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物語の終わり、創造の始まり
明日への光
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「あなたも一緒に仲良くミーナから聞いたじゃない。もう忘れちゃったの?」
「はぁ!?何のことだよ!」
地面に仕込んだ魔法陣に魔力を注入すると連鎖するように魔法陣がつながっていき、マルドゥク・リヴェラムとノーランの立つ場所を中心に巨大な魔法陣が現れた。
「……何をしようとしている?」
「『レヴィアナ』がしようとして失敗したことよ」
「何をわけわかんねーこと!」
ノーランがディヴィニティ・エンブレイスで攻撃してくるが、実紗希が反射的にそれを切り裂く。
「実紗希、おねがい。魔力を貸して」
右手を正面に突き出し、左手を実紗希に伸ばす。
「ナタリーもお願い!」
「わかりました!」
ナタリーは私たちの後ろに回って、いつでも攻撃を躱せるようにグレイシャルスライドを展開した。
「何をする気か知らねぇが、させるわけねぇだろ!!」
ノーランはマルドゥク・リヴェラムの周囲に魔法陣を展開する。しかし、それは指示もアイコンタクトも取るまでもなくマリウスとガレンが防いでくれる。
(大丈夫……絶対大丈夫……!)
理論はノートに穴が開くくらい読み込んだ。
魔法構築の理論を何度も読み込んで理解した。
『レヴィアナ』が失敗したのは、自分だけの魔力で発動させようとしたことだ。
いくら魔力量が高い『レヴィアナ』と言えども、この魔法を使うためには自分の魔力を限界まで高めて無理やり発動させる必要があった。
でもそれだけじゃ足りない。だって、この理外の魔法に必要なのは……。
「実紗希!」
『レヴィアナ』もこのことには気づいていたと思う。
『レヴィアナ』は、『アリシア』に協力を申し出ることはできなかった。
でも、実紗希になら……!
再度の呼びかけに実紗希は無言でうなずいた。そして私の手をしっかりと握ってくれた。
ぶわっと実紗希から一気に魔力が流れ込んでくる。魔力を体内で整理し、自分の魔力と一緒に魔法陣に注ぎ込む。
魔力と魔法陣をつなぐ右手が震えた。
魔力のせいだけではない。もしここで私が制御できず、魔法が暴走してしまったら、その時点で全てが終わってしまう。
私だけでなく、この場所にいる全員が巻き込まれて消し飛んでしまう。
背中に冷たい汗が伝うのを感じる。
(落ち着け……大丈夫、きっとできる……!)
アリシアのブレイズワークスでさえ攻撃が通らないのだから、ゲームマスターであるノーランと、あのマルドゥク・リヴェラムを倒すにはこれしかない。
もしここで私が諦めたら、私たちの明日は終わってしまう。そんなのは絶対に嫌だ。
「大丈夫だよ。『レヴィアナ』は最強なんだろ?」
私の緊張を察したのか実紗希が優しく左手を包み込みながらほほ笑んだ。
思わず後ずさりしてしまいそうな背中はナタリーが支えてくれている。
周りに飛び交う魔法はマリウスとガレンが全部防いでくれている。
「あははっ」
こんな状況なのに、自然と笑いがこみ上げてくる。
うん、もう大丈夫。私はひとりじゃない。みんないる。セシルだって、それに……きっとイグニスも。
「これで……!決められた物語はおしまい!!私たちはみんなで卒業式の次の日に行く!!」
最後の決意を固めた1秒、目を瞑り、すべての決意、意思、そして魔力を込めて右腕を前に突き出した。
「ーーーーヴォルタリア・フェイトリフター!!」
その瞬間、まるで世界が静止したかのように見えた。
魔法陣が輝き、空高くどこまでも伸びていく。そしてそれはいくつもの光の槍へと変わり、そして点から降り注いだ。
「ディヴィニティ・エンブレイスっ!!!」
ノーランが叫び、今までにないほど杖が輝き無数の輝く光線を槍へと向ける。
マルドゥク・リヴェラムからも何本もの魔力が放出される。
しかし、その攻撃は1つ目の光槍によって相殺され、そして次の2つ、3つと次々と光の槍に撃ち落とされていく。
「くそっ!くそっ!!!くそぉぉぉっ!!!」
「これで終わりよ!!私たちにゲームマスターは要らない!!」
「うぉぉぉぉぁぁあああああああ!!」
最後の1つの光槍が頭上から降り注いだ。
光の槍はマルドゥク・リヴェラムを、そしてノーランを包み、そして辺り一面が光に包まれる。
風で舞う木の葉も、舞い散る土埃も、魔力の残滓でさえ光の粒に変わっていく。
まるで世界が、マルドゥク・リヴェラムとノーランを祝福しているかのようだった。
『私が守りたかった世界を守ってくれてありがとう』
そんな声が聞こえた気がした。
やがて視界は真っ白包まれ、私は意識を手放した。
「はぁ!?何のことだよ!」
地面に仕込んだ魔法陣に魔力を注入すると連鎖するように魔法陣がつながっていき、マルドゥク・リヴェラムとノーランの立つ場所を中心に巨大な魔法陣が現れた。
「……何をしようとしている?」
「『レヴィアナ』がしようとして失敗したことよ」
「何をわけわかんねーこと!」
ノーランがディヴィニティ・エンブレイスで攻撃してくるが、実紗希が反射的にそれを切り裂く。
「実紗希、おねがい。魔力を貸して」
右手を正面に突き出し、左手を実紗希に伸ばす。
「ナタリーもお願い!」
「わかりました!」
ナタリーは私たちの後ろに回って、いつでも攻撃を躱せるようにグレイシャルスライドを展開した。
「何をする気か知らねぇが、させるわけねぇだろ!!」
ノーランはマルドゥク・リヴェラムの周囲に魔法陣を展開する。しかし、それは指示もアイコンタクトも取るまでもなくマリウスとガレンが防いでくれる。
(大丈夫……絶対大丈夫……!)
理論はノートに穴が開くくらい読み込んだ。
魔法構築の理論を何度も読み込んで理解した。
『レヴィアナ』が失敗したのは、自分だけの魔力で発動させようとしたことだ。
いくら魔力量が高い『レヴィアナ』と言えども、この魔法を使うためには自分の魔力を限界まで高めて無理やり発動させる必要があった。
でもそれだけじゃ足りない。だって、この理外の魔法に必要なのは……。
「実紗希!」
『レヴィアナ』もこのことには気づいていたと思う。
『レヴィアナ』は、『アリシア』に協力を申し出ることはできなかった。
でも、実紗希になら……!
再度の呼びかけに実紗希は無言でうなずいた。そして私の手をしっかりと握ってくれた。
ぶわっと実紗希から一気に魔力が流れ込んでくる。魔力を体内で整理し、自分の魔力と一緒に魔法陣に注ぎ込む。
魔力と魔法陣をつなぐ右手が震えた。
魔力のせいだけではない。もしここで私が制御できず、魔法が暴走してしまったら、その時点で全てが終わってしまう。
私だけでなく、この場所にいる全員が巻き込まれて消し飛んでしまう。
背中に冷たい汗が伝うのを感じる。
(落ち着け……大丈夫、きっとできる……!)
アリシアのブレイズワークスでさえ攻撃が通らないのだから、ゲームマスターであるノーランと、あのマルドゥク・リヴェラムを倒すにはこれしかない。
もしここで私が諦めたら、私たちの明日は終わってしまう。そんなのは絶対に嫌だ。
「大丈夫だよ。『レヴィアナ』は最強なんだろ?」
私の緊張を察したのか実紗希が優しく左手を包み込みながらほほ笑んだ。
思わず後ずさりしてしまいそうな背中はナタリーが支えてくれている。
周りに飛び交う魔法はマリウスとガレンが全部防いでくれている。
「あははっ」
こんな状況なのに、自然と笑いがこみ上げてくる。
うん、もう大丈夫。私はひとりじゃない。みんないる。セシルだって、それに……きっとイグニスも。
「これで……!決められた物語はおしまい!!私たちはみんなで卒業式の次の日に行く!!」
最後の決意を固めた1秒、目を瞑り、すべての決意、意思、そして魔力を込めて右腕を前に突き出した。
「ーーーーヴォルタリア・フェイトリフター!!」
その瞬間、まるで世界が静止したかのように見えた。
魔法陣が輝き、空高くどこまでも伸びていく。そしてそれはいくつもの光の槍へと変わり、そして点から降り注いだ。
「ディヴィニティ・エンブレイスっ!!!」
ノーランが叫び、今までにないほど杖が輝き無数の輝く光線を槍へと向ける。
マルドゥク・リヴェラムからも何本もの魔力が放出される。
しかし、その攻撃は1つ目の光槍によって相殺され、そして次の2つ、3つと次々と光の槍に撃ち落とされていく。
「くそっ!くそっ!!!くそぉぉぉっ!!!」
「これで終わりよ!!私たちにゲームマスターは要らない!!」
「うぉぉぉぉぁぁあああああああ!!」
最後の1つの光槍が頭上から降り注いだ。
光の槍はマルドゥク・リヴェラムを、そしてノーランを包み、そして辺り一面が光に包まれる。
風で舞う木の葉も、舞い散る土埃も、魔力の残滓でさえ光の粒に変わっていく。
まるで世界が、マルドゥク・リヴェラムとノーランを祝福しているかのようだった。
『私が守りたかった世界を守ってくれてありがとう』
そんな声が聞こえた気がした。
やがて視界は真っ白包まれ、私は意識を手放した。
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