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おたがいの真実【志乃】02
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「……志乃、平気か?」
「ぅ……うん。平気」
後ろから抱きかかえられて、お湯の中で優しく身体を撫でられた。その長い指にさっきまで身体の奥を暴かれていたのかと思うと、肌に触れられるだけで胸がとくりと跳ねる。
ふるりと身体を震わせたのに気づいたのか、シュウが肩越しにボクの顔を覗き込んできた。
「触るの嫌か?」
「ちが……っ」
「無理をさせたから、嫌がられても仕方ないが」
「だから、違うって!」
慌てて身体を反転させる。
ぎゅっ、と力を込めて、目の前のシュウの身体に抱きついた。
「……好き、だから。ドキドキしただけ」
「本当か?」
「ホントだよ」
シュウこそ、こんなボクは嫌じゃないんだろうか。
そう聞く前に、シュウの腕がボクの背中に回された。同じぐらい強い力でぎゅっと抱きしめられる。
「さっきの話……同じときから好きだったんだな」
「え?」
「……前から三両目の真ん中の扉」
「―――ウソ、それ……」
シュウが言ったのはボクが高校の通学に使っていた電車で決まって乗っていた場所だった。前から三両目の真ん中の扉。そこに乗ると、その近くに座っているシュウが見えたから。
扉のすぐ隣には手すりがあって、こっそりと視線を送るのにちょうどよかったんだ。
―――気づかれてた? あの時から。
あの時のボクと今のボクが同一人物だってことにも、気づかれてたの?
今の見た目になったのは大学に入ってからだ。高校生の時はまだ黒髪で地味な見た目だったはずなのに、どうして。
「……なんで、気づいて」
「俺もずっと見てたからな」
「―――ッ」
嘘だ。そんな……シュウからも、見られてたなんて。
視線が合ったことは一度もないはずだ。一方的にボクが見ていただけなんだから。確かにずっと見ていたわけではないけど―――シュウはいつ、ボクを見ていたんだろう。
「だから、一度きりで終わらせるわけなんてないだろ」
「……本当に?」
「まだ疑うのか?」
「だ、って……ん、ッ」
言葉は続かなかった。唇が塞がれたからだ。
舌先で唇を撫でるように擽られ、鼻から甘い声が漏れる。
「……ぁ、はぁ……」
「蕩けるのが早いな」
「だ、ってぇ……」
そんな射るような目で。
しかもこんな至近距離からシュウに見つめられれば、誰でもこうなっちゃうと思う。
「……じゃあ、また抱いてくれる?」
「今からか?」
「それも、だけど……ボクもシュウとたくさん、一緒にいたい」
凌ちゃんたちみたいに。
振り返ると、凌ちゃんと颯斗くんもキスをしていた。
あの二人みたいに、一年経ってもああやっていれたらいいのに……、そんな風に考えちゃうのは、やっぱりわがままなのかな。
「志乃」
名前を呼ばれて、シュウの方に視線を戻す。
密着した身体はお湯の中でも何だか熱く感じて、ボクはとろりとした視線でシュウの顔の方を見つめた。ずっと好きだった人の顔。その瞳の中にボクが映ってる。
頭にシュウの手が触れた。優しい手つきで何度も撫でられる。
「一年後の記念日、どこに行きたいか考えておけ」
シュウの言葉にボクは目を大きく見開いた。
だって、それって……ボクと少し先の未来を約束してくれるってことでしょ?
「……どこでも、いいの?」
「あぁ。海外でもどこでも―――志乃の行きたいところを言えばいい」
「―――じゃあ、考えとくね?」
今はその言葉だけで満足だ。
えへへ、と気の抜けた笑い声をもらしながら、ボクはもう一度、シュウの身体にぎゅっと抱きついた。
「ぅ……うん。平気」
後ろから抱きかかえられて、お湯の中で優しく身体を撫でられた。その長い指にさっきまで身体の奥を暴かれていたのかと思うと、肌に触れられるだけで胸がとくりと跳ねる。
ふるりと身体を震わせたのに気づいたのか、シュウが肩越しにボクの顔を覗き込んできた。
「触るの嫌か?」
「ちが……っ」
「無理をさせたから、嫌がられても仕方ないが」
「だから、違うって!」
慌てて身体を反転させる。
ぎゅっ、と力を込めて、目の前のシュウの身体に抱きついた。
「……好き、だから。ドキドキしただけ」
「本当か?」
「ホントだよ」
シュウこそ、こんなボクは嫌じゃないんだろうか。
そう聞く前に、シュウの腕がボクの背中に回された。同じぐらい強い力でぎゅっと抱きしめられる。
「さっきの話……同じときから好きだったんだな」
「え?」
「……前から三両目の真ん中の扉」
「―――ウソ、それ……」
シュウが言ったのはボクが高校の通学に使っていた電車で決まって乗っていた場所だった。前から三両目の真ん中の扉。そこに乗ると、その近くに座っているシュウが見えたから。
扉のすぐ隣には手すりがあって、こっそりと視線を送るのにちょうどよかったんだ。
―――気づかれてた? あの時から。
あの時のボクと今のボクが同一人物だってことにも、気づかれてたの?
今の見た目になったのは大学に入ってからだ。高校生の時はまだ黒髪で地味な見た目だったはずなのに、どうして。
「……なんで、気づいて」
「俺もずっと見てたからな」
「―――ッ」
嘘だ。そんな……シュウからも、見られてたなんて。
視線が合ったことは一度もないはずだ。一方的にボクが見ていただけなんだから。確かにずっと見ていたわけではないけど―――シュウはいつ、ボクを見ていたんだろう。
「だから、一度きりで終わらせるわけなんてないだろ」
「……本当に?」
「まだ疑うのか?」
「だ、って……ん、ッ」
言葉は続かなかった。唇が塞がれたからだ。
舌先で唇を撫でるように擽られ、鼻から甘い声が漏れる。
「……ぁ、はぁ……」
「蕩けるのが早いな」
「だ、ってぇ……」
そんな射るような目で。
しかもこんな至近距離からシュウに見つめられれば、誰でもこうなっちゃうと思う。
「……じゃあ、また抱いてくれる?」
「今からか?」
「それも、だけど……ボクもシュウとたくさん、一緒にいたい」
凌ちゃんたちみたいに。
振り返ると、凌ちゃんと颯斗くんもキスをしていた。
あの二人みたいに、一年経ってもああやっていれたらいいのに……、そんな風に考えちゃうのは、やっぱりわがままなのかな。
「志乃」
名前を呼ばれて、シュウの方に視線を戻す。
密着した身体はお湯の中でも何だか熱く感じて、ボクはとろりとした視線でシュウの顔の方を見つめた。ずっと好きだった人の顔。その瞳の中にボクが映ってる。
頭にシュウの手が触れた。優しい手つきで何度も撫でられる。
「一年後の記念日、どこに行きたいか考えておけ」
シュウの言葉にボクは目を大きく見開いた。
だって、それって……ボクと少し先の未来を約束してくれるってことでしょ?
「……どこでも、いいの?」
「あぁ。海外でもどこでも―――志乃の行きたいところを言えばいい」
「―――じゃあ、考えとくね?」
今はその言葉だけで満足だ。
えへへ、と気の抜けた笑い声をもらしながら、ボクはもう一度、シュウの身体にぎゅっと抱きついた。
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