悪役令嬢になった私は卒業式の先を歩きたい。――『私』が悪役令嬢になった理由――

唯野晶

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物語の終わり、創造の始まり

ガレン vs セシル

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「大地の力で舞い上がれ、石の駆け足よ!岩石の滑走、ロックスライダー!」
「そんな攻撃じゃ、僕には当たらないよ」

セシルが空へ飛び立ち、それを追いかけるようにガレンが地面を滑りながら魔法を込めた岩を放つ。しかしそれも難なく躱されてしまい、逆にセシルの放った空気の刃がガレンを襲う。

「くっ!ストーンバリア!」

ガレンが地面に手を置き、魔法で地面からせり出した壁で空気の刃を防ぐ。セシルはそのまま空中で止まり、今度は上からガレンに襲い掛かった。

「ちっ……!?」
「ほらほらっ!!」

空中に身軽に飛び上がるとガレンに向かってどんどん魔法を放ち始める。ガレンも負けじと岩石を繰り出すがその悉くが躱され、時には相殺されてしまう。

「もう、戦いが単調だよ。つまらないよ」
「くっ……まだまだこれからだっての!」

セシルの容赦のない攻撃にガレンは防戦一方になっていた。その魔法の実力もさることながら、空中から一方的に攻撃されるというのはかなり不利になる。

「地の恵みより生まれし鋭角、刃となせ!放たれよ!我が意志を示せ!水晶の矢、クォーツシャード!」

ガレンは狙いをつけず、四方に向けて空間を制圧するように魔法を放つ。

「あはっ!いいね、そうこなくっちゃ!」

セシルが楽しそうにガレンの放った魔法を相殺していく。ガレンの放った矢が森の中の木に刺さり、それがどんどんと連鎖していく。森に響く甲高い音がその激しさを物語っていた。

「ふぅ、さすがガレン」
「今ので一発も当たってねーのによく言うぜ」
「いやいや、驚いたって」

そういいながらセシルは生き生きとした表情でガレンに微笑む。

「つーかさ、何してんだよ、お前」
「ん?」
「そんなのお前らしくねーだろ」
「僕らしい?」

セシルが少し驚いたように首をかしげる。

「だから、何で黙ってお願いなんて聞いてんだっての」
「あぁ、そのことね」

納得したようにセシルがポンと手を叩いた。そして少し言葉を選んで口を開いた。

「お願いを聞いてた方が楽……だからかな?」

ガレンはセシルの次の言葉を黙って待っている。

「こうしてアリシアの言うことを聞いてるのが、一番楽で楽しいんだ。自分で考えなくていいしね」
「本当か?」
「……ま、半分は本当だね」

少し諦めたようにセシルが笑う。

「僕がちょっと変になってるってのは知ってるよ。これのせいでしょ?」

そういいながら胸元の【陽光の薔薇】を指さした。

「やっぱり気づいてるじゃねーか」
「まぁね。こんな気持ちになったの初めてだし。でもたぶんこの気持ちは僕のやりたいことに必要な事なんだ」
「ん?自由以外に何か欲しいのか?」
「ま、そんなところかな。たぶん僕はこんなものなくても、アリシアに頼まれたら君とも戦うよ」
「おー怖い怖い」

ガレンがフンと鼻で笑ってセシルに視線を向けた。

「たぶん僕はアリシアの事が本当に好きになったんだと思う。なんだか楽しそうにしてるのに、いつも窮屈そうでさ」
「……」
「だから、アリシアが本当にしたいことならそれを叶えてあげたい」

セシルはガレンにそう告げると魔力の詠唱を始めた。

「確かに、お前が初めて守った人だもんな」
「そ、ブレイズワークスの時でしょ?自分でも驚いちゃったもん」

ガレンも会話を続けながら、詠唱を始める。

「だから、これは僕の意思だ」
「そっか」
「それに、僕は君と戦っても楽しいって気づいちゃったからね。楽しいことがいっぱいだ」
「そりゃ光栄だな。でもな、俺も負けるわけにはいかねぇんだ。俺はこの先の未来みたいなものが見たいからさ。だから、俺はそのお姫様を倒そうとする悪党をやらせてもらうよ」
「うん、僕も負けるつもりはないよ」

セシルがにこりと笑う。そしてガレンも不敵に笑った。

2人の間に緊張が走る。セシルの詠唱が終わり、ガレンが魔法を放つ準備に入る。

「空を裂く極限の嵐、すべてを破壊する力を我に!終焉の風、テンペストブレイク!」
「大地の心臓よ、その眠りから覚醒せよ!我が呼び声に応え、その力を解き放て!大地震動、ガイアトレマー!」

セシルの詠唱によって発生した嵐とガレンの放った岩がぶつかり合い、その衝撃で周りの木々がなぎ倒されていく。
空気が揺れ、森の鳥が羽ばたき一斉に空へ逃げていく。
そしてその嵐の中からセシルがガレンに向かって飛び出してきた。
しかし、その刃が届く前にガレンの魔法が発動する。
土属性魔法の壁が突然現れ、巨大な塊となりセシルを襲う。
ガレンはもうひとつ魔法を詠唱していた。セシルの風をも巻き込み、さらに勢いを増した土の砲弾は一直線にセシルへと飛んでいった。

そして、セシルは諦めたように笑った。

暴力的な土の塊がセシルを直撃し、そのまま吹き飛ばされていく。

「がはっ……!!」

地面に叩きつけられ、セシルは吐血してそのまま崩れ落ちる。

「……大丈夫か?」
「大丈夫……、いや、痛いね。うん、すごい痛い」

そういいながらも、セシルは嬉しそうに笑った。

「ゼフィルレヴィテートを使わなかったのはどうしてだ?あれを使われてたらずっと防御し続けるしかなかった」
「んー……あれは友達に向けて使う技じゃないからさ」
「そっか」

ガレンはセシルの近くまで行き、手を差し伸べた。

「……ありがと」
その手を取り、セシルが立ち上がる。

「でも、やっぱり君は強いよ。『諦めの天才』とか言われてたけど、僕なんかより強いんじゃない?」
「自由を捨てた『自由の天才』には負けらんねーからな」
「はは、それは言い返せないね」
「じゃ、これは破棄させてもらうぜ」

レヴィアナから受け取っていた手袋をつけ、ガレンはセシルの胸元から【陽光の薔薇】を抜き取った。

「……止めてくれて、ありがと」
「ん」
「……でも、僕はこれからもアリシアの望みを叶え続けるよ。それが僕のやりたいことだからね」
「そっか」

そうして2人はそれぞれ大切な人のもとに戻っていった。


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