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第12章 勇者とエクソダス編
第126話 風雲オーク城 中編
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「ジークポーク! 同志ヒロ、ちょうど良かったべ。言われた通り、溝を掘り終えたから、今から知らせに行くとこだったべ」
河原から石切と採取を終え、オーク村に戻って来たヒロは、砦の土木監督を任せたオクタと、村の入り口で鉢合わせした。
「ジークポーク! 同志オクタさん、ありがとうございます。早いですね。助かります。僕らの方も河原での岩の切出しと、回収が終わりました」
予想以上に早い、作業完了の報告を受けたヒロは喜び、二人で工事現場のある村の中心へと歩き出した。
「しかし、あんなデカい溝を掘ってどうするのだべ?」
「はい。これらかここに、砦を作ります」
「砦ってなんだべ?」
「戦うための建物ですかね?」
「建物で戦うべ?」
建築技術に乏しいオークでは、せいぜい掘立て小屋を建てるのが関の山であり、それ以上の物は考えもつかない様子だった。
「皆さんが立て籠って戦う堅牢な建物ですね」
「ふ~ん、同志ヒロは、いろんな事を知っているべ」
「いえ、ゲームをやる上で得た知識ばかりですよ。それじゃあ、砦の基礎部分を作りましょう。溝を掘った後の土は?」
「言われた通り、脇に積んおいたべ」
すると、ヒロの目に数メートルの高さに積み上げられた土の壁が見えてくる。
「お~、これだけの規模になると壮観ですね」
ヒロの目の前には幅10m、深さ6mもある溝の姿が見えてきた。
村の中心である広場に、三角の形で掘られた溝は1片が200mもある巨大なものだった。
「取り敢えず、やることがないから、土木班はみんな休憩にいれたべが、次はどうするべ?」
「基礎の土台作りの後、石垣作りで力をお借りします。それまではカイザーさんの水路作りに参加してください。ジークポーク!」
「分かったべ。ジークポーク!」
オクタが挨拶すると自分も休憩に入るため、ソソクサとその場を後にする。
一人残されてヒロは、早速土台作りを始める。
「さて、まずは積んだ土の回収からです」
ヒロは腰に吊るしたアイテム袋の口を、積みげられた土に触れさせると……突如、ヒロの前から土壁が消え去ってしまう。だが全てが消え去った訳でなく、半径3mの土壁だけが消えていた。
「うん。やっぱり検証どおりだ!」
ヒロは自分の検証結果の正しさに喜んでいた。
ヒロは砦を建造する際に、一番の問題……大量に必要な土や岩、そして木材をどう調達するのかと頭を悩ませた。
少ない労働力で最短の方法を思考した時、このアイテム袋の検証に至り、実証実験を繰り返した。
結果……アイテム袋の新たなる特性が分かり、ヒロはさっそく砦建設に乗り出したのだ。
実証実験において1番の収穫は、所有権のない自然物は回収できないが、一度でも自然な状態から形を変えた物は、所有権が他者になければ回収できる事だった。
つまり、大地にアイテム袋の口をつけても収納はできないが、掘り起こすなどの何かしらの手が加われば、半径3m以内の物を回収できる事を発見したのだ。
「良し! 一気に回収だ! Bダッシュ!」
ヒロはBダッシュで、次々と土を回収していき、ものの5分で総計600mもあった大量の土壁を、アイテム袋に回収し終わってしまった。
「さて、次は盛土ですね」
ヒロが溝の内側の大地に立ち、今度は端から順にアイテム袋に回収した土を出していく。
ヒロは、右手でアイテム袋のメニューを操作し、かざした左手から土を次々と放出していく。
その勢いは凄まじく、放水車から水を撒くかの勢いで吹き出し、ものの30分で盛土をヒロは終えた。
「こんなものですかね? 一応、地固めは、やっておくかな」
ヒロがアイテム袋を操作すると、ヒロの掲げた手の前に、巨大な岩が出現し、ドシンと大きな音を立てて地面に落ちた。
あらかじめショートソードで下面を切り裂き、平にした巨大な岩が、自重の重さと落下による加速で地面を踏み固める。
「手のひらの向きと位置で、収納アイテムの出現場所がコントロールできると、使い方に幅が出て便利だな」
再びアイテム袋に岩を収納し、出現させること数百回、40分掛けて盛土の地固めが終了した。
そこには元の地面より、高さ6メートルも地表から盛り上がった大地が完成していた。
「ふ~、土台はこんなとこですかね。次に石垣作りですね。人手が要ります……土木組に戻ってもらいましょう。その間に、僕は木こり組の切り倒した木材を回収してきますかね」
ヒロは近くにいた連絡役のオークに、水路組に合流せた土木組に、再びこの場所に集合して欲しいことを伝えると、Bダッシュを駆使して伐採組のいる場所へと急ぐ。
「ジークポーク! オク次郎さん、伐採はどうですか?」
「ヒロか~、ジ~クポ~クだべ~、予定通り伐採は終わったべ~」
オク次郎が指差す方をヒロが見ると、伐採された丸太が所狭しと、切り倒された巨大な空間がそこにあった。
「言われたおりにしたべ~、伐採優先で切り倒した木は転がしたままだべ~」
「はい。それで問題ありません。では、次にココと村の間に罠を仕掛けてください。場所は……」
ヒロが落ちていた木の枝を持つと、地面に地図を書き出していく。
かなり綿密な地図を描くヒロは、その地図に罠の場所記していく。
アイテム袋に続いて、オートマッピングスキルの検証もヒロは行っていた。
その際、簡易MAPに表示された地形に、自由に文字や印が書き加えられる事に気がついた。
これは踏破した地形であれば、どこに何があるかを、手動で追加コメントを入れられるのである。
「この印の付けた場所に、落とし穴をお願いします。その穴の中には、先を尖らした細い木の杭を二本程立てておいてください」
「あ~、分かったべ~」
「あと、罠の場所や地形を皆で覚えておいてください。ここにいる伐採組から、夜襲部隊を募ります。罠の場所や地形を把握している人から選抜しますから、皆に情報を共有してください」
その言葉を聞いた周りのオークの戦士達が、ヒロの描いた地図を必死に頭に叩き込み始めた。
オークの戦士にとって、この戦いは、一族の存亡を掛けた、文字通り命懸けの戦いであり、失敗は許されない。誰が選ばれるかは分からないが、選ばれるなら我が! 自分が! 俺が! っと、皆の気迫が見えるくらい、鬼気迫る様子でヒロの描いた地図を頭に叩き込んでいた。
「オク次郎さん、伐採組は罠組に変更しますので、罠作成をお願いします。僕は伐採した木材を回収して、村に戻ります。ジークポーク!」
「了解だべ~、ジ~クポ~クだべ~」
オク次郎の返事にヒロが手を上げて答え、手にアイテム袋を持つと、地面に乱雑に転がる切り倒された木を次々とBダッシュを使って回収していく。
数百あった木が、20分もしない内にアイテム袋に回収された時、その場には巨大な長方形の空間が出来上がっていた。
森の中に急に視界の開けた空間が現れ、違和感がことさらに強調されていた。
不自然に目立つ空間……怪しさ爆発である!
だがそれこそが、ヒロの策だと言うことに気づいた時には……あとの祭りである。
ヒロは回収が終わるなり踵を返し、オーク村への帰路へとつく。
「さて、村に戻る間に、アイテム整理をやっておかないと……」
再び走りながら、発見したアイテム袋の便利機能を駆使し、アイテムソートを始めていた。
膨大な同じ名前のアイテムをメニューに表示する際、検索窓が出現する事に、ヒロは気がついた。
ヒロは検索窓に、尖った石と入力すると、大小様々な形状の尖った石が、アイテムメニュー内で自動的に分類されソートされていく。
ソートが終わるとアイテムメニューの項目が、細かく分類され見やすくなっていた。
「武具なんかより、このアイテム袋の方が大助かりです。セレス様、ありがとうございます」
所持アイテムの把握がしやすくなる、至れり尽くせりなアイテム袋の機能……ヒロは女神セレスへ感謝するのだった。
ジャスト1時間、伝令役に言った通り、土木組が戻る時間までに、ヒロがオーク砦建設予定地に舞い戻ってきた。
「ジークポーク! 同志ヒロ。帰ったべか?」
「オクタさん、ジークポーク! 今、戻りました!」
「みんなちょうど揃ったとこたべ、次は何をすればいいべ?」
「チョット待ってください」
するとヒロがアイテム袋の中から、ソートしておいた先が尖った小岩を、大量に足元へ取り出した。
チョットした小石の山が、ヒロとオーク達の前に出来上がる。
「今から僕が、あの盛り上がった盛土の側面に、岩を積んで行きますから、皆さんは岩と岩の間の隙間に、この先が尖った石を詰めてください」
「隙間にだべな? 分かったべ」
土木組のオーク達が、ヒロが取り出した尖った石を手に待機する。
「さあ……石垣作りも佳境ですね……あとは採取した岩を積んでいくだけですが……フッフッフッフッ、ついにお楽しみ「モノリス」の時間です! 久々にやり込みますよ!」
モノリス……画面上方よりランダムに落ちてくる、様々な形のブロックピースを積み上げ、横一列に隙間なく揃えるとブロックが消え、得点が増えていくと言う、所謂落ちものパズルゲーである。
同時に消すラインが増えるほど得点が高くなり、最大4ラインをまとめて消す事を『モノリス』と言い、最大得点が与えられる。
いかにして隙間なく、ブロックピースを的確に積み上げていくかが、高得点の鍵である。
だが得点を重ねれば重ねる程、ブロックピースの落ちるスピードが上がり、最高スピードに達すると、もはや瞬間移動に近いスピードでブロックピースが落ちていく!
そんな無理ゲー……と思いきや、意外にやれてしまうのが、このゲームのすごい所である。
その秘密は、次に出現するブロックピースが、画面に表示される点である。
瞬時にブロックピースの落とす場所と向きを判断し、無駄なくボタン操作することで、高速プレイが楽しめるのだ。
これのおかげで、ライトユーザーからコアゲーマーまで、幅広い層が楽しめるゲームに仕上がっていた。
元はある科学者が作成した教育用ソフトウエアーであったが、全世界で発売されると老若男女を問わず大ヒットを記録した。
家庭用ゲーム機においては、携帯型ゲーム機『ゲームガール』のキラータイトルとして、424万本も売り上げ、ハードの普及に大貢献を果たした化け物である。
シュールな背景と音楽、独特の重みのある効果音、最後に登場する謎のサルなど……強烈なイメージをゲーマーに与えた。
単純ゆえに奥が深い、落ちものパズルゲーの元祖、それが『モノリス』だ!
ヒロはアイテム袋のメニューを開きながら、巨大な三角形に掘り抜いた溝の底に降り立つと、メニュー画面に表示された分類済みの岩の項目を選択する。
一番上にあった岩の形が表示されると、ヒロは手のひらの向きや形を調整して、岩を目の前に出現させて地面に落とす。
「さあ……やりますよ! 我が懐かしのモノリス! 久々に高得点を叩き出します!」
するとヒロは、メニュー画面を高速に操作しながら、次々と岩を出しては積み上げて行く!
その手から現れては落ちる姿は、さながら土魔法を使う魔法使いが如き光景に、土木組の皆は唖然としてしまった。
ものの1分と掛からず、2mを越す岩の壁がヒロの立つ場所に完成したのである!
完成した瞬間、「モノリス!」と声を上げるヒロ!
4列同時消しに成功した際の掛け声を、つい癖で声に出してしまう。
元の世界でも、モノリスプレイ中に、よく声を出していたものである。
完成した岩壁に見向きもせず、すぐに横方向へBダッシュを使い、瞬時に移動すると再び岩を積み上げ始める。
繰り返し続けられる作業で、次々と石壁が作られていった。
「モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス」
現場に響き渡るヒロの声に、土木組オーク達が狂気を感じ始めてしまった。
「モノリス! モノリス! モ#リス! #%#リス! %#☆○! 〆^$☆!」
最初の頃は問題なく、モノリスの声が少し聞こえる大きさの声だったが……今や奇声に近い大声で叫ぶヒロに、オーク達が引いていた。
「だ、大丈夫かアレ?」
「顔が破顔しまくって、笑顔を超えて不気味な顔しているな?」
「声をかけた方がいいんじゃ?」
「いや、止めておけ。もしかしたらアレが普通なのかもしれないし」
「だな。俺たちは言われた通り、岩と岩の間に小石を詰めていくぞ」
自分たちのために働くヒロに、『大丈夫ですか?』などと、失礼な事が言えず、仕方なくソッと好きなようにさせるポーク達……。
そして土木組のオーク達が、岩壁に空いた隙間を埋める作業を始めてから4時間……ついに石垣部分は完成した!
高さ15m、1片の長さ200m……巨大な正三角形の石壁が、村の中心に完成していた。
「#%#リス! %#☆○! 〆^$☆! ÷〒%€! ☆*々:!」
だが、石垣が完成したにもかかわらず、ヒロの奇声は止まらない!
久々の疑似ゲームの感覚に、抑圧されたゲーム脳が解放され、歯止めが効かなくなっていた。
アイテム袋内にある採取した岩を全て使い終わっていたが、ヒロの動きと奇声が終わらないのだ!
バグッた脳が、思考の無限ループを繰り返し、何もない空間に空想の岩を出現させ、幻の岩壁をヒロの脳内で完成させ続けていた!
永遠に終わらないモノリスに、幸せを感じたヒロの脳が、モノリスのエンドレスモードに入ってしまった。
「これは参ったべ……明らかにおかしいべ?」
「狂っているな」
「危なくて近づけん」
「お~い、もう完成したべ? 聞こえてないべ?」
何もない空間に手をかざし奇声を上げるヒロに、危険を感じたオクタが声を掛けるが反応せず……奇声が止まる気配がまるでない。
狂気をすら感じるヒロに、ポーク達はドン引きしていた。
仕方なくオクタは、バグッたヒロを直せるであろう人物の元へ、駆け出すのであった。
〈バグッた希望に、必殺の腹パンチが打ち込まれ、強制リセットが入った!〉
河原から石切と採取を終え、オーク村に戻って来たヒロは、砦の土木監督を任せたオクタと、村の入り口で鉢合わせした。
「ジークポーク! 同志オクタさん、ありがとうございます。早いですね。助かります。僕らの方も河原での岩の切出しと、回収が終わりました」
予想以上に早い、作業完了の報告を受けたヒロは喜び、二人で工事現場のある村の中心へと歩き出した。
「しかし、あんなデカい溝を掘ってどうするのだべ?」
「はい。これらかここに、砦を作ります」
「砦ってなんだべ?」
「戦うための建物ですかね?」
「建物で戦うべ?」
建築技術に乏しいオークでは、せいぜい掘立て小屋を建てるのが関の山であり、それ以上の物は考えもつかない様子だった。
「皆さんが立て籠って戦う堅牢な建物ですね」
「ふ~ん、同志ヒロは、いろんな事を知っているべ」
「いえ、ゲームをやる上で得た知識ばかりですよ。それじゃあ、砦の基礎部分を作りましょう。溝を掘った後の土は?」
「言われた通り、脇に積んおいたべ」
すると、ヒロの目に数メートルの高さに積み上げられた土の壁が見えてくる。
「お~、これだけの規模になると壮観ですね」
ヒロの目の前には幅10m、深さ6mもある溝の姿が見えてきた。
村の中心である広場に、三角の形で掘られた溝は1片が200mもある巨大なものだった。
「取り敢えず、やることがないから、土木班はみんな休憩にいれたべが、次はどうするべ?」
「基礎の土台作りの後、石垣作りで力をお借りします。それまではカイザーさんの水路作りに参加してください。ジークポーク!」
「分かったべ。ジークポーク!」
オクタが挨拶すると自分も休憩に入るため、ソソクサとその場を後にする。
一人残されてヒロは、早速土台作りを始める。
「さて、まずは積んだ土の回収からです」
ヒロは腰に吊るしたアイテム袋の口を、積みげられた土に触れさせると……突如、ヒロの前から土壁が消え去ってしまう。だが全てが消え去った訳でなく、半径3mの土壁だけが消えていた。
「うん。やっぱり検証どおりだ!」
ヒロは自分の検証結果の正しさに喜んでいた。
ヒロは砦を建造する際に、一番の問題……大量に必要な土や岩、そして木材をどう調達するのかと頭を悩ませた。
少ない労働力で最短の方法を思考した時、このアイテム袋の検証に至り、実証実験を繰り返した。
結果……アイテム袋の新たなる特性が分かり、ヒロはさっそく砦建設に乗り出したのだ。
実証実験において1番の収穫は、所有権のない自然物は回収できないが、一度でも自然な状態から形を変えた物は、所有権が他者になければ回収できる事だった。
つまり、大地にアイテム袋の口をつけても収納はできないが、掘り起こすなどの何かしらの手が加われば、半径3m以内の物を回収できる事を発見したのだ。
「良し! 一気に回収だ! Bダッシュ!」
ヒロはBダッシュで、次々と土を回収していき、ものの5分で総計600mもあった大量の土壁を、アイテム袋に回収し終わってしまった。
「さて、次は盛土ですね」
ヒロが溝の内側の大地に立ち、今度は端から順にアイテム袋に回収した土を出していく。
ヒロは、右手でアイテム袋のメニューを操作し、かざした左手から土を次々と放出していく。
その勢いは凄まじく、放水車から水を撒くかの勢いで吹き出し、ものの30分で盛土をヒロは終えた。
「こんなものですかね? 一応、地固めは、やっておくかな」
ヒロがアイテム袋を操作すると、ヒロの掲げた手の前に、巨大な岩が出現し、ドシンと大きな音を立てて地面に落ちた。
あらかじめショートソードで下面を切り裂き、平にした巨大な岩が、自重の重さと落下による加速で地面を踏み固める。
「手のひらの向きと位置で、収納アイテムの出現場所がコントロールできると、使い方に幅が出て便利だな」
再びアイテム袋に岩を収納し、出現させること数百回、40分掛けて盛土の地固めが終了した。
そこには元の地面より、高さ6メートルも地表から盛り上がった大地が完成していた。
「ふ~、土台はこんなとこですかね。次に石垣作りですね。人手が要ります……土木組に戻ってもらいましょう。その間に、僕は木こり組の切り倒した木材を回収してきますかね」
ヒロは近くにいた連絡役のオークに、水路組に合流せた土木組に、再びこの場所に集合して欲しいことを伝えると、Bダッシュを駆使して伐採組のいる場所へと急ぐ。
「ジークポーク! オク次郎さん、伐採はどうですか?」
「ヒロか~、ジ~クポ~クだべ~、予定通り伐採は終わったべ~」
オク次郎が指差す方をヒロが見ると、伐採された丸太が所狭しと、切り倒された巨大な空間がそこにあった。
「言われたおりにしたべ~、伐採優先で切り倒した木は転がしたままだべ~」
「はい。それで問題ありません。では、次にココと村の間に罠を仕掛けてください。場所は……」
ヒロが落ちていた木の枝を持つと、地面に地図を書き出していく。
かなり綿密な地図を描くヒロは、その地図に罠の場所記していく。
アイテム袋に続いて、オートマッピングスキルの検証もヒロは行っていた。
その際、簡易MAPに表示された地形に、自由に文字や印が書き加えられる事に気がついた。
これは踏破した地形であれば、どこに何があるかを、手動で追加コメントを入れられるのである。
「この印の付けた場所に、落とし穴をお願いします。その穴の中には、先を尖らした細い木の杭を二本程立てておいてください」
「あ~、分かったべ~」
「あと、罠の場所や地形を皆で覚えておいてください。ここにいる伐採組から、夜襲部隊を募ります。罠の場所や地形を把握している人から選抜しますから、皆に情報を共有してください」
その言葉を聞いた周りのオークの戦士達が、ヒロの描いた地図を必死に頭に叩き込み始めた。
オークの戦士にとって、この戦いは、一族の存亡を掛けた、文字通り命懸けの戦いであり、失敗は許されない。誰が選ばれるかは分からないが、選ばれるなら我が! 自分が! 俺が! っと、皆の気迫が見えるくらい、鬼気迫る様子でヒロの描いた地図を頭に叩き込んでいた。
「オク次郎さん、伐採組は罠組に変更しますので、罠作成をお願いします。僕は伐採した木材を回収して、村に戻ります。ジークポーク!」
「了解だべ~、ジ~クポ~クだべ~」
オク次郎の返事にヒロが手を上げて答え、手にアイテム袋を持つと、地面に乱雑に転がる切り倒された木を次々とBダッシュを使って回収していく。
数百あった木が、20分もしない内にアイテム袋に回収された時、その場には巨大な長方形の空間が出来上がっていた。
森の中に急に視界の開けた空間が現れ、違和感がことさらに強調されていた。
不自然に目立つ空間……怪しさ爆発である!
だがそれこそが、ヒロの策だと言うことに気づいた時には……あとの祭りである。
ヒロは回収が終わるなり踵を返し、オーク村への帰路へとつく。
「さて、村に戻る間に、アイテム整理をやっておかないと……」
再び走りながら、発見したアイテム袋の便利機能を駆使し、アイテムソートを始めていた。
膨大な同じ名前のアイテムをメニューに表示する際、検索窓が出現する事に、ヒロは気がついた。
ヒロは検索窓に、尖った石と入力すると、大小様々な形状の尖った石が、アイテムメニュー内で自動的に分類されソートされていく。
ソートが終わるとアイテムメニューの項目が、細かく分類され見やすくなっていた。
「武具なんかより、このアイテム袋の方が大助かりです。セレス様、ありがとうございます」
所持アイテムの把握がしやすくなる、至れり尽くせりなアイテム袋の機能……ヒロは女神セレスへ感謝するのだった。
ジャスト1時間、伝令役に言った通り、土木組が戻る時間までに、ヒロがオーク砦建設予定地に舞い戻ってきた。
「ジークポーク! 同志ヒロ。帰ったべか?」
「オクタさん、ジークポーク! 今、戻りました!」
「みんなちょうど揃ったとこたべ、次は何をすればいいべ?」
「チョット待ってください」
するとヒロがアイテム袋の中から、ソートしておいた先が尖った小岩を、大量に足元へ取り出した。
チョットした小石の山が、ヒロとオーク達の前に出来上がる。
「今から僕が、あの盛り上がった盛土の側面に、岩を積んで行きますから、皆さんは岩と岩の間の隙間に、この先が尖った石を詰めてください」
「隙間にだべな? 分かったべ」
土木組のオーク達が、ヒロが取り出した尖った石を手に待機する。
「さあ……石垣作りも佳境ですね……あとは採取した岩を積んでいくだけですが……フッフッフッフッ、ついにお楽しみ「モノリス」の時間です! 久々にやり込みますよ!」
モノリス……画面上方よりランダムに落ちてくる、様々な形のブロックピースを積み上げ、横一列に隙間なく揃えるとブロックが消え、得点が増えていくと言う、所謂落ちものパズルゲーである。
同時に消すラインが増えるほど得点が高くなり、最大4ラインをまとめて消す事を『モノリス』と言い、最大得点が与えられる。
いかにして隙間なく、ブロックピースを的確に積み上げていくかが、高得点の鍵である。
だが得点を重ねれば重ねる程、ブロックピースの落ちるスピードが上がり、最高スピードに達すると、もはや瞬間移動に近いスピードでブロックピースが落ちていく!
そんな無理ゲー……と思いきや、意外にやれてしまうのが、このゲームのすごい所である。
その秘密は、次に出現するブロックピースが、画面に表示される点である。
瞬時にブロックピースの落とす場所と向きを判断し、無駄なくボタン操作することで、高速プレイが楽しめるのだ。
これのおかげで、ライトユーザーからコアゲーマーまで、幅広い層が楽しめるゲームに仕上がっていた。
元はある科学者が作成した教育用ソフトウエアーであったが、全世界で発売されると老若男女を問わず大ヒットを記録した。
家庭用ゲーム機においては、携帯型ゲーム機『ゲームガール』のキラータイトルとして、424万本も売り上げ、ハードの普及に大貢献を果たした化け物である。
シュールな背景と音楽、独特の重みのある効果音、最後に登場する謎のサルなど……強烈なイメージをゲーマーに与えた。
単純ゆえに奥が深い、落ちものパズルゲーの元祖、それが『モノリス』だ!
ヒロはアイテム袋のメニューを開きながら、巨大な三角形に掘り抜いた溝の底に降り立つと、メニュー画面に表示された分類済みの岩の項目を選択する。
一番上にあった岩の形が表示されると、ヒロは手のひらの向きや形を調整して、岩を目の前に出現させて地面に落とす。
「さあ……やりますよ! 我が懐かしのモノリス! 久々に高得点を叩き出します!」
するとヒロは、メニュー画面を高速に操作しながら、次々と岩を出しては積み上げて行く!
その手から現れては落ちる姿は、さながら土魔法を使う魔法使いが如き光景に、土木組の皆は唖然としてしまった。
ものの1分と掛からず、2mを越す岩の壁がヒロの立つ場所に完成したのである!
完成した瞬間、「モノリス!」と声を上げるヒロ!
4列同時消しに成功した際の掛け声を、つい癖で声に出してしまう。
元の世界でも、モノリスプレイ中に、よく声を出していたものである。
完成した岩壁に見向きもせず、すぐに横方向へBダッシュを使い、瞬時に移動すると再び岩を積み上げ始める。
繰り返し続けられる作業で、次々と石壁が作られていった。
「モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス、モノリス」
現場に響き渡るヒロの声に、土木組オーク達が狂気を感じ始めてしまった。
「モノリス! モノリス! モ#リス! #%#リス! %#☆○! 〆^$☆!」
最初の頃は問題なく、モノリスの声が少し聞こえる大きさの声だったが……今や奇声に近い大声で叫ぶヒロに、オーク達が引いていた。
「だ、大丈夫かアレ?」
「顔が破顔しまくって、笑顔を超えて不気味な顔しているな?」
「声をかけた方がいいんじゃ?」
「いや、止めておけ。もしかしたらアレが普通なのかもしれないし」
「だな。俺たちは言われた通り、岩と岩の間に小石を詰めていくぞ」
自分たちのために働くヒロに、『大丈夫ですか?』などと、失礼な事が言えず、仕方なくソッと好きなようにさせるポーク達……。
そして土木組のオーク達が、岩壁に空いた隙間を埋める作業を始めてから4時間……ついに石垣部分は完成した!
高さ15m、1片の長さ200m……巨大な正三角形の石壁が、村の中心に完成していた。
「#%#リス! %#☆○! 〆^$☆! ÷〒%€! ☆*々:!」
だが、石垣が完成したにもかかわらず、ヒロの奇声は止まらない!
久々の疑似ゲームの感覚に、抑圧されたゲーム脳が解放され、歯止めが効かなくなっていた。
アイテム袋内にある採取した岩を全て使い終わっていたが、ヒロの動きと奇声が終わらないのだ!
バグッた脳が、思考の無限ループを繰り返し、何もない空間に空想の岩を出現させ、幻の岩壁をヒロの脳内で完成させ続けていた!
永遠に終わらないモノリスに、幸せを感じたヒロの脳が、モノリスのエンドレスモードに入ってしまった。
「これは参ったべ……明らかにおかしいべ?」
「狂っているな」
「危なくて近づけん」
「お~い、もう完成したべ? 聞こえてないべ?」
何もない空間に手をかざし奇声を上げるヒロに、危険を感じたオクタが声を掛けるが反応せず……奇声が止まる気配がまるでない。
狂気をすら感じるヒロに、ポーク達はドン引きしていた。
仕方なくオクタは、バグッたヒロを直せるであろう人物の元へ、駆け出すのであった。
〈バグッた希望に、必殺の腹パンチが打ち込まれ、強制リセットが入った!〉
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追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。
無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。
そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード!
異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。
【諸注意】
以前投稿した同名の短編の連載版になります。
連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。
なんでも大丈夫な方向けです。
小説の形をしていないので、読む人を選びます。
以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。
disりに見えてしまう表現があります。
以上の点から気分を害されても責任は負えません。
閲覧は自己責任でお願いします。
小説家になろう、pixivでも投稿しています。
鬼神転生記~勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。~
月見酒
ファンタジー
高校に入ってから距離を置いていた幼馴染4人と3年ぶりに下校することになった主人公、朝霧和也たち5人は、突然異世界へと転移してしまった。
目が覚め、目の前に立つ王女が泣きながら頼み込んできた。
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訓練でゴブリン討伐していた勇者たちだったがアクシデントが起き幼馴染をかばった和也は命を落としてしまう。
「俺の人生も……これで終わり……か。せめて……エルフとダークエルフに会ってみたかったな……」
だが気がつけば、和也は転生していた。元いた世界で大人気だったゲームのアバターの姿で!?
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一巻発売中です。
月が導く異世界道中
あずみ 圭
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月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
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凡人がおまけ召喚されてしまった件
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ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
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