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閉店間際のお客様
しおりを挟む19時すぎ、私達はご飯を食べに南の港へむかった。
「最悪ね…。」
18時頃から降りだした雨は未だに止まない。
このままでは折角の作戦も実行できないかもしれないわ。
「お嬢様、腹が減っては戦は出来ぬと申しますので、沢山食べましょう。」
パウロはお昼の白髭のお爺さんの姿のまま、ほんわかとした笑顔を私に向けた。
「そうね。」
メニューに目を通していると、雨でずぶ濡れになった私服の兵士が1人駆け込んできた。
「お嬢様、大変です!!」
「どうしたの!?」
「こ…侯爵が来ます…。」
え…?
「それは、私の夫が来るという事かしら…?」
「はい。雨で足止めされているので、ここへの到着はもう暫くかかりますが、確実にここへ向かってます。」
嘘でしょ…。
「何故ここへ来るの…?」
「理由は解りかねます。」
「そうよね。報告ありがとう。体が冷えてるから、早く宿に戻って温まって。」
「はい、失礼します。」
どういう事なの。
沢山仕事があるのに、港に来て何をするつもりよ。
「お嬢様、港の現状を侯爵はご存じですか?」
「いいえ。知っていたら港へ行く許可は出してもらえないわ。」
「もし、お嬢様を見送った後に知ったとしたら、心配して追いかけてくるのではないでしょうか?」
「心配するとは思うけど、お仕事を放っておく人ではないと思う。」
どんな理由にしても、もし21時までにトーマがここへ着いてしまったら、私は北の港を歩けなくなるわ。
『侯爵夫人を護る』という大義名分があるからこそ、カスターナ達や警察を動せる作戦なのよ。
私が安全な場に避難させられてしまえば、護衛が北の港に行く必要性が無くなってしまう。
私が違法薬物を買ってしまって、事件に巻き込まれているという事実があったとしても、私に付いてきた護衛兵が解決していい理由にはならないもの。
「パウロ、作戦を1時間前倒しに出来ないかしら…。」
「可能ですよ。」
パウロから、あっさり返事が帰って来た。
「既に『陽当たりの良い倉庫』に、警察を集めてあります。北の港の保管庫にはセロリ小隊の6人を潜ませてます。」
「準備万端ね。」
「視界が悪くなるのは不利ですが。」
そうよね。ただでさえ暗闇で私が誰なのか判別するのが難しいんだし。相手が気付かず素通りする事もありえるわ。
「…雨だと、犯人が外へ出てこないかもね。」
「利点もありますよ。雨音と荒れた波音は、我々の動く音を消してくれる。奇襲をかけるには丁度良い。」
「奇襲…、場所は解るの?」
聞いたけれど、パウロは微笑むだけで答えてはくれなかった。
「最悪ね…。」
18時頃から降りだした雨は未だに止まない。
このままでは折角の作戦も実行できないかもしれないわ。
「お嬢様、腹が減っては戦は出来ぬと申しますので、沢山食べましょう。」
パウロはお昼の白髭のお爺さんの姿のまま、ほんわかとした笑顔を私に向けた。
「そうね。」
メニューに目を通していると、雨でずぶ濡れになった私服の兵士が1人駆け込んできた。
「お嬢様、大変です!!」
「どうしたの!?」
「こ…侯爵が来ます…。」
え…?
「それは、私の夫が来るという事かしら…?」
「はい。雨で足止めされているので、ここへの到着はもう暫くかかりますが、確実にここへ向かってます。」
嘘でしょ…。
「何故ここへ来るの…?」
「理由は解りかねます。」
「そうよね。報告ありがとう。体が冷えてるから、早く宿に戻って温まって。」
「はい、失礼します。」
どういう事なの。
沢山仕事があるのに、港に来て何をするつもりよ。
「お嬢様、港の現状を侯爵はご存じですか?」
「いいえ。知っていたら港へ行く許可は出してもらえないわ。」
「もし、お嬢様を見送った後に知ったとしたら、心配して追いかけてくるのではないでしょうか?」
「心配するとは思うけど、お仕事を放っておく人ではないと思う。」
どんな理由にしても、もし21時までにトーマがここへ着いてしまったら、私は北の港を歩けなくなるわ。
『侯爵夫人を護る』という大義名分があるからこそ、カスターナ達や警察を動せる作戦なのよ。
私が安全な場に避難させられてしまえば、護衛が北の港に行く必要性が無くなってしまう。
私が違法薬物を買ってしまって、事件に巻き込まれているという事実があったとしても、私に付いてきた護衛兵が解決していい理由にはならないもの。
「パウロ、作戦を1時間前倒しに出来ないかしら…。」
「可能ですよ。」
パウロから、あっさり返事が帰って来た。
「既に『陽当たりの良い倉庫』に、警察を集めてあります。北の港の保管庫にはセロリ小隊の6人を潜ませてます。」
「準備万端ね。」
「視界が悪くなるのは不利ですが。」
そうよね。ただでさえ暗闇で私が誰なのか判別するのが難しいんだし。相手が気付かず素通りする事もありえるわ。
「…雨だと、犯人が外へ出てこないかもね。」
「利点もありますよ。雨音と荒れた波音は、我々の動く音を消してくれる。奇襲をかけるには丁度良い。」
「奇襲…、場所は解るの?」
聞いたけれど、パウロは微笑むだけで答えてはくれなかった。
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