そのうさぎ、支配者につき

コオリ

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《幸季視点》

取り上げられた首輪 03

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 彼もそうだった。いつにも増して冷たい視線を幸季に向け、まるで奴隷のように幸季のことを扱った。

 ――だけど、それで満たされていた。

 毎回、Subという性の浅ましさを思い知らされた。
 人にひざまずき、蔑まれることで満たされるなんて――自分の本質はこれなのだとプレイによって自覚させられ続けた。

「……っ、?」

 突然、ひくんと身体が揺れる。
 胸の奥からぞわりぞわりと何かが湧き起こる感覚に、思わず服の上から胸を掻きむしった。

「なに、これ」
「何って、俺のGlareグレアだよ。ちゃんと感じてるみたいだね」
「あ、……ぁ」
「ほら、Look俺のほう見て

 与えられたGlareとCommandに身体が勝手に動く。そんなことは初めてだった。
 命令に従うことには、常に緊張を強いられてきた。与えられたCommandに遅れず従い、少しでも長く彼に気に入ってもらえるようにと、いつも必死だった。
 それでもうまくできなくて、お仕置きされたことは何度もある。自分はダメなSubなのだとずっと思っていた。
 それなのに――、

「はしたなくて可愛い顔。俺が好きなタイプのSubだな、コウキは」
「……っ、ンっ」

 好きなんて誰かに面と向かって言われたのは初めてで、それだけで身体が反応してしまう。
 その上、優しく顎のあたりを撫でられて、直接感じたリウの体温にとろりと思考がとろけてしまいそうになる。

「そう。そのまま、俺に委ねて」
「……はい」
Good boyいい子だね、コウキ」
「ん、ぁ……ッ」

 ――こんなことで、褒めてもらえるなんて。

 彼とのプレイでは考えられないことばかりだ。
 いつも褒めてもらえるのは最後だけだった。褒めてもらうということはプレイの終了を意味していたのに、リウはどうやら違うらしい。

「じゃあ、コウキ。Kneel跪いて

 優しく命じられる。
 一旦腰掛けていたベッドから立ち上がり、幸季はすとんとリウの隣に跪いた。

「コウキのKneelは正座なんだね。似合ってるけど、なんか少し物足りないかな」
「どう、したら」
「そうだね。そのまま、俺の足にもたれかかってみて」
「え……?」
「ほら、いいから」

 ――跪くためのCommandなのに、Domの足に凭れかかるって。

 そんなKneelは聞いたことがない。
 だが、Domの命令は絶対だ。幸季は戸惑いながらもリウの指示に従う。おそるおそる足のほうに近づき、肩をぴとりと太腿に押し当てた。

「控えめだね。もっとしがみつくみたいにくっついてくれていいんだよ?」
「! それは……っ」
「無理? まあ、そのうち慣れたらでいいけど」

 そう言いながら、リウは幸季の頭を撫でる。
 そのままぐいっと引き寄せられ、頬がリウの足に触れるほど密着させられてしまった。

「これぐらい自分から来てくれたら嬉しいんだけどな」
「努力、します」
「うんうん。頑張って」

 プレイは始まっているはずなのに、リウの調子は最初と変わらない。違うのはGlareの有無だけだ。
 前の彼とは全く違うプレイにどう振舞えばいいのか、まだちゃんと決められない。
 幸季は戸惑いながら、視線をリウのほうへと向けた。
 そうして、次のCommandを待つ。
 じっとこちらを見ていたリウが、その視線に気づいて、安心させるように優しく微笑んだ。
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