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ここにいる理由 後半①

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 王女様の部屋はこれまで見た中で、どこよりもきらびやかだった。

 広く開放感溢れる一画に溢れる宝石の数々。

 遠くの壁際に、王女付きの侍女たちが最低限の人数。近衛の方々は隣に続く扉の側に待機させられている。

 アミーラ様は大きな猫脚のソファに腰を下ろし、私にも座るよう勧めた。その申し出を有り難く受け、座ると急に態度が一変する。

 先程まで厳かさが鳴りを潜め、深く背もたれに寄りかかった彼女は足を組み、用意されていたカップを手に取る。

 ひと口含んで飲み下した後、声をかけてくる。

「ねえ。さっきのどうだったかしら?」

 いきなりの砕けた話し方と雰囲気に戸惑ってしまう。だけど気づかない彼女はなおも訊いてくる。

「ルミ、聞いてるの?」
「あ、ごめんなさい。さっきのとは、どういう意味でしょう?」
「深刻さが出てたかしらってこと。フェルはあの話、信じたかしら?」
「もしかして……嘘をついたんですか?」

 話の流れからそう言っただけだけど、アミーラ様はピクリと眉を動かし、カップをソーサーに置いた。直後、鋭い視線を向けてくる。

「その発言は不敬に値するわ。でも…貴女はこの国の民じゃないから処罰するのは無理ね。国、というより世界かしら」

 その含んだ言い方が気になってしまう。その疑問を投げ掛けた。

「世界?」
「ええ」
「あの。先程、私を調べたと仰いましたが、どこまで知っているのですか?」
「調べてなんかいないわ」
「え?」
「そんなことしなくても全て知ってるもの」
「どういうことですか?」

 訊けば、彼女は怪訝な視線を向けてきた。

「本当に分かっていなかったのかしら」
「何をですか?」
「全てよ。あなたがこの場にいる理由、存在している理由、その全部」
「……」

 そんなことを言われても知らないものは知らない。無言で返したら、一拍置いて楽しげな声を出された。

「あらヤダ、本当に分かっていなかったなんて……てっきり自身の役割を理解した上で行動していたのかと思ったわ。ふふっ…そう。ならこれから貴女もつらくなるわね」

 クスクスとひとしきり笑ったあと、アミーラ様は優雅な笑みのまま続けた。

「この国に貴女を喚んだのは私なのよ」
「……あなたが私を?」

 どういう意味なのか、と混乱する。アミーラ様はジッと私を見てひとつ息を吐いて続けた。

「そう。私の魔力を源にしてるのに貴女には何も伝わってないのね」
「魔力……」
「ええ。説明するのは面倒だけれど…つまり、ルミ。貴女は私が魔術を使って召喚したのよ。別の世界から」
「別の世界……」

 薄々気づいていたけど、改めて言われると受け入れがたい。でも彼女はさらに困惑することを言った。
 
「ついでに、これも教えてあげる。あの魔獣たち、それも私が喚び寄せたの」
「何を、言って…」

 国の騎士たち……フェル達を戦場に駆り出す原因を、その主たる国王の娘がおこなっていた。国王たる父親が倒れているのに。

 聞かされた話が理解出来ずに頭を巡っていった。

 
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