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いきなりお風呂って普通なの?【凌】04
しおりを挟む「遅かったな」
コテージに入るなり、そう言って僕たちを出迎えたのは秋也だった。
てっきり二人きりなのだとばかり思っていた僕は、その突然の登場に驚く。
慌てて隣を見上げたけど、颯斗に驚いた様子はなかった。どうやら元々、この予定だったらしい。
普通に考えてみれば当たり前だ。こんな立派なコテージを貸切なんて……友人とはいえ、他人に簡単に貸してくれるはずがない。あれは一緒に使うという意味だったのだ。
わざわざ出迎えてくれた秋也に向かって、ガッカリした顔をしてしまわなかっただろうか。自分勝手に考えすぎていた僕は、少し恥ずかしくなって顔を俯かせる。
幸い、颯斗も秋也も僕の方を見ていないようだった。
「約束の時間ちょっとすぎたぐらいだろ? お前らは? そんな早く着いたのか?」
「一時間ぐらい前だな」
「別にあんま変わんないだろ。逆に、もうしばらく二人きりがよかったんじゃねえの?」
「俺はそうだが……あっちはどうだろうな」
二人は本当に仲が良い。
学内でも人気のあるイケメンが二人、こうして目の前で並んで話をしているだけで眼福だった。
僕よりも頭一つ分近く背が高い二人をぼんやり眺めていると、秋也の視線がちらっと僕の方を見た。
その鋭い視線に少しだけ鼓動が跳ね上がる。
「凌、疲れたんじゃないのか?」
「え……あ、別にそんなことは」
僕と違って、秋也は平気な様子で僕のことを呼び捨てにする。それにもまだ慣れない。
だって、こんな別世界の住人のようなイケメンからそんな風に名前を呼ばれるなんて……どうやっても慣れるものじゃないと思う。
僕が返事にまごついているうちに、秋也の視線はまた颯斗の方に戻ってしまう。
「お前ら、食事は?」
「ん。途中で軽く食べてきた」
「じゃあ、凌。先に風呂入ってくるか?」
え? 僕? ……っていうか、お風呂??
秋也の突然の提案に僕は驚く。
人の別荘に来て、いきなりお風呂を勧められるのは普通なのだろうか。こんなところ、来たことがないから、何をどうするのが正解なのかわからない。
僕は困って、隣の颯斗を見上げる。
「いいじゃん。入ってこいよ」
「え……でも」
「いいから。な?」
颯斗にまでそう言われてしまえば、僕にはもう断ることもできない。
わたわたと慌てているうちに、僕はお風呂に繋がる扉の前まで案内されてしまっていた。
手に持っていたはずの荷物は颯斗に奪い去られ、代わりにバスタオルが手渡されていた。いつの間に……あまりの早業に、それを受け取った記憶すらない。
「……とりあえず、入ろっかな」
ここで断って、二人の元に戻るのも変な話だ。
僕は小さく溜息をつきつつ、お風呂に繋がる扉のノブに手を掛けた。
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