94 / 143
舞踏会
舞踏会前日_2
しおりを挟む
「な?俺がいてよかったろ?」
ノーランが自慢げに鼻を鳴らす。
「まぁそうかもしれないけど……、なんかむかつく」
結局力仕事になり、ノーランの大活躍によってあっという間に作業は終わってしまった。
どこにどういった工具があるかも把握していたし、私一人で行っていたらまだ半分も進んでいなかったと思う。
「……で?あんたは踊れるの?」
「なんだよ急に」
「舞踏会よ、舞踏会。あんたも踊ったことなんかないんじゃないの?」
「まぁ、普通踊ったことないよなぁー」
「そうよね!普通ないわよね!」
ノーランの反応に思わず声が大きくなってしまった。
「つっても平民の俺が踊れないのと、貴族でイグニスすら一目を置く『レヴィアナ』が踊れないのはなんか違う気がするけどな」
「ぐ……」
私が言い返せないでいると、ノーランが急に手を差し出した。
「練習でもしていくか?」
「え?」
「舞踏会で踊る練習」
「い、いいわよ……そんなの……」
こんな校舎裏でノーランと手をつないで踊るなんて、なんかそんなのすごい照れくさい。
「それにあんたには踊りたい人がいるんでしょ?」
「まぁそうだけどよ。あ、そうだ、アリシアの好きなモノとか知らない?」
ノーランはいいやつだ。だから必要以上に傷ついてほしくない。
「……たぶん、無理よ?」
「なんでだよ」
「なんでもよ。アリシアはこのゲームのヒロイン、そしてヒロインの攻略対象にはノーランなんて人物は居ない」
「知ってるよ。俺もさんざんこのゲームやったっての。でも別にそれがアリシアを好きになっちゃいけない理由にはならないだろ?」
ノーランが少しだけ真剣な顔をした。
「それに、もしかしたら今回の舞踏会で何かの間違いで一緒に踊れるかもしれないし。ほら、ゲームのイベントにはないけどクラスメイトと踊ってもいいかもしれないしな」
「……まぁ、それもそうね」
「それにゲームに居ないのもたまたま見つかってないだけで、俺ってば伝説のレアキャラ『ノーラン』かもしんねぇし」
「それは……ぷっ、あはは、ごめん、無いわ。何よ伝説って」
思わず吹き出してしまった。でも、ノーランの言う通り、私も攻略対象の4人とは踊ることはないかもしれないけど、ほかの生徒と踊ることもあるかもしれない。確かにその視点はなかった。
「でもさー」
「ん?」
「もし俺がアリシアと卒業式迎えて、キスなんてしたら、俺って伝説になるんじゃね?」
「うっわ……」
「キスってどんな感じなのかなぁー。やっぱ柔らかかったりするのかなぁー」
「ノーラン。あなた気持ち悪いですわ。アリシアだったら好感度-300といったところですわね」
「ちょ、ひどっ!敬語とか距離感じるなー。そういうレヴィアナはキスしたことあんのかよ!?」
「な、ないわよっ!」
急にそんな話を振られて思わず大きな声が出てしまう。
「え?ないの?」
「……ないに決まってるじゃない」
「マジで?」
「……しつこいわね!」
(絶対にあんなのはキスなんて認めない……)
キスはもっとロマンチックで、優しくて甘くて、そして人間とするものだ。
「ふーん……?美人で貴族で今までだってさんざん言い寄られてるだろうに、この世界に影響がーとか小難しいこと考えてるわけ?」
「そんなんじゃないわよ!」
ついつい声が荒くなってしまう。
そしてノーランが指摘したことも、正直理由の一つではある。ダンスの練習をこれまでしてこなかったのもそれが理由でもあった。
すでにもともとの悪役令嬢としてのキャラクター設定から逸脱してしまっているとはいえ、もし悪役令嬢役の私が攻略対象の4人とくっついてしまってそれで何か起きてしまったら?
「―――平気じゃね?」
「え?」
「そもそもアリシアと踊るのは俺だしな」
そう言ってノーランは笑った。
「それにあのセレスティアル・アカデミーの舞踏会だぜ?そんなの関係なく踊って楽しもうぜ」
「……そうね。そうよね」
こいつはこいつなりに気を使ってくれてるらしい。
せっかく来れたあこがれの世界で、あこがれのイベントで部屋の隅でじっとしているのは本音を言うととても寂しい。
「……ま、いいわ。練習しましょ?ノーラン」
「は?え?」
「教えてくれるんでしょ?ちゃんと教えてくれたらアリシアの好きなモノ教えてあげるわよ?」
「……よし、さっすが話分かるな!じゃまずは……」
手に取ったノーランの手は私より全然大きくて、少し硬い手だった。
***
「お待たせしましたわ!」
ノーランとのダンスの練習を終え、教室に戻るとすでにナタリーはシルフィード広場に向かったとイグニスが教えてくれた。慌てて駆けていき、きょろきょろと立っているナタリーと無事合流することができた。
「いえ、私も準備があったのでちょうどよかったです」
そういいながらナタリーはパンパンに詰められたカバンの中身を見せてくる。
「準備って、それにしてもすごい量の魔法紙ですわね」
「ミーナさんとの思い出は全部残しておきたくって」
新品の魔法紙の束を何束か取り出しながらナタリーが答える。
「じゃ、お願いしますね。まず私達はどこに行ったんですか?」
「まずは……噴水広場かしら?」
ナタリーは紙に書きながら後ろをトコトコとついてくる。
そうして、演劇を見て3人で泣いたことや、クラウドベリーサイダーを飲んだきっかけなど話ながらシルフィード広場を歩いていく。
ナタリーは真剣な顔をしながら、時々信じられないといったリアクションも取りながら私の話を聞いていた。
「それで、この雑貨屋さんで3人でイヤリングとリボンを買ったんですわ」
「ミーナさんのおかげで私は初めてイヤリングをつけたんですね」
ナタリーが耳につけているイヤリングを触りながら嬉しそうに笑った。
そのままふらふらとナタリーは雑貨屋さんの中に入っていき、そうして緑色のリボンを手に出てきた。
「それって」
「はい、同じもの、ですよね?あのリボンはずーっと握り締めてたからボロボロになってしまったので大切にしまってあります」
そういいながら器用に自分の髪の右側をちょこんとリボンで結んだ。
「どう、ですか?似合いますか?」
「えぇ、とっても」
ナタリーが嬉しそうに笑った。
***
「はー……」
「どうしたんですの?」
歩いて話続けだったのでいつもの喫茶店で一休みすることになった。
私はクラウドベリーサイダー、ナタリーはいつものクラウドベリーサイダーにアイスクリームをトッピングしたものをそれぞれ飲みながら一息ついていると、ナタリーが大きなため息をついた。
「レヴィアナさん、ずるいですよ」
「まぁ、なんでですの?」
「話を聞けば聞くほどミーナさんって素敵な人じゃないですか。私も覚えてられたらよかったのに」
ナタリーが今日書き連ねた魔法紙をパラパラとめくりながらすねた様に口をとがらせる。
「そうですわね。本当によく笑う、かわいらしい子でしたわよ」
「どうして私、忘れてたんでしょうね?」
「……わからないわ。だから今度は忘れないようにしましょう?わたくしも手伝うわ」
「はい!そうですね!」
ナタリーが嬉しそうに笑う。やっぱりこの子もミーナと同じで笑顔が一番似合う。
「それで……今日レヴィアナさんを呼び出したのはもう一つ理由がありまして」
「ん?なにかしら?」
今日、ずっとそわそわしていたし、この喫茶店に入ってからもずっとちらちらとこちらの表情をうかがっているようだったから気にはなっていた。
ナタリーが席を立ち、隣の席に移動してくる。そして、周りをきょろきょろと確認してから、耳元に口を近づけてきた。
「今朝の事……本当ですか?」
「今朝?何のことですの?」
耳元で囁かれたので、ついつい息がくすぐったくって体をよじってしまう。私も同じように小さな声で聞き返した。
「え?あー……」
ナタリーが少しだけ恥ずかしそうに、でも、はっきりとした意思をもった声で続けた。
「マリウスさんの事です」
見ると両手をぎゅっと握りしめて、ナタリーは真剣な表情でこちらをのぞき込んでいた。
「私、その、マリウスさんもですけど、レヴィアナさんのことも本当に大切に思っていて、その、だから、本当にレヴィアナさんが、その……レヴィアナさんが……」
ナタリーがいつものたどたどしい口調で必死に言葉を紡ごうとする。
「本気なら……私……」
「ナタリー」
「……はい」
もう我慢できずにそのまま抱きしめてしまう。そして、二度とマリウスのことでナタリーをからかうことはやめようと心の中で誓った。
「ナタリーとマリウスはお似合いよ」
「え?」
ナタリーが驚いたような声を上げる。
「あまりにお似合いすぎたから、いじわるしてただけ」
「え?じゃあ、あぅ……」
「えぇ、明日の舞踏会でナタリーとマリウスが踊っているところ見せてね?」
「はい……あの……」
ナタリーが恥ずかしそうにもじもじしながら口を開いた。
「あ、でも、その、マリウスさんに断られちゃったら……、マリウスさん、人気者ですし……、だからその……」
ナタリーのいじらしさが可愛くて思わず口元がほころんでしまう。
「大丈夫よ。マリウスも絶対にナタリーと踊りたいって思ってるはずだわ」
「え?そう、なんですか?」
「えぇ。絶対よ。私が保証するわ」
そのままナタリーが落ち着くまで背中をとんとんと叩いてやる。少しして落ち着いたのかナタリーはこちらに向き直った。
「レヴィアナさん……ありがとうございます!」
「それに、もしナタリーの誘いを断ってほかの女と踊るようなことがあったら、マリウスを舞踏会に参加できないくらい魔法で攻撃して退場させてからわたくしと踊りましょう?約束よ」
そういうとナタリーはぱぁっと花が咲いたように笑い、嬉しそうに大きな声ではい!と答えたのだった。
ノーランが自慢げに鼻を鳴らす。
「まぁそうかもしれないけど……、なんかむかつく」
結局力仕事になり、ノーランの大活躍によってあっという間に作業は終わってしまった。
どこにどういった工具があるかも把握していたし、私一人で行っていたらまだ半分も進んでいなかったと思う。
「……で?あんたは踊れるの?」
「なんだよ急に」
「舞踏会よ、舞踏会。あんたも踊ったことなんかないんじゃないの?」
「まぁ、普通踊ったことないよなぁー」
「そうよね!普通ないわよね!」
ノーランの反応に思わず声が大きくなってしまった。
「つっても平民の俺が踊れないのと、貴族でイグニスすら一目を置く『レヴィアナ』が踊れないのはなんか違う気がするけどな」
「ぐ……」
私が言い返せないでいると、ノーランが急に手を差し出した。
「練習でもしていくか?」
「え?」
「舞踏会で踊る練習」
「い、いいわよ……そんなの……」
こんな校舎裏でノーランと手をつないで踊るなんて、なんかそんなのすごい照れくさい。
「それにあんたには踊りたい人がいるんでしょ?」
「まぁそうだけどよ。あ、そうだ、アリシアの好きなモノとか知らない?」
ノーランはいいやつだ。だから必要以上に傷ついてほしくない。
「……たぶん、無理よ?」
「なんでだよ」
「なんでもよ。アリシアはこのゲームのヒロイン、そしてヒロインの攻略対象にはノーランなんて人物は居ない」
「知ってるよ。俺もさんざんこのゲームやったっての。でも別にそれがアリシアを好きになっちゃいけない理由にはならないだろ?」
ノーランが少しだけ真剣な顔をした。
「それに、もしかしたら今回の舞踏会で何かの間違いで一緒に踊れるかもしれないし。ほら、ゲームのイベントにはないけどクラスメイトと踊ってもいいかもしれないしな」
「……まぁ、それもそうね」
「それにゲームに居ないのもたまたま見つかってないだけで、俺ってば伝説のレアキャラ『ノーラン』かもしんねぇし」
「それは……ぷっ、あはは、ごめん、無いわ。何よ伝説って」
思わず吹き出してしまった。でも、ノーランの言う通り、私も攻略対象の4人とは踊ることはないかもしれないけど、ほかの生徒と踊ることもあるかもしれない。確かにその視点はなかった。
「でもさー」
「ん?」
「もし俺がアリシアと卒業式迎えて、キスなんてしたら、俺って伝説になるんじゃね?」
「うっわ……」
「キスってどんな感じなのかなぁー。やっぱ柔らかかったりするのかなぁー」
「ノーラン。あなた気持ち悪いですわ。アリシアだったら好感度-300といったところですわね」
「ちょ、ひどっ!敬語とか距離感じるなー。そういうレヴィアナはキスしたことあんのかよ!?」
「な、ないわよっ!」
急にそんな話を振られて思わず大きな声が出てしまう。
「え?ないの?」
「……ないに決まってるじゃない」
「マジで?」
「……しつこいわね!」
(絶対にあんなのはキスなんて認めない……)
キスはもっとロマンチックで、優しくて甘くて、そして人間とするものだ。
「ふーん……?美人で貴族で今までだってさんざん言い寄られてるだろうに、この世界に影響がーとか小難しいこと考えてるわけ?」
「そんなんじゃないわよ!」
ついつい声が荒くなってしまう。
そしてノーランが指摘したことも、正直理由の一つではある。ダンスの練習をこれまでしてこなかったのもそれが理由でもあった。
すでにもともとの悪役令嬢としてのキャラクター設定から逸脱してしまっているとはいえ、もし悪役令嬢役の私が攻略対象の4人とくっついてしまってそれで何か起きてしまったら?
「―――平気じゃね?」
「え?」
「そもそもアリシアと踊るのは俺だしな」
そう言ってノーランは笑った。
「それにあのセレスティアル・アカデミーの舞踏会だぜ?そんなの関係なく踊って楽しもうぜ」
「……そうね。そうよね」
こいつはこいつなりに気を使ってくれてるらしい。
せっかく来れたあこがれの世界で、あこがれのイベントで部屋の隅でじっとしているのは本音を言うととても寂しい。
「……ま、いいわ。練習しましょ?ノーラン」
「は?え?」
「教えてくれるんでしょ?ちゃんと教えてくれたらアリシアの好きなモノ教えてあげるわよ?」
「……よし、さっすが話分かるな!じゃまずは……」
手に取ったノーランの手は私より全然大きくて、少し硬い手だった。
***
「お待たせしましたわ!」
ノーランとのダンスの練習を終え、教室に戻るとすでにナタリーはシルフィード広場に向かったとイグニスが教えてくれた。慌てて駆けていき、きょろきょろと立っているナタリーと無事合流することができた。
「いえ、私も準備があったのでちょうどよかったです」
そういいながらナタリーはパンパンに詰められたカバンの中身を見せてくる。
「準備って、それにしてもすごい量の魔法紙ですわね」
「ミーナさんとの思い出は全部残しておきたくって」
新品の魔法紙の束を何束か取り出しながらナタリーが答える。
「じゃ、お願いしますね。まず私達はどこに行ったんですか?」
「まずは……噴水広場かしら?」
ナタリーは紙に書きながら後ろをトコトコとついてくる。
そうして、演劇を見て3人で泣いたことや、クラウドベリーサイダーを飲んだきっかけなど話ながらシルフィード広場を歩いていく。
ナタリーは真剣な顔をしながら、時々信じられないといったリアクションも取りながら私の話を聞いていた。
「それで、この雑貨屋さんで3人でイヤリングとリボンを買ったんですわ」
「ミーナさんのおかげで私は初めてイヤリングをつけたんですね」
ナタリーが耳につけているイヤリングを触りながら嬉しそうに笑った。
そのままふらふらとナタリーは雑貨屋さんの中に入っていき、そうして緑色のリボンを手に出てきた。
「それって」
「はい、同じもの、ですよね?あのリボンはずーっと握り締めてたからボロボロになってしまったので大切にしまってあります」
そういいながら器用に自分の髪の右側をちょこんとリボンで結んだ。
「どう、ですか?似合いますか?」
「えぇ、とっても」
ナタリーが嬉しそうに笑った。
***
「はー……」
「どうしたんですの?」
歩いて話続けだったのでいつもの喫茶店で一休みすることになった。
私はクラウドベリーサイダー、ナタリーはいつものクラウドベリーサイダーにアイスクリームをトッピングしたものをそれぞれ飲みながら一息ついていると、ナタリーが大きなため息をついた。
「レヴィアナさん、ずるいですよ」
「まぁ、なんでですの?」
「話を聞けば聞くほどミーナさんって素敵な人じゃないですか。私も覚えてられたらよかったのに」
ナタリーが今日書き連ねた魔法紙をパラパラとめくりながらすねた様に口をとがらせる。
「そうですわね。本当によく笑う、かわいらしい子でしたわよ」
「どうして私、忘れてたんでしょうね?」
「……わからないわ。だから今度は忘れないようにしましょう?わたくしも手伝うわ」
「はい!そうですね!」
ナタリーが嬉しそうに笑う。やっぱりこの子もミーナと同じで笑顔が一番似合う。
「それで……今日レヴィアナさんを呼び出したのはもう一つ理由がありまして」
「ん?なにかしら?」
今日、ずっとそわそわしていたし、この喫茶店に入ってからもずっとちらちらとこちらの表情をうかがっているようだったから気にはなっていた。
ナタリーが席を立ち、隣の席に移動してくる。そして、周りをきょろきょろと確認してから、耳元に口を近づけてきた。
「今朝の事……本当ですか?」
「今朝?何のことですの?」
耳元で囁かれたので、ついつい息がくすぐったくって体をよじってしまう。私も同じように小さな声で聞き返した。
「え?あー……」
ナタリーが少しだけ恥ずかしそうに、でも、はっきりとした意思をもった声で続けた。
「マリウスさんの事です」
見ると両手をぎゅっと握りしめて、ナタリーは真剣な表情でこちらをのぞき込んでいた。
「私、その、マリウスさんもですけど、レヴィアナさんのことも本当に大切に思っていて、その、だから、本当にレヴィアナさんが、その……レヴィアナさんが……」
ナタリーがいつものたどたどしい口調で必死に言葉を紡ごうとする。
「本気なら……私……」
「ナタリー」
「……はい」
もう我慢できずにそのまま抱きしめてしまう。そして、二度とマリウスのことでナタリーをからかうことはやめようと心の中で誓った。
「ナタリーとマリウスはお似合いよ」
「え?」
ナタリーが驚いたような声を上げる。
「あまりにお似合いすぎたから、いじわるしてただけ」
「え?じゃあ、あぅ……」
「えぇ、明日の舞踏会でナタリーとマリウスが踊っているところ見せてね?」
「はい……あの……」
ナタリーが恥ずかしそうにもじもじしながら口を開いた。
「あ、でも、その、マリウスさんに断られちゃったら……、マリウスさん、人気者ですし……、だからその……」
ナタリーのいじらしさが可愛くて思わず口元がほころんでしまう。
「大丈夫よ。マリウスも絶対にナタリーと踊りたいって思ってるはずだわ」
「え?そう、なんですか?」
「えぇ。絶対よ。私が保証するわ」
そのままナタリーが落ち着くまで背中をとんとんと叩いてやる。少しして落ち着いたのかナタリーはこちらに向き直った。
「レヴィアナさん……ありがとうございます!」
「それに、もしナタリーの誘いを断ってほかの女と踊るようなことがあったら、マリウスを舞踏会に参加できないくらい魔法で攻撃して退場させてからわたくしと踊りましょう?約束よ」
そういうとナタリーはぱぁっと花が咲いたように笑い、嬉しそうに大きな声ではい!と答えたのだった。
0
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
婚約破棄られ令嬢がカフェ経営を始めたらなぜか王宮から求婚状が届きました!?
江原里奈
恋愛
【婚約破棄? 慰謝料いただければ喜んで^^ 復縁についてはお断りでございます】
ベルクロン王国の田舎の伯爵令嬢カタリナは突然婚約者フィリップから手紙で婚約破棄されてしまう。ショックのあまり寝込んだのは母親だけで、カタリナはなぜか手紙を踏みつけながらもニヤニヤし始める。なぜなら、婚約破棄されたら相手から慰謝料が入る。それを元手に夢を実現させられるかもしれない……! 実はカタリナには前世の記憶がある。前世、彼女はカフェでバイトをしながら、夜間の製菓学校に通っている苦学生だった。夢のカフェ経営をこの世界で実現するために、カタリナの奮闘がいま始まる!
※カクヨム、ノベルバなど複数サイトに投稿中。
カクヨムコン9最終選考・第4回アイリス異世界ファンタジー大賞最終選考通過!
※ブクマしてくださるとモチベ上がります♪
※厳格なヒストリカルではなく、縦コミ漫画をイメージしたゆるふわ飯テロ系ロマンスファンタジー。作品内の事象・人間関係はすべてフィクション。法制度等々細かな部分を気にせず、寛大なお気持ちでお楽しみください<(_ _)>
【完結】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。
樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」
大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。
はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!!
私の必死の努力を返してー!!
乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。
気付けば物語が始まる学園への入学式の日。
私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!!
私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ!
所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。
でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!!
攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢!
必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!!
やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!!
必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。
※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。
※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。
公爵家の半端者~悪役令嬢なんてやるよりも、隣国で冒険する方がいい~
石動なつめ
ファンタジー
半端者の公爵令嬢ベリル・ミスリルハンドは、王立学院の休日を利用して隣国のダンジョンに潜ったりと冒険者生活を満喫していた。
しかしある日、王様から『悪役令嬢役』を押し付けられる。何でも王妃様が最近悪役令嬢を主人公とした小説にはまっているのだとか。
冗談ではないと断りたいが権力には逆らえず、残念な演技力と棒読みで悪役令嬢役をこなしていく。
自分からは率先して何もする気はないベリルだったが、その『役』のせいでだんだんとおかしな状況になっていき……。
※小説家になろうにも掲載しています。
新婚初夜に浮気ですか、王太子殿下。これは報復しかありませんね。新妻の聖女は、王国を頂戴することにしました。
星ふくろう
ファンタジー
紅の美しい髪とエメラルドの瞳を持つ、太陽神アギトの聖女シェイラ。
彼女は、太陽神を信仰するクルード王国の王太子殿下と結婚式を迎えて幸せの絶頂だった。
新婚旅行に出る前夜に初夜を迎えるのが王国のしきたり。
大勢の前で、新婦は処女であることを証明しなければならない。
まあ、そんな恥ずかしいことも愛する夫の為なら我慢できた。
しかし!!!!
その最愛の男性、リクト王太子殿下はかつてからの二股相手、アルム公爵令嬢エリカと‥‥‥
あろうことか、新婚初夜の数時間前に夫婦の寝室で、ことに及んでいた。
それを親戚の叔父でもある、大司教猊下から聞かされたシェイラは嫉妬の炎を燃やすが、静かに決意する。
この王国を貰おう。
これはそんな波乱を描いた、たくましい聖女様のお話。
小説家になろうでも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる