そのうさぎ、支配者につき

コオリ

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《莉兎視点》

支配者としての本能 03

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 自分はベッドに腰掛けて、服をすべて脱がせたコウキを正面に立たせる。そのまま、Stay待てと言えば、小さく震えながらもコウキはその命令に従った。
 不安そうなその姿を黙って眺める。
 童顔もそうだが、体つきも三十歳とは到底思えなかった。
 小柄で全体的に細い印象がある。白い肌には張りもあって、莉兎の同年代ともそこまで変わらない気がした。運動は元々あまりしないのか、筋肉はほとんどついておらず、触れたらとても柔らかそうだ。
 染めたことのなさそうな黒髪は短く切り揃えられている。自分で選んだ髪型というよりは、美容師に勧められるまま切ってもらっているような印象だ。それでもコウキには良く似合っている。
 真面目そうというよりは、健気そうというべき見た目だが。

 ――実際、健気なんだけど。

「……ん」

 ただ眺めているだけなのに、コウキが小さく身体を揺らした。
 部屋は適温のはずなので、寒いというわけではないだろう。視線だけで感じているのだろうか。

「コウキ、後ろを向いて」
「……はい」

 Commandを使わずに指示を出す。
 それでもコウキはきちんと従ってみせた。その背中を見て、莉兎は小さく息を呑む。

 ――やっぱり、痕がある。

 背中には鞭で打たれた痕があった。一本鞭だろう。痕は随分薄くはなっているようだが、皮膚が裂けるほどに叩打されたことは間違いなさそうだ。
 莉兎はベッドから立ち上がると、コウキのほうに近づいた。
 コウキもそのことには気づいている様子だが、こちらを振り返ることはしない。きちんとStayのCommandを守ろうとしているらしい。

「――ッ!」
「痛む?」
「……いえ。驚いただけで」

 傷跡に指を這わせると、コウキはびくりと肩を揺らした。
 もう痛みはないようだが、ここを手加減もなく叩かれた恐怖が残っているのかもしれない。

 ――どんな相手だったんだよ。

 傷の手当てもまともにされなかったのかもしれない。
 いくつか引き攣れてしまっている痕もある。その場所にそっと唇で触れてみる。

「あ……、なに?」
「叩かれるのは好き?」
「……え、っと……好き、です」

 ――これは嘘だな。

 そう答えろと前のDomに強く躾けられてきたのだろう。
 その声に震えも怯えも感じなかったが、全く真実のようには聞こえない。
 本当の気持ちを話してもらえなかったことに憤りのような感情を覚える。だが、それと同時に彼の心からの叫びを聞きたいとも強く思った。
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