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第6章 勇者と潜入ミッション編
第57話 勇者と追加ミッション
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「まさか……これが全部オーク?」
ヒロは簡易MAPに表示された光点を見て、頭を悩ませていた。
半径300mに表示されたMAPに、50を超える光点が表示されていた。光点のいくつかが、黒く塗りつぶされた箇所で消え、また出てくる様子が映し出される。
「定期的に、一定の場所を往復する光点があります。これは歩哨がいるのか? だとすると……オーク達がここに集落を作っている可能性が高いな」
「集落? オークがですか⁈」
ヒロの言葉にリーシアとケイトの二人が『まさか』と言う
表情を浮かべていた。
「ええ、歩哨がいるって事は、敵襲に対して警戒しているからです。一定の距離を何人かで警戒しているとすると、広範囲の場所を守るためですから、大規模な集落ができている考えて良いはずです」
暗く見通しの悪い森の先を見ていたケイトが、話を聞くや否や血相を変えてヒロに詰め寄る。
「じゃあシンシアはオークの集落の中にいるって事?」
「そうなります……ケイトさんの状況は?」
「待って、今メッセージを送るから」
『シンシア、いまどんな状況なの? 教えて』
『さっき手足を蔓で縛られて、逃げられないように木に括り付けられてしまったわ。前の手で縛られているからなんとかメッセージは送れる。ケイトお願い早く助けて! 周りがオークだらけで怖いの』
『必ず助けるから待っていて。また連絡するわ』
「いまは手足を縛られて見張られているみたい。早く助けてあげたいけど……」
「真正面からは、どう考えても無謀ですね……ヒロ、何か良い案はありませんか?」
「無茶をすれば、助けられる可能性はありますが、とりあえず、オークの集落規模を確認してみないと……まずは周りを偵察しましょう」
「そんな悠長な事をいっていたらシンシアが……」
「無茶と無謀は違いますよ」
ヒロは真剣な眼差しでケイトに見る。
「あと先考えずに、ただ闇雲に動いても結果は得られません。リスクを承知の上で最悪を想定して動くのなら、成功の可能性が出てきます。まずは持てる全てと相手の情報を集めて、目的を達成するまでの道筋を考える必要があります」
「だけど!」
ケイトはシンシアを一刻も早く助けたい一心で必死に食い下がろうとする。
「シンシアさんを助けに行って、僕たちまで捕まってしまっては本末転倒ですよ」
「……わかったわ。なら早く集落の周りを確認しよう」
ようやくヒロの言わんとしている事を理解してくれたケイトは、ヒロとリーシアを急かし我先にと歩き出すと、二人もその後に続いた。
しばらくして、集落の周りを偵察する三人は、オークの集落の大きさに驚愕する事になる。
集落大きさは半径約400メートル……集落の中心部分はいまだ黒く塗りつぶされているが、解放されたMAPにひしめく光点は400を超えていた。
「これはもう集落ではなく……村規模です」
リーシアの言葉はあながち間違っていないと、ヒロは感じていた。集落は人が集まって共に暮らす小さな規模を指すが、このオークの集落は、粗末ながら木を地面に突き立てて、枯れた木々の枝で屋根や壁を作り雨風を凌ぐ掘立小屋が、夜の闇の中から見える範囲だけで何十件と建てられている。
明らかに定住している様子から、もう村の規模にまで到達していると予想できた。
「待ってよ……これってもうスタンピードの前兆じゃないの? オークが400匹以上いるって……悪い冗談でしょ?」
ケイトは信じられない面持ちで青ざめていた。
オークはFランクに属する魔物で弱いと言われてはいるが、それは同ランクの冒険者が一対一で戦った場合の話である。これだけの数のオークが町に押し寄せたら、攻め落とされないまでも人的被害は計り知れない。
ケイトが青ざめてしまうのは、無理もなかった。
「ヒロ、どうしますか? ここは一旦引いて、この事をナターシャさんに報告した方が良いと思いますが、そうした場合は……」
「待って! シンシアを見捨てるって言うの? そんな事できない!」
ケイトがリーシアに異議を申し立てた。
リーシアの提案は理に適った物であり、普通なら当然の選択である。ノコノコ救出に向かっても、助けるより先に発見され捕まってしまうだろう。あれだけの警戒の目を掻い潜って救出するなど、土台無理な話だった。
平行線の二人の会話を聞きながら、同時にヒロは目を瞑り何かを考えていた。そして……。
「助ける手はあります!」
「「え?」」
リーシアとケイトの二人の声がハモる。
「目的はシンシアさんを助ける事なので、オークを倒す必要はありません。要はオークに見つからず、人質を救出すれば良いわけですからね」
「まあ、そうだけど……」
当たり前の事を言うヒロに、呆れ気味にケイトが答え、リーシアが話を続ける。
「でもヒロ、アレだけの数のオークがいたら、近づいただけで確実に見つかってしまいますよ? うまく中に潜り込めたとしても、シンシアさんがどこにいるか分からない以上、探すのに手間取れば、私たちも同じく捕まる可能性が高いですが……」
「試してみたい事があります。ケイトさん、この間ギルドでクランの話を聞いたのですが……いま僕たちと一時的に組んでくれませんか?」
「クランを?」
ケイトは突然のクランの申し出に、なぜいま組む必要があるのかと考えてしまう。
クランとは、複数のパーティーリーダー同士が一時的に組み、大規模なパーティーを形成するのに使われるパーティーシステムである。
クランを組む事で、リーダー同士でのメールとチャットの共有が可能となり、大規模なクエストが発生した時、多数のパーティーに情報伝達をスムーズに行うのに重宝されている。
基本は気の合う仲間が大勢いた際、連絡を取り合うためにパーティーのリーダー同士がクランを結成するのが大半である。
だが、パーティーリーダーであるヒロとケイトが目の前にいるいま、クランを結成した所で全く意味がない。
目の前にいる人物にメッセージを送るなら、話をした方が早いからだ。
「うまくすれば、シンシアさんの居場所が分かるかもしれません。ダメ元でやってみましょう」
「分かったわ」
ヒロがパーティーメニューを操作して、ケイト達、水の調べにクラン加入要請を出すと、ケイトがすぐに加入する。
実はここまでの道中、オートマッピングスキルの光点の色が表す意味を、ヒロはあらかじめ考察していた。
青色……パーティーメンバー
白色……敵対関係にない他人
灰色……出会ったことがないアンノウン
赤色……明確な敵対関係にある者
パーティーメンバーのリーシアが青色で表示され、敵対関係でないケイトは白色で表示されている。
ならばクランを組んだ際に、クランメンバーには別の色が付くんじゃないかと予想したのだが……簡易MAPを見るヒロの目に、ケイトの白い光点がクラン結成と同時に、緑色に変化する様が見えた。
するとオーク村の中で無数に蠢く灰色の光点の中から、緑色の光点が現れた。
「良し! 予想通りです。シンシアさんの居場所が分かりました」
「ヒロ、本当ですか? 一体どうやって?」
「僕のスキルでクランメンバーの場所が明確に表示されました。間違いなくシンシアさんです」
「場所は近いの?」
「いいえ、村の中心に近い場所にいますね」
シンシアの居場所は分かっても、囚われている場所が最悪だった。よりにもよって中心付近に捕われており、救出の難易度がさらに上がる。
「警備が手薄な場所を探して、オークを倒しながら進むしかないか……」
仲間のシンシアを助けるため、ケイトが覚悟を決めてクレイモアの柄に手を掛ける。
「できれば戦いは避けたいですから、それは最終手段です」
「それじゃあ、どうするの?」
「はい。スニーキングミッションで行きます!」
「「スニーキングミッション?」」
初めて聞く言葉にリーシアとケイトが再びハモる。
「僕が崇拝するゲームの中で屈指の面白さ、『メンタルギア』……あの修練を活かす時が遂に来ました!」
〈追加クエスト『オーク村に潜入せよ!』 スニーキングミッションが発動した!〉
ヒロは簡易MAPに表示された光点を見て、頭を悩ませていた。
半径300mに表示されたMAPに、50を超える光点が表示されていた。光点のいくつかが、黒く塗りつぶされた箇所で消え、また出てくる様子が映し出される。
「定期的に、一定の場所を往復する光点があります。これは歩哨がいるのか? だとすると……オーク達がここに集落を作っている可能性が高いな」
「集落? オークがですか⁈」
ヒロの言葉にリーシアとケイトの二人が『まさか』と言う
表情を浮かべていた。
「ええ、歩哨がいるって事は、敵襲に対して警戒しているからです。一定の距離を何人かで警戒しているとすると、広範囲の場所を守るためですから、大規模な集落ができている考えて良いはずです」
暗く見通しの悪い森の先を見ていたケイトが、話を聞くや否や血相を変えてヒロに詰め寄る。
「じゃあシンシアはオークの集落の中にいるって事?」
「そうなります……ケイトさんの状況は?」
「待って、今メッセージを送るから」
『シンシア、いまどんな状況なの? 教えて』
『さっき手足を蔓で縛られて、逃げられないように木に括り付けられてしまったわ。前の手で縛られているからなんとかメッセージは送れる。ケイトお願い早く助けて! 周りがオークだらけで怖いの』
『必ず助けるから待っていて。また連絡するわ』
「いまは手足を縛られて見張られているみたい。早く助けてあげたいけど……」
「真正面からは、どう考えても無謀ですね……ヒロ、何か良い案はありませんか?」
「無茶をすれば、助けられる可能性はありますが、とりあえず、オークの集落規模を確認してみないと……まずは周りを偵察しましょう」
「そんな悠長な事をいっていたらシンシアが……」
「無茶と無謀は違いますよ」
ヒロは真剣な眼差しでケイトに見る。
「あと先考えずに、ただ闇雲に動いても結果は得られません。リスクを承知の上で最悪を想定して動くのなら、成功の可能性が出てきます。まずは持てる全てと相手の情報を集めて、目的を達成するまでの道筋を考える必要があります」
「だけど!」
ケイトはシンシアを一刻も早く助けたい一心で必死に食い下がろうとする。
「シンシアさんを助けに行って、僕たちまで捕まってしまっては本末転倒ですよ」
「……わかったわ。なら早く集落の周りを確認しよう」
ようやくヒロの言わんとしている事を理解してくれたケイトは、ヒロとリーシアを急かし我先にと歩き出すと、二人もその後に続いた。
しばらくして、集落の周りを偵察する三人は、オークの集落の大きさに驚愕する事になる。
集落大きさは半径約400メートル……集落の中心部分はいまだ黒く塗りつぶされているが、解放されたMAPにひしめく光点は400を超えていた。
「これはもう集落ではなく……村規模です」
リーシアの言葉はあながち間違っていないと、ヒロは感じていた。集落は人が集まって共に暮らす小さな規模を指すが、このオークの集落は、粗末ながら木を地面に突き立てて、枯れた木々の枝で屋根や壁を作り雨風を凌ぐ掘立小屋が、夜の闇の中から見える範囲だけで何十件と建てられている。
明らかに定住している様子から、もう村の規模にまで到達していると予想できた。
「待ってよ……これってもうスタンピードの前兆じゃないの? オークが400匹以上いるって……悪い冗談でしょ?」
ケイトは信じられない面持ちで青ざめていた。
オークはFランクに属する魔物で弱いと言われてはいるが、それは同ランクの冒険者が一対一で戦った場合の話である。これだけの数のオークが町に押し寄せたら、攻め落とされないまでも人的被害は計り知れない。
ケイトが青ざめてしまうのは、無理もなかった。
「ヒロ、どうしますか? ここは一旦引いて、この事をナターシャさんに報告した方が良いと思いますが、そうした場合は……」
「待って! シンシアを見捨てるって言うの? そんな事できない!」
ケイトがリーシアに異議を申し立てた。
リーシアの提案は理に適った物であり、普通なら当然の選択である。ノコノコ救出に向かっても、助けるより先に発見され捕まってしまうだろう。あれだけの警戒の目を掻い潜って救出するなど、土台無理な話だった。
平行線の二人の会話を聞きながら、同時にヒロは目を瞑り何かを考えていた。そして……。
「助ける手はあります!」
「「え?」」
リーシアとケイトの二人の声がハモる。
「目的はシンシアさんを助ける事なので、オークを倒す必要はありません。要はオークに見つからず、人質を救出すれば良いわけですからね」
「まあ、そうだけど……」
当たり前の事を言うヒロに、呆れ気味にケイトが答え、リーシアが話を続ける。
「でもヒロ、アレだけの数のオークがいたら、近づいただけで確実に見つかってしまいますよ? うまく中に潜り込めたとしても、シンシアさんがどこにいるか分からない以上、探すのに手間取れば、私たちも同じく捕まる可能性が高いですが……」
「試してみたい事があります。ケイトさん、この間ギルドでクランの話を聞いたのですが……いま僕たちと一時的に組んでくれませんか?」
「クランを?」
ケイトは突然のクランの申し出に、なぜいま組む必要があるのかと考えてしまう。
クランとは、複数のパーティーリーダー同士が一時的に組み、大規模なパーティーを形成するのに使われるパーティーシステムである。
クランを組む事で、リーダー同士でのメールとチャットの共有が可能となり、大規模なクエストが発生した時、多数のパーティーに情報伝達をスムーズに行うのに重宝されている。
基本は気の合う仲間が大勢いた際、連絡を取り合うためにパーティーのリーダー同士がクランを結成するのが大半である。
だが、パーティーリーダーであるヒロとケイトが目の前にいるいま、クランを結成した所で全く意味がない。
目の前にいる人物にメッセージを送るなら、話をした方が早いからだ。
「うまくすれば、シンシアさんの居場所が分かるかもしれません。ダメ元でやってみましょう」
「分かったわ」
ヒロがパーティーメニューを操作して、ケイト達、水の調べにクラン加入要請を出すと、ケイトがすぐに加入する。
実はここまでの道中、オートマッピングスキルの光点の色が表す意味を、ヒロはあらかじめ考察していた。
青色……パーティーメンバー
白色……敵対関係にない他人
灰色……出会ったことがないアンノウン
赤色……明確な敵対関係にある者
パーティーメンバーのリーシアが青色で表示され、敵対関係でないケイトは白色で表示されている。
ならばクランを組んだ際に、クランメンバーには別の色が付くんじゃないかと予想したのだが……簡易MAPを見るヒロの目に、ケイトの白い光点がクラン結成と同時に、緑色に変化する様が見えた。
するとオーク村の中で無数に蠢く灰色の光点の中から、緑色の光点が現れた。
「良し! 予想通りです。シンシアさんの居場所が分かりました」
「ヒロ、本当ですか? 一体どうやって?」
「僕のスキルでクランメンバーの場所が明確に表示されました。間違いなくシンシアさんです」
「場所は近いの?」
「いいえ、村の中心に近い場所にいますね」
シンシアの居場所は分かっても、囚われている場所が最悪だった。よりにもよって中心付近に捕われており、救出の難易度がさらに上がる。
「警備が手薄な場所を探して、オークを倒しながら進むしかないか……」
仲間のシンシアを助けるため、ケイトが覚悟を決めてクレイモアの柄に手を掛ける。
「できれば戦いは避けたいですから、それは最終手段です」
「それじゃあ、どうするの?」
「はい。スニーキングミッションで行きます!」
「「スニーキングミッション?」」
初めて聞く言葉にリーシアとケイトが再びハモる。
「僕が崇拝するゲームの中で屈指の面白さ、『メンタルギア』……あの修練を活かす時が遂に来ました!」
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