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おたがいの真実【凌】01
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「……だから、ごめんって」
別にそこまで怒ってるわけじゃない。
だけど、何だか引くに引けない感じになってしまった。
志乃くんと秋也は、何だかいい雰囲気になっている。でも同じ広い湯船の中で、こっちは颯斗からの謝罪の言葉を聞いていた。
颯斗のしょぼくれた顔は本当にワンコみたいだ。
いつも嫌われないようにって、その顔色をうかがっていたのは僕の方なのに。まさか颯斗からこんな風に謝られる日がくるなんて、思ってもみなかった。
「……恥ずかしかったんだよ?」
そう言って俯く。颯斗がまた「ごめん」と謝る声が聞こえた。
でも……気持ちがよかったのも本当だ。
恥ずかしいことが気持ちいいなんて、今まで考えたこともなかったのに。
だから余計にショックだった。いや、衝撃的だったんだ。こんな風に気持ちの余裕がなくなってしまうぐらいには。
「……俺のこと、嫌いになった?」
普段なら絶対に即答でそんなことない、って答えるのに……いや、今だって嫌いになったなんてこと絶対ありえないのに、どうしても気持ちを言葉にできなかった。
俯いたまま、ちゃぷちゃぷと揺れるお湯を見つめる。
拗ねた子供みたいだ。
そうわかっていても、どうしようもない。気持ちの整理がうまくできない。
「……ッ」
その時、ざぱんとお湯が跳ねた。
かと思えば、俯いたままの頭ごと、ぎゅっと胸の中に抱きしめられる。
「嫌いにならないで」
「……、はや、と?」
「俺、凌に嫌われたくない」
颯斗の言葉は信じられないものだった。
だって、それじゃ……その言い方じゃ。
―――好きなのは、僕の方だけじゃないの?
颯斗は興味本位で僕と付き合ってくれているんだとばっかり思ってたのに……そんな風に言われたら勘違いしてしまいそうになる。
颯斗も僕のことを本当に好きでいてくれるんだって。
「……なんで、そこでそんな驚いた顔」
「だ、って」
「もしかして、俺の気持ち……全然伝わってなかった?」
そう言われてしまうほど、きょとんとした顔をしてしまっていたのだろう。思わず言葉を失っていると、ちゅ、と柔らかい唇が額に触れた。
そこから瞼、頬と降りてきて、最後にそっと唇に触れる。
「俺もずっと好きだった、って言ったと思ったけど」
「……いつ?」
「本当に覚えてないの?」
覚えてない。そんなの言われた記憶がない。
こくん、と頷くと颯斗が僕の方に頭を置いて、はぁぁぁ、と長い溜息をついた。
「……告白された日にちゃんと言ったよ?」
「本当に?」
「ホント……そんなに疑うんなら証人もいるけど」
「証人、って……?」
「飲み会にいたみんな。あの日……凌ってば、みんなの前で俺に告白したし」
「えッ……ぇええ!!」
「それも覚えてないの?」
覚えてない。
嘘だ。そんなの……優しく介抱してくれた颯斗に「好き」と言ってしまったのは覚えてる。それで「俺と付き合いたいの?」って聞かれたのもそれに頷いたのも。
でも確かに、その前後の記憶は曖昧だった。
あれがどこだったのか、いつだったのか……あの日、どうやって家に帰ってきたのかも全然思い出せない。
別にそこまで怒ってるわけじゃない。
だけど、何だか引くに引けない感じになってしまった。
志乃くんと秋也は、何だかいい雰囲気になっている。でも同じ広い湯船の中で、こっちは颯斗からの謝罪の言葉を聞いていた。
颯斗のしょぼくれた顔は本当にワンコみたいだ。
いつも嫌われないようにって、その顔色をうかがっていたのは僕の方なのに。まさか颯斗からこんな風に謝られる日がくるなんて、思ってもみなかった。
「……恥ずかしかったんだよ?」
そう言って俯く。颯斗がまた「ごめん」と謝る声が聞こえた。
でも……気持ちがよかったのも本当だ。
恥ずかしいことが気持ちいいなんて、今まで考えたこともなかったのに。
だから余計にショックだった。いや、衝撃的だったんだ。こんな風に気持ちの余裕がなくなってしまうぐらいには。
「……俺のこと、嫌いになった?」
普段なら絶対に即答でそんなことない、って答えるのに……いや、今だって嫌いになったなんてこと絶対ありえないのに、どうしても気持ちを言葉にできなかった。
俯いたまま、ちゃぷちゃぷと揺れるお湯を見つめる。
拗ねた子供みたいだ。
そうわかっていても、どうしようもない。気持ちの整理がうまくできない。
「……ッ」
その時、ざぱんとお湯が跳ねた。
かと思えば、俯いたままの頭ごと、ぎゅっと胸の中に抱きしめられる。
「嫌いにならないで」
「……、はや、と?」
「俺、凌に嫌われたくない」
颯斗の言葉は信じられないものだった。
だって、それじゃ……その言い方じゃ。
―――好きなのは、僕の方だけじゃないの?
颯斗は興味本位で僕と付き合ってくれているんだとばっかり思ってたのに……そんな風に言われたら勘違いしてしまいそうになる。
颯斗も僕のことを本当に好きでいてくれるんだって。
「……なんで、そこでそんな驚いた顔」
「だ、って」
「もしかして、俺の気持ち……全然伝わってなかった?」
そう言われてしまうほど、きょとんとした顔をしてしまっていたのだろう。思わず言葉を失っていると、ちゅ、と柔らかい唇が額に触れた。
そこから瞼、頬と降りてきて、最後にそっと唇に触れる。
「俺もずっと好きだった、って言ったと思ったけど」
「……いつ?」
「本当に覚えてないの?」
覚えてない。そんなの言われた記憶がない。
こくん、と頷くと颯斗が僕の方に頭を置いて、はぁぁぁ、と長い溜息をついた。
「……告白された日にちゃんと言ったよ?」
「本当に?」
「ホント……そんなに疑うんなら証人もいるけど」
「証人、って……?」
「飲み会にいたみんな。あの日……凌ってば、みんなの前で俺に告白したし」
「えッ……ぇええ!!」
「それも覚えてないの?」
覚えてない。
嘘だ。そんなの……優しく介抱してくれた颯斗に「好き」と言ってしまったのは覚えてる。それで「俺と付き合いたいの?」って聞かれたのもそれに頷いたのも。
でも確かに、その前後の記憶は曖昧だった。
あれがどこだったのか、いつだったのか……あの日、どうやって家に帰ってきたのかも全然思い出せない。
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