上 下
9 / 11
全ての始まり

勝手に殺すな

しおりを挟む
「あー、気持ち悪い。やばい、昼飯が出そう」

「大丈夫ですか? トーヤ様、これを飲んでください。マナポーションです」

 と、クローネは青色の液体が入った小瓶を渡す。蓋を開けるとかなり青臭く、少し飲むのを躊躇するが意を決して一気に飲むほす。

「ーーあれ? そこまで不味くないな。以外に甘いぞ、これなら.........」

 それは突然やってきた。甘い味に気を抜いた時に強烈な不味さが鉄、砲水のように押し寄せてきた。俺はなぜこんな事になったんだと思いながら気を失った。


 俺は昼飯を食べたあと、午後にある魔術の訓練に心踊らせていた。なんと言っても、異世界に来たら一番最初に思う事だろう。魔法を使いたいと。

 そして訓練場に着くと、勇者たちと黒板と椅子がある隅っこの方に連れていかれた。

「勇者の皆様、今からこの世界の魔法についてある程度の基礎を覚えて頂きます。その前に自己紹介を、私の名前はカリーナです。では時間もないのでサクサク行きます。」

 そう言われて最初に魔法の概念と基礎を座学で叩き込まれた。この世界の魔法は大まかに二つ、魔力をありとあらゆる現象に変化させる方、もう1つは魔力で魔法陣を作り現象を起こす。この2つに別れている。
 だが、どんな現象でも起こすことは出来ない。起こせるものは適正がある属性に限る。属性は基本属性の火、水、風、土、光、闇、無、そして、派生の氷、雷、空間、重力、時空、これが今現在確認されている属性だ。

「では今から確認していきたいと思います。では、誰から確認しますか?」

「俺から行くぞ。」

 と、キョースケが出てくる。するとカリーナは水晶玉のようなものを出す。それにキョースケが自分の魔力を流すと光だした。光は赤、黒、黄、の順番に光った。

「属性は火、闇、光で、魔力も多いですね。」

 どうやら光った色が得意な属性で、光の強さが魔力のようだ。次に測ったのはマヤ、属性は火、水、風、土、光、闇、氷、雷だ。かなり多いとカリーナは驚いていた。マリアは水、風、土、光の四種類。最後に俺だったが、全部光ったが、カリーナは驚かなかった。

「では次は魔法を使ってみましょう。まずは体にある魔力を感じとるところからです。感じ取れたらそれをゆっくり動かしてみてください」

 目を瞑って体の中に集中する。すると、身体中をゆっくり何かが動いてるのを感じる。それを動かそうとするが全く動かない。

『トーヤさん。体が新しくなった影響で、魔術回路が全くないため魔力を動かせないのだと思います。魔力が通るための血管のようなものをイメージして動かして見てください。』

『血管ね、血管。』

 俺は心臓から足の先にある毛細血管まで詳細に思い浮かべ、そこを魔力が血液が巡るように動かした。その結果出来たばかりの魔力回路に、高い圧力がかかった魔力が通る。細く弱い回路を無理やり広げられ焼き切れそうな熱さと痛み、そして大量の魔力が体から抜けたことによる脱力感と激しい吐き気が襲った。


「と、トーヤさん?大丈夫ですか?」

「あぁ、大丈夫だ。けど一瞬走馬灯を見た。昼から今までの。」

「ほんとに大丈夫ですか?それにしても一瞬気を失った時は死んだかと思いました」

「勝手に殺すなよ。縁起でもない。」

「トーヤさん少しよろしいですか?」

 カリーナに声をかけられ隅の方にいく。

「トーヤさんの魔力70じゃないですよね。だいたい500近くだと思うんですけど、なぜ隠しているのですか?」

「えっ?それは、あの.........すいません」

「それなりに理由があるんですね。なら深く聞きません。ですが、魔力の感知に長けている人には大体の魔力量が分かるので隠し方を教えます」

 カリーナ曰く、普通は魔力が体から漏れ出ているらしくそれを体内に留めることで隠せるそうだ。完全に隠すには全ての魔力をコントロールする必要があり、習得にはかなりの時間がかかる。

「トーヤさんには特別メニューを出します。24時間魔力を体中にめぐらせてください」

「分かりました。やってみます」

 言われた通りにやるが魔力が体から抜けていく。何度やっても変わらない。

「それではダメです。魔力を内側に巻き込むように動かしてみてください」

 そう言って勇者の方に歩いていく。

 それから3時間後、少しコツを掴んで来た時に訓練は終了した。部屋に帰ってからも、何度も魔力を動かしていると不思議なことが起きた。軽くコップを持っていただけなのに簡単に握り潰してしまったのだ。慌てているとクローネが飛んでくる。

「トーヤさん!どうしたんですか?」

「いや、魔力を動かしてコップを持っていただけなのに割れた。」

「持っていただけなのに?もう1回やってもらってもいいですか?」

 と、言われ魔力を動かすとテーブルを持つように言われた。なぜに?と思いながら持つと、何と綿あめのように軽く持つことが出来た。

「やっぱりですか。それは無属性魔法のブーストですね。それは魔力を体の中をコーティングしている感じです。」

「そうではなく魔力を練り上げて動かすとも体から魔力が漏れずコントロールの練習になります。」

 クローネは練り上げると言ったが、練り上げ方が分からない。しかもクローネは感覚派らしく、とりゃー、ぐぬぬなどオノマトペで説明をしてくる。

「ありがとうクローネ。もう少し頑張って見るよ。」

 一応そう言い、明日カリーナに聞きに行くことにした。


 トーヤ達が寝静まったころ王城の一室では2人の人物が密談をしている。

「勇者じゃないあの男はどうする?」

「そうですね。騎士団長に聞いた所なかなか見所のあるやつだと。賢者の方は飲み込みの早く教えがいあるとのことです。」

「そうか、評価はかなり高いな。」

 そう言うと、シーガの葉を丸めた葉巻をふかす。

「そう考えると勇者と同行させるか、騎士団長または宮廷魔術師として雇う方がいいかと。」

「なるほど。だか、本人が出ていきたいと言った場合はどうする?」

「その時は、あまり何もしない方がよろしいかと。もし何かした時に勇者達と仲が良かった時に困ります。」

 葉巻を吸っている男は少し考えると席を立つ。

「分かった。少し様子を見てトーヤに聴いておこう。」


 そこに残ったのはゆっくり昇る葉巻の煙と匂い誰だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

迷い人 ~異世界で成り上がる。大器晩成型とは知らずに無難な商人になっちゃった。~

飛燕 つばさ
ファンタジー
孤独な中年、坂本零。ある日、彼は目を覚ますと、まったく知らない異世界に立っていた。彼は現地の兵士たちに捕まり、不審人物とされて牢獄に投獄されてしまう。 彼は異世界から迷い込んだ『迷い人』と呼ばれる存在だと告げられる。その『迷い人』には、世界を救う勇者としての可能性も、世界を滅ぼす魔王としての可能性も秘められているそうだ。しかし、零は自分がそんな使命を担う存在だと受け入れることができなかった。 独房から零を救ったのは、昔この世界を救った勇者の末裔である老婆だった。老婆は零の力を探るが、彼は戦闘や魔法に関する特別な力を持っていなかった。零はそのことに絶望するが、自身の日本での知識を駆使し、『商人』として新たな一歩を踏み出す決意をする…。 この物語は、異世界に迷い込んだ日本のサラリーマンが主人公です。彼は潜在的に秘められた能力に気づかずに、無難な商人を選びます。次々に目覚める力でこの世界に起こる問題を解決していく姿を描いていきます。 ※当作品は、過去に私が創作した作品『異世界で商人になっちゃった。』を一から徹底的に文章校正し、新たな作品として再構築したものです。文章表現だけでなく、ストーリー展開の修正や、新ストーリーの追加、新キャラクターの登場など、変更点が多くございます。

強奪系触手おじさん

兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。

俺だけ成長限界を突破して強くなる~『成長率鈍化』は外れスキルだと馬鹿にされてきたけど、実は成長限界を突破できるチートスキルでした~

つくも
ファンタジー
Fランク冒険者エルクは外れスキルと言われる固有スキル『成長率鈍化』を持っていた。 このスキルはレベルもスキルレベルも成長効率が鈍化してしまう、ただの外れスキルだと馬鹿にされてきた。 しかし、このスキルには可能性があったのだ。成長効率が悪い代わりに、上限とされてきたレベル『99』スキルレベル『50』の上限を超える事ができた。 地道に剣技のスキルを鍛え続けてきたエルクが、上限である『50』を突破した時。 今まで馬鹿にされてきたエルクの快進撃が始まるのであった。

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...