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第2章 勇者と最悪な出会い編
第16話 輝け、痛ネーム!
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腹パンチとは……読んだ字の通り、腹部を殴る行為である。別名は『腹パン』とも呼ばれ親しまわれている。
好んでお腹を殴る、殴られることにフェチズムを感じる変態行為の意味もある。
マニアックなプレイではあるがその道は深く、殴る角度や位置によって好みの痛み方があるため、SM業界では意外にたしなむ人は多い。
的確な殴られ方をすれば天国へ登れるが、誤った殴られ方をすれば地獄の苦しみに地べたを這いずり回ることになる。
よく、漫画やアニメでは腹パンから気絶するシーンが見受けられるが、医学的には極稀な現象で狙ってできるものではない。
腹パンから意識をなくしたヒロは幸運だった……。
鳩尾に入れられた下から突き上げるパンチに、肺の空気が吐き出され、消えない鈍重な痛みが腹部に残り続けまったく治らない。
吐き出した空気を求めて口を動かすが、空気を取り込めず酸欠に陥ってしまった。
苦しみの中、ヒロは膝を折り地面に頭を擦りつけ、『土下座』する格好で這いつくばっていた。その顔は痛みで苦悶の表情を浮かべ涙を垂れ流し、ヒロはそのまま意識を失ってしまうのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ぼ、僕は一体……」
どれくらい時間が経ったのだろうか……白濁する意識の中、ボンヤリとする頭を振りヒロは現実世界へと無理やり意識を引き戻した。
「……なっ! 縛られて⁈」
まだ覚醒し切っていない意識で辺りを見回すと、自分が両手を後ろ手に縛られていることに気が付いた。
体は、森に生える太い木の幹に縛り付けられており、逃げられない。
「痛っ! たしか突然、腹パンをされて……」
まだ痛む鳩尾に視線を落とすと、痣ができていた。
痛みは収まっていたが、呼吸をすると鋭い痛みが走る。
さらに視線を落とすと、胡座を組むように座らされ、木に縛り付けられたヒロの下半身に、30cmくらいの大きな葉っぱが置かれアソコが隠されていた。
「そうか、泉で傷口を洗うのと血糊を洗い流すのに裸になったんだっけ? それから泉で汚れを流していたら女の子が現れて……」
意識を失う直前までの出来事を、ヒロは思い出していた。
「ああぁぁぁっ! 無我夢中で裸なのを忘れてた。そりゃ女の子なら怒るよな……」
裸でコミュニケーションを取ろうとしていたことに、ようやく気が付き、ヒロは急に恥ずかしくなってしまう。
かつて、全裸で町を練り歩きイベントを攻略する『ファザー2 ジーズの逆襲』と言う、ゲームがあった。
プレイ当時はこんなシュチュエーションあり得ないと、クリエイターを馬鹿にしていたが、当時の自分を殴り殺したかった……全裸でイベント進行は、現実でも起こってしまったのだから!
少女に『悪い事をしたな~』と、ヒロは反省する。
とらあえず状況を取りまとめると、生きてはいるがマズイ状態である事だけは分かった。
周りを見回しても、自分以外には誰もいない。どうやら先ほどの泉から少し離れた場所に、縛り付けられており、少女の姿は見えない。
どうにかして縄を抜け出さねば…… いまモンスターに襲われたら、ひとたまりもない!
『ガサッガサガサ』
だが、その願いは早くも終わりを迎えてしまった! 前方の茂みから、何かが草むらをかき分けて、近づく音が聞こえてくる。
『ゴクリ』と固唾を飲み、茂みから現れる何かを待つ葉っぱ一枚の男! 緊張が走る中、茂みをかき分けてヒロの前に現れたのは……鹿みたいな大きなツノを持つ動物を担いだ、先ほどの少女だった。
ホッとするヒロを見て、少女が近づいてくる。
「やっと目を覚ましましたか、変態さん」
「変態? 誰が?」
肩に担いだモノを地面に下ろし、少女がヒロを『ビシッ』と指差す!
「あなたのことです。変態さん。自分は変態って必死に指を指して言っていましたよね? 覚えていないのですか?」
自分を指差して名前を伝えようとした記憶があるが、自分を変態と紹介した記憶がヒロにはなかった。
「変態なんて言葉使った記憶ないですよ」
「私の聞き間違いですか?」
「それにそんな痛い名前の人がいるわけないでしょう?」
『ただでさえ、キラキラネームだと言うのに、DQNネームの称号までゲットなんて冗談じゃない!』と、ヒロが心の中で憤慨する。
「あれ? そう言えば喋れるのですか? 先ほどは聞いたことがない言葉を使っていましたが?」
少女の急な質問に、正直に答えるには相手を知らなすぎると、ヒロはとっさに誤魔化す。
「僕は遠い国からの旅の途中、町に向かって歩いていたはずが、いつの間にか森に迷い込んでしまって……」
「別の国の人でしたか。どおりで聞いたことがない言葉だと思いました」
どうやら信じてくれた様子に、ヒロは安堵して話を続ける。
「町に辿り着けず、途方に暮れていた所、途中で泉に辿り着き、体の汚れを落としていました」
「そこで私と出会ったと?」
「これで森を抜けられる思ったら、嬉しさで気分がハイになってしまいまして……とっさにこの国に言葉が出てこず、自分の国の言葉で話し掛けてしまいました」
少女は事情を聞き、警戒心を少し解いたように見えた。
「あと突然の事に我を忘れてしまい、お粗末な物を見せつけてしまいました……申し訳ありません」
ヒロは縛られたまま、頭だけを下げて謝る。
「……」
少女からの返答はなく、どうしたものかと思いながら下げた頭を上げると、少女は何かを考え込んでいた。
「あの……」
「……分かりました。さっきのことは忘れましょう」
どうやら誤解は解けたようだ。
「とりあえず悪意はなかったみたいですし、縄を解きますね」
「ありがとうございます。え~と?」
お礼を言いたいが相手の名前が分からず、言い淀んていた僕に少女が気づく。
「私の名前はリーシアと言います」
「リーシアさん、ありがとうございます」
「こちらの方こそ、変態呼ばわりしてしまって申し訳ありませんでした。お名前をお伺いしてもよろしいですか?」
「僕の名前は『英雄』と言います。よろし『ガンッ!』」
ヒロの顔の横を、リーシアの拳が凄い勢いで通り過ぎ、木の幹に拳の跡を刻み込む。
「やっぱり変態じゃないですか!」
森にリーシアの声が響き渡った!
「信じた私が馬鹿でした! このままモンスターに喰われると良いです!」
「ちょ! ちょっと待ってください! 置いていかないでください! カムバァァァァァァク!」
この後、ヒロの名前が、この世界の発音で『変態』と言う意味を持つのだと、リーシアから教えられるのであった。
〈異世界でも、勇者の名前は輝いていた!〉
好んでお腹を殴る、殴られることにフェチズムを感じる変態行為の意味もある。
マニアックなプレイではあるがその道は深く、殴る角度や位置によって好みの痛み方があるため、SM業界では意外にたしなむ人は多い。
的確な殴られ方をすれば天国へ登れるが、誤った殴られ方をすれば地獄の苦しみに地べたを這いずり回ることになる。
よく、漫画やアニメでは腹パンから気絶するシーンが見受けられるが、医学的には極稀な現象で狙ってできるものではない。
腹パンから意識をなくしたヒロは幸運だった……。
鳩尾に入れられた下から突き上げるパンチに、肺の空気が吐き出され、消えない鈍重な痛みが腹部に残り続けまったく治らない。
吐き出した空気を求めて口を動かすが、空気を取り込めず酸欠に陥ってしまった。
苦しみの中、ヒロは膝を折り地面に頭を擦りつけ、『土下座』する格好で這いつくばっていた。その顔は痛みで苦悶の表情を浮かべ涙を垂れ流し、ヒロはそのまま意識を失ってしまうのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ぼ、僕は一体……」
どれくらい時間が経ったのだろうか……白濁する意識の中、ボンヤリとする頭を振りヒロは現実世界へと無理やり意識を引き戻した。
「……なっ! 縛られて⁈」
まだ覚醒し切っていない意識で辺りを見回すと、自分が両手を後ろ手に縛られていることに気が付いた。
体は、森に生える太い木の幹に縛り付けられており、逃げられない。
「痛っ! たしか突然、腹パンをされて……」
まだ痛む鳩尾に視線を落とすと、痣ができていた。
痛みは収まっていたが、呼吸をすると鋭い痛みが走る。
さらに視線を落とすと、胡座を組むように座らされ、木に縛り付けられたヒロの下半身に、30cmくらいの大きな葉っぱが置かれアソコが隠されていた。
「そうか、泉で傷口を洗うのと血糊を洗い流すのに裸になったんだっけ? それから泉で汚れを流していたら女の子が現れて……」
意識を失う直前までの出来事を、ヒロは思い出していた。
「ああぁぁぁっ! 無我夢中で裸なのを忘れてた。そりゃ女の子なら怒るよな……」
裸でコミュニケーションを取ろうとしていたことに、ようやく気が付き、ヒロは急に恥ずかしくなってしまう。
かつて、全裸で町を練り歩きイベントを攻略する『ファザー2 ジーズの逆襲』と言う、ゲームがあった。
プレイ当時はこんなシュチュエーションあり得ないと、クリエイターを馬鹿にしていたが、当時の自分を殴り殺したかった……全裸でイベント進行は、現実でも起こってしまったのだから!
少女に『悪い事をしたな~』と、ヒロは反省する。
とらあえず状況を取りまとめると、生きてはいるがマズイ状態である事だけは分かった。
周りを見回しても、自分以外には誰もいない。どうやら先ほどの泉から少し離れた場所に、縛り付けられており、少女の姿は見えない。
どうにかして縄を抜け出さねば…… いまモンスターに襲われたら、ひとたまりもない!
『ガサッガサガサ』
だが、その願いは早くも終わりを迎えてしまった! 前方の茂みから、何かが草むらをかき分けて、近づく音が聞こえてくる。
『ゴクリ』と固唾を飲み、茂みから現れる何かを待つ葉っぱ一枚の男! 緊張が走る中、茂みをかき分けてヒロの前に現れたのは……鹿みたいな大きなツノを持つ動物を担いだ、先ほどの少女だった。
ホッとするヒロを見て、少女が近づいてくる。
「やっと目を覚ましましたか、変態さん」
「変態? 誰が?」
肩に担いだモノを地面に下ろし、少女がヒロを『ビシッ』と指差す!
「あなたのことです。変態さん。自分は変態って必死に指を指して言っていましたよね? 覚えていないのですか?」
自分を指差して名前を伝えようとした記憶があるが、自分を変態と紹介した記憶がヒロにはなかった。
「変態なんて言葉使った記憶ないですよ」
「私の聞き間違いですか?」
「それにそんな痛い名前の人がいるわけないでしょう?」
『ただでさえ、キラキラネームだと言うのに、DQNネームの称号までゲットなんて冗談じゃない!』と、ヒロが心の中で憤慨する。
「あれ? そう言えば喋れるのですか? 先ほどは聞いたことがない言葉を使っていましたが?」
少女の急な質問に、正直に答えるには相手を知らなすぎると、ヒロはとっさに誤魔化す。
「僕は遠い国からの旅の途中、町に向かって歩いていたはずが、いつの間にか森に迷い込んでしまって……」
「別の国の人でしたか。どおりで聞いたことがない言葉だと思いました」
どうやら信じてくれた様子に、ヒロは安堵して話を続ける。
「町に辿り着けず、途方に暮れていた所、途中で泉に辿り着き、体の汚れを落としていました」
「そこで私と出会ったと?」
「これで森を抜けられる思ったら、嬉しさで気分がハイになってしまいまして……とっさにこの国に言葉が出てこず、自分の国の言葉で話し掛けてしまいました」
少女は事情を聞き、警戒心を少し解いたように見えた。
「あと突然の事に我を忘れてしまい、お粗末な物を見せつけてしまいました……申し訳ありません」
ヒロは縛られたまま、頭だけを下げて謝る。
「……」
少女からの返答はなく、どうしたものかと思いながら下げた頭を上げると、少女は何かを考え込んでいた。
「あの……」
「……分かりました。さっきのことは忘れましょう」
どうやら誤解は解けたようだ。
「とりあえず悪意はなかったみたいですし、縄を解きますね」
「ありがとうございます。え~と?」
お礼を言いたいが相手の名前が分からず、言い淀んていた僕に少女が気づく。
「私の名前はリーシアと言います」
「リーシアさん、ありがとうございます」
「こちらの方こそ、変態呼ばわりしてしまって申し訳ありませんでした。お名前をお伺いしてもよろしいですか?」
「僕の名前は『英雄』と言います。よろし『ガンッ!』」
ヒロの顔の横を、リーシアの拳が凄い勢いで通り過ぎ、木の幹に拳の跡を刻み込む。
「やっぱり変態じゃないですか!」
森にリーシアの声が響き渡った!
「信じた私が馬鹿でした! このままモンスターに喰われると良いです!」
「ちょ! ちょっと待ってください! 置いていかないでください! カムバァァァァァァク!」
この後、ヒロの名前が、この世界の発音で『変態』と言う意味を持つのだと、リーシアから教えられるのであった。
〈異世界でも、勇者の名前は輝いていた!〉
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