇぇ!それは私のお肉よぉぉ!」
「みんな行き遅れが来たわよ、早く食べなさい」
「クックックックッ、今さら来てももうあんたの分はないのさ」
「なら、お前らの皿の上に乗っている肉をよこせ~」
スリーシスターズを交えた壮絶な戦いが始まった!
「ふむ。楽しそうでなによりだ。おや、リーシア、コップか空のようだね。おかわりをするかね?」
「……ヒック!」
トーマス神父テーブルに置かれたワインのボトルを手に、空になったリーシアのコップにワインを再び注ぎ込もうとした時だった。
「ヒロ……なんで私を置いていっちゃったんですか……ヒック! 私の幸せが見つかるまで嫌でも一緒について行くっていったのに……ヒック!」
「リ、リーシア?」
「リーシアお姉ちゃん?」
トーマス神父とリゲルが、うつむいてブツブツとしゃべるリーシアの顔を覗き込むと……顔を真っ赤にし、目がトロンと座った少女がくだを巻いていた。
「私の気持ち知らないで……これだから男はダメダメなんですよ! 説明もなしに自分勝手に動いて! アリアさんのいう通りです! 男なんてちょっと甘い顔をしたらドンドンつけ上がる生き物です! やはりガンガン私が絞めないといけません! ……ヒック!」
少女の手にした木製のコップが……握りつぶされ砕け散った!
「や、ヤバいよ! みんな、リーシアお姉ちゃんが!」
「まさかたった一杯のワインで酔っ払ったのか⁈」
「なんで私があんな変態のために、こんなに思い悩まなくちゃならないんですか! おかしいです! これもそれも……すべてヒロのせいですよ! ヒロのばかぁぁぁぁぁぁぁ!」
握りつぶしたコップの破片を床に叩きつけるリーシア……恐るべき力が加わり、破片が床にめり込むと木の板が破壊される!
「みんな逃げて~!」
「みんな、逃げなさい!」
リゲルとトーマス神父の声がハモると、子どもたちはデーブルの上に残っていた料理の皿を手に、部屋の外へと一斉に逃げ出していた。
「滅べ、滅べ! 滅びされ! 男なんて、滅べばいいんです! ビック!」
「リーシアお姉ちゃん、やめて~!」
「うわああああん」
「キャー! 助けて!」
そして教会の食堂は、阿鼻叫喚の地獄絵図と化すのであった。
その後……リーシアが酔いつぶれるまで、三十分の時間を要したという――後の世に、酒乱シスターと呼ばれるふたつ名が誕生した瞬間であった。
〈聖女と家族の団欒が終わりを告げた時……ついに破滅の時は訪れる〉
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