友人カップルとセックスを見せあうことになりました

コオリ

文字の大きさ
上 下
26 / 27

おたがいの真実【凌】01

しおりを挟む
「……だから、ごめんって」

 別にそこまで怒ってるわけじゃない。
 だけど、何だか引くに引けない感じになってしまった。
 志乃くんと秋也は、何だかいい雰囲気になっている。でも同じ広い湯船の中で、こっちは颯斗からの謝罪の言葉を聞いていた。
 颯斗のしょぼくれた顔は本当にワンコみたいだ。
 いつも嫌われないようにって、その顔色をうかがっていたのは僕の方なのに。まさか颯斗からこんな風に謝られる日がくるなんて、思ってもみなかった。

「……恥ずかしかったんだよ?」

 そう言って俯く。颯斗がまた「ごめん」と謝る声が聞こえた。
 でも……気持ちがよかったのも本当だ。
 恥ずかしいことが気持ちいいなんて、今まで考えたこともなかったのに。
 だから余計にショックだった。いや、衝撃的だったんだ。こんな風に気持ちの余裕がなくなってしまうぐらいには。

「……俺のこと、嫌いになった?」

 普段なら絶対に即答でそんなことない、って答えるのに……いや、今だって嫌いになったなんてこと絶対ありえないのに、どうしても気持ちを言葉にできなかった。
 俯いたまま、ちゃぷちゃぷと揺れるお湯を見つめる。
 拗ねた子供みたいだ。
 そうわかっていても、どうしようもない。気持ちの整理がうまくできない。

「……ッ」

 その時、ざぱんとお湯が跳ねた。
 かと思えば、俯いたままの頭ごと、ぎゅっと胸の中に抱きしめられる。

「嫌いにならないで」
「……、はや、と?」
「俺、凌に嫌われたくない」

 颯斗の言葉は信じられないものだった。
 だって、それじゃ……その言い方じゃ。

 ―――好きなのは、僕の方だけじゃないの?

 颯斗は興味本位で僕と付き合ってくれているんだとばっかり思ってたのに……そんな風に言われたら勘違いしてしまいそうになる。
 颯斗も僕のことを本当に好きでいてくれるんだって。

「……なんで、そこでそんな驚いた顔」
「だ、って」
「もしかして、俺の気持ち……全然伝わってなかった?」

 そう言われてしまうほど、きょとんとした顔をしてしまっていたのだろう。思わず言葉を失っていると、ちゅ、と柔らかい唇が額に触れた。
 そこから瞼、頬と降りてきて、最後にそっと唇に触れる。

「俺もずっと好きだった、って言ったと思ったけど」
「……いつ?」
「本当に覚えてないの?」

 覚えてない。そんなの言われた記憶がない。
 こくん、と頷くと颯斗が僕の方に頭を置いて、はぁぁぁ、と長い溜息をついた。

「……告白された日にちゃんと言ったよ?」
「本当に?」
「ホント……そんなに疑うんなら証人もいるけど」
「証人、って……?」
「飲み会にいたみんな。あの日……凌ってば、みんなの前で俺に告白したし」
「えッ……ぇええ!!」
「それも覚えてないの?」

 覚えてない。
 嘘だ。そんなの……優しく介抱してくれた颯斗に「好き」と言ってしまったのは覚えてる。それで「俺と付き合いたいの?」って聞かれたのもそれに頷いたのも。
 でも確かに、その前後の記憶は曖昧だった。
 あれがどこだったのか、いつだったのか……あの日、どうやって家に帰ってきたのかも全然思い出せない。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

上司と俺のSM関係

雫@更新予定あり
BL
タイトルの通りです。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

大好きな兄ちゃんにアナニーをみせる弟!

ミクリ21
BL
お兄ちゃんにアナニーをみせる弟の話。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

処理中です...