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《幸季視点》
あたたかな支配 02
しおりを挟む――Glareのせいだ。
GlareはSubの本能を揺さぶり、本性を暴きにかかってくる。その力が強いほど、幸季の理性は押し負けてしまう。
どうやっても、自分の心を偽れそうにない。
「コウキのその顔、好きだな」
「どんな、顔……?」
「すごく俺のことが欲しいって顔」
――やっぱり、気づかれてる。
このDomに嘘をつくのは無理だと思った。
観念した瞬間、腰のあたりから重い快感が湧き上がってくる。身体の奥が疼いてたまらない。
「腰、揺れてるよ」
「だ、って……」
「コウキはさ、前のパートナーに抱かれてたの?」
首を横に振る。
彼に抱かれたことは一度もなかった。
何度か抱きしめてくれたことはあったけれど、触れ合いといえばそれだけ。それも最近では、すっかりなくなってしまっていた。
――彼の体温を最後に感じたのは、いつだったかな。
触れ合った回数だけでいえば、もう既にリウのほうが彼を超えてしまっているかもしれない。
長い付き合いだったはずなのに、あまりに希薄だった彼との関係に愕然とする。
「キスをしたことは?」
「それも、……ない」
この幸季の答えには、リウも驚いているようだった。
目を瞬かせて、幸季の顔を見つめている。
「もったいないことしたね。そのDomは」
「……もったいない?」
「ああ、でも……初めてを残しておいてくれたのはよかったかな」
リウが席から立ち上がって幸季のすぐ傍まできた。隣に立って、間近でじっと幸季の顔を覗き込んでくる。
でも、唇が触れることはなかった。
吐息のかかるほどの至近距離で、瞳の中を覗き込んでくるだけだ。
――あと、少しの距離なのに。
触れてみたい、そう思った。
他人の唇がどんな感触なのかすら知らない。リウの唇の感触を想像してしまう。
「キス、したい?」
その唇が紡いだ問いに、悩むこともなく頷いていた。
リウの唇から視線が離せない。
すっ、とその唇の端が持ち上がったかと思えば、ふわりと顔の周りの空気が動いた。
幸季の唇に、柔らかな感触が触れる。
――キス、してる?
すぐ近くにリウの睫毛が見えた。
じっとそれを見つめていると、ふるりと睫毛が揺れ、ゆっくりと瞼が開く。
Glareを含んだ視線が絡んだ。
「口、少し開けて」
少し口を離してそう囁いたリウに、角度を変えてもう一度口づけられた。
今度は咥内に舌が侵入してくる。
「ん、ふ……ぁっ」
縦横無尽に動く舌に口の中を侵食された。上顎を舐められ、びくっと身体が跳ねる。思わず、目の前のリウの肩に縋りつくように腕を回した。
リウのほうからも触れてくる。
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