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巨大な鐘の轟音は、リーリエの灯りを震い起こした。
馬が怯え、歩みを止める。木造の建物から人が沸きだし、丘の上を見る。
前を走っていた筈のラオフェンたちの馬が目の前に現れ、レオンを横から掬い上げた。
「城へ急ぐぞ!」
レヒトがレオンの胴体を掴む。見た目の華奢さからは想像もつかないほどの強肩に抱えられ、レオンは赤子のように馬に乗せられた。
振り返ると、ノルテもまたラオフェンの手により、のっそりと馬に乗せられている。
扱いの違いに文句を思いながら、レオンは前を向いた。
レヒトが操る馬の鬣の向こうに、丘の上へと続く暗い道が見える。揺れる巨大な影は、リーリエの鐘。仰々しく鳴り響き、切迫した時を告げていた。
何故、暗闇の中であの鐘が、あんなに黒く見えるのか。違和感に気付いたレオンは、レヒトに振り返る。
「何があったんですか!?」
「恐らくは敵襲だろう!」
「人間ですか!?」
「それならまだいい!」
レヒトが、馬の脇腹を蹴り上げる。馬は高く嘶き、丘を駆け上った。
「これは……!」
息を荒くする馬の首を撫でつつ、レヒトは丘の向こうを見渡した。
城の頂上で激しく鳴る鐘の下、海へと続く岩山が燃えているのだ。
崖っぷちのようになっている丘に、その炎が徐々に迫ってきているのが分かる。
「な、なんだこれ!」
馬の手綱を引きつつ、レオンがレヒトに肩を並べる。
先程弾けた光が、この炎を作ったのだろうか。
岩山はまるで油を纏っていたかのように、高く燃え上がっている。
その彼方に見える海は、血で染め上げたような赤に彩られていた。
「なんと言うことだ……」
追い付いてきたラオフェンが、舞い散る炎の粉に目をしかめる。
後ろで、どこか疲れた様子のノルテが溜め息を吐いた。
「やれやれ、なんて時に呼んでくれたんだい」
ノルテは、火の気を避けるように頭からローブを被っている。
「ノルテ様……」
レオンが、不安げにノルテを見る。
「これも経験さね。さて、ヴォルフラントはどうするつもりだい」
ノルテが踵を返し、城へ向かう。
ふと、その足元がよろめく。素早くそれを察知したラオフェンが肩を支え、何か心配の声をかけている。
……なんなんだろう、先程から。
レオンは、師の奇妙な変化を憂いていた。
だが、彼女はレオンと目が合うといつも通りの笑みを見せるので、そこからは何も聞けなかった。
炎の光に染められた漆黒の眼光は、いつものように鋭い。だが、どこか蝋燭の光のようにも見えた。
「軍師宰相閣下!」
城の城壁の脇にある小さな木戸から、女性が一人飛び出してきた。
弛く巻いた栗色の髪に、見覚えがある。
その女性が近くまで来た時、レオンは思わず驚嘆の声を上げた。
「ミ、ミリアさん!?」
「レ……レオン準三級軍師!? 何故此処に……」
驚いたのは、ミリアも同じだったようで。何かやたらと慌てふためいて、自身の身なりを隠す素振りをする。
よくよく見ると、ミリアが纏っているのは、薄い色のドレスだった。炎の所為で、何色であるかまでは分からない。
それでも、胸元から切り替えられた長い裾のそれは、普段の彼女とはまるで違う装いで。ヴァイス独特の、髪を幾束にも分けたような結い上げに、上品な化粧。そこに、護衛官らしさは微塵も感じられなかった。
「レオン軍師、お屋敷でライザー様と居たのでは……」
「いや、ていうか、ミリアさんこそ何故こんなところに……」
「ミリア」
レオンが言う前に、ミリアの後ろから一人の男性が現れた。
ラオフェンほどではないが、背丈はそれなりに大きい。流れるような緑髪を、太い三つ編みで結い、後ろに流している。前髪の隙間からは、鐘と植物の蔦をモチーフとしたような銀の飾り。
瞳は、王家の血筋を表す、翡翠だった。
「ヴォルフラント! これは一体どういうことだい?」
ノルテが前に出る。その問いに答える前に、ヴォルフラントはレオンを一瞥した。
「この少年がレオンか、ミリア」
「え、ええ。はい。……レオン準三級軍師、こちらがヴォルフラント・デオ・リーリエ。この地の領主兼、ヴァイス国公立学園の……」
「知ってマスよ。創設者デショ」
レオンは、彼の外見や名前などはどうでも良かった。
それより、この男がどうしてミリアと同じ場所から現れ、そしてやけに優しげな声でその名を呼んだのか。
今も、何故さも当たり前かのように、その横にいるのか。
そればかりが、気になっていた。
何故か不機嫌になったレオンに、ミリアは困惑する。
耐えかねて、レヒトが口を挟んだ。
「自己紹介は良い! 現状を説明しろヴォルフ!」
レヒトが手を横なぎに振る。今は赤く染まる白いローブが、音を立てた。
「岩の群れの中に、異形が現れた。お前たちが来る直前だ。第一陣はすぐに撤退。……奴等は魔導術のようなものを使う。リーリエの歩兵部隊では役に立たぬ」
「そんな異形いマスか? 人が扮しているのでは……」
レオンが言うと、ヴォルフラントは首を振った。
「そう思うか少年よ。だが、元素の変化もない。どちらかと言うと、竜の吐く炎に近いのだ」
「竜など暫く見ておらんな。それに奴等がこのような愚行を犯すとも思えない」
ラオフェンが、一瞬の所作で出現させた杖を掲げる。巨大な大樹のような杖は前触れもなく光り始め、青い水泡を幾つも創り始めた。
水泡はやがて巨大な塊となり、意思を持ったかのように、炎の中へ次々と落ちていった。
「策も何も無いね。アンタ一人で片付くんじゃないかい?」
ノルテがせせら笑うと、レヒトは慌てたように言った。
「それでは困るぞ軍師殿。異形の殲滅に当たるのは歩兵部隊だ!」
ラオフェンが放った水の後、岩山から何かが蠢いて出てくるのが見えた。
まるで、焼け焦げた虫のような物が。
これほど遠くから見てもはっきりと輪郭が分かるのだから、実際は相当巨大な異形だろう。
収束する炎の中、じわじわとそれらが迫ってくる。
「ヴァッサミューレ。そなたに最小限の被害で済む作戦を頼みたい」
急いだ様子もなく、ヴォルフラントが、ノルテを真上から見下ろして言う。
ノルテはふんと鼻で笑い、茶目っ気たっぷりに舌を出した。
「はっ。これくらいの鎮圧、私じゃなくても出来るね。レオン、アンタがやってみな!」
「ハイィ?」
突拍子もない言葉に、レオンは目を丸くする。
その横で、ミリアも口に手を当てて驚いていた。
「な、何言い出すんデスか」
「準三級軍師とはいえ、アンタは私のお抱えだよ! ここらで実力見せてやりな!」
「で、デスけど」
弱腰になるレオンに、期待の視線を注ぐラオフェンとレヒト。
ミリアもまた、これは好機だと瞳で頷いている。
しかし、そんな中、たった一人だけ明らかに違う視線を注ぐ者が居た。
ヴォルフラントだ。
翡翠の瞳に籠る、暗く冷たい感情。レオンは、この視線を以前にも味わったことがある。
兄弟子たちから受けた、侮蔑の目だ。
そんな暗い男の側に、どうしてミリアが立っているのか。
――なんだよ、それ。
お前一体誰だよ。
「分かりました、やります」
頭で考える事もなく返事をしたのは、レオンにとって、これが初めてだったかもしれない。
灰色の瞳を一度きつく瞑り、レオンは炎へと立ち向かった。
リーリエに駐屯する部隊は、歩兵と弓兵が合わせて千五百ほどだった。
それというのも、部隊のほとんどが国境でアルゲオ山脈と、北側の駐屯地に回されている為、各都市に点在する部隊は最小限に留められている。
幸いなのは、東と西に隣接する国家が無いことだが、まさかこのような大規模な異形の襲撃に合うなど、予想はしていなかった。それも、海の方角から。
「さて、どうするのだ少年」
炎が消え始めた闇の中、ヴォルフラントが静かに問う。
彼の影から現れた従者が、レオンに地形図と、部隊表を書き記した書面を渡そうとした。が、レオンはそれをやんわりと断った。
「それくらい頭に入ってます」
驚いた面持ちで、ラオフェンとレヒトが顔を見合わせる。
何か助言をしようとレヒトが手を伸ばすが、それはノルテにより止められた。
不敵な笑みを浮かべるノルテに、レヒトは浮わついた手を仕方なく腰に当てた。
「では、何もかも分かっているであろう少年軍師よ。作戦は?」
ヴォルフラントのそれは、攻撃的な物言いだった。
まず、信用されていないのが丸分かりだ。何かあれば、師に全ての責任が行くのは明らかである。
レオンは、迫る異形の群れをしっかりと見つめ、崖の方に足を進めた。
その時、一瞬だけミリアに注がれた視線。自信に満ちた表情を見つめ、ミリアは穏やかに頷いた。
「敵は岩山から溢れてきています。第一線に歩兵部隊を五十。指揮能力の高い、第二歩兵部隊のゴルモア卿の部隊を配置してください」
「たったの五十で良いのか?」
ヴォルフラントが、口の奥で笑む。
それを挑戦と受け取ったレオンは、ヴォルフラントを真っ直ぐに見据えた。
「被害を最小にと仰ったのはヴォルフラント様ではありませんか。第二歩兵部隊のゴルモア卿は、他の年若い部隊長とは違って古くからの戦に長けた方だと聞いております。そんな方がどうして昇進もせずそこに……あ、いえ、これは関係ないですよ、ね」
言葉の途中で、ノルテの眉間に皺が寄ったことを確認したレオンは、口を手で押さえ言葉を封じ込めた。
お前は一言多い。無言で、そう言われてしまった。
「……そこまで我が歩兵を理解しているのなら、そうすればよい」
ヴォルフラントはどこか浮かない顔だったが、苦言を押し込めるように瞳を伏せる。
ほ、とレオンは小さく息を吐き、次にレヒトの方を見て、恭しく頭を下げた。
「レヒト様は特に火系の誓導術がお得意だと伺っております。どうか、ご協力願いたいのですが」
国の法務長官に向かって、堂々とした態度でレオンは言った。
レヒトは一瞬、レオンに対して怪訝な気を見せた。が、少年の目に籠る、何か決意のようなものを強く感じ取った。
ふと、ノルテを見る。レヒトの視線に、ノルテはまるで知らんぷりを通し、軽く肩を上げた。
「うむ……、そうか。私の力が必要なら協力しよう。何をしようか、ブラックロウザ軍師」
レヒトが、その腰元から瞬時に杖を出現させた。
白樺の木のように、清楚に長いその杖は、先端にイグニスの宝玉が光っている。
「感謝致します。では、こちらへ」
赤く揺らめく宝玉を誇らしげに携え、レヒトはどこか楽しげにレオンの後を付いていった。
それを渋い顔で見送るヴォルフラントに、ミリアが声をかけた。
「レオン軍師は、欠かしたことは無いんです」
「……何をだ?」
「毎日、どこにどれだけの兵が駐屯していて、どんな異動があって。ヴァッサミューレ様に上がってきたそれらの報告書に目を通すことを、欠かしたことがないのです」
確かに、準三級軍師の仕事には、最高軍師に上げる報告書全てに目を通し、纏める役割がある。だが、それは誤字や不備が無いかどうかを見定めるもので、その内容を覚える必要はない。
ましてや、覚えるほどじっくり見れる時間も与えられてはない筈だ。
ヴォルフラントの脳裏に、小さな部屋で黙々と本を読む童の姿が浮かび上がる。
色褪せた古い本を、熱心に読み耽る幼子は、こちらを見ることもなく、まるで陽の無い場所で育った草木のように、生気が無かった。
“この子はレオンさ。どうだい、賢そうな子だろう”
どこから拾ってきた、と聞かせることもなく、ノルテは笑った。
それはもう、どれだけ昔のことだったか。
あのように、大きくなっていたのか……。
「ヴォルフラント様?」
急に押し黙ったヴォルフラントを案じ、ミリアが声をかける。
その頭を軽く撫でたヴォルフラントは、炎に向かう少年の背に呟いた。
「五十の兵でどうするつもりか……。お手並み拝見といこうか。少年よ」
――勝算はあった。
リーリエの地形は把握していたし、海の方向に岩壁の群れがあることも。
ヴォルフラントが抱えている兵力がどれほどのものか。また、敵が攻めてきた時にこの城塞都市がどれほど有効かも、考えたことがあった。
自分が今までしてきたことは、無駄ではない。どれだけ疎まれようと、笑われようと、自分の思うようにひたすらに知識を貪ってきた。
それが今、公然と役に立つ時が来た。
師からすれば、すぐに鎮圧出来る戦況を、わざわざ任せてくれた。
耳に、あの不思議な子守唄が響いて鳴る。
「ありがとうございます、ノルテ様」
若き少年軍師は、緊張の糸と遊びつつ、口端を上げた。
――歩兵部隊の、頼りない人数が岩壁の前に飛び出したのは、それから間もなくのことだった。
先陣を切るのは、老いて尚猛々しいゴルモア卿。隆々として豪気な体躯が、鎧から張り裂けんばかりの巨漢だ。
目の前に迫る黒い異形の群れをもろともせず、馬を駆り、部隊を率いて突撃をかけた。
部隊が装備しているのは、全てが槍。銀の装飾が施された、勇壮な槍だ。
「異形の者に兵は要らぬ! このゴルモア一人で止めてみせようぞ!」
銀の兜が閃光のごとく駆け巡り、押し寄せてきた異形を槍で一凪ぎした。
輝くような光の筋が真一文字に大地を走り、前列を走っていた異形を高く打ち上げた。
星月夜に、その姿が一瞬だけ映る。
それは、足が溶けて腐敗した、巨大な蜘蛛のような異形だった。
「むっ、これは気色が悪いわい! このゴルモア、さすがに腰が引けるのう!」
とは言いながらも、ゴルモアは楽しげに走り回る。
その様子をリーリエの鐘の側から見ていたレオンは、目を細めた。
「さあ、そのまま敵を翻弄してくださいゴルモア卿」
吹き上げる風には、まだ炎の残り香がする。
鼻を擦り、レオンは彼方を見つめた。
リーリエの鐘がある場所から、一段低い場所。そこには、レヒトが杖を構えていた。
片膝を着き、祈るような姿で杖に額をつけている。
凛とした横顔に見惚れそうになりながら、レオンは彼女に向かって手を挙げた。
眼下では、ゴルモアにいいように遊ばれているとしか思えない異形の群れが、彼を追いかけて一つの波を作りつつあった。
例えばそれは、砂鉄に磁石を近づけて自由に動かしているような光景であった。
そして、それを操るのは、まぎれもなく少年軍師レオン。
あどけなさが残る瞳が、愉悦に歪んだ。
「旗を!」
レオンの言葉と共に、ゴルモアに向かって一つの旗が振られた。
ヴァイス王国の紋章が刻まれた巨大な旗を、旗手が一心不乱に振る。
それに気づいたゴルモアは、部隊を遠ざけ、単騎で走り出した。岩壁の間からは、まだこちらを狙う異形の気配がする。しかし、ゴルモアはそれに怖じけることはなかった。前のめりに馬を走らせ、槍を振り回している。
彼の馬は岩の郡と平行に、一直線に走っていく。それにつられ、異形は体液を撒き散らしながら追いかけた。
「さあ! 今デス!」
その時だった。それまで静かに祈りを捧げていたレヒトが立ち上がり、杖を掲げた。
イグニスの宝玉が弾けるように光り、レヒトの白いローブが羽根のように大きくはためいた。足元からは白煙が舞い上がり、彼女が身に纏う全ての宝石が力を持って煌めいた。媒介だ。
大気が、急激な変化を持ってレヒトの周囲を回転する。それは徐々に業火へと変化し、やがて巨大な魔導紋章を形成した。
炎を纏うレヒトは、片方の手を魔導紋章の中へ差し入れ、拳を強く握りしめた。
「“ゲヘナ・フレイア”!」
杖を支柱に、まるで弓を引くようにしてレヒトが唱える。
炎が、爆発するかのような轟音と共に、岩山の群れへと落ちていく。
衝突した瞬間、岩山はまるで津波の如く異形の真上に降り注いだ。
異形たちがそれに気付き、逃げようとした時は既に遅かった。ほとんどがその地滑りのような土砂の中に消え、かろうじて避けた者も、控えていた歩兵の槍で貫かれた。
粉塵が、舞い上がる。隠れていた異形が、そそくさと逃げていくのが見えた。
轟音が止んだ。馬をくるくると旋回させていたゴルモアは、リーリエの城の頂上に向かって槍を掲げた。
「リーリエの鐘をー! 鳴らせぇー!!」
それは、勝利を讃える喜びの鐘であった。
明るい鐘の音に、民の歓声が折り重なり、音楽のように夜を目覚めさせる。
ほっとするレオンに、兵士たちがこぞって近付き、頭を撫でた。
「よく指示が出来たな!」
「やるじゃないか!!」
「あのレヒト様も駒扱いするなんて大した奴だ!」
喧しい鐘と、喧しい声。レオンは鼓膜がじんじんと痛くなるのを感じていた。
こんな五月蝿いの、好きじゃない。
だが、自分を囲むのはひたすらに、笑顔、笑顔。
潔癖だというあのレヒトでさえ、レオンをまるで我が子のように抱き締めてきた。
「ブラックロウザ!」
薔薇の香りが、レオンの鼻の中に充満する。
新緑の髪がこれでもかと撫で付けられ、乱れて浮いた。
「よくやった! 備えがあれば、この程度の作戦は容易にこなせよう。しかしそなたは見知らぬリーリエでやってのけた! ブラックロウザ、そなたが準三級とは真に惜しい。取り成してやるぞ!」
「え……」
歓声の中、流れに飲まれて行ったその言葉。
それがどれほどの強い力を持った言葉であったか、レオンは後になって痛感するのであった。
「どうだい、ヴォルフラント。あんたが見たかったものは、見れたかい?」
ノルテが、知ったような口ぶりでヴォルフラントに言った。
「……見込みある少年だ」
ヴォルフラントは、ただ一言そう言い残し、城へと姿を消した。
ミリアが、ノルテと顔を合わせて笑い合う。
リーリエの鐘は、星の海を揺らすほどに、高く鳴り響いていた。
馬が怯え、歩みを止める。木造の建物から人が沸きだし、丘の上を見る。
前を走っていた筈のラオフェンたちの馬が目の前に現れ、レオンを横から掬い上げた。
「城へ急ぐぞ!」
レヒトがレオンの胴体を掴む。見た目の華奢さからは想像もつかないほどの強肩に抱えられ、レオンは赤子のように馬に乗せられた。
振り返ると、ノルテもまたラオフェンの手により、のっそりと馬に乗せられている。
扱いの違いに文句を思いながら、レオンは前を向いた。
レヒトが操る馬の鬣の向こうに、丘の上へと続く暗い道が見える。揺れる巨大な影は、リーリエの鐘。仰々しく鳴り響き、切迫した時を告げていた。
何故、暗闇の中であの鐘が、あんなに黒く見えるのか。違和感に気付いたレオンは、レヒトに振り返る。
「何があったんですか!?」
「恐らくは敵襲だろう!」
「人間ですか!?」
「それならまだいい!」
レヒトが、馬の脇腹を蹴り上げる。馬は高く嘶き、丘を駆け上った。
「これは……!」
息を荒くする馬の首を撫でつつ、レヒトは丘の向こうを見渡した。
城の頂上で激しく鳴る鐘の下、海へと続く岩山が燃えているのだ。
崖っぷちのようになっている丘に、その炎が徐々に迫ってきているのが分かる。
「な、なんだこれ!」
馬の手綱を引きつつ、レオンがレヒトに肩を並べる。
先程弾けた光が、この炎を作ったのだろうか。
岩山はまるで油を纏っていたかのように、高く燃え上がっている。
その彼方に見える海は、血で染め上げたような赤に彩られていた。
「なんと言うことだ……」
追い付いてきたラオフェンが、舞い散る炎の粉に目をしかめる。
後ろで、どこか疲れた様子のノルテが溜め息を吐いた。
「やれやれ、なんて時に呼んでくれたんだい」
ノルテは、火の気を避けるように頭からローブを被っている。
「ノルテ様……」
レオンが、不安げにノルテを見る。
「これも経験さね。さて、ヴォルフラントはどうするつもりだい」
ノルテが踵を返し、城へ向かう。
ふと、その足元がよろめく。素早くそれを察知したラオフェンが肩を支え、何か心配の声をかけている。
……なんなんだろう、先程から。
レオンは、師の奇妙な変化を憂いていた。
だが、彼女はレオンと目が合うといつも通りの笑みを見せるので、そこからは何も聞けなかった。
炎の光に染められた漆黒の眼光は、いつものように鋭い。だが、どこか蝋燭の光のようにも見えた。
「軍師宰相閣下!」
城の城壁の脇にある小さな木戸から、女性が一人飛び出してきた。
弛く巻いた栗色の髪に、見覚えがある。
その女性が近くまで来た時、レオンは思わず驚嘆の声を上げた。
「ミ、ミリアさん!?」
「レ……レオン準三級軍師!? 何故此処に……」
驚いたのは、ミリアも同じだったようで。何かやたらと慌てふためいて、自身の身なりを隠す素振りをする。
よくよく見ると、ミリアが纏っているのは、薄い色のドレスだった。炎の所為で、何色であるかまでは分からない。
それでも、胸元から切り替えられた長い裾のそれは、普段の彼女とはまるで違う装いで。ヴァイス独特の、髪を幾束にも分けたような結い上げに、上品な化粧。そこに、護衛官らしさは微塵も感じられなかった。
「レオン軍師、お屋敷でライザー様と居たのでは……」
「いや、ていうか、ミリアさんこそ何故こんなところに……」
「ミリア」
レオンが言う前に、ミリアの後ろから一人の男性が現れた。
ラオフェンほどではないが、背丈はそれなりに大きい。流れるような緑髪を、太い三つ編みで結い、後ろに流している。前髪の隙間からは、鐘と植物の蔦をモチーフとしたような銀の飾り。
瞳は、王家の血筋を表す、翡翠だった。
「ヴォルフラント! これは一体どういうことだい?」
ノルテが前に出る。その問いに答える前に、ヴォルフラントはレオンを一瞥した。
「この少年がレオンか、ミリア」
「え、ええ。はい。……レオン準三級軍師、こちらがヴォルフラント・デオ・リーリエ。この地の領主兼、ヴァイス国公立学園の……」
「知ってマスよ。創設者デショ」
レオンは、彼の外見や名前などはどうでも良かった。
それより、この男がどうしてミリアと同じ場所から現れ、そしてやけに優しげな声でその名を呼んだのか。
今も、何故さも当たり前かのように、その横にいるのか。
そればかりが、気になっていた。
何故か不機嫌になったレオンに、ミリアは困惑する。
耐えかねて、レヒトが口を挟んだ。
「自己紹介は良い! 現状を説明しろヴォルフ!」
レヒトが手を横なぎに振る。今は赤く染まる白いローブが、音を立てた。
「岩の群れの中に、異形が現れた。お前たちが来る直前だ。第一陣はすぐに撤退。……奴等は魔導術のようなものを使う。リーリエの歩兵部隊では役に立たぬ」
「そんな異形いマスか? 人が扮しているのでは……」
レオンが言うと、ヴォルフラントは首を振った。
「そう思うか少年よ。だが、元素の変化もない。どちらかと言うと、竜の吐く炎に近いのだ」
「竜など暫く見ておらんな。それに奴等がこのような愚行を犯すとも思えない」
ラオフェンが、一瞬の所作で出現させた杖を掲げる。巨大な大樹のような杖は前触れもなく光り始め、青い水泡を幾つも創り始めた。
水泡はやがて巨大な塊となり、意思を持ったかのように、炎の中へ次々と落ちていった。
「策も何も無いね。アンタ一人で片付くんじゃないかい?」
ノルテがせせら笑うと、レヒトは慌てたように言った。
「それでは困るぞ軍師殿。異形の殲滅に当たるのは歩兵部隊だ!」
ラオフェンが放った水の後、岩山から何かが蠢いて出てくるのが見えた。
まるで、焼け焦げた虫のような物が。
これほど遠くから見てもはっきりと輪郭が分かるのだから、実際は相当巨大な異形だろう。
収束する炎の中、じわじわとそれらが迫ってくる。
「ヴァッサミューレ。そなたに最小限の被害で済む作戦を頼みたい」
急いだ様子もなく、ヴォルフラントが、ノルテを真上から見下ろして言う。
ノルテはふんと鼻で笑い、茶目っ気たっぷりに舌を出した。
「はっ。これくらいの鎮圧、私じゃなくても出来るね。レオン、アンタがやってみな!」
「ハイィ?」
突拍子もない言葉に、レオンは目を丸くする。
その横で、ミリアも口に手を当てて驚いていた。
「な、何言い出すんデスか」
「準三級軍師とはいえ、アンタは私のお抱えだよ! ここらで実力見せてやりな!」
「で、デスけど」
弱腰になるレオンに、期待の視線を注ぐラオフェンとレヒト。
ミリアもまた、これは好機だと瞳で頷いている。
しかし、そんな中、たった一人だけ明らかに違う視線を注ぐ者が居た。
ヴォルフラントだ。
翡翠の瞳に籠る、暗く冷たい感情。レオンは、この視線を以前にも味わったことがある。
兄弟子たちから受けた、侮蔑の目だ。
そんな暗い男の側に、どうしてミリアが立っているのか。
――なんだよ、それ。
お前一体誰だよ。
「分かりました、やります」
頭で考える事もなく返事をしたのは、レオンにとって、これが初めてだったかもしれない。
灰色の瞳を一度きつく瞑り、レオンは炎へと立ち向かった。
リーリエに駐屯する部隊は、歩兵と弓兵が合わせて千五百ほどだった。
それというのも、部隊のほとんどが国境でアルゲオ山脈と、北側の駐屯地に回されている為、各都市に点在する部隊は最小限に留められている。
幸いなのは、東と西に隣接する国家が無いことだが、まさかこのような大規模な異形の襲撃に合うなど、予想はしていなかった。それも、海の方角から。
「さて、どうするのだ少年」
炎が消え始めた闇の中、ヴォルフラントが静かに問う。
彼の影から現れた従者が、レオンに地形図と、部隊表を書き記した書面を渡そうとした。が、レオンはそれをやんわりと断った。
「それくらい頭に入ってます」
驚いた面持ちで、ラオフェンとレヒトが顔を見合わせる。
何か助言をしようとレヒトが手を伸ばすが、それはノルテにより止められた。
不敵な笑みを浮かべるノルテに、レヒトは浮わついた手を仕方なく腰に当てた。
「では、何もかも分かっているであろう少年軍師よ。作戦は?」
ヴォルフラントのそれは、攻撃的な物言いだった。
まず、信用されていないのが丸分かりだ。何かあれば、師に全ての責任が行くのは明らかである。
レオンは、迫る異形の群れをしっかりと見つめ、崖の方に足を進めた。
その時、一瞬だけミリアに注がれた視線。自信に満ちた表情を見つめ、ミリアは穏やかに頷いた。
「敵は岩山から溢れてきています。第一線に歩兵部隊を五十。指揮能力の高い、第二歩兵部隊のゴルモア卿の部隊を配置してください」
「たったの五十で良いのか?」
ヴォルフラントが、口の奥で笑む。
それを挑戦と受け取ったレオンは、ヴォルフラントを真っ直ぐに見据えた。
「被害を最小にと仰ったのはヴォルフラント様ではありませんか。第二歩兵部隊のゴルモア卿は、他の年若い部隊長とは違って古くからの戦に長けた方だと聞いております。そんな方がどうして昇進もせずそこに……あ、いえ、これは関係ないですよ、ね」
言葉の途中で、ノルテの眉間に皺が寄ったことを確認したレオンは、口を手で押さえ言葉を封じ込めた。
お前は一言多い。無言で、そう言われてしまった。
「……そこまで我が歩兵を理解しているのなら、そうすればよい」
ヴォルフラントはどこか浮かない顔だったが、苦言を押し込めるように瞳を伏せる。
ほ、とレオンは小さく息を吐き、次にレヒトの方を見て、恭しく頭を下げた。
「レヒト様は特に火系の誓導術がお得意だと伺っております。どうか、ご協力願いたいのですが」
国の法務長官に向かって、堂々とした態度でレオンは言った。
レヒトは一瞬、レオンに対して怪訝な気を見せた。が、少年の目に籠る、何か決意のようなものを強く感じ取った。
ふと、ノルテを見る。レヒトの視線に、ノルテはまるで知らんぷりを通し、軽く肩を上げた。
「うむ……、そうか。私の力が必要なら協力しよう。何をしようか、ブラックロウザ軍師」
レヒトが、その腰元から瞬時に杖を出現させた。
白樺の木のように、清楚に長いその杖は、先端にイグニスの宝玉が光っている。
「感謝致します。では、こちらへ」
赤く揺らめく宝玉を誇らしげに携え、レヒトはどこか楽しげにレオンの後を付いていった。
それを渋い顔で見送るヴォルフラントに、ミリアが声をかけた。
「レオン軍師は、欠かしたことは無いんです」
「……何をだ?」
「毎日、どこにどれだけの兵が駐屯していて、どんな異動があって。ヴァッサミューレ様に上がってきたそれらの報告書に目を通すことを、欠かしたことがないのです」
確かに、準三級軍師の仕事には、最高軍師に上げる報告書全てに目を通し、纏める役割がある。だが、それは誤字や不備が無いかどうかを見定めるもので、その内容を覚える必要はない。
ましてや、覚えるほどじっくり見れる時間も与えられてはない筈だ。
ヴォルフラントの脳裏に、小さな部屋で黙々と本を読む童の姿が浮かび上がる。
色褪せた古い本を、熱心に読み耽る幼子は、こちらを見ることもなく、まるで陽の無い場所で育った草木のように、生気が無かった。
“この子はレオンさ。どうだい、賢そうな子だろう”
どこから拾ってきた、と聞かせることもなく、ノルテは笑った。
それはもう、どれだけ昔のことだったか。
あのように、大きくなっていたのか……。
「ヴォルフラント様?」
急に押し黙ったヴォルフラントを案じ、ミリアが声をかける。
その頭を軽く撫でたヴォルフラントは、炎に向かう少年の背に呟いた。
「五十の兵でどうするつもりか……。お手並み拝見といこうか。少年よ」
――勝算はあった。
リーリエの地形は把握していたし、海の方向に岩壁の群れがあることも。
ヴォルフラントが抱えている兵力がどれほどのものか。また、敵が攻めてきた時にこの城塞都市がどれほど有効かも、考えたことがあった。
自分が今までしてきたことは、無駄ではない。どれだけ疎まれようと、笑われようと、自分の思うようにひたすらに知識を貪ってきた。
それが今、公然と役に立つ時が来た。
師からすれば、すぐに鎮圧出来る戦況を、わざわざ任せてくれた。
耳に、あの不思議な子守唄が響いて鳴る。
「ありがとうございます、ノルテ様」
若き少年軍師は、緊張の糸と遊びつつ、口端を上げた。
――歩兵部隊の、頼りない人数が岩壁の前に飛び出したのは、それから間もなくのことだった。
先陣を切るのは、老いて尚猛々しいゴルモア卿。隆々として豪気な体躯が、鎧から張り裂けんばかりの巨漢だ。
目の前に迫る黒い異形の群れをもろともせず、馬を駆り、部隊を率いて突撃をかけた。
部隊が装備しているのは、全てが槍。銀の装飾が施された、勇壮な槍だ。
「異形の者に兵は要らぬ! このゴルモア一人で止めてみせようぞ!」
銀の兜が閃光のごとく駆け巡り、押し寄せてきた異形を槍で一凪ぎした。
輝くような光の筋が真一文字に大地を走り、前列を走っていた異形を高く打ち上げた。
星月夜に、その姿が一瞬だけ映る。
それは、足が溶けて腐敗した、巨大な蜘蛛のような異形だった。
「むっ、これは気色が悪いわい! このゴルモア、さすがに腰が引けるのう!」
とは言いながらも、ゴルモアは楽しげに走り回る。
その様子をリーリエの鐘の側から見ていたレオンは、目を細めた。
「さあ、そのまま敵を翻弄してくださいゴルモア卿」
吹き上げる風には、まだ炎の残り香がする。
鼻を擦り、レオンは彼方を見つめた。
リーリエの鐘がある場所から、一段低い場所。そこには、レヒトが杖を構えていた。
片膝を着き、祈るような姿で杖に額をつけている。
凛とした横顔に見惚れそうになりながら、レオンは彼女に向かって手を挙げた。
眼下では、ゴルモアにいいように遊ばれているとしか思えない異形の群れが、彼を追いかけて一つの波を作りつつあった。
例えばそれは、砂鉄に磁石を近づけて自由に動かしているような光景であった。
そして、それを操るのは、まぎれもなく少年軍師レオン。
あどけなさが残る瞳が、愉悦に歪んだ。
「旗を!」
レオンの言葉と共に、ゴルモアに向かって一つの旗が振られた。
ヴァイス王国の紋章が刻まれた巨大な旗を、旗手が一心不乱に振る。
それに気づいたゴルモアは、部隊を遠ざけ、単騎で走り出した。岩壁の間からは、まだこちらを狙う異形の気配がする。しかし、ゴルモアはそれに怖じけることはなかった。前のめりに馬を走らせ、槍を振り回している。
彼の馬は岩の郡と平行に、一直線に走っていく。それにつられ、異形は体液を撒き散らしながら追いかけた。
「さあ! 今デス!」
その時だった。それまで静かに祈りを捧げていたレヒトが立ち上がり、杖を掲げた。
イグニスの宝玉が弾けるように光り、レヒトの白いローブが羽根のように大きくはためいた。足元からは白煙が舞い上がり、彼女が身に纏う全ての宝石が力を持って煌めいた。媒介だ。
大気が、急激な変化を持ってレヒトの周囲を回転する。それは徐々に業火へと変化し、やがて巨大な魔導紋章を形成した。
炎を纏うレヒトは、片方の手を魔導紋章の中へ差し入れ、拳を強く握りしめた。
「“ゲヘナ・フレイア”!」
杖を支柱に、まるで弓を引くようにしてレヒトが唱える。
炎が、爆発するかのような轟音と共に、岩山の群れへと落ちていく。
衝突した瞬間、岩山はまるで津波の如く異形の真上に降り注いだ。
異形たちがそれに気付き、逃げようとした時は既に遅かった。ほとんどがその地滑りのような土砂の中に消え、かろうじて避けた者も、控えていた歩兵の槍で貫かれた。
粉塵が、舞い上がる。隠れていた異形が、そそくさと逃げていくのが見えた。
轟音が止んだ。馬をくるくると旋回させていたゴルモアは、リーリエの城の頂上に向かって槍を掲げた。
「リーリエの鐘をー! 鳴らせぇー!!」
それは、勝利を讃える喜びの鐘であった。
明るい鐘の音に、民の歓声が折り重なり、音楽のように夜を目覚めさせる。
ほっとするレオンに、兵士たちがこぞって近付き、頭を撫でた。
「よく指示が出来たな!」
「やるじゃないか!!」
「あのレヒト様も駒扱いするなんて大した奴だ!」
喧しい鐘と、喧しい声。レオンは鼓膜がじんじんと痛くなるのを感じていた。
こんな五月蝿いの、好きじゃない。
だが、自分を囲むのはひたすらに、笑顔、笑顔。
潔癖だというあのレヒトでさえ、レオンをまるで我が子のように抱き締めてきた。
「ブラックロウザ!」
薔薇の香りが、レオンの鼻の中に充満する。
新緑の髪がこれでもかと撫で付けられ、乱れて浮いた。
「よくやった! 備えがあれば、この程度の作戦は容易にこなせよう。しかしそなたは見知らぬリーリエでやってのけた! ブラックロウザ、そなたが準三級とは真に惜しい。取り成してやるぞ!」
「え……」
歓声の中、流れに飲まれて行ったその言葉。
それがどれほどの強い力を持った言葉であったか、レオンは後になって痛感するのであった。
「どうだい、ヴォルフラント。あんたが見たかったものは、見れたかい?」
ノルテが、知ったような口ぶりでヴォルフラントに言った。
「……見込みある少年だ」
ヴォルフラントは、ただ一言そう言い残し、城へと姿を消した。
ミリアが、ノルテと顔を合わせて笑い合う。
リーリエの鐘は、星の海を揺らすほどに、高く鳴り響いていた。
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