へびのとりこ

コオリ

文字の大きさ
上 下
6 / 14
へびのとりこ

06

しおりを挟む
「……奥、きて、ヤト」
「あぁ」

 一瞬、少し腰を引いたかと思ったら、ぐん、と今までにない勢いで腰が押し付けられた。俺のお尻とヤトの体が密着するのを感じて、さっきより深く繋がったんだとわかった。
 けど、俺がそういう風に考えられたのはそこまでだ。

「んぁあああ!! ひっ、ひ……ッ」

 衝撃に悲鳴を上げて、次に息もできなくなった。
 視界が真っ白になって、溺れたみたいにもがく。びくびくと打ち上げられた魚みたいに跳ねる体が止められない。快感とも違う、これはなんだ?

「すごい締め付けだな……こんなに乱れて、可愛いぞ。睦月」
「ひっ、ぅッ……」

 ヤトの声はするけど、何も見えない。
 この衝撃から逃げたいのに、手足は硬直したままで全く動かせない。
 このまま死ぬ……本気でそう思った。

「さ、この奥に子種をくれてやる。しっかり受け止めろ」

 何を言われてるのかも、わからなかった。
 必死で息を吸おうとするのにできなくて、壊れた人形みたいにひくりひくりと体を震わせるだけだ。
 首元に温かさと吐息が触れた。
 次の瞬間、そこに鋭い痛みと熱が走ったかと思えば、お腹の中にも熱い濡れた感覚が広がる。その両方からの熱さに、真っ白だった目の前がさらに眩しくなるみたいになる。
 壊れる、壊される……こんなの、無理だ。

「ひ―――ッ!」

 そんな強い両方の衝撃に耐えられるわけなんかなく、俺は真っ白な世界から真っ黒な世界に強い力で引きずり込まれた。


* * *


 温かい……これ、お湯? お風呂の中?

 ぴちゃり、と濡れた音に間違いなく風呂の中なのだと確認する。
 重い瞼を何とかこじ開けると、目の前に白い肌が見える。白くて綺麗だけど、女性じゃないのは均整の取れた筋肉質な体でわかる。

「ヤト……?」
「ようやくお目覚めか」

 すり、とその肌に頬を擦りよせると、笑いながら頭を撫でてくれた。
 どうしよう。ちょっと、いろいろヤバい。

「やはり誘っているだろ」
「……そうかも」
「なんだ、認めるのか」

 体を離して、ヤトの顔を見上げる。整った綺麗な顔。
 お湯の中に浸かった下半身は蛇のものに戻っていた。俺はその上に跨って、ヤトの腕に抱かれている状態だ。

「これって、夢?」
「どちらが望みだ?」
「……夢じゃないほうがいい」
「ならば、そうなのだろう」

 決して、こちらなのだとは断定しない。
 そう言って笑ったヤトにもう一度、体を寄せる。

「今度は甘えているのか?」
「……うん」
「やはり否定しないのだな」

 離れたくないと思うのは、あんな風に抱かれてしまったからだろうか。
 夢だと覚めてしまう。本当に目が覚めてしまえば、ヤトは俺の世界には存在しない。
 それは辛い。寂しい。嫌だって思う。

「……夢じゃなきゃ、いいのに」
「睦月」
「……何?」
「一つ願いを叶えてやろう」
「え?」
「何でもいい。思うことを言え」

 願い? どうして急にそんなこと。
 でも、そんな願いなんて一つしかない。今叶えてほしいことなんて、一つだけだ。

「ずっとヤトと一緒にいたい」
「っくく。本当にそれでいいのか?」
「いい。それがいい」
「金でも名誉でも……何だっていくらでも手に入るとしてもか?」
「そんなのは自分で頑張ってどうにかする……でも、この願いだけは、俺だけじゃどうにもできないから」

 ぎゅ、と体にしがみついた。
 ヤトはまだ笑っているから、その体は楽しげに揺れてる。

「わかった。叶えてやろう」
「本当に?」
「お前こそ、もうそれをたがえることはできないが、本当に構わないのか?」
「いいに決まってる」

 こうと決めた俺の決意は固いんだ。
 何を言ったって願いを変えるつもりなんてない。

「まぁ、離すつもりなど最初からないから、そこに徴をくれてやったのだがな」
「え?」
「さ、契約だ」

 聞き返したのに、はぐらかされた。そのまま、深い口付けを受ける。
 カッと鎖骨のあたりが熱くなって、ちりちりとした痛みと何かが焦げたような匂いが鼻に届く。


「これでもう、逃がしはしない」


 ぎっちりと巻き付かれた体に、俺は至福を感じて目を閉じた。





「へびのとりこ」END
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生贄の奴隷青年は青龍に娶られ溺愛される

花房いちご
BL
青龍と生贄にされた奴隷の美青年の話です。人化はしません。ずっと龍のままです。 ラブラブハッピーエンドです。 以下あらすじ。最後までのネタバレありです。 祠に住む【青龍】は、求めてもいない生贄を捧げられて激怒した。しかし生贄にされた奴隷の青年【ガランサス】は、青龍に食べられる事を望んだ。 それはガランサスの家族を救い、故郷に帰すためだった。 青龍はガランサスの魂の美しさに惹かれ、ガランサスとその家族を彼らの故郷まで連れて行く。 青龍に感謝するガランサスは、恩返しを申し出た。青龍はガランサスに求婚した。 ガランサスは驚きつつも、青龍に惹かれていたため喜んだ。しかし奴隷時代に陵辱されていた事を思い出してしまう。 穢れた自分は青龍に相応しくないと思い身を引こうとするが、青龍はガランサスの身の上を知った上で愛を告げ、二人は結ばれる。 蜜月を過ごし、優しく甘い青龍の愛撫に蕩けるガランサス。 身体が変化していき、次第に閨以外でも淫らな気分になることが増えた。 特に、青龍の鱗に触れると駄目だった。すぐ発情してしまう。 ガランサスは自己嫌悪におちいり、青龍と距離を置く。 青龍は距離を置かれたことに気づき、ガランサスに嫌われたと勘違いする。 すれ違う二人だったが、最後は誤解が解けて子供が出来るまで愛し合うのだった。

イケメン変態王子様が、嫌われ者の好色暴君王にドスケベ雄交尾♡で求婚する話

嶋紀之/サークル「黒薔薇。」
BL
他国の王様に惚れた変態王子様が、嫌われ者でヤリチンのおっさん国王を、ラブハメ雄交尾♡でメス堕ちさせて求婚する話。 ハイテンションで人の話を聞かない変態攻めが、バリタチだった受けを成り行きでメス堕ちさせちゃうアホエロです。 ・体臭描写 ・デブ専描写 ・受けが攻めに顔面騎乗&アナル舐め強要 ・受けのチンカス・包茎描写 ・マジカルチンポ/即堕ち などの要素が含まれます。 ノンケ向けエロでたまに見る、「女にケツ穴舐めさせる竿役」ってメス堕ち適正高いよな……ガチデブ竿役が即オチするとこが見たいな……って思ったので書きました。 攻め…アホでスケベな変態青年。顔だけはイケメン。デブ専、臭いフェチ、ヨゴレ好きのド変態。 受け…バリタチの竿役系ガチデブおっさん。ハゲでデブで強面、体臭もキツい嫌われ者だが、金や権力で言いなりにした相手を無理矢理抱いていた。快楽にクッソ弱い。 試験的に連載形式にしていますが、完結まで執筆済。全7話、毎日18時に予約投稿済。

男とラブホに入ろうとしてるのがわんこ属性の親友に見つかった件

水瀬かずか
BL
一夜限りの相手とホテルに入ろうとしていたら、後からきた男女がケンカを始め、その場でその男はふられた。 殴られてこっち向いた男と、うっかりそれをじっと見ていた俺の目が合った。 それは、ずっと好きだけど、忘れなきゃと思っていた親友だった。 俺は親友に、ゲイだと、バレてしまった。 イラストは、すぎちよさまからいただきました。

浮気をしたら、わんこ系彼氏に腹の中を散々洗われた話。

丹砂 (あかさ)
BL
ストーリーなしです! エロ特化の短編としてお読み下さい…。 大切な事なのでもう一度。 エロ特化です! **************************************** 『腸内洗浄』『玩具責め』『お仕置き』 性欲に忠実でモラルが低い恋人に、浮気のお仕置きをするお話しです。 キャプションで危ないな、と思った方はそっと見なかった事にして下さい…。

【報告】こちらサイコパスで狂った天使に犯され続けているので休暇申請を提出する!

しろみ
BL
西暦8031年、天使と人間が共存する世界。飛行指導官として働く男がいた。彼の見た目は普通だ。どちらかといえばブサ...いや、なんでもない。彼は不器用ながらも優しい男だ。そんな男は大輪の花が咲くような麗しい天使にえらく気に入られている。今日も今日とて、其の美しい天使に攫われた。なにやらお熱くやってるらしい。私は眉間に手を当てながら報告書を読んで[承認]の印を押した。 ※天使×人間。嫉妬深い天使に病まれたり求愛されたり、イチャイチャする話。

初めてを絶対に成功させたくて頑張ったら彼氏に何故かめっちゃ怒られたけど幸せって話

もものみ
BL
【関西弁のR-18の創作BLです】 R-18描写があります。 地雷の方はお気をつけて。 関西に住む大学生同士の、元ノンケで遊び人×童貞処女のゲイのカップルの初えっちのお話です。 見た目や馴れ初めを書いた人物紹介 (本編とはあまり関係ありませんが、自分の中のイメージを壊したくない方は読まないでください) ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 西矢 朝陽(にしや あさひ) 大学3回生。身長174cm。髪は染めていて明るい茶髪。猫目っぽい大きな目が印象的な元気な大学生。 空とは1回生のときに大学で知り合ったが、初めてあったときから気が合い、大学でも一緒にいるしよく2人で遊びに行ったりもしているうちにいつのまにか空を好きになった。 もともとゲイでネコの自覚がある。ちょっとアホっぽいが明るい性格で、見た目もわりと良いので今までにも今までにも彼氏を作ろうと思えば作れた。大学に入学してからも、告白されたことは数回あるが、そのときにはもう空のことが好きだったので断った。 空とは2ヶ月前にサシ飲みをしていたときにうっかり告白してしまい、そこから付き合い始めた。このときの記憶はおぼろげにしか残っていないがめちゃくちゃ恥ずかしいことを口走ったことは自覚しているので深くは考えないようにしている。 高校時代に先輩に片想いしていたが、伝えずに終わったため今までに彼氏ができたことはない。そのため、童貞処女。 南雲 空(なぐも そら) 大学生3回生。身長185cm。髪は染めておらず黒髪で切れ長の目。 チャラい訳ではないがイケメンなので女子にしょっちゅう告白されるし付き合ったりもしたけれどすぐに「空って私のこと好きちゃうやろ?」とか言われて長続きはしない。来るもの拒まず去るもの追わずな感じだった。 朝陽のことは普通に友達だと思っていたが、周りからは彼女がいようと朝陽の方を優先しており「お前もう朝陽と付き合えよ」とよく呆れて言われていた。そんな矢先ベロベロに酔っ払った朝陽に「そらはもう、僕と付き合ったらええやん。ぜったい僕の方がそらの今までの彼女らよりそらのこと好きやもん…」と言われて付き合った。付き合ってからの朝陽はもうスキンシップひとつにも照れるしかと思えば甘えたりもしてくるしめちゃくちゃ可愛くて正直あの日酔っぱらってノリでOKした自分に大感謝してるし今は溺愛している。

魔族用ハメ穴は返品されました

桜羽根ねね
BL
人間が魔族に敗れた世界にて、拉致した人間をハメ穴として売り捌く店がありました──。 エッチにノリノリなハメ穴君が何度も返品されてしまうお話。 話の都合上、攻め以外の♂をハメられていますが、詳しい描写はありません。(多分) バッドエンドがお好みな方は前編まで、ハッピーエンドがお好みな方は後編までお進みください。 他の話と比べるとえろ要素は控えめです。

何も知らないノンケな俺がなぜかラブホでイケメン先輩に抱かれています

波木真帆
BL
俺、葉月亮太は直属の上司である八神悠亮さんと、休日出勤で郊外にあるショッピングモールの試飲イベントに来ていた。大盛況で帰途についたのも束の間、山道で突然のゲリラ豪雨に遭遇し、急いで近くの建物の駐車場に避難した。トイレと食事を期待して中に入ったのだが、そこはなんとラブホテルでしかも2時間は出られない。 一緒に過ごすうちになんとなくおかしな雰囲気になってきて……。 ノンケの可愛い社会人3年目の天然くんとバイなイケメン先輩の身体から始まるイチャラブハッピーエンド小説です。 おそらく数話で終わるはず。 R18には※つけます。

処理中です...