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第3章 勇者と異世界、初めて編
第33話 プンスカ女神の○○ー○ー宣言!
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女神セレスは、ヒロをガイアに送り出してから多忙を極めていた……それは三女神の内、二人の女神が力を使い果たし眠りについてしまい、二人の管轄の仕事もセレスがする代行する事になったからだった。
神界はヒロの世界で言うならば、完全なる縦社会である。創世神をトップにしたピラミッドの図式が形成されており、三女神は創世神の代わりを勤めていた。
神界を会社に置き換えれば、創世神がグループ会社の会長、三女神がそれぞれ別の会社を任された社長のイメージである。一つの会社を任されるだけでも大変だが、それが二つも増えたのである。
縦社会の特徴は上が絶対である事だった。これは優秀な者がトップにつけば、間違った方向へ向かう事はないが、逆に権力が集中しすぎてしまい、何をするにも上の裁量を待つしかない弱点を露呈してしまう。
故にセレスは下から上げられる情報の吸い上げをすると、それに対する指示が単純に三倍に膨れ上がり多忙を極めていた。
セレスは管轄外の慣れない仕事に指示を出しつつも、姉ディオーネとの別れ際に話した会話を思い出していた。
「油断してはなりせんよ。ここまで隠し通せる者です。誰が味方で誰が敵なのかを見極めなさい」
セレス自身も薄々気が付いていた。
神界全体が動いているのに、一向に進展を見せない状況に、作為的な何かを感じてはいた。だが考えたくはなかった……その考えが正しければ、神界に裏切り者がいる事を指し示していたからである。
この世界を去った創世神の代わりに、ガイヤを管理維持する事を使命として課せられた三女神と神族達……同じ残された者たちが世界の崩壊を望むなどあってはならない事だった。
それ故に、今まではガイヤの大地ばかり目がいっていたが、いまは神界にも目を向けねばならぬ必要が出てきた。
セレスは下から上げられる情報を整理し、些細な点も見逃さず細かくチェックしていく。
神界に住まう者、全てが容疑者足り得る状況で、セレスは孤立無援な状態になってしまった。
自分一人では、この難局を抜け出せないと判断したセレスは、まずは確実な味方を見つけるべく動き出していた。
そして神界の調査と並行して、地上に送り出したヒロとの約束も忘れてはいなかった。
ヒロと魂をつなげたセレスは、記憶を見ることに悪戦苦闘しており、二日掛けても未だ記憶映像を読み取れずにいた。
「やはり、ヒロ様の記憶は、まだ見られませんね。少しずつ変換はされている様ですが……あれ? これはガイアに降りた後のヒロ様の記憶みたいですね」
記憶を読み取る際、セレスは地上に降りたヒロの記憶も読み取っていた。
異世界の記憶でないため、すぐに映像を見る事ができ、セレスはイケナイと思いつつも、ヒロの記憶を覗き見てしまう。
初めての魔物との戦いに負傷しながらも、勝利するヒロに『ハラハラ』のセレス。
南の森で迷い、裸で泉で体を洗うヒロに『ドキドキ』のセレス。
泉でのリーシアとの出会いに『お願い隠して!』と叫ぶセレス。
ランナーバードとの死闘で残りHP1にまで下がり、死に掛けるヒロに卒倒するセレス。
初めての町でいきなり留置場に入れられて、呆れ返るセレス。
留置場の中で何かを始めたと思ったら、気持ち悪い動きのヒロに嫌悪感を抱くセレス。
リーシアに迎えに来てもらい、広場でリンド焼きを仲良く食べるヒロを見てなぜか『ムカッ』とするセレス。
冒険者ギルドでライムに向ける視線の先を見て、『イライラ』するセレス。
オノ使いゼノンを前にリーシアを守るため、壁になるように立ち塞がるヒロに『いいな~』と、憧れるセレス。
ナターシャとの出会いに、『あんな人もいるのですね。ガイヤの世界は広いです』と感心するセレス。
魂の流れに流されるヒロを見て『何で死んでいるのですか!』とツッコミを入れるセレス。
パーティーを結成して喜ぶ二人に、なぜか『ムカムカ』と心の中で嫌な感情が湧き上がるセレス。
孤児院に泊めてもらう事になった時のリーシアとヒロの笑顔を見て、嫉妬に近い感情が吹き荒れるセレス。
そして教会の祭壇にお祈りするヒロの姿を見た時……若干回復した貴重な神気を用いて、自分の元へヒロの意識を無理やり呼び寄せたセレス!
なぜか『プンスカ』状態のセレスの前に飛ばされたヒロ!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「え? セレス様? ここは? 祭壇でお祈りをしていたはずでしたが……」
「ヒロ様、どう言う事ですか! ガイヤに降りて二日目にして女の子と仲良くデートなんて羨ましい……いえ! 浮かれてはいけません! ヒロ様にはガイヤを救って頂く大事な使命があるのですから!」
プンスカ状態のセレスがヒロを圧倒する。
「いえ……デートなんて『シャラップです』」
言語翻訳スキルが適した言葉に訳してくれているが、女神の口からシャラップなんて罵声語が飛び出るとは……日本語で言うなら、『ゴチャゴチャうるさいんだよ! 黙りやがれ、この野郎!』くらいの強い罵声である。
つまり……かなりの『オコ』である!
ここは黙って話を受け入れるしかない……ヒロは衛士ラングの言葉に従い黙って話を聞く事に徹した。
〈女神の説教タイムが始まった!〉
「……と言う訳です。女性に、あのような視線を向けるのは好ましくありません。目線だけで相手にバレていないとお思いでしょうが、顔も動いているのでバレバレなのです! 気をつけてください。ヒロ様、聞いていますか?」
女神の前で正座させられ、オコのセレスから散々説教されたヒロの表情は暗い。対して、セレスは言いたい事をヒロに全て吐き出し結果、ようやく落ち着きを取り戻しつつあった。
「セレス様、申し訳ありませんでした……以後、気を付けます」
「分かって頂けましたか? なら今回はこれで許しましょう」
セレスの許しが出たのは、説教タイム開始から一時間は経った頃だった。
「ところでセレス様、ここは神界ですか? 僕をここに何でいるのでしょうか?」
「え?」
ようやく正座から解放されたヒロは、本題であるセレスにここに呼ばれた理由を聞くが……セレスは正直に答える訳にはいかなかった。
まさか自分が忙しく働いているのに、ヒロとリーシアとのやり取りが羨ましくて、ついヒロの意識とリンクして神界に意識だけを呼び寄せてしまったなんて……言える訳ない!
自分の中に溜まっていた不満を、何も関係がないヒロにぶつけて当たり散らしていただけなのだ……女神として絶対に悟られる事は許されない!
「いえ、慣れないガイヤの世界で困った事が起こっていないか、聞こうと思いまして……」
「そうでしたか、気に掛けていただいてありがとうございます」
「と、当然です。ヒロ様には大変な役目を担っていただいてますので、気にしないでください」
セレスはギリギリ女神の威厳を保つことに成功した。
「それで、何かお困りごとはありますか?」
「そうですね。実は文字化けしたスキルを見かけたのですが、何かご存知ですか?」
「文字化けしたスキルですか? たしか極稀に、ギフトと呼ばれる強力なスキルを持って生まれる者がいると聞いた事があります。強力なギフト同士が干渉して、文字化けしたスキルになるみたいです」
「文字化けした場合は、どうなるのでしょうか?」
「なんの意味もないスキルになります。基本は何も起こらないまま生涯を終えるはずです。強力過ぎるスキルは持ち主を蝕む可能性もありますので、文字化けしてスキルを無効化させた方が幸せな人もいます」
どうやら、強力なスキルを持って生まれたとしても、良いことばかりではないらしい。
リーシアには文字化けしたスキルが二つあった。あの文字化けしたスキルをデバックスキルで修復したら……リーシアにとって不幸になる可能性も否定できない。
ヒロは軽率にリーシアの文字化けを直そうとした事を、反省するのだった。
「セレス様、教えてくれてありがとうございます」
「いいえ、お役に立てて何よりです。そろそろ時間ですね」
そうセレスが呟くと、ヒロの周りの景色が薄くなっていく。
「ヒロ様、ガイヤの世界を頼みます。私はいつもあなたを見守っています」
「はい。期待に応えられるよう頑張ります。それでは!」
ヒロは薄れゆく景色の中で、女神に別れを告げる。
「あと、決して女性にウツツを抜かさぬよう、注意してください! 私はいつでもヒロ様の行動を見てますから! いいですね!」
「は、はい……」
ちょっと頬を膨らませながらヒロに注意するセレス……可愛い仕草なのだが、その瞳に微かに灯る狂気の光を見たヒロは『NO』とは言えるはずがなく、ただ肯定するしかなかった。
そしてヒロの意識は、再び元の場所へと戻されるのだった。
〈勇者は女神にストーカー宣言された!〉
神界はヒロの世界で言うならば、完全なる縦社会である。創世神をトップにしたピラミッドの図式が形成されており、三女神は創世神の代わりを勤めていた。
神界を会社に置き換えれば、創世神がグループ会社の会長、三女神がそれぞれ別の会社を任された社長のイメージである。一つの会社を任されるだけでも大変だが、それが二つも増えたのである。
縦社会の特徴は上が絶対である事だった。これは優秀な者がトップにつけば、間違った方向へ向かう事はないが、逆に権力が集中しすぎてしまい、何をするにも上の裁量を待つしかない弱点を露呈してしまう。
故にセレスは下から上げられる情報の吸い上げをすると、それに対する指示が単純に三倍に膨れ上がり多忙を極めていた。
セレスは管轄外の慣れない仕事に指示を出しつつも、姉ディオーネとの別れ際に話した会話を思い出していた。
「油断してはなりせんよ。ここまで隠し通せる者です。誰が味方で誰が敵なのかを見極めなさい」
セレス自身も薄々気が付いていた。
神界全体が動いているのに、一向に進展を見せない状況に、作為的な何かを感じてはいた。だが考えたくはなかった……その考えが正しければ、神界に裏切り者がいる事を指し示していたからである。
この世界を去った創世神の代わりに、ガイヤを管理維持する事を使命として課せられた三女神と神族達……同じ残された者たちが世界の崩壊を望むなどあってはならない事だった。
それ故に、今まではガイヤの大地ばかり目がいっていたが、いまは神界にも目を向けねばならぬ必要が出てきた。
セレスは下から上げられる情報を整理し、些細な点も見逃さず細かくチェックしていく。
神界に住まう者、全てが容疑者足り得る状況で、セレスは孤立無援な状態になってしまった。
自分一人では、この難局を抜け出せないと判断したセレスは、まずは確実な味方を見つけるべく動き出していた。
そして神界の調査と並行して、地上に送り出したヒロとの約束も忘れてはいなかった。
ヒロと魂をつなげたセレスは、記憶を見ることに悪戦苦闘しており、二日掛けても未だ記憶映像を読み取れずにいた。
「やはり、ヒロ様の記憶は、まだ見られませんね。少しずつ変換はされている様ですが……あれ? これはガイアに降りた後のヒロ様の記憶みたいですね」
記憶を読み取る際、セレスは地上に降りたヒロの記憶も読み取っていた。
異世界の記憶でないため、すぐに映像を見る事ができ、セレスはイケナイと思いつつも、ヒロの記憶を覗き見てしまう。
初めての魔物との戦いに負傷しながらも、勝利するヒロに『ハラハラ』のセレス。
南の森で迷い、裸で泉で体を洗うヒロに『ドキドキ』のセレス。
泉でのリーシアとの出会いに『お願い隠して!』と叫ぶセレス。
ランナーバードとの死闘で残りHP1にまで下がり、死に掛けるヒロに卒倒するセレス。
初めての町でいきなり留置場に入れられて、呆れ返るセレス。
留置場の中で何かを始めたと思ったら、気持ち悪い動きのヒロに嫌悪感を抱くセレス。
リーシアに迎えに来てもらい、広場でリンド焼きを仲良く食べるヒロを見てなぜか『ムカッ』とするセレス。
冒険者ギルドでライムに向ける視線の先を見て、『イライラ』するセレス。
オノ使いゼノンを前にリーシアを守るため、壁になるように立ち塞がるヒロに『いいな~』と、憧れるセレス。
ナターシャとの出会いに、『あんな人もいるのですね。ガイヤの世界は広いです』と感心するセレス。
魂の流れに流されるヒロを見て『何で死んでいるのですか!』とツッコミを入れるセレス。
パーティーを結成して喜ぶ二人に、なぜか『ムカムカ』と心の中で嫌な感情が湧き上がるセレス。
孤児院に泊めてもらう事になった時のリーシアとヒロの笑顔を見て、嫉妬に近い感情が吹き荒れるセレス。
そして教会の祭壇にお祈りするヒロの姿を見た時……若干回復した貴重な神気を用いて、自分の元へヒロの意識を無理やり呼び寄せたセレス!
なぜか『プンスカ』状態のセレスの前に飛ばされたヒロ!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「え? セレス様? ここは? 祭壇でお祈りをしていたはずでしたが……」
「ヒロ様、どう言う事ですか! ガイヤに降りて二日目にして女の子と仲良くデートなんて羨ましい……いえ! 浮かれてはいけません! ヒロ様にはガイヤを救って頂く大事な使命があるのですから!」
プンスカ状態のセレスがヒロを圧倒する。
「いえ……デートなんて『シャラップです』」
言語翻訳スキルが適した言葉に訳してくれているが、女神の口からシャラップなんて罵声語が飛び出るとは……日本語で言うなら、『ゴチャゴチャうるさいんだよ! 黙りやがれ、この野郎!』くらいの強い罵声である。
つまり……かなりの『オコ』である!
ここは黙って話を受け入れるしかない……ヒロは衛士ラングの言葉に従い黙って話を聞く事に徹した。
〈女神の説教タイムが始まった!〉
「……と言う訳です。女性に、あのような視線を向けるのは好ましくありません。目線だけで相手にバレていないとお思いでしょうが、顔も動いているのでバレバレなのです! 気をつけてください。ヒロ様、聞いていますか?」
女神の前で正座させられ、オコのセレスから散々説教されたヒロの表情は暗い。対して、セレスは言いたい事をヒロに全て吐き出し結果、ようやく落ち着きを取り戻しつつあった。
「セレス様、申し訳ありませんでした……以後、気を付けます」
「分かって頂けましたか? なら今回はこれで許しましょう」
セレスの許しが出たのは、説教タイム開始から一時間は経った頃だった。
「ところでセレス様、ここは神界ですか? 僕をここに何でいるのでしょうか?」
「え?」
ようやく正座から解放されたヒロは、本題であるセレスにここに呼ばれた理由を聞くが……セレスは正直に答える訳にはいかなかった。
まさか自分が忙しく働いているのに、ヒロとリーシアとのやり取りが羨ましくて、ついヒロの意識とリンクして神界に意識だけを呼び寄せてしまったなんて……言える訳ない!
自分の中に溜まっていた不満を、何も関係がないヒロにぶつけて当たり散らしていただけなのだ……女神として絶対に悟られる事は許されない!
「いえ、慣れないガイヤの世界で困った事が起こっていないか、聞こうと思いまして……」
「そうでしたか、気に掛けていただいてありがとうございます」
「と、当然です。ヒロ様には大変な役目を担っていただいてますので、気にしないでください」
セレスはギリギリ女神の威厳を保つことに成功した。
「それで、何かお困りごとはありますか?」
「そうですね。実は文字化けしたスキルを見かけたのですが、何かご存知ですか?」
「文字化けしたスキルですか? たしか極稀に、ギフトと呼ばれる強力なスキルを持って生まれる者がいると聞いた事があります。強力なギフト同士が干渉して、文字化けしたスキルになるみたいです」
「文字化けした場合は、どうなるのでしょうか?」
「なんの意味もないスキルになります。基本は何も起こらないまま生涯を終えるはずです。強力過ぎるスキルは持ち主を蝕む可能性もありますので、文字化けしてスキルを無効化させた方が幸せな人もいます」
どうやら、強力なスキルを持って生まれたとしても、良いことばかりではないらしい。
リーシアには文字化けしたスキルが二つあった。あの文字化けしたスキルをデバックスキルで修復したら……リーシアにとって不幸になる可能性も否定できない。
ヒロは軽率にリーシアの文字化けを直そうとした事を、反省するのだった。
「セレス様、教えてくれてありがとうございます」
「いいえ、お役に立てて何よりです。そろそろ時間ですね」
そうセレスが呟くと、ヒロの周りの景色が薄くなっていく。
「ヒロ様、ガイヤの世界を頼みます。私はいつもあなたを見守っています」
「はい。期待に応えられるよう頑張ります。それでは!」
ヒロは薄れゆく景色の中で、女神に別れを告げる。
「あと、決して女性にウツツを抜かさぬよう、注意してください! 私はいつでもヒロ様の行動を見てますから! いいですね!」
「は、はい……」
ちょっと頬を膨らませながらヒロに注意するセレス……可愛い仕草なのだが、その瞳に微かに灯る狂気の光を見たヒロは『NO』とは言えるはずがなく、ただ肯定するしかなかった。
そしてヒロの意識は、再び元の場所へと戻されるのだった。
〈勇者は女神にストーカー宣言された!〉
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