へびのとりこ

へびのきゅうあい

07

「……ヤト、もっとくっつきたい」
「ッ、あんまり、煽るな」

　え？　今の煽ったことになるの？
　難しいな。本当にくっつきたいだけなんだけど。あの匂いも嗅ぎたいんだけどな。ダメかな？　やっぱ。
　ダメ元で、頬に触れていた手をそのままヤトの首の後ろに伸ばしてみた。匂いが一番強く感じられたうなじ辺りに手のひらを擦りつけて、自分の顔の近くに持ってくる。

「んー……やっぱりしない」
「何をしている」
「匂い。嗅ぎたいなぁって……手につかないかなって、思ったんだけど」

　その匂いは手とかにはどうも移らないみたいだった。
　それとも、今はあの匂いしてないのかな。

「そういえば、さっきもしてたけどあの匂いって、結局何なの？」
「……ッ、それは」

　またヤトの顔が赤くなった。あ、鱗のところはあんまり赤くならないんだ。ちょっと発見した気分。赤面するヤトはやっぱり可愛い。
　まぁ、俺のナカに入ってるあれは全然可愛くないけど。

「そんなに、気になるのか？」
「気になるでしょ、そりゃ……なんかいい匂いだし」

　それに、聞くたびにいちいちそんな照れたりされたら、気になっちゃうだろ。
　どう考えたって。

「あの匂いは…………、だ」
「ん？」

　よく聞こえなかった。
　聞き返すと、さらにヤトの顔が赤くなる。ええっと、何か悪いことしてる気分になってきたんだけど。でも、ここまで来たら俺も引き下がれない。

「ごめん……なんて？」
「……求愛、だ」

　今度はちゃんと聞こえた。聞こえたけど…………

「求愛って、あの……求愛？　求める愛って書いて、求愛？？」
「何度も言うな！」
「んぁッ、ちょ……急に動かないで、ナカ……」
「あぁ、悪い」

　求愛って、求愛であってるよな？　え？　あの匂いって、ヤトからの求愛ってこと？
　嘘、じゃあ、あの時も今も……俺、ヤトに求愛されてるってこと？
　ぅえええええええええええええ！！！

「求愛って……ッ、んぁあッ」

　もう一度聞こうと思ったら、とん、と軽く腰を動かされた。
　奥を突かれて、甘い声が出る……そんなに聞いてほしくないのか。わかったって。

「ぁ、あ、もう、ヤト……こらッ、急に」

　そのひと突きで我慢ができなくなったのか、ヤトが急に動きを再開した。
　ごつごつを奥だけを責めるような余裕のない動き。でも、それは俺にも堪らなくよかった。がつがつ揺さぶられながら、高い声で喘ぐ。
　何かにしがみつきたくて、頭の脇で布団をぎゅっと握っていると、その手の上にヤトの手が触れた。白くて長い指が労わるように俺の指に絡められる。
　あんまり余裕ないくせに、こういうところにちょっと胸がきゅんとなる。