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第4章 勇者と森のクマさん編
第41話 勇者とお約束のテンプレ展開!
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『コンコン』と、木の扉をノックする音が部屋に響く。
「リーシア、入りますよ」
「ヒロですか? どうぞ」
部屋の主に許可をもらい、扉を開けて部屋の中に入ると……そこにはベッドに横たわるリーシアと、椅子に座るリゲルの姿があった。
「ヒロ、お帰りなさい。どこへ行っていたのですか?」
「お帰り、ヒロ兄ちゃん」
「ただいま、リーシア、リゲル君、実はコレを採りに行ってました」
ヒロは肩にかけた皮のバッグから、薬草の入った袋を取り出して中身を見せる。
「薬草ですか? まさか一人で森に?」
「冒険者ギルドで薬草採取のクエストがありまして、森の外側に生えてる薬草を採ってきました。コレを煎じて飲むと、体力回復に効果があると聞いたので……リゲル君、コレを」
「わかったよ。シスターに渡してくるね」
ヒロはリゲルに薬草の入った袋を手渡すと、リゲルは薬草を煎じてもらうために、シスターの元へと走って行った。
「ヒロ、薬草を採ってきてくれて、ありがとうです」
「どういたしまして」
リーシアが笑顔で感謝を述べ、ヒロも笑顔で答える。
少女の顔色を見ると血色も良く、体調も穏やかに感じる。
孤児院に運び込まれた当初は、右腕と左足の骨折、体中の骨に入ったヒビ、筋肉の断裂、各部打撲や出血と細かく言い出したら切りがないほどの重症で、顔色も真っ青だった。
「もう痛みはありませんか?」
「はい。痛みはもうないですよ。体がまだ少し怠いですが、順調に回復しています。傷も残ってませんし、さすがはトーマス神父様の回復魔法ですね」
「さすが?」
「はい。普通の回復魔法では、あんな大怪我を1日で治すなんて出来ませんからね。高位の聖職者じゃないと高レベルのヒールは使えませんし、そんなヒールを頼もうものなら、金貨が飛び交うほどの治療代を払わなければなりません。実はトーマス神父様、ああ見えて女神教の中でも有数の回復魔法の使い手で、その筋では有名らしいです」
「有名らしい?」
「私も聞いた話なので詳しくは知りませんが、女神教の総本山、聖都ではかなり偉い人だったとシスター達が教えてくれました」
「へ~、何度か話しましたが、偉ぶる素振りもなく謙虚でいい人ですし、きっとみんなから慕われていたんでしょうね」
「孤児院のみんなは、トーマス神父様が大好きですよ」
「それにしても、順調に回復へ向かっていて良かったです」
ヒロは、リーシアの状態が良いことに安堵すると、確認のため、もう一度リーシアを見る。
ノースリーブでワンピースタイプの服を着るリーシア……素肌が見える範囲には、もう傷と痣は残っていなかった。
金色のクセのない綺麗で長い髪を、肩口で軽く紐で結び、肩から前に垂らす事で見える『うなじ』に、ヒロは思わずドキリとして見惚れていた。
「ヒロ……あまり女性をマジマジと凝視してはダメですよ」
「すみません。綺麗だったのでつい」
「き、綺麗?」
「はい。リーシアから目が離せなくなりました。以後、気をつけます」
「……」
無言で見つめられ、さすがに耐えきれなくなったリーシアの嗜める言葉に、ヒロの思わぬ言葉がカウンターパンチとしてリーシアに返された。
あまりこの手の話に耐性がない少女は、ヒロの言葉にダジダジになる。
「そ、そう言えば、クエストを達成したのなら、これから冒険者ギルドに行きますか?」
リーシアが顔を赤らめて話題を変えてくるが、鈍感なヒロはまた熱が出てしまったのかと心配する。
「はい。まだ日が高いですから、今からクエスト終了の報告をして来ようかと思ってます。そう言えば、オーガベアーとマンドラゴラはどうしましょう?」
「ん~、オーガベアーは血抜きもしていないので、早く処理しないと食べられなくなるかもしれません。でも、あの重量をヒロ一人で冒険者ギルドに持ち込むのは……」
オーガベアーの重さは推定で300kgを超えている。いくらレベルアップと女神の加護によるステータス補正があるとしても、一人で動かすのは骨である。
「ギルドの解体部屋は個室に近いし、アイテム袋のことを内緒にしてくれないか、ギルドマスターのナターシャさんに相談してみます。このまま腐らすのも勿体ないですから」
「分かりました。ヒロにお任せします。手伝えなくて、ごめんなさい」
「気にしないでください。リーシアがいなければ、僕はここにいられなかったのですから。これくらい任せてください」
「はい。では、お願いします」
その後、リゲルが煎じた薬草を持って来るまで、ヒロとリーシアは他愛のない話をして時間を潰すのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「さて……まずは薬草採取のクエスト達成報告を、先にすましちゃおうかな」
ヒロは、ギルドマスターのナターシャに、アイテム袋のことを相談する前に、請け負ったクエストの達成報告をするため、入り口正面の受付カウンターを目指していた。
もう夕方に近い時間という事もあり、ギルド内はクエスト達成の報告待ちの冒険者で溢れ返っている。
冒険者ギルドは基本、一日中休まず営業しているため、空いている時間に報告すれば良いのだが、クエストには期限が設けられており、依頼報告がバッティングしやすい夕方は混み合う。
特に注意しなければならないのが、当日限りのクエストを請け負った場合で、当日クエストの締め切りは、日が暮れるまでに設定されている事が多い。
これは、依頼主の出すクエストが時間に関係する場合がほとんどである。
食材調達クエストは食材の新鮮さが重要であり、物によっては採取から、数時間で価値をなくす食材もある。
必然的に夕方からギルドの受付は忙しくなり、捌き切れない冒険者達は、並んで報告の順番を待つしかなくなる。
そんなギルド内は様々な場所で人が話し合い、うるさいぐらいの活気に満ち溢れていた。
以前リーシアと来た時は、昼過ぎと言う事もあり閑散として静かなイメージだったが、この喧騒を目の当たりにして、ヒロは少し圧倒されてしまう。
とりあえずヒロも皆と同じく受付の最後尾に並び待つ事三十分……ようやく順番が来たと思った時、見知らぬ男たちがヒロに声を掛けて来た。
「いや~悪かったな、順番に並ばしちまって。もう代わるから帰っていいぜ!」
三人の見知らぬ男たちはそう言うと、ヒロを押し除けて自分たちが受付に入ろうとしていた。
「待ってください。あなた達は誰ですか? 順番は守ってください!」
「はあ~? 何言ってんだ? お前が俺たちの順番待っていてくれて、受付の順番が来たから代わっただけだろう?」
「そうそう、俺たちはクエストで疲れてるんだ。空気を読めよオメー」
「そう言う事だね。今日は大物の森林狼を二匹殺れて機嫌が良いから見逃してあげる。そのまま他へ行きなよ」
三人の男たちは、明らかに横入りで順番を無視していた……だがそれを咎めようする者は誰もいない。
「あれEランクパーティーの殲滅の刃だろ?」
「ああ、森林狼って一匹でもEランクの魔物なのに、それを二匹って……難易度はDランク相当じゃないか?」
「森林狼は、二匹以上になると討伐難度がドンドン上がるからな……さすがだな」
「アイツも可哀想にな……まあ、また並び直せば良いだろう。痛い目に合わない内に引き下がるのが正解だ」
周りからヒソヒソと話す声が聞こえ、列に割り込んできた男たちが自慢するようにヒロに話し掛ける。
「そう言うこった。俺たち、殲滅の刃に順番を譲ったと、自慢していいぞ。じゃあな」
そう言い残し、受付に向かおうとする男たちに、ヒロが口を開く。
「あなた達が誰であろうと関係ありません。ですが順番は守ってください。みんな並んで待っています。あなた達も並ぶべきです」
ヒロは語尾を強めて男たちに言い放つと、踵を返し、三人の男がヒロを取り囲み始める。
「おまえ、痛い目に合わないと分からないのか?」
「優しくしてやればつけ上がりやがって」
「僕たちが誰なのか分かっていないよね?」
殺気を発し始めた男たちに対して、涼しい顔のヒロ……オーガベアーの殺気に比べたら、男たちの凄みは子供が癇癪を起こした程度にしか感じられない。
だがそんなヒロの態度に男たちはイラつき始めていた。
「分かった教えてやるから、よ~く聞いておけよ? 俺はEランクパーティー『殲滅の刃』のリーダー! 弓術士マッシュポテトだ!」
「同じく『殲滅の刃』、弓術士ジャーマンポテト!」
「右に同じく『殲滅の刃』、弓術士フライドポテトさ!」
「「「俺達ポテト三兄弟に文句があるなら言ってみろ!」」」
〈突っ込みどころ満載! ポテト三兄弟が現れた!〉
「リーシア、入りますよ」
「ヒロですか? どうぞ」
部屋の主に許可をもらい、扉を開けて部屋の中に入ると……そこにはベッドに横たわるリーシアと、椅子に座るリゲルの姿があった。
「ヒロ、お帰りなさい。どこへ行っていたのですか?」
「お帰り、ヒロ兄ちゃん」
「ただいま、リーシア、リゲル君、実はコレを採りに行ってました」
ヒロは肩にかけた皮のバッグから、薬草の入った袋を取り出して中身を見せる。
「薬草ですか? まさか一人で森に?」
「冒険者ギルドで薬草採取のクエストがありまして、森の外側に生えてる薬草を採ってきました。コレを煎じて飲むと、体力回復に効果があると聞いたので……リゲル君、コレを」
「わかったよ。シスターに渡してくるね」
ヒロはリゲルに薬草の入った袋を手渡すと、リゲルは薬草を煎じてもらうために、シスターの元へと走って行った。
「ヒロ、薬草を採ってきてくれて、ありがとうです」
「どういたしまして」
リーシアが笑顔で感謝を述べ、ヒロも笑顔で答える。
少女の顔色を見ると血色も良く、体調も穏やかに感じる。
孤児院に運び込まれた当初は、右腕と左足の骨折、体中の骨に入ったヒビ、筋肉の断裂、各部打撲や出血と細かく言い出したら切りがないほどの重症で、顔色も真っ青だった。
「もう痛みはありませんか?」
「はい。痛みはもうないですよ。体がまだ少し怠いですが、順調に回復しています。傷も残ってませんし、さすがはトーマス神父様の回復魔法ですね」
「さすが?」
「はい。普通の回復魔法では、あんな大怪我を1日で治すなんて出来ませんからね。高位の聖職者じゃないと高レベルのヒールは使えませんし、そんなヒールを頼もうものなら、金貨が飛び交うほどの治療代を払わなければなりません。実はトーマス神父様、ああ見えて女神教の中でも有数の回復魔法の使い手で、その筋では有名らしいです」
「有名らしい?」
「私も聞いた話なので詳しくは知りませんが、女神教の総本山、聖都ではかなり偉い人だったとシスター達が教えてくれました」
「へ~、何度か話しましたが、偉ぶる素振りもなく謙虚でいい人ですし、きっとみんなから慕われていたんでしょうね」
「孤児院のみんなは、トーマス神父様が大好きですよ」
「それにしても、順調に回復へ向かっていて良かったです」
ヒロは、リーシアの状態が良いことに安堵すると、確認のため、もう一度リーシアを見る。
ノースリーブでワンピースタイプの服を着るリーシア……素肌が見える範囲には、もう傷と痣は残っていなかった。
金色のクセのない綺麗で長い髪を、肩口で軽く紐で結び、肩から前に垂らす事で見える『うなじ』に、ヒロは思わずドキリとして見惚れていた。
「ヒロ……あまり女性をマジマジと凝視してはダメですよ」
「すみません。綺麗だったのでつい」
「き、綺麗?」
「はい。リーシアから目が離せなくなりました。以後、気をつけます」
「……」
無言で見つめられ、さすがに耐えきれなくなったリーシアの嗜める言葉に、ヒロの思わぬ言葉がカウンターパンチとしてリーシアに返された。
あまりこの手の話に耐性がない少女は、ヒロの言葉にダジダジになる。
「そ、そう言えば、クエストを達成したのなら、これから冒険者ギルドに行きますか?」
リーシアが顔を赤らめて話題を変えてくるが、鈍感なヒロはまた熱が出てしまったのかと心配する。
「はい。まだ日が高いですから、今からクエスト終了の報告をして来ようかと思ってます。そう言えば、オーガベアーとマンドラゴラはどうしましょう?」
「ん~、オーガベアーは血抜きもしていないので、早く処理しないと食べられなくなるかもしれません。でも、あの重量をヒロ一人で冒険者ギルドに持ち込むのは……」
オーガベアーの重さは推定で300kgを超えている。いくらレベルアップと女神の加護によるステータス補正があるとしても、一人で動かすのは骨である。
「ギルドの解体部屋は個室に近いし、アイテム袋のことを内緒にしてくれないか、ギルドマスターのナターシャさんに相談してみます。このまま腐らすのも勿体ないですから」
「分かりました。ヒロにお任せします。手伝えなくて、ごめんなさい」
「気にしないでください。リーシアがいなければ、僕はここにいられなかったのですから。これくらい任せてください」
「はい。では、お願いします」
その後、リゲルが煎じた薬草を持って来るまで、ヒロとリーシアは他愛のない話をして時間を潰すのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「さて……まずは薬草採取のクエスト達成報告を、先にすましちゃおうかな」
ヒロは、ギルドマスターのナターシャに、アイテム袋のことを相談する前に、請け負ったクエストの達成報告をするため、入り口正面の受付カウンターを目指していた。
もう夕方に近い時間という事もあり、ギルド内はクエスト達成の報告待ちの冒険者で溢れ返っている。
冒険者ギルドは基本、一日中休まず営業しているため、空いている時間に報告すれば良いのだが、クエストには期限が設けられており、依頼報告がバッティングしやすい夕方は混み合う。
特に注意しなければならないのが、当日限りのクエストを請け負った場合で、当日クエストの締め切りは、日が暮れるまでに設定されている事が多い。
これは、依頼主の出すクエストが時間に関係する場合がほとんどである。
食材調達クエストは食材の新鮮さが重要であり、物によっては採取から、数時間で価値をなくす食材もある。
必然的に夕方からギルドの受付は忙しくなり、捌き切れない冒険者達は、並んで報告の順番を待つしかなくなる。
そんなギルド内は様々な場所で人が話し合い、うるさいぐらいの活気に満ち溢れていた。
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三人の見知らぬ男たちはそう言うと、ヒロを押し除けて自分たちが受付に入ろうとしていた。
「待ってください。あなた達は誰ですか? 順番は守ってください!」
「はあ~? 何言ってんだ? お前が俺たちの順番待っていてくれて、受付の順番が来たから代わっただけだろう?」
「そうそう、俺たちはクエストで疲れてるんだ。空気を読めよオメー」
「そう言う事だね。今日は大物の森林狼を二匹殺れて機嫌が良いから見逃してあげる。そのまま他へ行きなよ」
三人の男たちは、明らかに横入りで順番を無視していた……だがそれを咎めようする者は誰もいない。
「あれEランクパーティーの殲滅の刃だろ?」
「ああ、森林狼って一匹でもEランクの魔物なのに、それを二匹って……難易度はDランク相当じゃないか?」
「森林狼は、二匹以上になると討伐難度がドンドン上がるからな……さすがだな」
「アイツも可哀想にな……まあ、また並び直せば良いだろう。痛い目に合わない内に引き下がるのが正解だ」
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「そう言うこった。俺たち、殲滅の刃に順番を譲ったと、自慢していいぞ。じゃあな」
そう言い残し、受付に向かおうとする男たちに、ヒロが口を開く。
「あなた達が誰であろうと関係ありません。ですが順番は守ってください。みんな並んで待っています。あなた達も並ぶべきです」
ヒロは語尾を強めて男たちに言い放つと、踵を返し、三人の男がヒロを取り囲み始める。
「おまえ、痛い目に合わないと分からないのか?」
「優しくしてやればつけ上がりやがって」
「僕たちが誰なのか分かっていないよね?」
殺気を発し始めた男たちに対して、涼しい顔のヒロ……オーガベアーの殺気に比べたら、男たちの凄みは子供が癇癪を起こした程度にしか感じられない。
だがそんなヒロの態度に男たちはイラつき始めていた。
「分かった教えてやるから、よ~く聞いておけよ? 俺はEランクパーティー『殲滅の刃』のリーダー! 弓術士マッシュポテトだ!」
「同じく『殲滅の刃』、弓術士ジャーマンポテト!」
「右に同じく『殲滅の刃』、弓術士フライドポテトさ!」
「「「俺達ポテト三兄弟に文句があるなら言ってみろ!」」」
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