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第2章 勇者と最悪な出会い編
第14話 南の森×出会い=運命の始まり! ☆
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アルムの町から南に十分ほど歩いた先に、その森はありました。
常に討伐クエストが出されているため、町に面した森の外側は比較的安全で、森の奥深くにまで入らなければ、魔物らしい魔物に遭遇することはまずありません。
アルムの町は近隣では一番大きな町で、三千人を超える人口の胃袋を満たすには、南の森の恵みはなくてはならない物となっています。
「やはり森の外側の薬草は取り尽くされてますね」
私は目的の薬草を探すため、南の森へとやって来ました。
いつも着ている修道服は動き難いので、孤児院出身の女性冒険者が置いて行った装備を自分なりにアレンジして装備しています。
軽いレザーアーマーは、しっかり腰までガードされています。武具屋の軒先に半額セールで売りに出される胸までしか守られていない防具ではありません。
あんな防具を買う人が、本当にいるのか疑問です……お腹に攻撃を受けたら1発で悶絶ですよ。自殺願望が強い人向けでしょうか?
手には自分でアレンジした皮のグローブをはめています。手のひらと拳骨の部分に鉄を埋め込んで攻撃力と防御力をあげました。
私の戦闘スタイルは素手で攻めながら守るですからね。少し重いですが、体重の軽い私には必須アイテムです。
足には同じく、カカトと爪先に鉄を仕込んだ編み上げのブーツを履いています。
皮が厚目なので、険しい道でも足を怪我から守ってくれ、カカトと爪先に仕込んだ鉄の重心を上手く使えば、蹴りの威力が倍増です。
ブーツの中に仕込んでありますから、見た目からは想像もつかない威力で相手を騙せます。
あとは普通の肘と膝を守るレザーの防具を着けています。
肘や膝は攻撃にも使いますし、とっさの転倒でもっとも怪我しやすい部分ですので、しっかりとガードです。
肩まである髪は、頭の後ろで邪魔にならないようにアップでまとめています。戦いに置いて長い髪はデメリットしかありません。特に近接戦闘を得意とする私にとって髪を掴まれて動きを封じられる可能性もあります。
戦いに身を置くならば髪は短い方が望ましいのですが……これでも女の子ですからね。それに母様が褒めてくれた髪をバッサリ切るのは忍びないです。
「このまま外側を探しても、夕方までに薬草が集められるか微妙なとこですね」
森の中は比較的安全と言っても、それは森の外周部分だけで、森の中心にある魔力溜まりからモンスターが日々生まれてきます。
中心に向かうほど、モンスターの数は増えますが、森の恵みも比例して多く採れるのです。
「面倒なことは、早めに終わらせるのが一番です♪」
安全と危険を天秤に掛けた私は、森の中へと進むことにしました。
南の森の肥沃な土は、森に恵みをもたらし、泉から流れ出る水が大地に潤いを与えています。
これは魔力溜まりが森の中心にあり、漏れ出した魔力が森に活力を与えているのではないかと言われていますが、真偽は定かではありません。
森の恵みに釣られて動物たちが集まり、森の中心で常に魔物が生まれ続ける南の森……とくに食用のモンスターは、町の人々のお腹を満たすのに必要不可欠な存在です。
アルムの町もこの魔力溜まりが、南の森にあったからこそ、ここまで大きな町になったと言っても過言はありません。
『ガサッ!』と、目の前の茂みが揺れました。
私は視線を動く茂みから離さず、横に生えていた太い樹木を背にするため、横に移動します。
一人で戦う場合のバックアタック対策です。
「何が出てくるか……出たとこ勝負です」
私はカウンターを取るため、拳を構えると茂みの動きに注意しつつ、腰を落とし左足を前に出して半身で構えます。
攻撃・防御・回避、その動作を相手の動きを見てから選択するカウンターの構えです。昔、母の友を名乗る老人に手ほどきを受けて覚えました。
「グオオオン!」
獰猛な声を上げながら茂みから跳び出したのはウサミンです!
体長60cmの、白もしくは茶色の毛と耳が長い動物で、可愛い外見とは裏腹に肉食で性格は獰猛……目につく者へ手当たり次第に襲い掛かって行きます!
「遅い!」
私はさほど速くないウサミンの飛びつきを、左足を軸にして横に90度回転し、後ろに引くことでウサミンの左側面に移動して回避を試みます。
目の前をウサミンが跳んで横切ります。『スカッ』と言う音が聞こえそうなくらい見事な空振りです。
そして回避と同時に、右足で目の前を通過するウサミンのお腹目掛けて、足を蹴り上げます。
「いただきです♪」
私の蹴りは、的確にウサミンの腹部を捉え、クリーンヒットしました。
「ギゥアアアアアアアァ」
外見の可愛さからは、想像も出来ない苦しみの声をあげるウサミンが、地面をのたうち回ります。
これ以上苦しまぬよう、私は頭上高く掲げた右足を、一気に振り下ろします!
ブーツに仕込んだ鉄の重量と、カカトから落とす技の威力が合わさり、ウサミンの頭蓋骨は粉砕され一撃で昇天しました。
「なかなか食べ応えが……いえ、戦い甲斐がある一戦でした」
私は残心を忘れずにウサミンの様子を確認します。
戦いが終わった時が一番危ないと、口を酸っぱくなるほど叩き込まれましたから……油断大敵です。
完全に死亡を確認して、ようやく戦闘が終了しました。
とりあえずウサミンは後で美味しく頂くため、血抜きを施して回収することにしました。
近くの枝にウサミンを吊るし血抜きと皮を剥いだら、内臓を手早く取り出します。
吊るした下の地面には予め穴を掘ってあるので、最後に穴を埋めて解体作業は終了です。
「こんなとこですかね。アッ! 血がまだ肉に付着してます。このままだと肉が血なまぐさくなってしまいますから、水で血を洗い流したい所ですが、手持ちの水が……」
悩むこと数分……美味しくお肉を食べるため、少ない手持ちの水を使おうか悩んでいた私の脳裏に、ある光景が浮かび上がります。
『ポン』と手を叩くと、私は少し先に人のあまり寄り付かない泉があることを思い出しました。
それと泉の近くには薬草の群生地があり、人も滅多に来ないので丁度良かったです。
荒らされていない群生地なら、目的の薬草もすぐに集められます。
「問題は人が寄り付かない理由なんですがね……血抜きも早くしないといけませんし行ってみましょう♪」
私は今夜のご馳走を手に、意気揚々と泉を目指して歩き出しました。少し歩いた所で自分の身長より高い草が多くなってきました。泉が近い証拠です。
泉は直径が20メートルほどの大きさで、さほど広くはありません。
そのため、湖の周りには自分の身長より高い草が生えていて、泉のほとりに出なければ泉の全容が分かりません。
私は慎重に草を掻き分けて泉に近付きます……無論、周りの警戒は怠りません。
そしてついに泉のほとりに出た瞬間、目の前に突然男が現れました!
私は身構えて相手を見極めます。
20代を超えた位の、まだ少年にも見える男でした。
背は175cmほど、痩せ型で黒色の髪と瞳はアルムの町ではあまり見かけません。上半身の筋肉は余り付いていないことから、戦いを生業にする人ではなさそうです。
私は森で出会った不思議な男をマジマジと観察すると、男もこちらに気が付き呆けた顔で私を見ていました。
男と視線が合わさると私は警戒しつつ、視線をゆっくりと下に向けます。
そして……私の視線は男のある部分で止まり、フリーズしました!
「きゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ」
思わず悲鳴が上がり、南の森に響き渡ります……スッポンポンの男の悲鳴が!
〈勇者の悲鳴が南の森に響き渡った!〉
リーシア戦闘装備イメージ
常に討伐クエストが出されているため、町に面した森の外側は比較的安全で、森の奥深くにまで入らなければ、魔物らしい魔物に遭遇することはまずありません。
アルムの町は近隣では一番大きな町で、三千人を超える人口の胃袋を満たすには、南の森の恵みはなくてはならない物となっています。
「やはり森の外側の薬草は取り尽くされてますね」
私は目的の薬草を探すため、南の森へとやって来ました。
いつも着ている修道服は動き難いので、孤児院出身の女性冒険者が置いて行った装備を自分なりにアレンジして装備しています。
軽いレザーアーマーは、しっかり腰までガードされています。武具屋の軒先に半額セールで売りに出される胸までしか守られていない防具ではありません。
あんな防具を買う人が、本当にいるのか疑問です……お腹に攻撃を受けたら1発で悶絶ですよ。自殺願望が強い人向けでしょうか?
手には自分でアレンジした皮のグローブをはめています。手のひらと拳骨の部分に鉄を埋め込んで攻撃力と防御力をあげました。
私の戦闘スタイルは素手で攻めながら守るですからね。少し重いですが、体重の軽い私には必須アイテムです。
足には同じく、カカトと爪先に鉄を仕込んだ編み上げのブーツを履いています。
皮が厚目なので、険しい道でも足を怪我から守ってくれ、カカトと爪先に仕込んだ鉄の重心を上手く使えば、蹴りの威力が倍増です。
ブーツの中に仕込んでありますから、見た目からは想像もつかない威力で相手を騙せます。
あとは普通の肘と膝を守るレザーの防具を着けています。
肘や膝は攻撃にも使いますし、とっさの転倒でもっとも怪我しやすい部分ですので、しっかりとガードです。
肩まである髪は、頭の後ろで邪魔にならないようにアップでまとめています。戦いに置いて長い髪はデメリットしかありません。特に近接戦闘を得意とする私にとって髪を掴まれて動きを封じられる可能性もあります。
戦いに身を置くならば髪は短い方が望ましいのですが……これでも女の子ですからね。それに母様が褒めてくれた髪をバッサリ切るのは忍びないです。
「このまま外側を探しても、夕方までに薬草が集められるか微妙なとこですね」
森の中は比較的安全と言っても、それは森の外周部分だけで、森の中心にある魔力溜まりからモンスターが日々生まれてきます。
中心に向かうほど、モンスターの数は増えますが、森の恵みも比例して多く採れるのです。
「面倒なことは、早めに終わらせるのが一番です♪」
安全と危険を天秤に掛けた私は、森の中へと進むことにしました。
南の森の肥沃な土は、森に恵みをもたらし、泉から流れ出る水が大地に潤いを与えています。
これは魔力溜まりが森の中心にあり、漏れ出した魔力が森に活力を与えているのではないかと言われていますが、真偽は定かではありません。
森の恵みに釣られて動物たちが集まり、森の中心で常に魔物が生まれ続ける南の森……とくに食用のモンスターは、町の人々のお腹を満たすのに必要不可欠な存在です。
アルムの町もこの魔力溜まりが、南の森にあったからこそ、ここまで大きな町になったと言っても過言はありません。
『ガサッ!』と、目の前の茂みが揺れました。
私は視線を動く茂みから離さず、横に生えていた太い樹木を背にするため、横に移動します。
一人で戦う場合のバックアタック対策です。
「何が出てくるか……出たとこ勝負です」
私はカウンターを取るため、拳を構えると茂みの動きに注意しつつ、腰を落とし左足を前に出して半身で構えます。
攻撃・防御・回避、その動作を相手の動きを見てから選択するカウンターの構えです。昔、母の友を名乗る老人に手ほどきを受けて覚えました。
「グオオオン!」
獰猛な声を上げながら茂みから跳び出したのはウサミンです!
体長60cmの、白もしくは茶色の毛と耳が長い動物で、可愛い外見とは裏腹に肉食で性格は獰猛……目につく者へ手当たり次第に襲い掛かって行きます!
「遅い!」
私はさほど速くないウサミンの飛びつきを、左足を軸にして横に90度回転し、後ろに引くことでウサミンの左側面に移動して回避を試みます。
目の前をウサミンが跳んで横切ります。『スカッ』と言う音が聞こえそうなくらい見事な空振りです。
そして回避と同時に、右足で目の前を通過するウサミンのお腹目掛けて、足を蹴り上げます。
「いただきです♪」
私の蹴りは、的確にウサミンの腹部を捉え、クリーンヒットしました。
「ギゥアアアアアアアァ」
外見の可愛さからは、想像も出来ない苦しみの声をあげるウサミンが、地面をのたうち回ります。
これ以上苦しまぬよう、私は頭上高く掲げた右足を、一気に振り下ろします!
ブーツに仕込んだ鉄の重量と、カカトから落とす技の威力が合わさり、ウサミンの頭蓋骨は粉砕され一撃で昇天しました。
「なかなか食べ応えが……いえ、戦い甲斐がある一戦でした」
私は残心を忘れずにウサミンの様子を確認します。
戦いが終わった時が一番危ないと、口を酸っぱくなるほど叩き込まれましたから……油断大敵です。
完全に死亡を確認して、ようやく戦闘が終了しました。
とりあえずウサミンは後で美味しく頂くため、血抜きを施して回収することにしました。
近くの枝にウサミンを吊るし血抜きと皮を剥いだら、内臓を手早く取り出します。
吊るした下の地面には予め穴を掘ってあるので、最後に穴を埋めて解体作業は終了です。
「こんなとこですかね。アッ! 血がまだ肉に付着してます。このままだと肉が血なまぐさくなってしまいますから、水で血を洗い流したい所ですが、手持ちの水が……」
悩むこと数分……美味しくお肉を食べるため、少ない手持ちの水を使おうか悩んでいた私の脳裏に、ある光景が浮かび上がります。
『ポン』と手を叩くと、私は少し先に人のあまり寄り付かない泉があることを思い出しました。
それと泉の近くには薬草の群生地があり、人も滅多に来ないので丁度良かったです。
荒らされていない群生地なら、目的の薬草もすぐに集められます。
「問題は人が寄り付かない理由なんですがね……血抜きも早くしないといけませんし行ってみましょう♪」
私は今夜のご馳走を手に、意気揚々と泉を目指して歩き出しました。少し歩いた所で自分の身長より高い草が多くなってきました。泉が近い証拠です。
泉は直径が20メートルほどの大きさで、さほど広くはありません。
そのため、湖の周りには自分の身長より高い草が生えていて、泉のほとりに出なければ泉の全容が分かりません。
私は慎重に草を掻き分けて泉に近付きます……無論、周りの警戒は怠りません。
そしてついに泉のほとりに出た瞬間、目の前に突然男が現れました!
私は身構えて相手を見極めます。
20代を超えた位の、まだ少年にも見える男でした。
背は175cmほど、痩せ型で黒色の髪と瞳はアルムの町ではあまり見かけません。上半身の筋肉は余り付いていないことから、戦いを生業にする人ではなさそうです。
私は森で出会った不思議な男をマジマジと観察すると、男もこちらに気が付き呆けた顔で私を見ていました。
男と視線が合わさると私は警戒しつつ、視線をゆっくりと下に向けます。
そして……私の視線は男のある部分で止まり、フリーズしました!
「きゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ」
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