勇者ですか? いいえ……バグキャラです! 〜廃ゲーマーの異世界奮闘記! デバッグスキルで人生がバグッた仲間と世界をぶっ壊せ!〜

空クジラ

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第12章 勇者とエクソダス編

第121話 闇夜の攻防、危ない夜道に御用心

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 それはオーク村の手前、5kmの地点を行軍している時だった。

 オーク討伐隊がアルムの町を出立してから、はや二日……今日の昼にはオーク村に到着し、戦いを覚悟していた兵士たちに朗報が舞い込んだ。

 それはオークが同士打ちを始め、その数を減らしていると言うものだった。

 死を覚悟していた者たちは、戦いは明日の朝からの報を聞き、今日を生き延びられたことに安堵していた。

 そして、もう少し進めば今日の夜営予定地点に到着する……兵士たちが休息に期待を膨らませ、意気揚々と行軍していると、奇妙な場所に足を踏み入れてしまった。

 深い森の中を行軍していた討伐隊の前に、突如広い空間が現れたのだ……木々が全て切り倒されており、切株だけが残された長方形な空間。
 
 横幅300m、縦幅150mはあろうかと言う、あまりにも不自然な空間に、先頭の兵士たちは歩みを止めていた。

「何をしておる? なぜ行軍を止めた!」

「分かりません。確認致します!」

 馬に騎乗したドワルドは、行軍が止まった理由を近くにいた将兵に声を荒らげて聞くと、先頭にいた伝令からパーティーシステムを用いたメールとチャット機能で、ドワルドの元へ報告が上がる。

「伝令! 先頭より、この先で木々が切り倒され、約300mの開けた長方形の土地が現れたと報告が入りました! 先頭の部隊は現在、指示待ちで待機しています!」

「なに? 開けた土地?……なぜこんな森の中に? 周りに偵察を出せ! 総員戦闘準備にて待機! 罠の可能性もある。安全を確保するまで油断するな! 問題がなさそうなら、その場所に陣営を張るぞ! オーク討伐の拠点として使う!」

「宜しいのですか? 罠の可能性が高いですが?」

「調べて何もなければ利用するに問題はない! おおかたオーク供が、村を作る建材として切り倒したのだろう? 陣を張るのにちょうどよい」

 『そんな馬鹿な』と、伝令は呟くが、ドワルドは聞き逃さなかった。

「ワシの指示に不服か?」

「いえ! すぐに偵察を出します。伝令! 戦闘準備にて待機! 偵察を出せ!」

 伝令が他の伝令にメールとチャットで命令を共有すると、自分の担当エリアの者たちに伝令を伝えるべく、内容を叫びながら駆けて行く……すぐに討伐隊に情報が共有され、皆に緊張が走った。

 予定では今日の昼には目的の村に到着し、生きるか死ぬかの戦いに、その身を投じるはずだった討伐隊……オーク同士が共食いを始めた報に喜び、漁夫の利を狙って進軍スピードを落とし体力の温存に努めた。

 もしかしたら、ありつけなかった食事にありつけるとなり、緊張が緩みかけた矢先の出来事だった。
 伝令の戦闘待機の言葉に、討伐隊に参加する大半の者が戦々恐々してしまう。

「この先に開けた場所が? あからさまね。普通ならそんな場所で夜営なんてしたくはないのだけど……ドワルド指揮官ならそのまま夜営しそうね。はあ~」

 ナターシャが伝令の言葉を聞き、ドワルドの指示に溜息をついていた。

「周りに偵察を出しているみたいです。我々も戦闘待機の指示が出ていますが……本気でそんな怪しい場所に陣を張るつもりでしょうか?」

 ギルド職員である解体屋ライムがナターシャに伝令の情報をまとめて報告をする。

「ドワルド指揮官ならやりそうね。あの人はご都合主義で動くから、自分のいいように解釈して行動するタイプね。指揮官としては困ったものだわ」

 呆れた顔で、ドワルドを非難するナターシャ。

「なんでそんな人が、オーク討伐隊の指揮官を?」

「まあ、指揮官の器じゃないわね……ていのいい捨て駒よ。王国はこの討伐隊に何も期待してないのでしょう」

「ただの犬死にはゴメンです。まだ解体したい魔物は沢山ありますから……」

「私も死ぬつもりはないわ。何としてもオークを討伐しないと……取り敢えずは陣形を組んで周りを警戒して頂戴!」

「分かりました! あっ! オークヒーローの解体は絶対、私にやらせてくださいよ! そのために討伐隊に参加したんですから!」

「分かっているわ。アナタの解体術にも期待しているわよ。思う存分オークを解体しなさい」

「はい!」
 
 ライムは元気良く返事をすると、そのまま冒険者パーティーのリーダー陣に伝令の情報を伝えるため、その場を後にした。

「ふ~、ライムちゃん、戦闘力は高いけど、解体癖がたまに傷ね。冒険者を辞めてギルドで働く理由も、戦闘中に解体を始めて夢中になるあまり、危うくパーティーを全滅させそうになったくらいだし……注意して見てあげないとね」

 そんなナターシャと冒険者を含む討伐隊は、周りの安全が確保されると、指揮官のドワルドを中心とした陣を、謎の長方形の空間に敷き始めるのだった。


…………


 草木も眠る森の中、音も立てず討伐隊が夜営する陣へと近付いて来る者たちがいた。

 森の中に突如現れた長方形の謎空間……無論、それはヒロの指示により作られたものなのは、言うまでもない。

 村の中心に立て篭る砦を作る際、建材として討伐隊の通る予想地点の木々を伐採したのである。

 オーク戦士200名を動員し伐採された木々は、ヒロのアイテム袋に全て収める事で、森の中に長方形の謎空間を作り出したのであった。

 当然、ヒロがわざわざ村から離れた位置の木々を切り倒した理由は、砦の建材確保だけではなかった。

 陣営を張るのに適した広さの空間、あらかじめ用意された手頃な開けた場所……罠が有れば当然無視するが、何もないとなれば、人は必ず自分の都合の良いように解釈し、利用しようとする。

 ヒロはそんな人の心理を読み、わざわざ村から離れた位置の木々を切り倒し、手頃な広さの空間を討伐軍に提供していたのだ。

「フッフッフッフッ、うまく引っ掛かってくれました。罠がないとすれば、必ずそこに陣営を張ると確信してました。まあ、罠はありせんから安心して利用してください。にはですけどね!」

 ヒロが闇夜の森の中、黒い顔で笑っていた。
 リーシアがいたら、間違いなく真っ黒判定が出る程の黒い笑顔だった。

 オートマッピングスキルで表示された簡易MAPの光点から、オーク戦士達が最適な場所に配置された事を確認したヒロが、隣にいるオークヒーローに小声で話し掛ける

「さあ、作戦開始です。討伐隊は丁度いい具合に緊張の糸を緩め、古参オーク達の配置も完璧です。やるなら今が最高のタイミングですね」

「よし。合図と同時に、手はず通り動くぞ」

「分かりました。くれぐれも殺し過ぎないでください。できれば殺すよりも重症にする方が好ましいです」

「分かっている。怪我人は死人よりも厄介だからな……始めるぞ」

 カイザーの問いにヒロはうなずく。
   

 弓矢のやじりに油が染み込んだ布を巻いた矢をカイザーが手に取る……すると脇の下で矢を固定し、空いた両手で腰ミノから取り出した火打ち石で素早く火を着け、弓に燃える矢をつがえた。

 闇夜の中に浮かび上がるオークヒーローの姿、火が付いた弓矢を放った時。開戦の火蓋は切られた!
 
 闇の中、弓矢に灯る炎を目印に、闇に潜む古参オーク50名が一斉に矢を放つ!

「ふぁ~、交代はまだか……昨日から歩き通しで疲れ、グッ!」

 それは、見張りの兵士が大きな欠伸をしている時だった。
 兵士は急に走った胸の痛みに視線を落とすと、自分の胸に細長い木の棒が突き刺さっており、火が付いていた事に気がついた……一瞬、自分の身に何が起きているのか兵士は理解できずにいた。

 鋭い痛みと熱さが体を襲い、ようやく自分が火矢で攻撃されたことを悟ると、兵士として最低限の役割を果たすべく、あらん限りの声を出した。

「て、敵襲! 起きろー! 敵襲だああああ!」

 敵襲の声に、寝ていた周りの兵士達が一斉に目を覚ます! それは各所で起こり、突然の敵襲の報に討伐隊は混乱する。

「敵襲だと? オークか!」

「どこだ!」

「起きろ! グアッ!」

 第二射が、起き抜けの兵士の体に突き刺さる。中には矢が刺さった痛みで起きる間抜けな兵士の姿もあった。
 敵襲の声が、波のように討伐隊の中を駆け抜け、陣の中は騒然となる。
 
 オーク戦士による弓の一斉掃射が、ほぼ同じタイミングで密集している討伐隊に撃ち込まれた。

 普段狩りを生業にするオークにとって、弓は慣れ親しんだ武具である。槍と弓、この二つを十全に使いこなせなければ戦士として認められない。当然、古参オーク全員の弓の腕は、過酷な森の生活を生き抜いただけの技量が備わっていた。

 暗闇の中を、正確に弓矢が兵士達の体を射抜く。

「どこから射って来やがる!」

「わからん! とにかく森に向かって撃て!」

 敵襲の声に弓を持った兵士達は、暗闇の森に向かって弓矢を出鱈目に撃ち込むのだが、まったく意味はなかった。

 弓は射程が長い反面、攻撃面積は狭い。目標を定めて撃たなければ全く意味がないのだ。
 さらにオーク達は、森の木々を盾にしているため、流れ矢など当たるはずがなかった。

 無駄な矢を射る兵士達の攻撃は、一本もオーク達に当たらない……対してオークの弓は、次々と兵士に突き刺さっていく。
 
「な、なんでだ! なんでこんな暗闇の中であんな正確に射られる、グアッ!」

 オークはもともと夜目が効く。村の警戒のために夜警を交代制で取り入れているため、自ずと鍛えられており、焚き木の火を光源とする事で、オーク達からは討伐隊の姿が丸見えである。

 さらに、人族を射り易いよう、ワザと広い空間を森の中に作り出し、ある程度密集させ命中率を上げていた。

 一射毎に確実に弓矢を当てるオーク達に、討伐隊も黙っていられない。

 松明を手にした兵士達が、武器を手にオークがいるであろう森の中へと前進を始めるが……手にした松明を目印に、兵士たちが次々と矢に貫かれる。

「松明を捨てろ! 的になるだけだ! 怯むな進め! 近づけば、数で勝る我らの方が有利だ! 俺に続けー!」

 数の上では優っている討伐隊は、仲間が傷付き倒れるのを無視し、弓を恐れず勇猛に前進するのだが……先頭を行く兵士が、突如その姿を消した!

 その後ろを走っていた兵士が身を低くし慎重に確認すると、森の中に落とし穴が作られており、姿を消した兵士はその穴の中でうめいていた。

 落とし穴な中には、先を尖らした木の杭が設置されており、兵士の体を貫き穴を開けていた。
 穴に落ちた者は死んではいなかったが、大怪我を負ってしまい戦闘どころではなくなってしまう。

「うまく落とし穴に掛かりました! フッフッフッ、その先は罠だらけですよ……闇夜の夜道は危険でいっぱいですから、お気を付けください」

 ヒロの言葉通り、後続の兵士たちが次々と罠に掛かり落とし穴に落ちてゆく。

 松明で足元を照らせれば、回避もできたであろうが……オークの弓がそれを許さない。

 罠を警戒して足が止まる兵士に、オークの矢が次々と撃ち込まれた。

「そろそろ頃合いかな? カイザー、合図を! 次の行動に移ります」

「分かった!」

 カイザーが息を大きく吸い込み、大声で叫ぶ!

ブヒヒー全員下がれ!」

「な、なんだ? オークの雄叫びか? ま、まさかオークヒーロー?」

 人には理解できない言葉で、ヒロの指示を大声で伝えるカイザーに兵士達が恐怖してしまう。

 カイザーの指示に、一斉にオーク達がその場から下がり、遅滞戦が始まった。

 ヒロが視界の端に表示された簡易MAPで、討伐隊の動きを把握し、的確にカイザーへ伝える。

「オク次郎さんの右側に接敵! 下がらせて罠に誘い込んでください!」

ブヒヒー、ブヒーヒオク次郎、右側に敵だ!  ブヒヒヒブブーヒ罠まで後退しろ
 
 突出して前に出てくる者を集中して射り、逆に包囲されそうなら罠のある位置まで下がらせる。

 オートマッピングスキルを持つ、ヒロだからこそできる盤上の戦い。

 オーク全ての光点にいる者の名前と配置を覚え、頭の中で刻一刻と変化を続ける戦場を支配する。それはスーパーウラコンで発売された往年のリアルタイムストラテジーシミュレーションRPG、『伝説のオークバトル』を彷彿とさせた。

 『伝説のオークバトル』……当時、ゲーマー愛読書として名高いウラコン通信のクロスレビューにおいて、殿堂入りを果たした伝説レジェンドである。

 人気の秘密は、今までのシミュレーションゲームと一線を画す、リアルタイムで進行する戦略パートにあった。

 従来のシミュレーションゲームは、ユニットと呼ばれるキャラを、味方と敵が交互に動かして戦う、ターン制が主流だった。
 そんな時代に綺羅星の如く現れたのが、『伝説のオークバトル』である。

 このゲームの売りの一つがリアルタイム……味方も敵も常に動き続け、戦闘はオートで行われるのだ。

 とくに部隊ユニットと呼ばれる、パーティー単位でのキャラクターの運用方法は画期的だった。

 足は遅いが高火力のキャラを飛行系キャラと組ませることで、足の遅さをカバーして空を飛ばす電撃作戦で、敵地を強襲するなど、さまざまな戦略を駆使できるのだ。

 プレイヤーはMAP全体を見渡し、変化し続ける戦場を大局的視点で見ることで、壮大な戦場ドラマを垣間見れた。
 さらに魅力的なキャラクターと、重厚なストーリーをファンタジー要素で包み込みことで、ゲーマー達を虜にした。

 反乱軍のリーダーとして圧政を敷く帝国に、仲間と共に立ち上がる主人公が、戦場を通じて成長してゆくヒロイックファンタジー……売れないわけがなかった。

 リアルタイムで指示を出しステージを攻略していく斬新な戦略性と相まって、当時としては異例の40万本と言う大ヒットを記録した。

 のちのゲームに数々の影響を与えた伝説……それが『伝説のオークバトル』だ!

 暗闇の中、ヒロが指示を出し、カイザーが大声で他の古参戦士に細かく指示を与えると……兵士たちは次々と用意した落とし穴に落ち、弓で射られてゆく。

「ええーい! 何をしている! なぜオーク供を一匹も倒すことができないんだ!」

 中央の陣でドワルドが怒りを露わにしていた。

 討伐隊の被害は不明だが、少なくとも軽微で済む被害ではなかった。
 対してオーク側に被害は皆無。1匹でも仕留めたと言う報告が、上がってこない。

 指揮官として責任を負うドワルドに取って、この苛立ちから来る怒りの吐口が見いだせず、伝令に当たり散らすしかなかった。

「報告します。オークの姿が全く見えません。 森の闇に溶け込んでいるかの如く、誰もオークの姿を見た者がおりません。」

「馬鹿を言うな! いくら夜の闇の中だとしても、姿すら見えないなど、ありえん! オークも同じ条件のはず……何が、何がおきているのだ⁈」

 伝令が上げる報告に、オーク討伐隊指揮官ドワルドは、打開策を出せないまま悪戯に時間だけを浪費し、兵力を減らしていく。

「さて、次の段階に移ります。お待たせしました。カイザーさん出番です! 全員を目標地点に集合させてください」

「ウム、任せておけ!」

 カイザーが愛用のハルバードを手に吼える!

ブブヒー仕上げだ! ブヒヒブヒブヒブー敵を引き付けながらブヒーブヒヒヒ後退集合せよ!」

「よし、我はこの場に隠れて待つ。ヒロお前は下がっていろ。我らに囚われているお前が、ここにいると知られるわけにはいくまい?」

「分かりました。お気をつけて……」

「お前が教えてくれた、このギリーマントが有れば、早々に見つかるまい。さあ、早く行け!」

 ヒロはカイザーを残し、予定地点まで後退を始め、カイザーは近くの草むらに中腰に屈み、ジッと息を潜め時を待つ。

 ギリーマント……オーク討伐隊がオークの姿が見えないわけは、このマントの所為せいだった。

 ヒロが急遽オーク達に作らせた迷彩マントは、建材の伐採時、その近くに生えていた草や苔、葉や小枝をマントにくくり付けた物だった。

 ヒロの世界ではギリースーツと呼ばれ、身を隠すことが多い狙撃手スナイパーや、ハンターが、草原や山岳部で身を隠すカモフラージュで着用するアイテムである。

 着用者は風景に溶け込み、隠れ潜まれた場合、視覚による発見が困難になる。

 作成できたギリーマントは50着分、森に足止めと牽制に出る人数分しか作成が間に合わなかった。だが、オークのメス達が総出で作成してくれた、ギリーマントの効果は絶大だった。

 森の闇夜とギリーマントのカモフラージュ効果は、すぐ足元にオークが潜んでいても発見はされる事がなく、姿なきオークの襲撃に、討伐隊は恐怖するのだった。

 そして森に溶け込んだオークヒーローの近くに、五十名を超える討伐隊の兵士たちが、別々の方向から、姿なきオークを追って誘導される。

 オークを追っていた兵士達……突如、暗闇の中から現れた気配に、勇猛に攻撃を加える! だが……。

「なっ!」

「馬鹿な? なんで味方を……」

 誤って同じ味方を攻撃してしまう兵士達……少なくない犠牲が、さらに増してしまう。

「待て、味方だ! 攻撃を止めろ!」

「何⁈  オークを追って真っすぐ進んでいたはずなのに⁈」

「俺達もだ! 一体なぜ?」

 暗闇の中で合流した兵士達は、見通しの悪い視界と、森の似たような景観に惑わされていた。
 真っすぐに進んでいる様に錯覚し、まんまとオーク達に誘導され、一カ所に集められてしまう。
 
 そこへ突如、言い知れぬ重圧プレッシャーが兵士たちを襲い、指一本動かせなくなる。

 50人はいた兵士全員が、恐るべき何かに動きを封じられてしまう。

ブヒーブヒヒヒブパワースレイブ!」

 隠れ潜んでいたオークヒーローが跳び上がり、一カ所所に集められた兵士達の中心に向かって、必殺の一撃を放つ、

 炸裂するカイザー渾身の一撃! 中心にいた兵士数名は耐え切れるはずもなく、潰されて即死した。

 カイザーがパワースレイブを放ち終わると、すぐにハルバードを横に一閃し、さらに数名の兵士の命を奪う。

 カイザーの間合いの外にいた兵士達は、突如体の自由を奪っていた重圧プレッシャーが消えると、カイザーに果敢にも挑むため武器を構える。

 だがそこへ、オーク達の一斉掃射が、再び兵士たちへ浴びせられる……中心にオークヒーローがいるにもかかわらず、弓矢が雨のように降り注いだ!

 弓矢の掃射が終わった時、その場にはカイザー以外の者は倒れ伏していた。

ブヒ~ふ~ブヒよしブヒヒブヒブヒうまくいったようだな

 止めていた息を吐き出し、呼吸を再開するカイザー……彼は息を止め、絶対防御スキルを発動することで、味方の弓矢を全て弾いていた。

ブヒーブヒ撤退するぞ! ブヒブヒブヒヒヒブ最後まで気を抜くな!」

ブヒーおうよ!」

 暗闇の戦いが始まって1時間……オーク達の声がついに聞こえなくなり、再び森に静寂が戻った時、戦いは終わりを告げた。

 そして戦闘終了後の被害報告でドワルドは卒倒する……たった1時間の戦いで、見過ごす事が出来ぬ被害状況を聞き、ドワルドは部下に怒りを撒き散らすハメになる。

 死者40名、重傷者100名以上、オーク討伐数0匹……闇夜の戦いは、オーク側の圧勝で幕を閉じるのであった。

〈希望と絶望が手を組んだ時、討伐隊は恐るべき損害をこおむるのだった!〉
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