勇者ですか? いいえ……バグキャラです! 〜廃ゲーマーの異世界奮闘記! デバッグスキルで人生がバグッた仲間と世界をぶっ壊せ!〜

空クジラ

文字の大きさ
上 下
22 / 226
第2章 勇者と最悪な出会い編

第22話 高難度……ジャンピング土下座!

しおりを挟む
【絶技六式】
 流れる様な技の連結により、必殺の域にまで昇華した技を六連撃で敵に叩き込む連続技。

 その威力は単発で打ち込むより遥かに強力である。
 秘密は流れる流水の如く、淀みない技の連携が次に続く技の威力を増大させる点にある。
 最終的には全ての技をつなげる事で、莫大な威力を秘めた一つの奥義へと昇華する。

 名前の通り、絶技とは非常に『優れた技』を表しており、一つの技が必殺の域にまで昇華するには、長い年月を必要とする。

 それを六つも習得するのは、常人には不可能な領域であり、そんな神技を超えた魔技を六連撃で打ち込む技こそが絶技六式である。

 この技の習得は努力でどうにかなるものではない……一生を賭しても、常人にはたったひとつの技すら習得は難しく、圧倒的な才能と常軌を逸した狂気がなければ習得は不可能である。

 かつて、この技を目撃した者は、皆が同じ言葉を述べた。あの技の使い手は人にあらずと……だが、それを知らない人々は、かの人をある称号を持って褒め称えた。拳を極めし者……人々はその名を『拳聖』と呼ぶのだった。
 
 著 冒険者ギルド 世界格闘技名鑑より



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「本当に申し訳ありませんでした!」


 リーシアの土下座が炸裂した。

 ヒロは異世界でも土下座があることに驚きを隠せない。突然の美少女の土下座に今度はヒロがダジダジになっていた……まさか女の子に土下座されるなんて、元の世界でもありえないシュチュエーションである。


 ヒロは、ここに至るまでを思い出していた……。
 
 車でき殺されたカエルみたいな格好で、ランナーバードの下敷きになっていたヒロ……ようやくリーシアの手を借りて、ランナーバードの下から抜け出すことに成功した。

 
「だ、大丈夫ですか? 痛い所はないですか?」

「……」

「あ、あのですね……つい、うっかりとですね」

「……」

「すみませんでした」


 無言の返答にリーシアがダジダジになりつつ謝り、ヒロはリーシアをジト目で見ながら無言の返答を返していた。

 自分が縛られた時と全く逆の状況に、なにか既視感をヒロは感じる。
 
 危うく、ランナーバードと一緒に昇天しかけたヒロは、今の戦いのダメージがどれくらいだったのかを確認しようとステータス画面を開くが……そこでヒロは驚愕する羽目になる。



 名前 本上もとがみ 英雄ヒーロー
 性別 男
 年齢 6才 (27歳)
 職業 プログラマー

 レベル :5

 HP:46/115 (+40)
 MP:42/75   (+40)

 筋力:62 (+40)
 体力:82 (+40)
 敏捷:62 (+40)
 知力:62 (+40)
 器用:72 (+40)
 幸運:57 (+40)

 固有スキル デバック LV 1
       言語習得 LV 1
       Bダッシュ LV 2
       二段ジャンプ LV 1 (New)

 所持スキル 女神の絆 LV 1
       女神の祝福 【呪い】LV10

 
 レベルがアップした際、女神の祝福の効果とレベルアップ分のステータス数値が加算され、女神の祝福の効果で、レベル×10の数値がステータスにプラスされていた。

 レベル1から4つあがっているからステータス値が+40上がっており。ステータスに関しては1レベル毎に3ずつ数値が上がっている。HPとMPはレベル毎に5ずつ上昇するようだ。


「HPの残りが46か……最後に見たのが狼と戦ってステータスを確認した時で、確かHP25だったかな……ん?」


 ヒロはふと気が付いた。レベルアップする際、ゲームみたいにダメージ分を含めて全回復はしないことに……今回HPのステータスがレベルアップにより45上昇していた。

 今の残りHPが46で、レベルアップによる上昇HP45……つまり46-45=HP1!
 

「あぶなあああああああああああああああ!」

「ど、どうしましたか?」


 突然上がった驚愕の声にリーシアは驚き、狼狽うろたえた目で、ヒロの様子を見ていた。


「あ……危なかった。ランナーバードとの戦いで、残りHPが1まで下がっていました」

「え? HP1? ええええ!?」

「タイミング良くレベルアップしていたので、助かりましたが……これ下手したら下敷きにされて死んでいたかもしれませんね」

「死んで……」


 リーシア表情が曇ると突然、後方にピョンと飛び跳ねた!
 ひざを胸に付ける形で足を曲げ、手を前へ真っすぐに伸ばしながら、上半身を腰から前へと倒す! オデコを地面に擦り付けながら平伏すると……ヒロの目の前で、見事なジャンピング土下座が完成していた!


「本当に申し訳ありませんでした!」


 リーシア渾身の土下座が炸裂した。


 あまりの完成度の高い土下座に思わず名作アクションゲーム、ロールウーマンのMrマイリーをヒロは思い出してしまった。
 


『ロールウーマン』……正義の科学者ライド博士が作った家庭用女性型ロボット、ロールウーマンと世界征服を目論むMr.マイリーとの死闘を描く横スクロールロボットアクションゲームの名作! それが『ロールウーマン』だ!

 シリーズ11作を超える人気ゲームで、悪の科学者Mrマイリーが、最後のボスとして毎回ロールウーマンの前に現れ戦う姿はもはやお約束の展開である。

 ファンはこの戦いと最後の土下座でロールウーマンに許しを乞うシーンを見るためだけに続編を購入すると言っても過言はない!

 最後は毎回、土下座して許しを乞うのだが……シリーズ最新作で披露されたジャンピング土下座は、もはや伝説である。

 最新の技術を用いた見事な土下座に思わず見惚れ、ゲーマー達は思わず感嘆の声を上げるほど、美しい土下座なのである。
 
 リーシアのジャンピング土下座は、そんなMrマイリーに匹敵する美しさがあった。
 流れるような後方へのジャンプ……からの後方飛び上がり土下座は難易度がとても高い!

 後方ジャンプ中に空中で姿勢を整え、着地を決めた際に体がブレないよう、うまく着地を決めなくてはならないためだ。

 リーシアの身体能力の高さから繰り出されたジャンピング土下座は、ヒロの中で9.8点という高得点を叩き出していた……惜しくもMrマイリーのパーフェクト土下座10.0点には届かなかったが、ヒロはリーシアの健闘をひそかに心の中で讃えていた。
 
「しかしロールウーマンか……あれは良いゲームだった!」

 各ボスを倒すとボスの技を使えるようになる、武器チェンジシステムは斬新であった。ボスは武器の選択により難易度が変わり、弱点を突くことで安易にボスを倒すことができた。
 ステージ攻略の順番が重要であり、戦略性が高いアクションゲームとしてプレイヤー達を唸らせた。

 とくにシリーズ11作目は数年ぶりの発売とあり、恐るべき進化を遂げて発売されたのは、まだ記憶に新しい。



 その土下座に感化され、ヒロはいつの間にか心のスタートボタンを押し、妄想の中でゲームを始めとしまった!


「…………」


 土下座で頭を下げたまま、無言の沈黙が辺りを支配する事、はや数分……長過ぎる静寂に耐え切れなくなり、リーシアは顔をそっと上げると……そこには不思議な生き物がいた!
 
 ヒロが目を閉じたまま、苦悶の表情を浮かべていたのだ。リーシアが怪我で苦しんでいるのかと思った瞬間、突然……ヒロが満遍の笑みを浮かべ笑い出した。


「あの……ヒロさん?」

「あははははは、はあ⁈ 馬鹿な! この僕が避け損ねただと⁈ クソが!」


 笑みを浮かべたと思えば、今度は落胆し怒りだした。
 

「だが大丈夫! ここに隠しHPドリンクがあると知っているからな。クックックッ……これでHPは元通りだ」


 五臓六腑に染み渡るみたいな表情で、声を出すヒロを見たリーシア……かなり気持ち悪い生き物がそこにいた!
 
 何かを握って動かすかのように、宙で忙しなく動く指と腕……その動きが気持ち悪かった。

 
「……あのヒロさん?」

「いやっほ~ぉぉぉぉぉ!」
 

 突如、高らかな声を上げるヒロ……危険な男がそこにいた!


「ちょっ! ヒロさん大丈夫ですか? ヒロさん!」


 余りにも様子がおかしいヒロに、リーシアが声を荒らげた。
 

「はっ! ……いえ、何でもありません。リーシアさんとりあえず顔を上げてください」
 

 何事もなかったかのように話しかけるヒロ……触れてはならないものに触れてしまい、少し引き気味のリーシアは再び頭を下げる。

 美少女の土下座と言う異常な状況に、居た堪れなくなったヒロは、まず土下座を止めてもらうように声を掛けるが……。


「そうはいきません。下手したらヒロさんが死んでいたかもしれませんので……すみません」

「まあ、結果的には死にませんでしたから……」


 ヒロは一向に止める気配がないリーシアの手を取り、そのまま立たせてあげた。


「それにリーシアさんが居なければ、ランナーバードにトドメをさせませんでした。僕ひとりだったら、今ごろは死んでましたよ」

「ですが……」


 リーシアの泣きそうになっている目を見ながら、ヒロは語り掛ける。


「僕もリーシアさんに失礼な事をして、謝って許してもらえましたから、これでおあいこにしませんか?」

「……分かりました。それじゃあ、これでおあいこです」


 ようやく笑顔になったリーシアを見て、『やっぱり女の子は笑顔でいなければなあ』と思いながら、これからの事をリーシアに相談する。


「まずは町まで行きましょうか。日も暮れてきましたし……」


 ランナーバードとの死闘を経て、辺りは赤くなり始めていた。死に物狂いで戦った結果、かなりの時間が経過していた。

 町まで、どのくらい時間が掛かるか分からないが、夜の森を歩くのはかなり危険なのだろう。なにせ、昼間でも死にかけるほどなのだから……光源が乏しい夜の闇の中を歩くのは自殺行為に等しい。
 

「ですね。私も夜の森は、できれば歩きたくないですから……」

「それじゃあ、リーシアさん町まで案内をお願いします」

「えと……良ければリーシアと呼び捨てでいいですよ。『さん』付けはどうも慣れませんから。ランナーバードと戦っている時も、お互い呼び捨てでしたし」


 そう言えば1分1秒でも時間が惜しい状況だったので、途中から呼び捨てで呼んでいた事をヒロは思い出していた。


「じゃあ、僕もヒロと呼び捨てでお願いします」

「分かりました。ヒロ」

「それじゃあリーシア、ランナーバードをアイテム袋に入れて、町に行きましょう」

「はい。それでは、アルムの町へ案内しますね」


 ランナーバードをアイテム袋に入れ、町へと向かうヒロとリーシア……初めての異世界の町に心を躍らせるヒロには、のちに起こる出来事が、運命の歯車を回すキッカケになるなんて、この時の知る由もないのだった。



〈勇者と少女が出会った時、運命の歯車が回り始めた!〉
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

鬼神転生記~勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。~

月見酒
ファンタジー
高校に入ってから距離を置いていた幼馴染4人と3年ぶりに下校することになった主人公、朝霧和也たち5人は、突然異世界へと転移してしまった。 目が覚め、目の前に立つ王女が泣きながら頼み込んできた。 「どうか、この世界を救ってください、勇者様!」 突然のことに混乱するなか、正義感の強い和也の幼馴染4人は勇者として魔王を倒すことに。 和也も言い返せないまま、勇者として頑張ることに。 訓練でゴブリン討伐していた勇者たちだったがアクシデントが起き幼馴染をかばった和也は命を落としてしまう。 「俺の人生も……これで終わり……か。せめて……エルフとダークエルフに会ってみたかったな……」 だが気がつけば、和也は転生していた。元いた世界で大人気だったゲームのアバターの姿で!? ================================================ 一巻発売中です。

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

処理中です...