勇者ですか? いいえ……バグキャラです! 〜廃ゲーマーの異世界奮闘記! デバッグスキルで人生がバグッた仲間と世界をぶっ壊せ!〜

空クジラ

文字の大きさ
上 下
93 / 226
第10章 勇者と親子の絆編

第93話 オーク……幻想と現実の間

しおりを挟む
「ヒロ! 起きてる?」


 オーク村に来て三日目……朝日が登り始め、まだ薄暗い洞窟の中にシーザーの声が聞こえてきた。

 ヒロとリーシアは、気配察知スキルで予め近づく者がいるのを察知し、眠りから目を覚ましていた。


「あ~、コラ~ 子供が勝手に人族に話し掛けちゃダメだべ~ 喰われちまうぞ~」

「大丈夫だよ。ね~、ヒロ聞いてよ」

 入り口からシーザーと、ムラクとは違う別のオークの声が聞こえてくる。

 ヒロとリーシアを見張る者は、四交代制でヒロ達を監視しており、今はムラクとは別のオークがヒロ達を見張っていた。

 ムラクは夕方から夜半に掛けての見張りらしく、一日一回の差し入れがある夕刻が担当の時間だった。

 他のオークとは、まだ喋ったことがないため、ヒロとリーシアは少し警戒しながら入り口に設けられた木の格子に近づきシーザーと言葉を交わす。


「シーザー君、おはようございます」

「聞いて! 俺リンボーの試練で50cmを潜り抜けたんだ!」

「おお、やりましたね。これで狩りに連れて行ってもらえますね」

「うん! 今日この後、早速連れて行ってもらえるんだ」

「ん~? お前、オラ達と喋れるだが~? びっぐらごいた~」


 シーザーとヒロが会話している姿を見た別の見張りが、驚きの声を上げた。


「喋れるのは僕だけです。初めましてヒロといいます」

「ほへ~ これはご丁寧に、オラ~オク次郎っていうだ~ よろしくな~」
 

 オク次郎を名乗るオークは、ヒロにペコリて頭を下げて名乗り返してくれた。どうやらかなりマイペースなオークの様で、間延びした口調がノンビリした印象を与え、眠たげなトロンとした目が、それに拍車を掛けていた。
 

「あ~ シ~坊、あんまり近づいちゃダメだからな~ も少し離れるべ~」

「大丈夫だよ。オク次郎は相変わらず心配性だな~」

「マネしてもいいたべが~ も少し下がるべ~ ほれ~」


 すると、おっとりとした印象からは想像もつかない鋭い動きで、手に持った槍の柄を前に突き出していた。シーザーを退がらせたオク次郎の動きにはまったく無駄がなく、ヒロは鋭い一撃に舌を巻いていた。


「オク次郎さん……お強いですね?」

「んだな~ 長く生きてるからな~ これくらい強くないと生きられなかっただ~ まあ、おら程度、年いった奴なら普通だべ~」

「オク次郎世代って、第一次ベビーラッシュ時代でしょ?」

「んだ~ あの頃は食い物が少なくてひもじかっただ~ 生きるために必死で食べ物を探してな~ お陰で狩りの腕が上がって、この通りだべ~」


 突き出していた槍を高速に回し、手元に戻したオク次郎……その動きは少なくともベテランの域に手が掛かる中級冒険者では相手にならない力量の片鱗を見せていた。


「おお! 俺もそんな風に槍を振れるようになるかな?」

「あ~、頑張って狩りをしてればなれるべ~ オラですらこの通りだ~ シ~坊なら、きっとできるようになるさ~」

「ありがとう、オク次郎、あっ! そろそろ時間だ。じゃあヒロ行って来る。狩りで獲物が獲れたら、ヒロ達にも食べさせてあげるから、楽しみにしていてね」

「今日の差し入れを楽しみにしています」

「絶対獲ってくる! 行ってきます!」


 元気一杯のシーザーは、そうヒロと約束すると、村に向かって走り出して行った。


「さあ、話はおしまいだ~ 大人しくするべ~」

「分かりました。オク次郎さん見逃してくれてありがとうごさいます」

「あ~ 子供が懐いていたから~ 悪い奴じゃあんめい。少しくらいなら問題ないべ~」


 オク次郎はそうヒロに告げると牢屋の前に立ち、再び槍を手に見張りへと戻る。

 ヒロはオク次郎の振る舞いに、魔物と言えど人と同じく、心ある者もいるのだと感じ始めていた。


「おはようございます。ヒロ、シーザー君はなんて言っていたんですか?」

「リーシア、おはよう。昨日、無事にリンボーの試練で50cmの高さをクリアーしたそうです」

「おお! 良かったですね」
 

 リーシアがパッと顔を綻ばせて喜ぶ。他人の幸福を素直に喜ぶリーシアを見て、ヒロも嬉しくなった。


「早速、狩りに連れて行ってもらう様で、獲物が獲れたら。僕たちに差し入れしてくれるそうですよ」

「お肉ですか! そう言えばここ数日、果物とリンド焼きしか食べてないですね……」

「食事どころではなかったですから。それにいつ戦いになるか分からない状況でお腹を膨らませるのは……」

「ですね」

「夕方の差し入れに期待して、朝ごはんを少し食べておきましょう。体力も回復しとかないといけませんし。リーシア食べたい物はありますか?」

「シチューが食べたいです!」


 ヒロの質問に即答するリーシア、ガッツリ系のリクエストにヒロは苦笑しながらも、アイテム袋から屋台で買ったシチューを容器ごと取り出していた。

 木製の底の深い皿に注がれた赤いシチューとスプーンをリーシアに渡すと、嬉しそうに頬張り始める。

「ん~♪ ポマトの酸味がなんとも言えませんね。お肉もトロットロになるまで煮込まれて柔らかいです。お野菜もゴロゴロ入っていて食べ応えがありますね」

「これは僕の国だと、ビーフシチューと言う料理に近いですね。コクは薄いですが、酸味が強くてコレはこれで美味しいです」

「まさか囚われの身の牢屋で温かいシチューを頬張る日が来ようとは夢にも思いませんでした。人生何が起こるか分からないって言いますが……ヒロと一緒にいると、妙に納得してしまいます」


 リーシアはシチューを口にしながら、しみじみと感じた事をヒロに話す。


「僕も牢屋で温かいシチューを可愛い女の子と二人っきりで食べる日が来るとは思いませんでしたよ」

「え? か、可愛いい、な、何を……」


 リーシアの言葉にヒロが、さりげなく意地悪な言葉を掛ける。最近のリーシアは、この手の話に耐性がなく、思考がバグッてしまう事にヒロは気づき、その反応が面白くてワザと意地悪な言葉を使うようになってきていた。

 所謂いわゆる、気になる異性にチョッカイを出したくなるあの感情である。

 戸惑うリーシアを見て、ヒロはつい顔が綻んでしまう。
 

「も、もういいです! ヒロがどんな人か、私も分かってきましたから……女性に面と向かって可愛いなんて言う人は、社交辞令か、からかっているかのどちらかです! 後者だとしたら後で腹パンチですよ!」


 拳を握りヒロに見せつけるリーシア……そっと皿を地面に置き、無言で土下座するヒロ!

 いつもと変わらない朝が。そこにはあるのだった。

 食事を終えたヒロとリーシアは、昨日話し合った内容を整理しながら、新たな情報を確認していた。


「さっきオク次郎さんの槍捌きを見せてもらいましたが、かなりの熟練度でしたね。あれは間違いなく中級冒険者並みの力量でした」


 接近戦を得意とするリーシアの意見から、ヒロはオークの戦力を分析し始めた。


「オク次郎さんレベルが数匹なら問題ないですが、シーザー君が言っていた、第一次ベビーラッシュ時代って言葉が気になります」
 

 ヒロは言語スキルの特性が、ガイヤの言葉を翻訳する際、元の世界に近い言葉で翻訳していることに気がついていた。ベビーラッシュの言葉から、オークの子供が一度に多く生まれた時期がある事を安易に想像させられる。

 しかも、オク次郎レベルのオークが同年代に数多くいる事も……。


「もしオク次郎さんレベルが100匹もいたとすると……」

「ヒロ……もはやアルムの町レベルでは手がつけられません」


 リーシアは知っていた。いくら強い者がいたとしても、数の暴力には勝てないことを。
 

「オークヒーローだけでも万単位の軍勢で倒せるかどうかなのに、オークの戦士も強いとなれば、もう国レベルの戦力が必要になりますよ」


 急いで討伐しなければ、時が経てばたつ程、オークは数を増やし、手が付けられなくなるとヒロは考えていた。


「とりあえず、いま分かっている情報をメールでケイトさんに知らせましょう」


 ヒロがパーティーメニューを開き、見知った情報を打ち込んでいると、リーシアがヒロの上着の袖を遠慮がちに引っ張ってきた。


「どうしましたリーシア?」

「ヒ、ヒロは何とも思わないのですか?」

 神妙な面持ちのリーシア……。

「何がですか?」

「オーク達の事です! ヒロは今、情報をまとめてメールしようとしてますが、それが何を意味するか分かっているのですか?」

「ええ……分かっていますよ」

「だったら」


 リーシアがヒロを睨むが、ヒロは涼しい顔で受け流す。


「リーシア……僕もオーク達と言葉を交わしてみて、人とオークが生きると言う意味では、その差はないのではと感じました」

「私も感じています。オークも同じ女神を崇め、家族を作り、命を営んでいるのを」

「シーザー君やムラクさんを見て、魔物と言えど心があるのだと僕は知りました」

「ヒロはそれが分かっていて、オークを大量討伐するクエストに手を貸すのですか? あの子も殺されるのですよ⁈」


 あの子の言葉に、ヒロの脳裏にシーザーの姿が映った。


「そうですね……このままでは、あの子も殺されるでしょう」

「なんでヒロはそんなに冷静なんですか? 私には分かりません……」

「冷静ではありませんよ? 冷静であろうとしているだけです。今も僕の心の中は、一杯いっぱいで迷ってばかりなんです」

 ヒロはリーシアの澄んだエメラルドグリーンの瞳を、真っ直ぐな目で見つめた。


「リーシア……僕は君を死なせなくないんです。教会の人達や孤児院の子供達、アルムの町に住む人々を……人とオーク……どちらかを選択しなければならないのなら、僕は迷わず人を選びます」

「ヒロ……」


 リーシアの瞳が悲しみに包まれる。


「私も分かってはいます。でもあのオークの子を見ていたら……リゲルを思い出してしまうんです。姿や形はもちろん、種族だって違うのにですよ。なのにシーザー君を見ていると死なせたくないと思う私がいるんです……ヒロ、私はおかしいのでしょうか?」


 リーシアの問いに、ヒロが顔を横に振る。


「リーシア、君の思いは間違ってはいないです。僕も思いはリーシアと一緒です。シーザー君を殺したいわけではないです」

「ヒロ、それでは!」

「ですが、現状ではどうする事もできません。囚われの身である僕らには、ただ助けを待つことしかできないのです」

「……」

「ですが……針の穴を通すくらい難しい条件になりますが、可能性がないわけではありません」

「本当ですか!」


 リーシアはヒロの一言に、期待を込めて声を上げた。

 それはヒロが今まで、一度たりとも勝算のない話をしたことがないと知っていたからだった。


「でも、その道は茨ですよ、その道を進めば人もオークも最小の犠牲で生き残れるでしょう」


 どんなに困難な道でも、二人ならきっと乗り越えられる。リーシアは極限の状態からも、常に切り抜け続けてきたヒロの考えに絶対の信頼を寄せていた。その信頼がリーシアに茨の道を選択させる。


「例えどんなに難しくても、道があるのなら!」


 その答えを聞いたヒロの顔は暗くなり、リーシアに冷酷な言葉を伝える。


「ですがその道を歩めば、リーシア……あなたと僕は確実に人の敵になりますよ」

「人の敵?」

「間違いなくお尋ね者です。もう二度とアルムの町には入れないばかりか、下手したらマルセーヌ王国から追われます。町に入れば裏切り者として、町の住人からは石を投げつけられるでしょう」

「お、お尋ね者……」

「それだけの覚悟がリーシアにありますか?」

「……」


 リーシアは押し黙ってしまった。

 ヒロは仕方がないとリーシアを責める事はしなかった。実際オークを救うことはできる。凄まじい難易度のイベントをクリアーするのが条件になるが……可能ではある。

 オーク討伐を実行して生き残るのがイージーモードなら、オークと人、両方を助ける道はナイトメアモード程、難易度に開きがある。

 しかも成功する確率が、限りなく0%に近い、奇跡的に成功したとしても、最低でもアルムの町を出て行かなくてはならない。

 ヒロ一人だけならどうとでもなるが、リーシアもお尋ね者になれば、教会や孤児院の子供たちにも波及するかもしれない。

 やるからには、全ての悪意を一身に受ける覚悟が必要だった。
 

「私は……どうしたら……」


 選ぶ事ができず、答えが出せない自分に憤りを感じたリーシアは……いつの間にか涙を流していた。


「リーシア、自分を責めないでください。僕もオーク達を助けたいと言う気持ちは一緒です。ですがハッピーエンドなんて現実にはありえない……幻想なんです」

 その一言を残して、ヒロはメールにオーク村で知り得た情報を打ち込み終えると、ケイトへと送るのであった。



〈現実と理想……その間にそびえ立つ幻想と言う名の壁が二人の前に立ちはだかった〉
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

鬼神転生記~勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。~

月見酒
ファンタジー
高校に入ってから距離を置いていた幼馴染4人と3年ぶりに下校することになった主人公、朝霧和也たち5人は、突然異世界へと転移してしまった。 目が覚め、目の前に立つ王女が泣きながら頼み込んできた。 「どうか、この世界を救ってください、勇者様!」 突然のことに混乱するなか、正義感の強い和也の幼馴染4人は勇者として魔王を倒すことに。 和也も言い返せないまま、勇者として頑張ることに。 訓練でゴブリン討伐していた勇者たちだったがアクシデントが起き幼馴染をかばった和也は命を落としてしまう。 「俺の人生も……これで終わり……か。せめて……エルフとダークエルフに会ってみたかったな……」 だが気がつけば、和也は転生していた。元いた世界で大人気だったゲームのアバターの姿で!? ================================================ 一巻発売中です。

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

処理中です...