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ただ、ひたすらに……①

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 ポタンッと雫が落ちる。ロギアスタ邸に戻ってすぐカマリとエラに預けられた私は、先に入浴がしたいとお願いした。二人は急なことにもかかわらず、ほとんど脱け殻みたいだった私に懸命に寄り添い声をかけてくれた。

 そうしてわずかに気力を取り戻してかは、少しひとりになりたいとお願いした。
 
「…………」

 ギュッと自分の体を抱き締める。何度落としても消えない感覚がいまだ残っている。

 エリック邸のことを思い出すと気持ち悪さで吐きそうになる。その不快感を振り切るように早めに立ち上がり、浴室を後にした。

 カマリに声をかけて、いつものように柔らかい部屋着に身を包む。髪を整えたり、いろいろしている間も二人は終始、他愛ない話をしてくれた。

 それはまるで起こったことを……忘れさせようとしているかのように。そして少なからずそれに救われている自分がいた。

 しばらくして自室に向かうために階段を上る。すると廊下にフェルを見つけた。まあ、見つけたというより、迎えに来られたって方が正しいみたい。上がりきる前に彼の方から近づいてきたから。

 少し速度を上げて、階段の上で合流する。

「フェル?」

 彼も、もうラフな格好になってる。夜もずいぶん更けてるもの。当然だよね。でもそんな夜更けに、と首を傾げたら躊躇いながら私の頬に手を伸ばしてきた。

「……!」

 瞬間、思わず顔を背けてしまう。
 本当に無意識に。だけど……。

 気まずい沈黙だけが場を支配する。恐る恐る顔を上げたら、フェルが小さく呟いた。

「……私はダメだな…何度も間違える…」
「え……?」

 見上げた先で、その藍色の瞳が悲しげに揺れる。彼は何かを抑えるように声を出した。

「守れなくてごめん。と……それだけ言いたかったんだ」

 言葉を残して彼が身を翻す。その間際、掠めた表情がつらそうに見えた。

「……」

 それでも離れてく背を追うことが出来ず、ただただ立ち尽くす。

 私はフェルのことが怖かったわけじゃない。なのに何故、あんな態度を取ってしまったのだろうか、と。

「……っ」

 胸元に添えた手をギュッと握り締める。きっと彼も傷ついた。

 また傷つけて、しまった……。

「……」

 このままで良いわけない。このままじゃ、彼は自分を責めてしまう。

 何一つ、悪いことなどしていないのに。

 あれは事故だった、と貴方はちゃんと守ってくれたのだと伝えなきゃいけない。

 遅れて動き出した私は、真っ直ぐ彼の部屋を目指した。

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