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《莉兎視点》
支配者としての本能 02
しおりを挟むそれなのに、コウキの前ではそれが大きく揺らぐのを感じる。
――俺の好みすぎるんだよ。
それが誤算だった。
本能が強く反応する相手に対してDom性をコントロールするというのは、そう簡単にできることではないらしい。
深く長く呼吸を繰り返し、少し顔を出した己の内側にある強いDomの欲求に無理やり蓋をする。
これを全部コウキにぶつけるわけにはいかない。
この二時間はコウキが買った時間だ。今は彼のためにプレイをし、満足させ、欲求を発散させてやるのが莉兎の役割なのだから。
――自分の欲求は二の次だ。
なるべく優しくプレイしなければ――、彼の欲しているものはDomからの愛情だ。強い支配でも、激しいプレイでもなく、ただ愛されることを望んでいる。
そんな感情が彼の言動や行動の端々から伝わってきていた。
――それを叶えてやらねばならない。満たしてやりたい。
そう願うのもDomの欲求だ。
Subを支配するというのは、別に痛みや恐怖で縛ることだけではない。愛情で支配するというのも間違いではないのだ。
「コウキ、Come。ここでKneel」
どんな要求をしても、コウキはセーフワードを使うことなく莉兎に従った。
いきなり、Stripと命令しても、素直に実行するほどだ。知らないCommandを使ったときは戸惑ったような表情を見せることもあったが、それでも抵抗する様子はなかった。
莉兎の教えたKneelにもすぐに順応してみせた。
Kneelと莉兎が言えば、足のすぐ隣に腰を下ろして、ぴとりと身体を莉兎の足に添わせる。
慣れない様子ながらも自分に従うコウキの姿を見るたび、莉兎は暴れそうになる己のDomの欲求を抑え込むのに必死だった。
少しでも油断をすれば強いDomの本能に呑み込まれそうになる。この子は何をすれば泣いて嫌がるだろう、などとひどいことを考えてしまう。
本当にまずい傾向だ。
――まさか、ここまでだなんて。
ほとんど一目惚れだった。
今まで自分が好きなタイプを意識したことなんてなかったが、コウキは莉兎の好みのど真ん中を突いているようだ。
相手に怯えながらも健気に尽くそうとする。Glareを素直に受け入れ、快楽にも従順だ。
欲なんてなさそうな見た目なのに気持ちいいことが好きで、それを自分から貪欲に求めようとするのも可愛らしかった。
――嫌なところが一つも見つからない。
メンタルが弱く、たまに前のパートナーを思い出して暗い顔をする仕草すら莉兎のDom性を刺激した。
嗜虐心がひどく唆られる。
自分もこんな風にSubを苦しめたい。心を自分のことでいっぱいにしてやりたい、そう思ってしまう。
それがおかしな思考だとわかっているのに抑えが利かない。何度、蓋をしようとも内側から抉じ開けるように強い本能が顔を出す。
Domの心理をいかに読み解き、理解しようとしたところで己の本質は何も変わらないことをそろそろ認めるしかなさそうだった。
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