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第15章 勇者と異世界電脳編
第179話 運命を書き換えろ!
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それは部屋の扉を乱暴に蹴破りながら、部屋の中へと押し入ってきた。合成された無機質な声が、部屋の中にいる者へ高らかに宣言した。
「侵入者は消去する!」
「マズイ、大きな声を出すから見つかったぞ!」
「クッ! ゲームをクリアーした嬉しさでつい我を忘れた!」
部屋の入り口に二人が目を向けると、総合警備保障マルソックに酷似した青い制服を着たガーディアンが、ガシャガシャと音を鳴らしながら部屋の中へ足を踏み入る姿が見えた。
ノッペリとしたマネキンのような表情のない顔が、部屋の中を見回すと……奥のパーティションで区切られた一角に、明らかに異質と思える人影をガーディアンは発見する。
「侵入者を確認。これより消去する!」
問答不要と警棒を振り上げて走り出すガーディアン! それを迎え撃とうと、ヒロが椅子から立ち上がった時だった。
「仕方ない。ここは任せろ。ヒロはデータの書き換えを急げ!」
机の上に乗っていたエルビスはそうヒロに告げると、翼をはためかせ、その身を空に躍らせた。
真っすぐガーディアンの元へと飛翔するエルビス……ガーディアンがタイミングを合わせて飛んで来るエルビスに向かって無造作に警棒を振るう。
「あらよっと♪ そんな攻撃当たるかよ。これでも喰らえ!」
エルビスが空中でヒラリと警棒をかわすと、ガーディアンの顔の前で翼をバタつかせる。
すると翼から無数の白と黒の羽根が撃ち出され、ガーディアンの顔に張り付くと、その視界を塞いでしまう。
「さて、これで何秒持つかな? できれば倒した方がいいんだろうけど、あんまりここにいた証拠を残したくないんだよな~。でもヒロはデータ書き換えで忙しそうだし……ん~、仕方ない。オレが殺ろう」
エルビスがそう呟くと体から黒いオーラが立ち昇り、顔に張りついた羽を必死に毟り取ろうとするガーディアンの周りをグルグルと飛び回り始めた。
体から迸る黒いオーラを、周りに振り撒きながらエルビスは飛び続ける。
…………
〈リーシア・サブジェクト(十四才)……神が作りし災厄シリーズのひとつ、憤怒(五百万とんで四才)の一撃により死亡。共闘していたオーク族の若き戦士ムラク(三十五才)がとっさに助けに入るが、防御が間に合わず斬死〉
【勇者計画にエラー発生。新たなる聖女を要請】
モニターに表示されるリーシアの死の記述……メインシステムのデータバンクにアクセスし引き出した記述をヒロが凝視する。
「この記述を一文につき五文字まで、文脈を崩さずに書き換えればいいのか? ……大丈夫だ。こんなの『文字ぴったし』に比べれば、なんてことない」
『文字ぴったし』……公称は『知的探究心くすぐり系パズルゲーム』と称されたパズルゲームである。
もとはゲームセンターに置かれたアーケードゲームであったが、のちに家庭用ゲーム機や携帯ゲーム機に移植された大人気のパズルゲームである。
ゲームシステム的には、ステージ毎に用意された一文字を、クロスワードの枠内に配置し、言葉を作っていく単純なゲームである。最終的に用意された文字を制限時間内に全て使い切り、クロスワードを完成させればゲームクリアーとなる。
言葉を作るだけだから簡単と思うプレイヤーは多いが、これが意外に奥が深い。『あ』の付く言葉を10個作れであったり、『あか』の入った言葉や『あ』と『か』を使った言葉を作れであったりと、さまざまなお題がステージ毎に用意され、ただ言葉を適当に作っただけではクリアーできない、歯応えのあるパズルゲームに仕上がっていた。
収録文字数はシリーズ最終作で約十四万語。人物名や物の名称、流行語や名字など、多岐にわたる文字が収録されていた。
ゲームクリアーに必要なのは反射神経などではなく、どれだけの言葉を知っているかの語彙力のみ……このゲームのおかげで言葉作りに熱中するプレイヤーが増え、愛読書が一時的に国語辞典になる者が続出したほどである。
豊富な語彙力がゲームクリアーの鍵を握るパズルゲーム……それが『文字ぴったし』だ!
「あのゲームをノーミス完全クリアーするのに……国語辞典はおろか、徹夜して学校の図書室に置いてあったあらゆる辞書と辞典を一ヵ月も掛けて読んだっけ……今にして思えば若かったな。ゲームの収録語の元になった辞書を調べて、ピンポイントに覚えれば無駄な辞書を読んだ時間分、ゲームのプレイ時間に当てられたのに……クッ!」
若さゆえの過ちに涙したヒロが涙を拭うと、再びモニターに表示されたリーシアの死の記述を見る。
「ようは無理のない範囲で、文脈を完成させればいいだけだよな? なら!」
言うやいなや、ヒロの手が素早くキーボードを叩き、表示された文章を書き換えていく。
「こんなもんかな?」
〈リーシア・サブジェクト(十四才)……神が作りし災厄シリーズのひとつ、憤怒(二千万とんで四才)の一撃を耐え生存。共闘していたオーク族の若き戦士ムラク(三十五才)がとっさに助けに入るが、防御が間に合い生還する〉
【勇者計画にエラー発生。新たなる聖女を要請】
「これなら意味は通るはずだ……頼むぞ!」
ヒロが書き換えた記述を確かめると、気合いを込めてエンターキーを叩いた!
すると〈データ書き換え中……〉の文字がモニター表示され、数秒でその文字が〈書き換え終了〉のメッセージへと置き換わった。
「うまくいった! あとはメインシステムの目を欺くために、ワザと分かりやすく別のデータをダミープログラムで書き換えて……時間がないからハタルさんの記述を使わせてもらおう」
〈リーシア・ハタル(七十七才)、不倫の男(二十七才)と不貞関係の最中、突如部屋の中に乱入して来た夫(八十才)と口論となる。『人生相談をしてただけ』と語る二人に、夫が『裸で何が人生相談だ!』と逆上し、妻と男に襲い掛かる。男はリーシアを突き飛ばし盾代わりにすると、夫に惨殺されている間に裸のまま逃走〉
ヒロは先ほど間違って検索にヒットした同名の別人、リーシア・ハタルの死の記述を表示すると、あらかじめ作成しておいたダミープログラムを起動し、指定時間にデータを書き換えるタイマー機能をセットする。
「時間は五分後でいいか? 書き換える内容は……こんなもんかな?」
ヒロは瞬時にモニターに映る記述を書き換え、内容を頭の中で読み返す。
〈リーシア・ハタル(七十七才)、隣人の男(二十七才)と友達関係の最中、突如部屋の中に乱入して来た夫(八十才)と口論となる。『人生相談をしてただけ』と語る二人に、夫が『裸で何が人生相談だ!』と心配し、妻と男に話し掛ける。男はリーシアを突き飛ばし盾代わりにすると、夫が助けている間に裸のまま逃走〉
「同じリーシアの名を持つ死の記述だから、うまくメインシステムを騙せればいいけど……おっと、あとデータへのアクセスログの消去と、何かあった時の保険用にバックドアも仕込んでおかないと」
そう呟いたヒロの両手は、まるで別々の生き物のように二台のキーボードを操作し、ふたつの作業を同時に進行する……そしてわずか十数秒で二つの作業を同時に終わらせてしまった。
全ての作業が終了したモニターとゲームクリアーと表示されたゲームゴアの画面を見て、ヒロの顔は全てをやり遂げた達成感で、寒山拾得の水墨画のような笑みを浮かべていた。
「よっし! エルビス、全て終わったぞ!」
「おお、やったなヒロって……きっも! って危な!」
ヒロの浮かべた信じがたい笑みを見てドン引きするエルビス……一瞬の隙を突いて、ガーディアンがすかさず警棒を振るい、ギリギリのタイングで攻撃をヒョイっと避けたエルビスが上空へと逃げる。
「ヒロ、その顔はヤバいぞ……キモいを通り越して怖いから止めろ!」
「え? ふ、普通の笑顔だろ?」
「誰がどう見てもその笑顔は普通じゃないからな! それよりも書き換えが終わったみたいだな。ならこっちも終わらせる」
「加勢するぞ」
「いや、もう仕掛けは終わってるから、そこで見てな」
「侵入者は、消去する」
空中にいるエルビスに攻撃しようと、ガーディアンが膝を曲げ飛びあがろうとした瞬間、空中に止まるエルビスが自信に満ちた顔で両翼の翼を振るうと……離れた位置にいたヒロでさえ、冷や汗を感じる殺気が翼から放たれた!
すると飛び上がったガーディアンの首が飛んだ! 体から離たれた頭が宙を舞い、突如として体が縦に真っ二つになると、そのまま空中で四肢が切断されてしまう!
ガーディアンだったもののパーツが、バラバラに床に落ちていく……最後に真っ二つにされ機能を停止したボディーが、ガシャンと大きな音を立てて地面へと落下した。頭だったパーツがコロコロと転がり、部屋の隅の壁にぶつかるとその動きを止めてしまった。
完全にスクラップと化し、機能を停止したことをエルビスが確認すると、空中で身を翻すとヒロの頭の上にドテっと着地した。
「ふ~、うまくいったようだな♪」
「エルビス、今のは?」
「ん? お前が見せた『気殺刃』をアレンジしたんだ♪ 殺気だとダメージを与えられないし、オーラじゃ好きな場所に攻撃ができないからな。だから空間にオレのオーラ満たしてみたんだ。あらかじめオレの殺気に反応して硬質化するようにしてな」
「オーラを硬質化?」
「そそ、オーラは飛ばせないけど、ある程度なら空間に漂う自らのオーラに命令を与えることができるのさ。んで、空間を満たしたオーラに、オレの殺気で硬質化するように命令して、アイツを切り裂いた訳だ」
「そんな事ができるのか? オーラか……それは僕でも使えるか?」
「使えるもなにも『ガチャン、ガチャン』」
エルビスの言葉を遮って、部屋の外から何かが大挙して近づく音がヒロの耳に聞こえてくる。
「……って、ほかのガーディアンたちの足音! 話はあとだ。さっさと逃げるぞ」
「だな! 目的は達した。ここに長居は無用。とっとと退散するとしよう。コマンド実行『シフト』!」
エルビスの声と共に、一瞬の浮遊感を感じたヒロの視界がブラックアウトする。
意識がどこか別の場所に、無理やり引っ張られる感覚にとらわれると、メインシステムの部屋の中からふたりの姿は消え去ってしまった。そして……。
「「「侵入者は消去する!」」」
二人が消え去った瞬間、部屋の中へガーディアン達がなだれ込んできた。
ガーディアン達は侵入者を見つけるべく、部屋の中をくまなく探すが侵入者の姿はどこにも見当たらない。ただ床に転がり物言わなくなった仲間の残骸だけが、見つかるのであった。
〈少女と老婆、二人の……リーシア達の運命が書き換わった!〉
「侵入者は消去する!」
「マズイ、大きな声を出すから見つかったぞ!」
「クッ! ゲームをクリアーした嬉しさでつい我を忘れた!」
部屋の入り口に二人が目を向けると、総合警備保障マルソックに酷似した青い制服を着たガーディアンが、ガシャガシャと音を鳴らしながら部屋の中へ足を踏み入る姿が見えた。
ノッペリとしたマネキンのような表情のない顔が、部屋の中を見回すと……奥のパーティションで区切られた一角に、明らかに異質と思える人影をガーディアンは発見する。
「侵入者を確認。これより消去する!」
問答不要と警棒を振り上げて走り出すガーディアン! それを迎え撃とうと、ヒロが椅子から立ち上がった時だった。
「仕方ない。ここは任せろ。ヒロはデータの書き換えを急げ!」
机の上に乗っていたエルビスはそうヒロに告げると、翼をはためかせ、その身を空に躍らせた。
真っすぐガーディアンの元へと飛翔するエルビス……ガーディアンがタイミングを合わせて飛んで来るエルビスに向かって無造作に警棒を振るう。
「あらよっと♪ そんな攻撃当たるかよ。これでも喰らえ!」
エルビスが空中でヒラリと警棒をかわすと、ガーディアンの顔の前で翼をバタつかせる。
すると翼から無数の白と黒の羽根が撃ち出され、ガーディアンの顔に張り付くと、その視界を塞いでしまう。
「さて、これで何秒持つかな? できれば倒した方がいいんだろうけど、あんまりここにいた証拠を残したくないんだよな~。でもヒロはデータ書き換えで忙しそうだし……ん~、仕方ない。オレが殺ろう」
エルビスがそう呟くと体から黒いオーラが立ち昇り、顔に張りついた羽を必死に毟り取ろうとするガーディアンの周りをグルグルと飛び回り始めた。
体から迸る黒いオーラを、周りに振り撒きながらエルビスは飛び続ける。
…………
〈リーシア・サブジェクト(十四才)……神が作りし災厄シリーズのひとつ、憤怒(五百万とんで四才)の一撃により死亡。共闘していたオーク族の若き戦士ムラク(三十五才)がとっさに助けに入るが、防御が間に合わず斬死〉
【勇者計画にエラー発生。新たなる聖女を要請】
モニターに表示されるリーシアの死の記述……メインシステムのデータバンクにアクセスし引き出した記述をヒロが凝視する。
「この記述を一文につき五文字まで、文脈を崩さずに書き換えればいいのか? ……大丈夫だ。こんなの『文字ぴったし』に比べれば、なんてことない」
『文字ぴったし』……公称は『知的探究心くすぐり系パズルゲーム』と称されたパズルゲームである。
もとはゲームセンターに置かれたアーケードゲームであったが、のちに家庭用ゲーム機や携帯ゲーム機に移植された大人気のパズルゲームである。
ゲームシステム的には、ステージ毎に用意された一文字を、クロスワードの枠内に配置し、言葉を作っていく単純なゲームである。最終的に用意された文字を制限時間内に全て使い切り、クロスワードを完成させればゲームクリアーとなる。
言葉を作るだけだから簡単と思うプレイヤーは多いが、これが意外に奥が深い。『あ』の付く言葉を10個作れであったり、『あか』の入った言葉や『あ』と『か』を使った言葉を作れであったりと、さまざまなお題がステージ毎に用意され、ただ言葉を適当に作っただけではクリアーできない、歯応えのあるパズルゲームに仕上がっていた。
収録文字数はシリーズ最終作で約十四万語。人物名や物の名称、流行語や名字など、多岐にわたる文字が収録されていた。
ゲームクリアーに必要なのは反射神経などではなく、どれだけの言葉を知っているかの語彙力のみ……このゲームのおかげで言葉作りに熱中するプレイヤーが増え、愛読書が一時的に国語辞典になる者が続出したほどである。
豊富な語彙力がゲームクリアーの鍵を握るパズルゲーム……それが『文字ぴったし』だ!
「あのゲームをノーミス完全クリアーするのに……国語辞典はおろか、徹夜して学校の図書室に置いてあったあらゆる辞書と辞典を一ヵ月も掛けて読んだっけ……今にして思えば若かったな。ゲームの収録語の元になった辞書を調べて、ピンポイントに覚えれば無駄な辞書を読んだ時間分、ゲームのプレイ時間に当てられたのに……クッ!」
若さゆえの過ちに涙したヒロが涙を拭うと、再びモニターに表示されたリーシアの死の記述を見る。
「ようは無理のない範囲で、文脈を完成させればいいだけだよな? なら!」
言うやいなや、ヒロの手が素早くキーボードを叩き、表示された文章を書き換えていく。
「こんなもんかな?」
〈リーシア・サブジェクト(十四才)……神が作りし災厄シリーズのひとつ、憤怒(二千万とんで四才)の一撃を耐え生存。共闘していたオーク族の若き戦士ムラク(三十五才)がとっさに助けに入るが、防御が間に合い生還する〉
【勇者計画にエラー発生。新たなる聖女を要請】
「これなら意味は通るはずだ……頼むぞ!」
ヒロが書き換えた記述を確かめると、気合いを込めてエンターキーを叩いた!
すると〈データ書き換え中……〉の文字がモニター表示され、数秒でその文字が〈書き換え終了〉のメッセージへと置き換わった。
「うまくいった! あとはメインシステムの目を欺くために、ワザと分かりやすく別のデータをダミープログラムで書き換えて……時間がないからハタルさんの記述を使わせてもらおう」
〈リーシア・ハタル(七十七才)、不倫の男(二十七才)と不貞関係の最中、突如部屋の中に乱入して来た夫(八十才)と口論となる。『人生相談をしてただけ』と語る二人に、夫が『裸で何が人生相談だ!』と逆上し、妻と男に襲い掛かる。男はリーシアを突き飛ばし盾代わりにすると、夫に惨殺されている間に裸のまま逃走〉
ヒロは先ほど間違って検索にヒットした同名の別人、リーシア・ハタルの死の記述を表示すると、あらかじめ作成しておいたダミープログラムを起動し、指定時間にデータを書き換えるタイマー機能をセットする。
「時間は五分後でいいか? 書き換える内容は……こんなもんかな?」
ヒロは瞬時にモニターに映る記述を書き換え、内容を頭の中で読み返す。
〈リーシア・ハタル(七十七才)、隣人の男(二十七才)と友達関係の最中、突如部屋の中に乱入して来た夫(八十才)と口論となる。『人生相談をしてただけ』と語る二人に、夫が『裸で何が人生相談だ!』と心配し、妻と男に話し掛ける。男はリーシアを突き飛ばし盾代わりにすると、夫が助けている間に裸のまま逃走〉
「同じリーシアの名を持つ死の記述だから、うまくメインシステムを騙せればいいけど……おっと、あとデータへのアクセスログの消去と、何かあった時の保険用にバックドアも仕込んでおかないと」
そう呟いたヒロの両手は、まるで別々の生き物のように二台のキーボードを操作し、ふたつの作業を同時に進行する……そしてわずか十数秒で二つの作業を同時に終わらせてしまった。
全ての作業が終了したモニターとゲームクリアーと表示されたゲームゴアの画面を見て、ヒロの顔は全てをやり遂げた達成感で、寒山拾得の水墨画のような笑みを浮かべていた。
「よっし! エルビス、全て終わったぞ!」
「おお、やったなヒロって……きっも! って危な!」
ヒロの浮かべた信じがたい笑みを見てドン引きするエルビス……一瞬の隙を突いて、ガーディアンがすかさず警棒を振るい、ギリギリのタイングで攻撃をヒョイっと避けたエルビスが上空へと逃げる。
「ヒロ、その顔はヤバいぞ……キモいを通り越して怖いから止めろ!」
「え? ふ、普通の笑顔だろ?」
「誰がどう見てもその笑顔は普通じゃないからな! それよりも書き換えが終わったみたいだな。ならこっちも終わらせる」
「加勢するぞ」
「いや、もう仕掛けは終わってるから、そこで見てな」
「侵入者は、消去する」
空中にいるエルビスに攻撃しようと、ガーディアンが膝を曲げ飛びあがろうとした瞬間、空中に止まるエルビスが自信に満ちた顔で両翼の翼を振るうと……離れた位置にいたヒロでさえ、冷や汗を感じる殺気が翼から放たれた!
すると飛び上がったガーディアンの首が飛んだ! 体から離たれた頭が宙を舞い、突如として体が縦に真っ二つになると、そのまま空中で四肢が切断されてしまう!
ガーディアンだったもののパーツが、バラバラに床に落ちていく……最後に真っ二つにされ機能を停止したボディーが、ガシャンと大きな音を立てて地面へと落下した。頭だったパーツがコロコロと転がり、部屋の隅の壁にぶつかるとその動きを止めてしまった。
完全にスクラップと化し、機能を停止したことをエルビスが確認すると、空中で身を翻すとヒロの頭の上にドテっと着地した。
「ふ~、うまくいったようだな♪」
「エルビス、今のは?」
「ん? お前が見せた『気殺刃』をアレンジしたんだ♪ 殺気だとダメージを与えられないし、オーラじゃ好きな場所に攻撃ができないからな。だから空間にオレのオーラ満たしてみたんだ。あらかじめオレの殺気に反応して硬質化するようにしてな」
「オーラを硬質化?」
「そそ、オーラは飛ばせないけど、ある程度なら空間に漂う自らのオーラに命令を与えることができるのさ。んで、空間を満たしたオーラに、オレの殺気で硬質化するように命令して、アイツを切り裂いた訳だ」
「そんな事ができるのか? オーラか……それは僕でも使えるか?」
「使えるもなにも『ガチャン、ガチャン』」
エルビスの言葉を遮って、部屋の外から何かが大挙して近づく音がヒロの耳に聞こえてくる。
「……って、ほかのガーディアンたちの足音! 話はあとだ。さっさと逃げるぞ」
「だな! 目的は達した。ここに長居は無用。とっとと退散するとしよう。コマンド実行『シフト』!」
エルビスの声と共に、一瞬の浮遊感を感じたヒロの視界がブラックアウトする。
意識がどこか別の場所に、無理やり引っ張られる感覚にとらわれると、メインシステムの部屋の中からふたりの姿は消え去ってしまった。そして……。
「「「侵入者は消去する!」」」
二人が消え去った瞬間、部屋の中へガーディアン達がなだれ込んできた。
ガーディアン達は侵入者を見つけるべく、部屋の中をくまなく探すが侵入者の姿はどこにも見当たらない。ただ床に転がり物言わなくなった仲間の残骸だけが、見つかるのであった。
〈少女と老婆、二人の……リーシア達の運命が書き換わった!〉
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